(2)
二人を背に乗せて飛び立ったナーガは、あっという間に森を抜け住み慣れた家に到着する。
さほど差なく到着したフェンリルを見て、こんな奴らと本気で戦おうとしてたなんてと、カイルは苦笑している。
「その大きさじゃ家に入れないね」
ルークの言葉にナーガはみるみる小さくなり、猫と変わらない大きさになった。
それを見てカイルは二頭は、魔獣ですらないのじゃないかと思う。
カイルは召喚術を、ルークに教えてはいない
召喚術は、本を見て復唱する程度で魔獣を呼び出せる程甘いものではないし、魂の契約にしてもそうだ。
契約は一頭のみ。
それは召喚術の理であり、どれ程力があろうとも変える事の出来ないものなのだ。
無邪気に凄いと喜ぶルークは、何も気付いてないようだが・・・
久しぶりの我が家は変わりなくカイルを迎えいれ、しっかりと掃除もされている。
俺の育て方は間違っていなかったと、カイルは頬を緩めドカッと椅子に腰掛けた。
「酒を持って来てくれ」
ルークが入れてくれていた酒は、その日の内に飲みほしてしまった。
秘密にしておかないと怒られてしまうなと一人笑う。
「準備するね」
久しぶりの酒だ。
酒を入れたコップを持ってルークが来るが、コップはテーブルに置かれる事なくカランカランと跳ね床に小さな水溜まりを作った。
「と、父さん」
床に落ちたコップに伸びた、ルークの手が透けていく。
カイルが勢いよく立ち上がった拍子に、椅子が後ろに倒れガタンと音をたてた。
緊張の中透けたルークの手は、徐々に色を取り戻し元に戻っていった。
「だ、大丈夫。元に戻ったから」
震える声で落ちたコップをルークが拾いなおす。
「父上と話したいがいいだろうか?」
重苦しい雰囲気の中、ナーガが口を開く。
倒れた椅子を立て直して座りながらカイルも「俺もそう思っていたところだ」と答えた。
ランプで照らされた室内に、鉛の様な重い空気が流れていた。




