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詳しい話を聞く為にトーマスさんを家に連れ帰り、お風呂と食事の準備を急いで済ませる。
アネルカさんが殺害されたのは対抗戦の夜、僕らが祝勝会で羽目を外していたあの日だ。
用意した簡単な食事は搔きこむ様に貪るトーマスさんの胃袋に消えていく。まるで何日も食事にあり付けなかった野良犬のようだ。
そう形容するには幾分ぽっちゃりしすぎている様な気もするけど、一息ついた頃合を見計らってナーガが口を開く。
「それで私達はアネルカを殺害した犯人を探せばいいのか?」
「そうでやんす。実行犯は殺し屋のトルディ、こいつにあねさんの殺しを頼んだ奴を見つけて欲しいでやんす。見つけてくれれば後はあっしが仇を討つでやんす」
「成る程な。まずはそのトルディとやらの居場所を掴まねばならんな」
「トルディなら土の下に埋まってるでやんすよ」
ナーガの顔があからさまに歪み、現状を掴む為更に詳しく話を聞いていく。
アネルカさんの命を狙い押し込んだトルディだが、反撃に合い相打ちの形で二人とも見つかった時には事切れていたそうだ。
発見者はランスロッドさん。自分の姉が殺されている現場を見た彼の胸中はどれほど傷ついたのだろうか?
それはトーマスさんから伝え聞く、葬儀での彼の様子からも伝わってくる。
彼はアネルカさんの棺から決して離れず、遺体が墓に埋められた後も雨が降る中、一人ずっと墓の前で祈りを捧げていたらしい。
「犯人が死んでいるのなら私達が出来る事はないのではないか?一つの街を任されている程の人物が殺されたのなら盗賊ギルドも動くだろう」
「ギルドはトルディの単独犯と発表したけどそんな訳ないでやんす。トルディは金が発生しなきゃ虫すら殺さないあねさんのような奴で、誰かが頼んだに決まってるでやんす」
興奮してテーブルを何度も叩くトーマスさんにナーガは冷たく「ギルド内部の権力闘争やアネルカ本人が個人的にトルディやらに恨みを買っていた可能性もあるだろう。いずれにせよ私達に助力を頼むのはお門違いというものだ」と言い放った。
トーマスさんは席を立ちテーブルに袋を置く。袋からはお金の擦れる音が静かに響いた。
「あっしが出せる全てでやんす。必要なら身に着けている物も全部差し出すでやんす」
彼の本気が伝わってくる。
「てめぇの裸なんぞ金もらっても見たくもねぇ」
あのねフェンリルそういう事じゃないよ。
「ねぇナーガ」
僕の一言にナーガが溜息をつく。言葉にしなくても言いたい事は伝わっているようだ。
「マスターの友人の姉が亡くなったのだ。手を貸す貸さないは別にして弔問ぐらいは訪れねばならぬだろう」
こうして僕達は古都ランバルに向かう事が決まった。
幸い対抗戦が終わり落ち着き始めた時期で休校届けもすんなり受けいられた。
口の悪い学友達は「ニーナに振られて新しい女の為にランバル迄行くらしいぞ」と陰口を叩いている。
確かに女の人の為にランバルに行くのは確かだけど、随分な尾ひれがついてしまっている。
対抗戦のお陰で実力が無いだのは言われなくなったけど、女好きだのたらしだのといった噂は確定事項になっている事に何度か心を折られながら僕らはランバルに向かった。




