(4)
寝室に入り、何で俺様じゃなくてマスターやとかげなんだよと、今だに五月蝿いフェンリルは無視して、僕は一つしかないベットに潜り込み脇のフェンリルに語りかける。
「いい人だったね」
「ん?美人だったしな。マスターはえらくご執心だったが惚れたか?」
僕はフェンリルの頬を撫でて思っていた事を吐き出す。
「そんなんじゃないよ。ただ・・・お母さんがいたらあんな感じなのかなって」
「なんだそりゃ。マスターはガキだな」
「子供だもん」
「ちげぇねえな」とフェンリルも笑う。
「ねえ、フェンリルのお父さんとお母さんはどんなだったの?」
僕が持ってた素朴な疑問。
「俺様に両親はいねぇよ。気づいたら一人で生きてたからな」
ずっと一人で生きるってとても寂しい。僕にも母さんはいないけど父さんがいて・・・
たとえ血が繋がっていなくても、そこには温もりがあってかけがえのないものだ。
「僕らもいつか家族みたいになれるかな?」
「マスターみてえな息子はいらねぇ」
考えもせず即答って酷くない?
「フェンリルはお父さんて感じじゃないなぁ。どちらかと言えばナーガがお父さんかな。フェンリルは兄さん」
心底嫌そうな表情をフェンリルは浮かべる
「冗談でもトカゲが父親って死んだ方がマシだぜ。くだらねー事考えてないでさっさと寝ちまいな」
ナーガの両親はどんな人なんだろ?いつか聞いてみよう。
まどろんでいく意識の中で、いつかきっとなれるよねと、ナーガの帰りを待たず意識は沈んでいった。
外はまだ暗く太陽が昇るには、いま暫く時間が必要だろう。
明かりのない部屋で赤い紅玉のような瞳がゆらゆら動く。
紅い瞳はしきりに外の様子を気にしている。
それに気づいたナーガが、まだ眠りの中にいるルークを起こさぬように静かに「何か気になる事でもあるのか?」と問う。
振り向いたフェンリルの瞳に、いつものようなふざけた様子は一切感じられない。
「マスターを起こしな。鉄の臭いがする」




