(9)
目を覚ますと、そこは床だった。
いたたた・・・たんこぶの出来た頭を押さえる。
僕をベッドから蹴り落とした張本人は、幸せそうに大股を開いて今も熟睡している。
今度から一緒に寝るのは、ナーガにしようと決め着替え始める。
「出かけるのか」
ナーガも既に起きている。
「次の目的地迄の食べ物買わなくちゃ」
お腹が減るというのは、想像以上に堪える。
マスターと呼ばれナーガを見ると、金色の瞳に引き込まれていくような、奇妙な感覚に襲われる。
それを追い払うように頭を振る。
「じゃあ行ってくるね」
ルークは部屋を出て、階段を降りていき、部屋に残されたのは魔獣二頭。
「あ~あぁ可哀相な事しやがるぜ」
ナーガを非難するのは、寝ていたはずのフェンリル。
「後をついていけば問題ない」
ナーガは目立たぬように、身体を小さくしていく。
「出るなら俺様の買ってやったリボンをつけていったらどうだ?」
「私よりも貴様にお似合いだ。何か気付いているのだろう?喋ったらどうだ」
フェンリルは肩を竦める。
「そうだな・・・俺様の封印を解くなら教えてやってもいいぜ」
ナーガは微笑を浮かべ「交渉決裂だな」
二頭はルークに遅れて、窓から飛び出して行った。
数百メートルに渡り並ぶ店舗に、店主の威勢のいい声が響き、ランバルの市場は朝から賑わいを見せている。
見上げれば泥棒猫が大量に住んでいるランバル城が、お前達とは住む世界が違うんだよとでも言いたげに町を見下ろしている。
次の目的地に、直線的にいくなら暫く大きな町はない。
「これと、これと、それもください」
買うならここで買っておかなきゃと、鞄は既に買い込んだ食料で目一杯膨らんでいる。
「それもください」
指差すのは、大きなリュックサック。
一番の大食いなんだから、少しは持ってもらわなきゃと頭に浮かぶは漆黒の狼。
膨らんだ鞄にリュックを背負うと、重さで足元がふらつく。
こんな事なら、二頭についてきてもらえばよかった。
・・・あれ?僕何で一人で来てるんだろ
ふと感じた違和感はすぐに頭の隅に追いやられ、帰らなくちゃとルークが歩きだしたのは来た道と違う方向。
その先にはモダンな建物ではなく、粗末な木で組まれただけの小屋が並ぶ一角。
光がある所には闇があり、富める者がいれば貧窮する者もいる。
そこはランバルの闇の部分。
間違って近付いた者は、昼間でも行方不明になる事もある。
そんな場所にルークは、疑問も持たずに足を踏み入れていった。




