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75、サフィーナストーリーズ 1

ここから4話ほど、サフィーナサイドのお話となります。

少し時間が遡ります。




 ユウマがいなくなり、そして、クロウもいなくなった。サフィーナはとっても寂しかった。いつも一緒にいてくれた人がいなくなるのはとっても寂しかった。

 アイリはサフィーナに優しくしてくれた。テトやラスタバンも、ユウマたちがいなくなったことで一緒に悲しんでくれた。でも、それだけじゃ、サフィーナの気持ちは収まらなかったのだ。


 そんな時、サフィーナはユウマから言われたあることを思い出していた。


『ライカは何でも知ってるからな。【世界検索】【生き字引】というのはそういうスキルなんだ。』 


 サフィーナはガート村にいるライカにユウマやクロウの行方を聞きに行ったのだ。そう。サフィーナ1人で……。


 1人でガート村へ行くのは初めてだった。サフィーナの故郷。初めて暮らしというものを実感した場所。それがガート村だった。ガート村にはガンファがいて、バラガがいて、他にも知り合いがいっぱいがいた。そんな場所はこの世界でどこにもない。唯一の場所。


 サフィーナは風魔法でこっそりとエルドランを抜け出し、このガート村まで飛んできていた。懐かしい村の家々がサフィーナの気持ちをホッコリさせた。それと同時にユウマやクロウを嫌でも思い出させた。


「えーっと、ライカの家はーっと、あ、あった。確かあそこに住んでるっていってたな。」

 サフィーナはバラガの家の向かいにある小さな家の前に降り立った。そして、遠慮なくドアを開けて中に入っていった。そこにはこじんまりとしているが、きれいに整えられた家具や雑貨、そして魔道具が並べられている。エイラムでも魔道具の店をしていたライカはガート村でも店をしているのか。試しに近くにあった人形のような魔道具を手に取ってみる。少女を模した人形、でも胴の部分が呪符のようなものが巻き付けられている。


「ふーん……変なの。」

 サフィーナは人形を元に戻し、家の奥の部屋をのぞき込む。そこには窓際のロッキングチェアに座りうたた寝をするライカの姿があった。


 これは困ったな。起こすのも悪いし……、うん、じゃあサフィーナも寝て待てばいいっか。ライカの膝の上に頭を乗せ、床に座り込むように寝る体勢を整える。うん、なんかこれ、悪くないな。


 サフィーナの体は、ユウマがいなくなってから、なぜか全く成長していなかった。本当ならもっと胸だって身長だって大きくなってるはずなのに……。ずっと子どものまま。でも、いいんだ。ユウマが帰ってきたらきっと大きくなるんだ。バインバインだ。それで、アイリからの略奪愛……ふふふっ、サフィーナの計画は完璧。



 んあ?サフィーナ、寝ちゃったのか……。あれ?サフィーナ、今、ロッキングチェアに座ってる……。ライカは?

 サフィーナは立ち上がり、部屋の周囲を見回した。すると、机で何か書き物をしているライカの後ろ姿が見えた。


「ライカ。サフィーナ来た。こんにちは。いや、こんばんは?」

 外は薄っすら暗くなっている。結構眠り込んじゃったみたいだ。声をかけるとライカは優し気な笑みを浮かべる。

「サフィーナちゃん。いらっしゃい。ちょっと待ってね、もうすぐ書き終わるから。」

 ライカはノートに何やらを書き込んでるようだ。でも、サフィーナは言う通り、ロッキングチェアに座って、ライカのお仕事?が終わるのを待っていた。

 しばらくすると、ライカはノートを閉じ、引き出しに入れると、立ち上がり台所のほうへ向かった。紅茶のいい匂いが家の中に漂ってきた。サフィーナはロッキングチェアをゆさゆさと揺らしながら待つことにした。


「サフィーナちゃん。紅茶が入ったわ。クッキーもあるわ。良かったらどう?」

 台所から声が聞こえる。サフィーナはロッキングチェアから飛び降り、台所のほうへと向かった。そこには、美味しそうなクッキーと紅茶がテーブルに置いてあった。


「食べる。クッキーは好き。いただきます。」

 サフィーナは早速クッキーを攻略していく。パク  サクッ  うん、んまい。パクパク  うん。おいひ。次は、紅茶を蹂躙する。サラサラサラ~ 砂糖はいっぱい!これ正義 グルグルっとスプーンでかき混ぜて ズズ ズズズ  ゴクリ ほぅ パク ポリ ズズズ パク ズズズ。


