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狼竜物語  作者: レオ
24/255

(8)

 夜の帳が下りて町は、昼とは違う活気を見せている。


 カダルフィークと違い、街灯が灯り夜でも明るい。


 肩を組んで、千鳥足で歩く二人組。


 夕飯だろうか?ネギが飛び出した紙袋を抱え、幼子の手を引き歩く母親。


「寝ねーのか?」


 ずっと椅子に座り窓から町を見ていた僕に、フェンリルがいぶかしげに声を掛けて来る。


「もうちょっと後で。町を見てるのが楽しくて」


「何が面白いんだ?」


 フェンリルは僕と同じ様に、窓から町を見下ろす。


「ほら、あの女の人とか道行く人に声掛けてるでしょ。何してるのかなぁ~とか」


 その女の人は、化粧が厚くてヒラヒラのドレスを着ているが、それなりに歳を喰っているように見える。


「ああ、ありゃ春を売ってるんだよ」


 もう季節は夏になろうとしているのに、一生懸命春を売ってるから、誰も止まってくれないんだ。


「ふ~ん何も持ってないのに商品は何処にあるの?」


 小さな沈黙、そしてフェンリルが呆れた表情を浮かべる。


 いや、もうそんな表情されるのも慣れたけどね。


「バッカだな。いいか、春を売るって・・・いって~な!」


「お前は教育に悪い」


 フェンリルは、ナーガの尻尾に殴られた頭を押さえた。


「あいつの言った事は忘れる事だ。大人になればわかる様になる」


 フェンリルは、ケッと吐き捨てる。


「俺様はあんな年増はゴメンだがな。やっぱ女は若いのがいいぜ。マスターはあんな年食ったのが好みなのか?」


「う~んよくわからないけど懐かしいなって感じるの」


 ナーガは優しい光を宿す、金色の瞳で僕を見る。


「母親の記憶か」


「違うと思う。カダルフィークに住む前かな?毎日寝る迄僕の遊び相手してくれてたのが、あんな人だった」


「そりゃ親父の恋人じゃねーか?」


フェンリルが、横から口を挟む。


「それも違うと思う。毎日違う人だったし父さんに聞いたら、仕事にあぶれているのを安く雇ってんだよって」


「マスターの親父とは気が合いそうだぜ」


フェンリルと父さんが、あんまり似ているとは思えないけど。


「カダルフィークに住んだ頃かな。父さんがルークお前も五歳になって立派な大人だ。明日から村のおばさん連中から掃除、洗濯、料理を習って来いって」


「それで掃除洗濯が得意なのか」


「うん。父さんがお前は可愛いから、潤んだ目でお願いすればおばさん連中はイチコロだって言うから、そうしたら皆優しく教えてくれたよ」


 ナーガも羽をくれたし、父さんの教えは凄い。


「それからずっと僕が掃除、洗濯、料理をやってたの。父さんは五歳になったら何処のお家も皆そうだって」


 フェンリルが僕の肩に前足を置き、無言で数回頷きベッドに入っていった。


 何なんだと思っていると、反対の肩にナーガの腕が置かれ同じ様に、無言で頷きベッドに入っていった。


 何なんだろ?


 僕も二頭に続いて、中央にデンと寝ているフェンリルをずらして、ふわふわのベッドに潜り込み眠りに落ちていった。

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