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狼竜物語  作者: レオ
29/255

(2)

 僕達は王都ランバルから大きく離れ、もうすぐ国境付近にある村に到着しようとしていた。


「フェンリル遅いね~」


 僕とナーガは、国境沿いの村メンデスの入口で、フェンリルの到着を今か今かと待っていた。


「来たみたいだぞ」


 遠くに砂埃が見え、こちらに向かって走って来るのは漆黒の狼。


 僕はよいしょっと腰を上げ、お尻についた砂を払いのける。


「遅かったね~フェンゲフッッッ」


 僕は、狼のドロップキックをまともに受け、豪快に吹っ飛び砂地を転がる。


「俺様だけ残して囮にしやがって!あいつら水の中まで追っかけてきやがったんだぞ」


 フェンリルの漆黒の毛からは、今も水が滴り落ちている。


 いたたた・・・どんどんフェンリルの僕への扱いが酷くなっていっているような・・・


「もともと貴様のせいだろ」


 冷静にナーガはフェンリルを責める。


「てめぇが避けるからだろうが。大人しく焼鳥になっとけ!」


 またも二頭は険悪な雰囲気。


 僕だって怒る時は怒るんだからね。


「この村に来るのに道があるのに、わざわざ森を通って来たのは誰と誰のせい?」


 黙ったままの二頭にもう一度迫る。


「誰のせい?」


 街道を避けているのは、勿論二頭が喧嘩して道行く人を巻き込まないようにだ。


「そりゃとかげ・・・」


「そこの犬が・・・」


 言い訳をしようとする二頭に、僕の怒声が落ちる。


「二人のせいでしょ!なんで仲良く出来ないの!」


 普段大人しい人間がキレた時程、怖いものはない。


 ナーガとフェンリルは、アイコンタクトで意思を交わす。


(逆らわない方が良さそうだ)

(なにガン飛ばしてやがる!)


 疎通出来てなかった・・・


「ナーガごめんなさいは?」


 逆らわない方が良さそうだと判断したナーガは、素直に「ごめんなさい」と謝る。


「フェンリルごめんなさいは?」


 フェンリルは、内心なんで俺様が謝らなきゃいけないんだとソッポを向く。


 僕はガシッとフェンリルの頭を掴み、自分の方に無理やり向かせる。


「僕の家はね、悪いことしたら木に縛られて丸一日放置されるんだよ」


「そりゃお前の親父が特殊なだけだろ」


「今日のご飯抜き」


「・・・ごめんなさい」


 二頭が謝った事で僕の怒りは溶け、ニコッと笑顔を浮かべ「じゃあ、いこ」と村に向けて歩みを進める。


 フェンリルはそれを見て、やれやれだぜと嘆息して歩きはじめた。


 メンデスは小さい村ではあるが、国境に接しているという事情から国境警備の兵士が常駐している。


 村を守る為ではなく王都に、いち早く他国の侵攻を知らせる為だ。


 隣国リリオルとランバルの国交はなく、国境の村といっても旅人は少なく、お世辞にも栄えているとは言えない。


 僕たちは道にいた村人に、この村唯一の宿屋の場所を聞き向かう。


「聞いた場所ここで間違いないよね?」


 目の前にあるのは、普通の一軒家。


「だな・・・本当に宿屋かよ」


 ノックすると淡い栗色の髪に、整った目鼻立ちで、誰が見ても美人だと答える程の若い女の人が出てきた。


「あの、ここが宿屋だと聞いて来たんですけど」


 容姿に相応しいふんわりした声で「そうよ」と年頃の男なら、これだけで参ってしまいそうだ。


 女の人はフェンリルとナーガを見て頭を下げた。


「ごめんなさい。うちはペット禁止なの」


「ペットじゃなくて僕の使い魔なんです」

「俺様はペットじゃねーぜ」

「私はペットではない」


 僕と二頭の声が重なる。


 ペットだと思っていた獣が口をきいた事に、女の人は驚きの表情を見せる。


 王都のような大きな都市ならともかく、やはり田舎では召喚獣は珍しいみたいだ。


「まあまあまあ喋るなんて可愛いワンちゃんね」


 マズイ!フェンリルは犬扱いされると烈火の如く怒る・・・はずなんだけど、当の本人は、頭を撫でられて鼻の下を伸ばしている。


「マスターここは最高の宿屋だぜ」


「・・・泊めてもらえますか?」


 ペットではなく召喚獣ならと、僕等はここに泊めてもらえる事になった。

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