終章 それぞれの選択
空には沈まぬ赤い月。
赤い光が大地を照らし、地上には赤や青の鉱石が照らされ幻想的な光景が広がっている。
ここは魔界。
話しに聞くような不毛の大地ではなく、森もあれば川や山もある。
フェンリルは、嗅覚ではなく耳を澄ます。
ルークの魂がまだ存在してたなら、落ちた場所は間違いなく騒ぎになっているはずだ。
遠くで争う音を聞き付け、フェンリルは走り出す。
「騒ぎにならないわきゃねーんだ」
神の血を引き、神界魔界両方の古き神の加護を受けた経験のある魂など、いまだかつてないのだ。
「昔森に迷いこんだガキの名前思い出したぜ。あいつの名前はバルドルだ」
初めてルークと会ったあの日、すぐに気づいたさ。
‐家族つーのは不思議と匂いも似るんだ‐
ルークの匂いは、バルドルとよく似ていた。
だからこそ興味を持った。
古き神の討伐など断るつもりだった。
だが口から出たのは肯定。
二人をそのまま行かせれば、何も出来ずに死ぬのがわかっていたからだ。
「まったく!おやじといい息子といい手間かけさせやがる」
ラグナロクの時、若い神がフェンリルに挑んで来た。
それもすぐにバルドルの父親だとわかった。
そしてその程度の力では、ラグナロクを生き残れない事も。
だからかみ砕くのではなく飲み込んだ。
ラグナロクから離脱させる為に。
「あんなのでもあいつの親父だからな」
痛む身体を動かし、懸命に騒ぎの中心へと急ぐ。
「こんなとこまで来ちまうなんて、バルドルの奴を見つけたらぶん殴ってやんぜ」




