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狼竜物語  作者: レオ
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(13)

「形勢逆転だね」


 なんか、今の僕のセリフ格好よくなかった?女は、苦渋の表情を浮かべる。


「そうみたいね。でも、床に転がったまま、そんな事言っても格好悪いわよ」


 やっぱり。


 ナーガが飛び込んで来たのが意外に近くて、弾けた壁に僕も巻き込まれて転がっていた。


 完全に壁の下敷きになっている、襲撃してきた生徒よりマシだけど。


「私も奥の手を出すしかないようね。後は仲間に任せるわ」


 仲間?まだ他に誰かいるの?


 考えている間に、女がキャーーー!と大声で悲鳴を上げる。


 教室のドアが開かれ、飛び込んで来たのは、彫刻のような鍛え抜かれた肉体、太陽を反射しなくても眩しく光るスキンヘッド。


 そんな・・・まさかバルガス先生が、襲撃犯の仲間だったなんて。


 女はバルガス先生に「生徒が魔獣に襲われてます」


「後はワシに任せてご婦人は避難を」


 あれ?バルガス先生は、女の仲間じゃ・・・ドアを抜けて逃げていく女は、こちらに向かってウインク。


 えっ・・あ~~~奥の手なんかない。


 状況を逃走する為に利用したんだ。


 教室に転がっている生徒二人に、壁をぶち破って乱入している魔獣ナーガ


 こんなの、今来たばかりの先生が見たら、魔獣に生徒が襲われているようにしか見えない。


 理解した時には先生は、ナーガに向かって突進していた。


 ナーガの前の空間が歪んでいく。


 止めなきゃ!と思った時にはガツッと重い音と共に、ナーガの顔が弾けていた。


 嘘?魔法の発動より速く飛び込んで、ナーガを殴った。


 殴られた勢いのまま、ナーガが反転して尻尾が先生を襲う。


 バチィと凄い音がして、幾つかの椅子と机が飛ぶけど、先生は尻尾をしっかりと掴んで堪え、そのまま投げようとする。


 ナーガが身体を小さくして、掴まれた尻尾がスルリと腕から抜け、先生が体勢を崩す。


 体勢を崩した先生に、氷の槍が襲い掛かり、その槍を机を盾にして防ぐと、空間がいつもと違う形に歪んでいき床が瞬時に凍る。


 先生は足元が凍る前に、後ろにジャンプしてそれすらもかわす。


 ナーガと素手で互角に戦っている先生は、人間じゃない・・・


 颯爽と先生が着地して・・・滑って転んで後頭部を強打した。


「ナーガやめて!その人敵じゃなくて先生だから!」


 追い打ちを掛けようと、魔法を発動させようとしていた空間が四散して、ナーガが驚きの表情でこちらを向く。


 うん、敵だと思ってたのが、敵じゃなかったんだもん。その驚きもわかるよ。


「こんな凶悪な顔したのが先生だと・・・」


 あ・・・そっちの驚き・・・


 先生に駆け寄り、ナーガと襲撃者の事を説明すると「さっさと言わないか馬鹿もん!」と僕が殴られた。


 言う暇なんて与えてくれなかったのに、理不尽だ。


 先生は、後で説明してもらうぞと言い残すと、壊れた壁から教室を飛び出していった。


「先生ここ五階・・・」


 何事もなかったように、着地して駆け出す先生を見て、やっぱり先生は人間じゃない・・・


「大丈夫か?」

 

 肩とお腹がちょっと痛むけど、そんなに深い傷じゃない。


「僕は大丈夫、ナーガ怪我してる」


 ナーガの胸から血が落ちている。


「結界を無理矢理通った時に、砕けたペンダントで、少し切っただけだ大事ない」


 そうだ。


「ちょっとじっとしてて」


 僕は呪文を唱え、複雑な構成を組み立てていくと手が光り、ナーガの傷は塞がっていく。


 何も出来なかった自分が、初めて役に立っている。


 僕は嬉しい気持ちでいっぱいだった。


 カツッーン!


 何かが床に落ち、跳ねた後、音を立てながら床を転がっていく。


 それは腕に嵌めていた、ルフツネイルの特待生を示す腕輪。


 まさか!


 僕が自分の手を確かめると、初めて透けた時よりも、遥かに早いスピードで手が透けていく。


 助けを求めナーガを見上げるけど、ナーガは複雑な表情を浮かべ、ただ成り行きを見守っている。


 肘まで透けたところで進行は止まり、透けた部分は徐々に色を取り戻していき、安堵する。


「肉体も魂の一部だという事は知っているな?」


 僕は黙って頷く。


「相手の肉体を再生するという事は、己の魂で欠けた部分を埋めるという事だ」


 治癒の魔法の使い手は、短命な者が多い。


 その理由はそこにあると、僕は初めて知る。


「でもリュートの傷を治した時は、こんな事起こらなかった」


 リュートの深い傷にくらべれば、ナーガの傷はかすり傷みたいなものだ。


「ただの人間と、私や負け犬では持っている力が違う。いつ治癒を使えるようになったのかは知らないが、二度とするな」


 初めてナーガから聞く強い口調の言葉。


 魂の力を使い果たせば、ナーガもフェンリルも死んでしまう。


 怒るのは当然だ。


 さっきまであった、役に立てて嬉しい気持ちは何処かに飛んでいき、結局自分は何も出来ないままだと落胆する。


「やっぱりナーガやフェンリルは」


 普通の魔獣じゃないのと、いい終わる前に庭からの爆発音に、言葉を遮られる。


「やつも来たようだな」


 来たって・・・壊れた壁から庭を確認して、僕は全身の力が抜けたように、その場に座り込んだ。


 そこには予想通りの光景が広がっていた。


 草原を思わせるような、緑の芝生の一部がえぐられ、そこを中心に対峙するバルガス先生とフェンリル。


「ナーガ・・・悪いけど止めて来てくれるかな?」


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