(5)
草原を抜け、王都ランバルの城門に続く、舗装された道に出る。
カダルフィークと違い砂利道ではなく、煉瓦でちゃんと舗装されている。
道には僕達みたいに、歩いて王都に向かう人達がいて、フェンリルをチラッと見てさりげなく離れていく人もいるけど、騒ぐ人はいない。
フェンリルを見て騒ぎになるかもと、ドキドキしていたけど一安心。
「凄いよね~ほら、ちゃんと道が舗装されてるよ」
カダルフィークから出た事のない僕は、それだけでテンションが上がってしまう。
「こんなので驚いてちゃ中に入ったら驚き過ぎて失禁しちまうぜ」
「赤ちゃんじゃないんだからそんなのしないよ」
中に入ったら?
「フェンリルって、もしかしてランバルに来た事あるの?」
「俺様はトカゲと違って、ちょくちょくこちらに遊びに来てるからな」
初めての都会に不安だったけど、経験者がいるなら大丈夫だね。
城門に近付いて来ると、長い行列が目に入って来た。
行列の先頭には机が三つ横に並び、それぞれに重装備の兵士らしき人が、こちらを向いて座っている。
「あれ何?」
フェンリルは尻尾を振りご機嫌な様子で、歩みを止める事無く「危険な物を持ち込まれないようにする荷物チェックだな」
荷物チェックなんてされたら、背負っている袋に入っているナーガが見つかってしまう。
急いで引き返そうとした僕を、フェンリルが止める。
「こんなとこでいきなり引き返したら怪しさ満点だぜ」
「ナーガが見つかっちゃうよ」
フェンリルは大丈夫と僕にウインクして「天下のナーガ様だぜ。何とかするに決まってんだろ」
そうか・・・そうだよね。
ナーガなら何とかしてくれる。
フェンリルの言葉に安心して列の最後尾に並び、徐々に列が短くなり僕の順番になる。
髭面で小太りの見るからに大人という感じの兵士の前の机に、肩下げ鞄とナーガが入った袋を置く。
「ランバルに来た目的は?」
「食料の補給です」
「子供一人で?」
「はい」
机に座った小太りの兵士とやり取りしている間に、脇に控えていた若い兵士二人が、袋の中をチェックしている。
その内の一人が「これは何だ」と袋の中身を僕に突き出し、その手には全身の力を脱力させダラーンとなったナーガ・・・どうにもならなかったらしい。
咄嗟に「ぬ、ぬいぐるみです」と言い訳すると、机の下でブフゥッと吹き出す声がする。
兵士達は周辺を見渡すが、丁度机の死角になって、フェンリルが笑っているのが見えないらしい。
「僕ぬいぐるみを抱いて寝ないと寝れないんです」
机の下ではくっくっくっと笑う狼。
(笑いすぎ)
膝を突き出すと、机の下でぐふっという声。
かなりいい場所に膝がヒットしたらしく、笑い声がぴたりと止まった。
ぬいぐるみね~と兵士が机にナーガを降ろす。
何とか切り抜け・・・
「いった~!」
いきなり大声を上げた僕を、兵士達が驚いて見る。
「すいません。持病の腹痛が・・・」
腹痛と言いながら僕は涙目で、弁慶の泣き所を押さえている。
机の下のフェンリルを睨むけどフンとそっぽを向かれた。
人間じゃないから、後ろ脚回し蹴りとでも言うべきか・・・覚えてろフェンリル。
机に突っ伏した僕には、もう一人の若い兵士が鞄の中を見て、隣の兵士に目配せしているのに気が付かなかった。
「中には病院もあるから見てもらいなさい。次の人」
荷物を受け取って、僕達はランバルの城門をくぐり抜けていった。




