70、特訓再会
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あの声は確かに、クロ子のものだった。それが魔王だと!?それにあの禍々しい魔力、俺の亜空間に声だけとはいえ割り込めたこと、すべてが俺を混乱させた。
どうなっている!?なぜ、クロ子が魔王だなんて……
「ユウマさん。しっかりして。クロウくんが生きてたんだよ。どんな形であれ、まずは喜んであげようよ。」
アイリが俺の手を取り、両手で包み込むようにしっかりと握る。アイリの優しい体温が少しずつ、俺の硬直した心を解していってくれる。
「ああ……、そうだな。クロ子が生きてたんだもんな。」
俺は無理やり笑顔をつくり、アイリに答える。
「あの……アリムラさん。さっきの魔王って名乗った声に、心当たりがあるんですか?」
タカハシが申し訳なさそうな顔をしながら聞いてきた。『英特部隊』の面々も同じく不安げに俺を見ている。
「ああ、クロウは異世界人で、俺たちの仲間だった奴だ。俺と眷属契約をしていた。俺が10年前、姿を消したことで、俺の行方を捜しにラース大陸へ向かったらしい。それで、消息を絶ったんだ。それが……」
「それが、今から2年前のことなの。それに、もう一人、サフィーナという女の子もクロウくんを探すといって消息を絶ったの。ガラハド連合国としては、国を挙げてラース大陸へ捜索隊を出す予定だったの。今、ここにいる5人と私たちが乗って来たドラゴン、竜人のガーネットたち4人の計9人がその第一捜索隊になるはずだったの。」
俺の言葉を引き継いで、アイリが皆に説明してくれる。捜索隊を出すつもりだったんだな。
「今回、俺が魔王討伐を承諾したのは、ベルガ島がラース大陸へ行く途中にある島だったからだ。でも、その魔王ってのが、よりにもよってクロ子だなんて……」
俺が固く握った拳からは血が流れ落ちている。
「ゆ、ユウマ様、きっとクロウ殿も何か理由があるはずだ。それに、あの声の主、私が知っているクロウ殿と若干違うような気がしたんだ。」
テトが俺の事を心配するかのように肩に手を置いてくれる。
「そうじゃ。今はベルガ島の魔王じゃ。実際会って、問いただせばよい。クロウ殿が魔王ならユウマ様直々に文句を言うてやればよいのじゃ。ささっ!特訓とやらをするのじゃろ?魔王はベルガ島からラース大陸へと引っ越すと言うておったから、早くせんとな。」
ラスタバンも俺を元気づけるように声をかけてくれる。
「理由は解らないけど、魔王を倒すために集められたんだから、私たちは魔王を倒す気でいるわよ。ま、でも、今は勇者様の従者って事になってるから貴方のいう事には従うわ。」
ダイヤも一応は、俺の事を気遣ってくれているのか。はぁ……そうだな。ここでクヨクヨしていても仕方がない。ならやれることをやるだけだな。
「ありがとう。皆。解った。特訓を始めよう。」
俺は顔を上げ、改めてここに集まった面々を見回した。少し不安げな顔の者もいるが、それでも俺に対して、一定の信頼を向けてくれている。
「よし。じゃあ、自己紹介の続きを頼む。」
†
あれからどれくらいの時間が経ったのか……よく解らねぇ……3日は経ったはずだ。でも、この明るい空間だ。朝もなければ夜もない。ただただ、ギリギリの攻撃を避け、最速の速さで腕と足を動かし、タイミングを見て攻撃を仕掛ける。それだけだった。
『この亜空間は外の世界と違って時間の経過がない。それから腹も空かなければ、眠る必要もない。まぁ、怪我することも下手すると死ぬこともあるが、それは俺の魔法や薬でなんとかしてやる。だから、ぶっ続けで戦闘訓練をしてもらう。』
ユウマとかいう勇者に、そう言われて、俺はてっきりユウマが相手だと思っていた。それが目の前にいるのは巨大な虎。体長5mを超えるであろうその巨体にも拘らず、俊敏な動きとフェイントなど小技を駆使して俺を追いつめてくる。その凶悪な爪はナイフのように鋭利で、毛皮は俺の短剣を易々と弾いてしまう。
