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狼竜物語  作者: レオ
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(4)

 う~一晩たったのに、お腹がはち切れそうだ。


 宴会でいつの間にやら、僕はナーガの従者という事になり、目の前に高く積み上げられていく食べ物の塔。


 必死の思いで、やっと食べ切れると思ったら「いい食べっぷりです。さあさあもっとどうぞ」と、最初よりも高く積み上げられる食べ物の塔。


 美味しかったけど、人間限度ってのが必要だと思う。


 ナーガは僕よりも沢山の人に囲まれ、いつもよりも優しい眼をして、村人から産まれたばかりの赤ん坊の名前をつけて下さいだの、様々な願いを聞いていてまるで神様みたいな扱いを受けてた。


 僕が食べ過ぎで動けなくなった頃、やっと宴会はお開きになり、僕等は村で一番大きな家に案内されてそこで休息をとった。


 今日は山の頂上にあるという神殿で、色々話してくれる予定になっているけど、ナーガは誰かを待っているらしく既に外で待機している。


 今だにひっこまないパンパンのお腹が苦しくないように、ベルトをいつもより一つ緩めて僕も外に出ると、ナーガは誰かと話していた。


 ナーガと話しているのはブロンドの美人で、何となくナーガは困った様な顔をしてる。


 ブロンド美人は僕に気づくと「ナーガ様の従者の方ですわね。このレイをどうぞ」と僕の首に花のレイをかけてくれた。


 花のいい香りが鼻腔をくすぐり、ブロンド美人がニコッと微笑むとドギマギして僕の頬が赤く染まる。


 笑顔もそうなんだけど、それよりも僕の目の前にある物体。


 まるで胸に西瓜を二つ入れた様な膨らみが、僕の目の前で揺れていた。


「マスター、申し訳ないが先に行っててくれないか?私は少し、この者と話がある」


「あっうん」


 僕はナーガを残して、昨日教えてもらった神殿に続く階段を目指し歩き始める。


 待っていた人って、あのブロンド美人なのかな?


 それともナーガの好みで、ナンパってやつをしてるとか?


 そんな妄想が膨らみ、僕もフェンリルに毒されていってるのかなと、僕は一人歩いていった。


 残されたブロンド美人は、これでもかと笑顔を振り撒くが、ナーガは相変わらず眉間にシワを寄せている。


「何かお気になる事でもありますか?」


「・・・お前に女装趣味があるとは思わなかったぞ」


 ブロンド美人は、自らの胸をわしづかみにする。


「かっし~な~。これ以上ないくらい完璧な変装だったのに。見ろよこの胸!むしゃぶりつきたくなるくらいいい胸だろ?」


 ナーガは嘆息する。.


「無駄だと言っただろう。それに貴様は、貴様以外現れないだろうというタイミングでしか出て来ない」


 なるほどタイミングかとサイは一人思案顔。


「無事にここに着いたな。まあ、死にかけたんだから無事ってのもおかしいが。ここに向かわせるよう仕向けた理由はわかったか?」


「マスターの為ではない。ここに向かわせたのは、私の力を少しでも回復させようという魂胆だ」


 ブロンドのサイの胸が徐々に萎んでいく。


「正解だ。なら何故召喚されたのかも気づいているな?」


 無論だとナーガは答え、続けて自らが何故人間界に召喚されたのかを答える。


 ナーガの口をついて出たのは・・・


 ‐古き神の討伐‐


 二人の間に落ちる沈黙は、ナーガの出した答えが間違いでない事を、無言で肯定する。


 沈黙に耐え兼ねて、先に言葉を発したのはサイだった。


「あんたの考えてる事はわかる・・・おかしいよな?」


 ナーガの視線は、鋭くサイを射ぬく。


「今までも新しき神が、約定を破った事はある。それでも神界側は、魔界との軋轢を避けて人間に討伐をさせてきた。初めて古き神が禁を破り人間の手に負えなくなった事で、私を利用して倒そうと言うのはわからないでもないが・・・何故使い魔となり属する世界を変える必要がある?魔界側が先に約定を犯しているのなら、そんなまどろっこしい事などせずに、神界側も直接出向けばいいではないか?」


 サイは髪をかきあげ視線を落とす。


「そうなんだよな。俺もおかしいと思って、その事をオーディン様に伺ってみたさ。直接神界側が出向けば、第二のラグナロクになる可能性があると仰られた」


 これまで唯一にして、世界を大きく変化させた大戦ラグナロク。


 何故直接出向く事で大戦になる可能性があるのか、ナーガにもサイにもその答えはない。


「それだけではない。古き神と魂の契約を交わす人間の存在、それも二つの契約だ。神ですら一つの契約しか出来ない事を、人間の少年に可能にさせている理由はなんだ?」


 サイはお手上げと両手を上げる。


「使いっぱしりの俺にはわからんよ。なあ、俺達は誰の手の平で踊らされてるんだ?」


「オーディンだろう?」


「そうなんだが・・・オーディン様だけじゃなく、誰か別の者の意思があるように思えないか?違反者が魔界の者なら、フェンリルはオーディン様の意に沿わないだろう」


 神界側ではなく、魔界側に属するフェンリルの存在が、謎を更に深くしている。


「まだオーディンは私達に隠している事があるな。私でも余程近づかなければ、人間か神かは判別出来ないのに、誰がどうやって違反者に気づいたのかも定かではない。お前は人間界で何をしている?赤毛の男の軍にいたのも偶然ではないだろ」


 よくぞ聞いてくれたとサイは胸を張るが、残念ながらその胸は平野に戻っている。


「あんたが討伐をする時の下準備さ。俺は今ラインハルトの下で動いている。いつ入れ替わったのかはわからないが、違反者はリリオル王のグスタフだ。まさか、一国の王様を相手に、一人と二頭で戦争を仕掛ける訳にもいかないだろ」 


 初めて聞く名前に、ナーガは誰だと問う。


「ラインハルトはグスタフの息子だ。十年程前からグスタフに遠ざけられて幽閉されていた。説得するのは大変だったが、全ての準備は整っている。後はあんたがやるかやらないかだ。」


 ナーガは首を左右に振る。


「やるかやらないかを決めるのは、私ではなくマスターが決める。私は全てをマスターに話すつもりだ」


「そうか、ルークも当事者だから話してしまうのもいいだろう。もしルークが断って、万が一神界から狙われたとしたら、あんたはどうする?」


 その言葉の奥に隠された意味に気づき、ナーガは凍てつく視線と対称的に口角を上げた。

 

「神界がただの人間の子供に、そこまでこだわる事はないだろが、もしそうなったら私は全力でマスターを守る」


 そうかとサイは嬉しげに頷く。


「神界を敵にまわしてもいいぐらいあんたはルークを気に入ったか。フェンリルがどう動くかはわからないが、少なくとも二人はルークの味方だ」


 貴様がどうしてルークにそんなに肩入れするのかと、ナーガの口角は更に上がる。


「俺はルークが、こんなにちっちゃい頃から見てるんだぜ。いわば父親みたいなもんだ」


「女装する父親など、マスターはお断りだろう」


 話しは終わったとナーガは翼を広げるが、それをサイが制した。


「ちょっとゆっくり行ってやってくれ」


 ナーガは眉をひそめる。


「貴様まだ何か企んでいるのか?」


「企むとか人聞きが悪いな。言っただろ?俺はルークの味方なんだぜ」


 サイは、この日一番の笑顔を浮かべた。

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