「あらあら、サフィーナちゃん、お腹空いてたのかしら。で、今日はどうしたの?1人でここに来るなんて珍しいわね。」

 おっと、そうだった。ライカには色々と聞きたいことがあるんだった。

「ライカ、サフィーナはユウマの事を聞きに来た。ユウマに会いたい。どうすればいい?クロウも心配、知ってたら教えて?」

 最後のクッキーを攻略し終えた。サフィーナの完全勝利だ。ふふん。

「ああ、そうね。ユウマさんとクロウの居場所ね。知ってるわよ。……いいわ。教えてあげる。」

「本当!?なら、どこにいるの?ユウマは?クロウは?」

 サフィーナはテーブルに両手をついて体を乗り出した。

「ユウマさんは今、この世界にいません。10年ほど放っておいたらどこからかポンと出てきますよ。それから、クロウですが、あの子はベルガ島に向かっているみたいですね。今、シャール王国のローリアという港町にいるようです。」

 本当にライカは何でも知っている。ここに来てよかった。聞いてみて良かったよ。

「そう……なんだ。クロウはシャール王国か……。でも、なんでユウマはこの世界にいないの?今すぐ会いたい。ユウマに会いたい!!」

 うん、無茶を言ってるのは解ってる。でも、ライカだ。ライカなら知っている。

「その方法も知っているわ。そうね……ちょっと大変だけど、サフィーナちゃんならやるんでしょうね。うん。そうね。サフィーナちゃんだものね。ちょっと待ってね。」

 ライカはそう言ってテーブルを離れ、机の引き出しからあるものを持ってきた。それは1枚の地図だった。


「ほら。これはラクリアの地図。結構珍しいものなの。どれがエンヴィー大陸かは知ってるかしら?」

 ライカは微笑みながら地図を広げる。古びた羊皮紙の世界地図だった。サフィーナは見たことがなかった。でも、なぜかこの世界を知っていた。サフィーナは1つの大陸を指さした。

「ここがエンヴィー大陸、で、ここのあたりがガート村で、ここがエルドラン、で、これがラース大陸……であってる?」

 ライカは少し驚いたように目を見開いたが、再び微笑みを浮かべサフィーナを褒めてくれた。

「その通り。サフィーナちゃん。良く知ってたわね。そう。それで、ユウマさんに会うためには、サフィーナちゃんはここに行く必要があるの。」

 ライカが指さしたのはエンヴィー大陸の北に位置する国だった。

「ハクト皇国……。」

「そう。ハクト皇国。神の子孫が代々(みかど)として治めている国よ。ここにいるアキラという人を探しなさい。異世界人よ。その人がユウマさんに会う手伝いをしてくれるはずよ。」

「解った。ハクト皇国に行ってみる。で、ユウマを皆の所に引っ張ってくの。それで、いなくなった事、反省してもらうの。ふふふ……どんな罰を与えてやろうか……今から楽しみ。」

 裸でエルドラン一周……ぬるい。エンヴィー大陸美味しいもの巡り……お、いいかも。ユウマと結婚……ぶふっ……こ、これはいい案。思わず鼻血が吹き出そうになったけど……。


「もし、ユウマさんと出会えることが出来たら、クロウも、あの子も皆の所に帰って来れるようにしてあげてください。今、あの子も一人ぼっちで寂しい思いをしているだろうから……。」

 ライカは悲しい微笑みを浮かべながら、紅茶をカップに注いでくれる。お砂糖も入れてくれるので両手を広げてライカに見せる。もちろん『砂糖10杯入れて』のサインだ。ライカはスプーン山盛りの砂糖で入れてくれる。うん、ライカわかってるね。

「もちろんだよ。クロウはユウマの眷属だよ。それに友達だからね。そっか……クロウも寂しいんだね。じゃあ、早く連れて帰ってあげないとね。早速行ってみるよ。ハクト皇国。」

 サフィーナは紅茶をズズズーっと飲み乾して、だんっと立ち上がる。


「今日はマールさんに会って行かないの?この頃、うわ言のようにサフィーナちゃんの事言ってたわよ?えーと、なんだったかしら、抱きしめたい?頬ずりしたい?パンツ被りたいだったかしら……。」

 ライカ、それダメだから。犯罪行為入ってるから……。アイリに色々と言われたからサフィーナ知ってるんだ。『知らないマールにお菓子を貰ってもついてっちゃダメ』……だっけ?あれ?何か違う……でも、マールには気を付けないとね。気付いたら抱っこされてたことがこれまで何度もあったからな。