すでに俺の黒装束は爪に引き裂かれ、至る所がボロボロになっている。しかし、いつの間にか傷は癒され、血が一滴も出ていない。どうやら、魔法でユウマがすぐさま治療しているらしい。どうなってんだよ。この空間は。
<おい!ギルとかいったな。訓練中に余計なことを考えていると死ぬぞ!!まぁ、死んでも蘇らせてもらえるがなっ!!>
俺が先ほどまでいた空間に鋭い牙が通り過ぎる。巨大な虎が俺を挑発するように唸る。テトとか言ったか。この巨大虎め!最初はきれいな獣人の女性だと思っていたが、訓練となると巨獣化しやがった。獣人の族長クラスでしか使えないとされる【巨獣化】を使えるってことはただものではないってのはわかる。しかも、周りを白く輝くオーラみたいなもので包まれて、攻撃力、防御力ともに凄まじい物になっている。恐らく、この空間でなければ、地面は抉れて地形が変わっていたことだろうな。
「虎野郎がっ!!敷物にしてやるぜっ!!」
俺は自らの分身を4つ作り出し、5方向からナイフを投擲する。しかし、それらは悉く避けられ、弾かれてしまう。クソっ!攻撃が通らねぇ……なら、あそこしかねぇか……
<し、失礼なっ!!私は女だっ!お仕置きが必要のようだなっ!!>
巨大虎の攻撃が熾烈さを増す。前足だけでなく、後足や頭突き、尻尾まで使って俺を攻めたてる。すでに、俺の分身もあと2体までに減っている。だが、計算通りだ。残りの2体が上手くあの場所まで誘導してくれている。
そして、巨大虎が1体の分身に牙を突き立てた、その時!
「今だっ!!」
口に咥えられた分身がボフッっと煙を上げたと同時に、地面から無数の鎖が巨大虎の身体に絡みついた。俺が攻撃を捌きながら、仕掛けておいた罠が発動したのだ。そして、その鎖には起爆魔法を込めた魔道具を仕掛けている。
<くっ!!なんだこれはっ!!>
「ははっ!!死んでも大丈夫だって話だったな!なら、一回死んでおけっ!!デカネコがっ!!」
俺が魔力を込めると、鎖に仕掛けた起爆魔法が連鎖的に爆発していく。
Boooom!! Bom!Bom!Bbbbbom!!
爆炎と共に巨大虎が崩れ落ちるのが見て取れる。クソっ……あの魔道具高かったのによ……何にしても、あんなバケモノの相手でも俺はやれるってことだっ!!
「おーい!ギル。お前、戦いの最中に気ぃ抜くなよー!」
「あぁん!?」
見上げると空中にユウマが浮かび、俺を見下ろしている。ふん!何言ってやがる。戦いは今、終わったところ……な……はず……だ……なにぃ!?
爆炎の中からゆらりと影が立ち上がる。そこには、傷一つない巨大虎が体毛を輝かせながらこちらを悠然と見つめている。
<なかなか面白い事をするのだな。ギル。なら、お前が一度死んでおけ。>
巨大虎の体毛がさらに輝きを増し、こちらに突進してくる。それは見とれてしまうほど優雅で神々しいものが舞い降りたかのようだった。まるで体が動かない。巨大虎が右前足の爪を振るう。虎のヒゲ一本一本まで鮮明に見えている。見えているが、全く身体が反応しないのだ。
爪が俺の首を薙ぐその瞬間、ガキンという音と風圧が俺の身体を襲った。
「おいおい。テト。死んでも大丈夫だが、回復までに時間がかかりすぎるだろ。効率を考えるなら殺すな。」
気付くと、俺の前にユウマが立ちはだかり、巨大虎の鋭い爪を魔法の障壁の様なもので完全に止めていた。それも、涼しい顔で……。クソがっ!!これがステータスの差って奴かっ!!
<す、済まない。ユウマ様。これは少し熱くなっただけで……寸止めするつもりだったのだ。>
「うーん……その割には、かなりの衝撃があったんだが……ま、そういう事にしておくか。」
何がかなりの衝撃だ!魔法で簡単に防いだんだろうが!!
