表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狼竜物語  作者: レオ
65/255

(5)

 山の頂上に続く階段は、果てしなく続く。


 一歩一歩力を込め重くなった身体を、ルークは上へ上へと運ぶ。


 ナーガの話しが終わるまで待ってた方が良かったかな?


 ナーガに乗ってくればどんな高い山でもひとっ飛びなのに・・・


 マスターがこんなにキツイ思いをしているのに、ナーガはナンパだなんてとルークは立派に駄目な大人への階段を登っている。


 平野部だけでなく山谷部にも人は住んでいるらしく、神殿に向かう途中にも家は点在している。


 前から階段を下りてくる水色のワンピースを着た幼い女の子は、この山に住んでいる子供なのかな?


 母親にでもお使いを頼まれたのか、手にはバスケットを持ち、後ろを黄色い子犬が一生懸命ついていっている。


 微笑ましい光景だなと、女の子と会釈をしてすれ違うが、ルークは何かを思い出したように呼び止める。


 女の子は知らない人に、呼び止められた事に怪訝な表情で首を傾げる。


「な~にお兄ちゃん?」


「その後ろについていっているの、もしかしてシビルタイガーの子供?」


 黄色くて、ましてや短いながらも立派な牙を生やしている犬なんていない。


 女の子の顔は、パアッと明るくなる。


「そうよ。この子は私の使い魔なの。凄いでしょ!」


 こんな小さい子供が小さいとはいえ、シビルタイガーを使い魔にするなんて確かに凄いと、僕は素直に感嘆する。


「僕シビルタイガーを見るの初めてなんだ。その子触らせてもらってもいいかな?」


 女の子の表情は途端に曇る。


「いいけど・・・怪我しても知らないよ。この子あたし以外に懐かないから」


 僕は膝を折り、手をシビルタイガーに伸ばす。


 手を伸ばされたシビルタイガーは盛んに警戒音を発し、手をクンクン嗅いでいる。


「この子の牙どうしたの?先がちょっと欠けてるね」


 シビルタイガーの片方の牙が、ほんの少しだけ欠けている。


「知らない。あたしが召喚した時にはもう欠けてたの。お母さんが言うには、野生の時に喧嘩でもしたんじゃないかって」


 ふう~うわっ!


 相槌を打とうとして、僕は急に飛び掛かって来た、シビルタイガーに押し倒され尻餅をつく。


 僕を押し倒したシビルタイガーは、膝の上に乗りこれでもかと顔を舐めまくっている。


「うひゃっべっちょべちょにされちゃう」


 女の子はその光景を見て、驚きの声を上げる。


「すっご~い。この子あたし以外には絶対懐かないのに・・・お兄ちゃん・・・泣いてるの?」


 えっ?僕は言われて初めて、自分が涙を流しているのに気づいた。


 変わらず自分を舐めまくっているシビルタイガーを撫でると、何処か懐かしい温もりと不思議な感情が溢れて来る。


 ギュッと抱きしめる。


 やっぱり僕はこの感触を知っている。


 後から後から涙が溢れ、女の子は座り込んでそんな僕を不思議そうに見ていた。


 暫くして女の子は立ち上がる。


「あたしお母さんにお使い頼まれてるから、もう行くね」


 僕は、うんと抱きしめていたシビルタイガーを解放する。


「行こっ」


 シビルタイガーは悩んだ様子を見せながらも、女の子の後をついていった。


「待って!」


 また呼び止められ、女の子は振り返る。


「その子の名前はなんて言うの?」


 女の子はプウっと頬を膨らませる。


 なんかマズイ事でも聞いちゃったかな?


「もうっ!こんなに可愛い女の子がいるのに、あたしじゃなくてこの子の名前なの?そんなんじゃ女の子にモテないよ」


 まさか自分より小さい子供に、そんな事を言われるなんてと苦笑する。


「いいわ、教えてあげる。この子の名前はルークよ。じゃあね泣き虫のお兄ちゃん」


 女の子はそう言うと、シビルタイガーと一緒に階段を下りていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