「ふふふ……ライカ、サフィーナは大人の女になったの。だから、マールとは遊びの関係。サフィーナに近づくと火傷するゼ。」

 決まった。これはテトがよく読んでる本に書いてあったセリフだ。なんかダメな女の子がカッコイイ男たちのハーレムを作って堕落するストーリーだったような……よく覚えてないけど、そんな感じ。


「あらあら、サフィーナちゃんも罪作りな女なのね。マールさんに伝えておくわ。気を付けて行って来て下さい。」

「あ、ライカ。この事は皆に秘密でお願い。アイリたちにはびっくりさせたいから。約束ね。」

「解りました。約束です。誰にも言いませんよ。その方が、上手く行くはずですからね。」

「ん?上手く行く?そう。上手くやるね。じゃ、行ってきます。」

 これで、サフィーナはユウマに近づける。そう思って、ワクワクしていた。そう……この頃は。



 サフィーナは風魔法を使って、北を目指した。先ほど見せてもらった地図を思い出して、ガラハド大森林帯の外輪部の上空を飛行していた。空には邪魔するものはなにもない。快晴の空を飛ぶのは気持ちが良かった。


 しばらく飛んでいると、黒い煙が立ち上っているのに気づいた。火事?でも、微かに剣戟の音も聞こえてくる。近づいていくと、村が盗賊に襲われているようだった。馬に乗った十数人の盗賊が村の家々に火を放っていた。えと、ここはまだガラハド連合国だったはず……


「もう。せっかく急いでハクト皇国に行こうと思ってたのに……」



 †



 ふん……何もない村だ。村人も50人に満たない辺境の村だ。たしか、ガラハド連合国……ここ数年で名前が出るようになってきた国……だったか。

 村長以外を殺して、この村を偽装して拠点とする……なかなかエグいことを考えるな。パッと見ただけでも女子供が多数いたようだが……。ま、俺たち下っ端は上のいう事をやるだけなんだけどな。


 はぁ……こんなチンケな木の柵じゃ、魔物だって防げないだろうに。ましてや人間が本気で襲えば、こんな柵無いも同然だ。ほれ、もう仲間4人が柵を壊して侵入完了。後は、火をつけて混乱したところを一気に襲えば終わり……なんとも楽な仕事だ。


「オラオラっ!!命が惜しけりゃ金目の物を出すんだっ!!早くしないとこの村全部燃やし尽くすぞっ!!」

 目の前にあった手ごろな小屋に火をつける。金目の物を出したところで殺すんだけどな。とりあえず、反応を見るか。


「と、盗賊だーっ!!男衆は武器を持って出てきてくれっ!!」


 ふーん。抵抗するんだな。でも、武器っていってもなんだありゃ。鍬に鋤、鎌って、おいおい、農具じゃねぇかよ。そんなもん、俺に向けるんじゃねぇよ。ほら、斬られた。腕を切り落としてやった。ずいぶん太い腕だ。村一番の力自慢ってところか。他にもデカイ身体の村人が俺たちに農具で殴り掛かって来る。嫌だ嫌だ。俺が小さいから何とかなるとでも思ってんのかね。


「舐めてんじゃねぇぞっ!コラっ!!」

 俺は恫喝の声と共に、腕を落とした村人の首をはねた。頭を失った身体からは血の噴水があがる。こういう光景を見せると大抵のヤツは2種類に分けられる。1つ目は、血にビビって戦意喪失しちまう奴。そう、俺の前で呆然としている男のようにな。はい、2つ目、首いただきました。


「こ、殺してやるっ!!死ねぇーっ!!」

 

 それに2つ目は、今、斬りかかってきたコイツのように、血に酔って凶暴性をさらけ出す奴。でも、素人の太刀筋なんてのは少し軌道を変えてやるだけで、身体が泳ぐ。所謂、死に体って奴だ。後は、体勢が崩れているコイツに剣をぶっ刺すだけ、簡単な作業だ。


 ん?今度は女が出てきやがった。何かもってやがる。あれは、金が入った袋か?おーおー、従順な事だ。他の村人の死体を見て震えてやがる。


「あ、あの……お金……差し上げますから、どうか……どうか……」

 青い顔でそれだけを言ってくる。どうか……楽にしてくださいってか?いいぜ、殺してやるよ。

 