「あ、それから、ギル。お前はステータス差で勝てないと思っているかもしれないが、今のテトとお前では、そこまで圧倒的な差はないぞ。まぁ、お前の5倍ってところか。力の使い方次第だ。あと、ステータス差があったとしてもやり方次第では、お前は俺にだって勝てるんだぞ?」
はぁ!?あの巨大虎が俺のステータスの5倍って、そりゃ圧倒的な差じゃねぇのかよ!……ま、まぁ、ユウマから見ると誤差なのか……ちくちょう。
「俺が、あんたに勝てるってのか?魔力6万のあんたに……」
「ああ。お前のスキルはこのメンバーの中で一番トリッキーなんだよ。ハマれば、相手に何もさせずに勝つことだって可能だ。」
俺の能力……ステータス!
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■ステータス
名前/ギル・ヤサカ
Lv.15
種族/人間 年齢/18歳 職業/英特部隊員
HP 760/760
MP 165/465
腕力 600
体力 570
敏捷度 1050
器用度 1200
知力 580
精神力 650
加護:神祖の加護
称号:勇者の子孫 ヤサカ家の暴れん坊
装備:漆黒装束 小太刀・橘
スキル
-Exスキル【八坂流忍法】【変幻自在】
-ユニークスキル【隠形】【影使い】
-スキル【剣術/Bランク】【投擲術/Aランク】【体術/Bランク】【罠術/Aランク】
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このステータスのどこにあいつを倒すヒントがあるってんだよ。忍法ってのはよく解らない。ヤサカ家だけが使うことができる秘術だって事だが、カトン?とかスイトン?だとか魔術みたいなことが出来るが目くらまし程度の威力しかない。分身は初見の奴には有利になるが、圧倒的な力の前では無力に近い。じゃあ、【変幻自在】……これか。
「そうだ。お前は【変幻自在】の力を使いこなしていない。どういうスキルか解っているか?」
ユウマが俺の心を見透かすように言う。
「自分のスキルだ。知らない訳ないだろ!【変幻自在】ってのは、『領域』内で、自由に出入りができる。でも、俺の『領域』外から一撃離脱されたんじゃ、このスキルを発動させることはできねぇんだよ!」
そうだ。俺の『領域』は半径4mってところだ。対人戦ならともかく、こんな広い場所で、あんなデカくて速い相手だと十全にこのスキルは行かせることはできない。
「お前、頭が固いんだよ。【影使い】なんだろ?それなら相手の影に『領域』を作れば、お前は一方的に攻撃できるんじゃねぇの?それに、ちょっとした影でも『領域』にできるお前なら、口の中なり、目なり、耳の穴、鼻の穴、相手の弱点を突き放題だ。と、ここまでは、お前が今使ってる力を使ってテト攻略する場合だ。」
【影使い】と『領域』を同時に使うだと!?……そんな事、今まで考えてもなかった。でも、できるのか?い、いや……やらないとダメってことか……それに、なんだ?俺が使ってない力があるってのか?
「あー、やっぱり【変幻自在】のスキルの能力の本当の所に気付いてなかったみたいだな。いいか、よく聞けよ。お前は『領域』の中では、ある意味無敵なんだよ。力の強さ、素早さ、重力までもお前が支配できる。ま、『領域』の間合いがちょっと短いからそれを伸ばすのが今後の課題だな。試しに、俺がお前の『領域』内に入ってやる。ただ小太刀で突くんじゃなく、イメージしろ。素早く、力強く、俺を無効化する事を……」
そういうと、ユウマは俺の前にすとんと降りてきた。そして、何食わぬ顔でさらに近づいてくる。何なんだよ。チクショウ……俺は『領域』を展開する。すでに、ユウマは俺の範囲内に入っている。
素早く……力強く……奴を切り裂く一撃を……。
<ゆ、ユウマ様!!ユウマ様といえど、それは無茶というものだ!>
デカネコが何か言ってやがる……だが、俺はもう止まらねぇ……いつも以上に頭ん中がクリアになり、周囲の事が手に取るようにわかる。どの方向からどの角度で、どれほどの強さを込めれば奴の首が落ちるのかを……いや、まだだ。もっと力を、もっと速さを!!
