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狼竜物語  作者: レオ
19/255

(3)

 幸い森の中を進んでいるので、弓を作る為の竹はすぐに見付ける事が出来た。


 それを僕の身長よりも、少し低いぐらいに切らなければいけないのだが、それがまた手間だった。


 何しろ刃物なんて、禄に使った事が無いのだから仕方ない。


 一生懸命親の敵とばかりに打ち込むのだが、刃は表面で弾かれて浅い傷を幾つも作るだけで全然切れない。


「ほれ、俺様がやってやるからちょっと貸してみな」


 フェンリルは短剣をくわえると、凄くゆっくりのモーションで、真横に首を振った。


 それなのに刃はまるで熱したナイフで、バターを切るみたいに竹を切断した。


「今のどうやったの?」


「刃に力を集中させんのさ。これぐらいは出来るようにならねーといけねーぜ」


 普通出来ないでしょと思いつつ、唾液でベタベタになった短剣を受け取り、やっぱり出来るようにならなきゃいけないと強く思う。


 竹に弦をつける部分を削り、湾曲させ弦を張る。


 次に矢も竹の先端を削り尖らせていく。


「中々器用じゃないか」


 初めて褒められた気がして胸を張り「ささがきで慣れてるから」


 料理から離れろよという声は無視した。


 あとは真っ直ぐ飛ばす為の矢羽が必要なんだけど・・・


「羽・・・」


 四つの瞳が、ナーガの翼に注がれる。


「断る」


 やっぱり。


「てめぇマスターが成長しようってのに手伝おうって気はないのか」


 おおっ!それがたとえ、美味しいものを食べたい欲求から来るものでも嬉しい。


「ナーガお願い」


 両手を合わせて、精一杯潤んだ目でナーガを見上げる。


「くっ・・・一枚だけだぞ」


 ナーガは翼から一枚羽を引き、抜き渡してくれた。


「エヘヘありがとう」


 その羽はまるで、ガラス細工のように透き通っててとても綺麗だった。


 勿体ないけど、半分に切り矢羽としてつける。


「出来た」


 初めて作ったにしては、かなりいい出来栄え。


「さっそく試し撃ちといこうぜ」


 フェンリルはグルリと周りを見渡し「あれなんかいいんじゃねーか」と指差すのは、10メートル程先にある太さ50センチぐらいの木。


 うん、あれぐらい当てなきゃ、とても獲物なんて狩れないよね。


 呼吸を整える。


「ほらほらさっさとしやがれ」


 弦に矢をかける。


「集中、集中」


 ゆっくり弦を引く。


「しっかり狙えよ」


 狙いをつける。


「脇しめねーか」


「フェンリルうるさい!集中出来ないでしょ!」


 フェンリルはヘイヘイと脇に下がる。


 もう一度最初からやり直し、ギリギリと弦を引き狙いをつける。


 弓を支えている左手が小刻みに揺れ、もっと鍛えておけば良かったと後悔。


 よしっ今だ!と右手を弦から放したと同時に、弓を支えてる左手が何かに叩かれた。


 弦から放たれた矢は勢いよく飛んで、見事に木に刺さりビィィィーンと小気味よい音を立てる。


 真横にいたフェンリルの頭を掠めて、その後ろの木に・・・


「惜しかったな。今度狙う時は眉間を狙うんだぞ」


 いや僕が狙ったんじゃなくて、貴方が尻尾で叩いたからでしょ・・・ナーガ。


「ぶっ殺す」


 フェンリルの身体から、まるで陽炎のような湯気が出ている。


・・・うわっ・・めちゃめちゃ本気で怒ってる。


「不細工な氷の彫刻にしてやろう」


 二頭の睨み合いの中心から外れて、僕は近くの木に腰掛け空を見る。


 今日の雲の数は幾つかな・・・


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