 俺が近づいていくと、その女の後ろに1人の少女が立っていた。ん?子どもか?にしても、気持ち悪い奴だ。白い髪なんかしやがって……、ま、親子ともども殺してやるから安心しなよ。


 消えた!?さっきまでいた白い髪のガキがいない……


 いや、それだけじゃない。金の袋を持っていた女も、俺の仲間もいない……どうなってやがるんだ。誰もいない村……俺だけが、ぽつんと立っていた。いつの間にか手に持っていた剣もなくなっている。何があった……俺は、何をしてたんだ……


 そ、そうだ。俺はビザンツ帝国の兵士だ。そう。秘密裡にこの村を占拠し、偽装して諜報の拠点にする作戦だったはず……。俺たちは一流の諜報員として選ばれた存在なんだからな。そうだ。作戦は順調だったはずだ……村人も始末して……うん、作戦は成功だ。これを報告すれば、俺はさらに上の地位を得ることが出来るぞ……ふははは……気分がいい。俺は何でもできるんだ……。俺は無敵だ……。



 †



「なるほど……ビザンツ帝国の奴がこんな内部まで入り込んでるのか。森林警備隊に言っとかなきゃ。」

 サフィーナは剣を持った男の頭から手を離して、助けた村の女の人を向き直る。


「安心して、この盗賊モドキはサフィー……あ、いや、あ、そうそう。アサヒが出てから近くの森林警備隊に報告しといてね。コイツらビザンツ帝国のスパイらしいから。一応、逃げられないように全員縛っておいたから。」

 危ない危ない。名乗ったらマズいよね。黙って来ちゃったし。


「あ、あの……ありがとうございました。そ、その……お名前をお聞かせいただいても宜しいでしょうか。」

 村の女の人が肩を震わせながら深々と頭を下げてくる。うっ……名前か……あ、ヤバい。この白い髪も目立つよね……。じゃあ、この人にも樹木魔法を使っちゃおう。


「えーっと……私の髪は真っ黒で、黒い瞳をした屈強な男。名前は……ユウマ。旅を急ぐんで、この辺で失礼するよ?」

 あぁ、ユウマの名前使っちゃった……ま、いいか……ガラハド連合国の危機を救ったんだからね。


「あ、ありがとうございました。ユウマ様。黒髪と屈強なお体、なんと素晴らしい……感謝の言葉もございません。」

 うん、ちゃんとこの女の人にも樹木魔法が効いてるみたい。これでサフィーナの痕跡は上手く誤魔化せたかな。あ、食べ物ちょっと分けてもらえば良かったかな。ちょっとお腹空いた……、次の街で屋台巡りでもするかな。



 ◇◆◇◆



 この事件は、すぐさまエルドランの森林警備隊の耳に入り、ガラハド連合国はビザンツ帝国にその責任を追及することになる。そして、ガラハド側は国内の森林警備隊の警備を強化し、さらに何人かの諜報員を捕まえることができたのだった。最初は知らぬ存ぜぬを通していたビザンツ側だったが、決定的な証拠が提示されたことにより、多額の賠償金と外交的に不利な立場に追いやられたのであった。

 これがきっかけとなり、他国の諜報員の活動も縮小を余儀なくされ、ガラハド連合国は神秘のベールに包まれるミステリアスな国としての地位を確立することになるのだった。


 ちなみに、サフィーナがユウマと名乗ったことで、その後、ユウマ捜索隊が混乱したのは言うまでもない。



 ◇◆◇◆


 

 むぅ……街がない……森ばっかりだ。お腹空いたな……。最初はテンション上がってた空の旅も退屈だし……。日も傾いてきたし……、なんだか心細くなってきた……。


 ハクト皇国を目指して、真っ直ぐ飛んだのは間違いだったな。1日で到着できるわけじゃないのに……次からは、ちゃんと計画立ててから出発しないとね。はぁ、ユウマ……ユウマがいてくれないと、やっぱりサフィーナ、ダメだよ……寂しいよ……ユウマ……。


 ~♪~♪~♪


 微かに歌が聞こえてきた。綺麗な声だった。


 サフィーナはフラフラと惹きつけられるように歌声の方へと向かうことにした。眼下には夕暮れの森が広がっている。どこにも村らしきものは見当たらない。どこだろ……。


 気配感知を行なうと、微かに反応があった。大きな木の下に1つ。歌声の方角だった。サフィーナは近くに降りると、しばらく様子を窺うことにした。


 ~♪~♪~♪


 木の洞にちょこんと座っていたのは人間の女の人だった。16歳くらいかな。短い赤髪でボーイッシュっていうのかな、冒険者のような格好をしている。右の足から血が流れていた。怪我をして動けなくなったってこと?