「うん。悪くない力の収束だな。ただ、時間がかかり過ぎだ。」
ユウマが何かを言っている。しかし、俺は今、自分の力と向き合っている。それどころじゃねぇ。
全てが俺の中で満ちた。
その瞬間がとうとうやって来たんだ。俺は呼吸でもするくらい自然に、ユウマに斬りかかっていた。
ガギギギギギギギィィィ……
俺の小太刀・橘がユウマの首を滑っていく。あっさりとその首に入っていくはずの刃は火花を上げながら弾かれていく。よく見ると首と刃の接地面に魔力の障壁が展開している。
俺が小太刀・橘を振り切ると、さすがにユウマは数m吹き飛ばされたようだが、難なく着地している。クソが……まだまだじゃねぇかよ。俺は……
「初めてにしては、いい感じだな。ほれ。俺の首筋に刃が立ったぞ。」
ユウマが顎を上げると首の右前方に横一文字の赤いラインが走っている。どうやら、首の薄皮一枚には俺の刃は届いていたようだ。何の嬉しさもねぇけどな……
「うるせぇ!バケモンがっ!今度は絶対首を落としてやるからなっ!!」
<なっ!?ユウマ様に何てことを!!このガキがっ!!八つ裂きにしてやるぞ!>
巨大虎が威嚇の咆哮を上げる。もっとだ!もっと速く、もっと強くなってやる。
ふと、遠くを見るとダイヤが巨大なドラゴンとやり合っている。また別の方向では、ミソノが巨大な木みたいな女と魔法勝負をしている。無茶苦茶な光景だが、俺は今までにないほどの充実感を味わっていた。
†
少し時間をさかのぼって――――
特訓が始まって、それぞれが戦闘訓練を始めると、私と勇者タカハシは手持無沙汰になっていた。
「で、なんか周りはすごいことになってますが、私は何をすればいいんでしょうか。あはは……。」
私の前で、勇者タカハシが笑いながら困っている。普通、あんな状況を見たら戦意喪失してもおかしくないのに、この男は笑っている。すごい……。やっぱり勇者だけある。
「まず、ユウマから言われたことを実践する。だから、さっきのババババーって奴を見せて。あ、撃たなくてもいいから。」
この中のメンバーで私だけが戦う力がない。あるのは一族から伝わった『絡繰り術』のみ。だけど、この10年、集落の防壁のみでなく、様々な仕組みが分かってきた。まずは、バリスタやカタパルトといった攻城兵器の作成だ。これまでは、ボウガンなどの機構だけに留まっていたが、大掛かりな機構も作成可能となった。それだけでない。石や鉄を大まかな形で形成することも可能となった。これにより、簡易の建物なども作り上げることが可能となったのだ。凶悪な魔物が多いガラハド大森林帯を新たに開拓するにあたって、短期間に建物を作り上げる力は、現在のガラハド連合国に大いなる貢献を果たしている……らしい。
「え?えーと、ウェルさんだっけ?うん、別に構わないけど……。はい。これ……。アサルトライフルって種類の銃だよ。」
勇者タカハシから弓の部分がないボウガンのような物が渡される。思った以上にずっしりとした重量がある。
「す、すごい……『あさるとらいふる?』銃とは、この先の穴から弾を飛ばす武器の総称ということ?」
「そうそう!で、この銃はハンドガン。連射は出来ないけど、こっちは片手でも取り回しが聞くから扱いやすいかな。アサルトライフルはどうしても反動がきつくて、力で抑え込まないと照準が跳ね上がっちゃうんだよ。」
「『はんどがん』……『あさるとらいふる』……どれもすごい武器。どれも50m以上先の敵を殺傷できそう。なるほど、弾丸の形が違う……あさるとらいふるの方が弾丸が長いのね。射程は200mくらいありそう。」
私は『絡繰り術』で『あさるとらいふる』を視ていく。様々な情報がそれだけで頭の中に流れ込んでいく。想像していた以上の破壊力がこの黒いボウガンもどきの中に詰まっている。
「へぇー。見ただけで解っちゃう?この凄さ。そもそもこのM5カービンは陸自でも採用が決定している次世代のアサルトライフルで――ま、正式にはアサルトカービンって種類なんだけどね。銃身が短いから取り回しも利くし、グレネードランチャーやショットガンの装着も可能。しかも、銃身を素早く冷却させる特殊合金を使用することで連射での過熱を極限まで抑える事に成功してるんだ。それだけじゃなくって、レーザーサイトやサプレッサー、ナイトビジョン付きのリフレックススコープなんかも装着可能で、どんな作戦状況にも対応できる汎用性がある素晴らしい銃器なんだよっ!!」
