(2)
街の中央に向かって行くと、ルフツネイルの敷地をぐるりと囲んでいる高い壁が見えて来る。
「こっからがまた長いんだよね」
ここから壁づたいに歩いて、入口までさらに数分かかる。
「ナーガに乗って壁越えれたら早いのに」
僕のぼやきに、ナーガが呆れた口調で答えた。
「かなり強力な結界が張られているから、よした方が無難だな」
ナーガが言うには、力ずくで破れない事もないが、騒ぎになるのは確実らしい。
ルフツネイルは、各国要人の子弟を受け入れているだけあって、警備もとても厳重である。
ファンリが都市として独立を保っていられるのも、ルフツネイルを始めとした学校の存在が大きい。
高い教育で各国要人の子弟が集まる事によって、学校は一種の社交場としての役割もあり、ルークのような才能がある若者を集め、無料の人材派遣所としての役割も担っている。
要人の子弟は、高い教育と将来の各国の要職に就く人物との、人脈作りと能力の高い人材の発掘。
ルークのような特待生は、就職先の確保。
実際、要人の側近として働いているルフツネイル卒業生は沢山おり、ファンリの独立性を保つ大きな力となっている。
校門でルークは腕輪をつけ、ナーガはペンダントを受け取り門をくぐる。
腕輪はさらに中にある校門を通り、校内に入る為の印。
ナーガが受けとったのは、一番外を囲う壁を通る為の許可証である。
使い魔であっても、校内まで入る事は出来ない。
自ずと授業が終わるまで外で待つ事になり、フェンリルはその退屈な時間を嫌がっている。
中に入ると芝生で整備されており、隠れながら校舎のある一角に近づく事が出来るような、身を隠せるようなものは何もない。
「ルークさーん」
二つ目の校門の前で、黒髪の目がクリっとした少年が、僕に向かって手を振っている。
身につけている服は質素に見えるが、高級なシルクをふんだんに使っており、特待生ではなく上流階級の出である事が伺える。
僕はその少年に手を振り返し「リュートが待ってるから行ってくるね」とナーガに言い残し、少年のもとに駆けて行った。
リュートと呼ばれた少年は、ランバルの貴族でルークの一つ下にあたる。
同じランバル出身である事からルークと親しくなり、カダルフィークで同年代の子供のいなかったルークにとって初めての友達と言えた。
「わざわざ校門まで出て待っててくれたの?」
「午前の授業一緒ですよね」
僕は時間割を思い出す。
「午前は確か剣術だっけ?」
頭半分ほど僕より低いリュートは頷き「急がないと遅刻して先生に怒られますよ」と急かす。
頭に筋肉ムキムキスキンヘッドのバルガス先生の姿が浮かぶ。
王族であろうが貴族であろうが、容赦なくスパルタで鍛えるバルガス先生は、生徒の恐怖の対象だ。
僕は身震いすると、新しい友達のリュートと校舎の中に入っていった。