 それでもその女の人は、空に向かって歌を歌い続けていた。古い曲、ガート村のお祭りで聞いた事がある歌だった。この人、困ってるのかな……。


「歌上手だね。こんな所で、何してるの?」

 サフィーナは声をかけることにした。すると、当然ながら歌が止んだ。もうちょっと聞いていたかったんだけどな。女の人はビクっと体を震わせて、警戒しながらサフィーナの方を見ている。


「ああ、そっか。いきなり声をかけてごめんね。歌が聞こえたから、どうしたのかなって思って……。サフィーナ。よろしくね?」

 この人もきっと心細かったんだよね。だから、歌を歌ってどうにかしようって思ったんだよね。


「あ、あの……怪我しちゃったの。この辺の子?人間よね?村の人呼んできてくれる?あ、えーと、私はレイラ。Dランクの冒険者よ。ソロでこの森に入ったんだけど、魔物にやられちゃってね……ここに緊急避難してたとこなの。」

 うわっ、一杯質問して来た。でも、悪い人じゃなさそう。

「この辺に村はないよ。上から見ても森ばっかりだったし……。サフィーナは魔法で空飛んでたの。そしたら、歌が聞こえたから。ま、それより怪我ならこれ使って。ポーション。」

 サフィーナは腰のポーチから1本のハイポーションを取り出した。アイリが作ってくれた物だ。アイリのポーションはエルドランでも逸品として他国と取引されている。だから、仕事の合間に、薬草取りの手伝いをサフィーナもよくやっていた。


「へっ?ポーション!?ありがと。……ってうぇっ!?空、飛んできたって言ったの!?魔法で!?えと……それって冗談とかじゃなく、本当にぃ?」

 レイラはポーションを受け取ると胡散臭げにサフィーナを見つめる。うん、ちょっとこの視線はイラっとくるな。もう行っちゃおう。

「じゃ、そういうことで、ばいばい。」

 サフィーナは再び風魔法をわざと唱詠し、宙に浮きあがる。そして、ゆっくりと上昇していく。


「うわっ!!ちょ、ちょっと待って!!えーと、サフィーナちゃん!!えと……そ、そう!お礼をさせてっ!!お願いっ!!ちょっとなら食べ物もあるし……」


 ピクリ……た、食べ物……じゅるり……

 そのまま、サフィーナはすーっとレイラの前に降りていく。

「サフィーナ、お腹空いてるの。早くそのポーション使って怪我治すといいよ。それで、サフィーナにご馳走するといいよ。」

「えーっと、私、ポーションなんて高級なもの使ったことないんだけど……。これどうするの?」

「患部に直接振りかける。飲んでも大丈夫。味は保障するよ。アイリの特製ポーションだし。」

 サフィーナが説明するも、まだ疑いの眼差しをポーションに向けるレイラ。

「えー……でも、これ緑色だし……なんか苦そう……「なら返してね。」いえ、飲ませていただきます!!」

 グビリとレイラはポーションを呷る。


「うわっ♪美味しい!!それに……痛みが引いたよ。傷が無くなってる。すごいっ!すごいよっ!サフィーナちゃん!!ありがとう!本当はすっごく心細かったの……また、魔物に襲われるんじゃないかとか、今度こそ死んじゃうんだ とか、悪い事ばっかり考えちゃって、気持ちを紛らわせるために歌なんか歌っちゃって……それで、見つけてくれたサフィーナちゃんも、最初は怖くって……だって、こんな森の中に、こんな小さい女の子がいるなんて普通思わないじゃない?だから、何か良くないものが化けてるんじゃないかって……ごめんね?なんか色々と変なこと言っちゃって……でも……ぐずっ……ひっく……サフィーナちゃんが見つけてくれて……本当に良かったよ……うぇ……ありがとう!ありがとう!!サフィーナちゃん……。」

 泣きながら一杯喋って来た……。でも、そっか、心細かったんだ。サフィーナと一緒だね。でも、ここでサフィーナはきちんと言わないといけないことがある。


「レイラ。お腹空いた。食べ物はよ。」


「さっきの私の感動の言葉を返せーーーっ!!!」


 これがサフィーナとレイラとの出会いだった。


 

最後まで読んでくださってありがとうございます。


※次回の更新は10/22を予定しております。

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