突然、勇者タカハシの顔がユルユルになって一気にしゃべり始めた。まだ、色々と喋っているが、正直、何を言っているか解らないけど、なんかすごい事なのはよく解る。これは、私に『絡繰り術』を教えてくれた師匠であり、祖父であるカラヌイが自分の自信作を見せる時に似ていた。
「勇者タカハシ?言葉の意味が解らないのがいくつかある。けど、すごいってことは解った。」
「あ……あははは……。ごめんね?こういう話になると止まんなくてね。つまらないよね……。こんな話……前の世界でも、これで何回か失敗しちゃったからね……」
勇者タカハシはどこか寂しそうに手に持った『はんどがん』を見つめる。」
「そんなことはない。私も『絡繰り術士』の端くれ。こんな構造を持った武器を見るのは楽しい。」
「本当ですかっ!?よ、良かった!!な、ならもっと見るかい?これはほんの序の口で、もっとすごい兵器が沢山あるんだよ!!」
「ちょっと待ってほしい。まずは、もう少し言葉を教えてほしい。『ぐれねぇどらんちゃあ』とか『さぷれっさあ』とか解らない言葉がいくつかあった。どういうものかも合わせて見せてくれると助かる。」
「あっ……そ、そうだね。ここは異世界だった。つい興奮して、説明不足だったよ。えーと、まず何から説明しようか……あ、まずは『グレネードランチャー』からね。この武器は――――」
「おっ、いい感じにウェルが馴染んできたな。」
声の方を振り向くと、ユウマさんがいた。
「タカハシさん。貴方にはベルガ島防衛陣地と前線基地の作成をお願いしたいんです。まずは、ウェルと協力してトーチカを港町ローリアに作ってほしいんです。出来れば、あとで呼んで来るガーネットたち竜人たち4人にそれらの防衛施設の扱い方を教えてもらいたいんです。」
「なるほど、砲塔を設置するわけですね。なら『20式戦車』の砲塔だけを作り出せば可能だと思います。しかし……問題は私のMPが少ないってことです。常設で砲塔を置くなら1基につきMP200は必要かと思います。それに砲弾1発にMP20……100発準備するとして、砲塔1基あたりMP2200も必要なんですよ。まぁ、時間をかければ設置できないことはないですが……。」
「それは大丈夫です。マジックポーションならいっぱいありますし、それに、タカハシさんとウェルはこの後、別メニューがあるから。」
えっ……私も何かするの?砦を作る役目だと思ってたのに……
「別メニューって何するのです?ユウマさん。」
「ああ、ウェルもタカハシさんもレベルが低いからな。タカハシさんに至ってはレベル1だから、ちょっとパワーレベリングをな。で、今からやるのはパワーレベリングの為の準備ってところだ。」
「おぉ!!楽して一気に強くなる……ちょっとズルい気もしますが、状況が状況ですもんね。」
ん?勇者タカハシは目がキラリと輝いた気がする。ズルいことなの?『ぱわあれべりんぐ』……むぅ、言葉が難しい。
「いいですか。タカハシさんもウェルも『守る』ということに関してはエキスパートだ。タカハシさんは攻撃的防衛、ウェルは絶対防衛。ベクトルは違いますが、極めれば大勢の人を守ることができると思っています。で、2人にまず覚えてほしいのは【隠形】スキルです。完全に気配を消し、視覚的にも見えなくなります。それに、相手の気配を探ることもできます。」
「おぉ!!気配感知系は異世界モノの常道ですからね。それに、姿も消せる……光学迷彩の出番はなしですか。」
また、勇者タカハシのテンションが上がるが、また、少し下がる。この人、よく解らないな。
「解った。私はユウマさんの言う通りにします。」
私がそう言うと、ユウマさんは嬉しそうに私の頭にポンと手を置く。
「そうと決まれば、まずは【気配感知】と【気配消失】の訓練からだ。じゃあ、2人とも目を瞑って―――」
こうして、私はユウマさん、勇者タカハシと一緒に別メニューをこなすことになった。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
※次回の更新は10/7を予定しております。




