(10)
異臭が鼻をつく。
先程迄いた、きらびやかな市場とは、明らかに違う雰囲気。
狭い路地には地べたに座り込んでいる人がいて、その横を通り過ぎるが、その目は虚に虚空を見ている。
世間知らずのルークの警戒心も、此処は危険だと盛んに警鐘を鳴らし、自然と歩く速度は速くなっていく。
長い一本道に差し掛かった時、前から二人組の男が、下品な笑いを張り付かせたまま道を塞いでいた。
「まさか、そちらから出向いてくれると思わなかったぜ」
踵を返し来た道を戻ろうとするが、そちらにもこん棒を構えた男が一人。
「大人しくその鞄に入ってる金を渡せば命迄はとらねえよ」
男達は徐々に距離を狭めていき、男の手が伸びて来た時、ルークは背負っていたリュックを男に投げつけ、その横を駆け抜けようとした。
その刹那、お腹に走る鈍痛に膝を付き、口が新鮮な空気を求める。
「逃げようとしてんじゃねーよ!」
鞄を力任せに剥ぎ取られ肩を蹴られたルークは地面に倒れ込み、奪われた鞄を男が乱雑に漁り、目的の物を見つけほくそ笑む。
「言ってた通り結構な金が入ってるぜ。おう、そいつ縛っておきないい値で売れるぜ」
縛られながらルークは、助けを求める。
(フェンリル、ナーガ助けて・・・)
離れた家の屋根から、猫のひなたぼっこよろしくその様子を眺める獣が二頭。
「あ~あやっぱな。昨日からあいつらつけてやがったからな」
何処となく楽しげなフェンリル。
「楽しそうだな」
「マスターをわざと危機に落とし入れた奴に言われたくねーよ」
ナーガが魔法で、ルークを迷わせた事をフェンリルは知っている。
「縄で縛られてさるぐつわ迄されてんぜ。こりゃ、どっかに奴隷として売られちまうかもな」
フェンリルは、やはり楽しげな口調だ。
「可愛い顔してんし料理、洗濯、掃除のスキル付きだ。このまんま買われて可愛がられた方が幸せかもな」
「貴様は奴隷の使い魔になりたいか」
ナーガは思いを巡らす。
「危機に陥れば何かわかるかと思ったが当てが外れたか」
フェンリルは立ち上がり「そろそろ白馬の王子様の出番だな」と屋根から飛び降りる。
「貴様は揉め事が好きなだけだろう」
フェンリルに続いて、ナーガも飛び立っていった。




