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45、氏族連合へ

新章へ突入しました。


 †



「あ、あの……これはいったいどういうことなのですかっ!!」

 ハウザーさんの声が邸宅に響き渡る。


 あの会見での出来事から6日が経った。ここはエルドランの大樹邸宅。

 今までエルドランの外れにあるため使っていなかった別荘をハウザーさんから譲り受けたのだ。大樹の中にある家だと侮るなかれ。直径15mほどの大樹だ。しかも、大きく左右に広がる幹の上にも、建物が造り付けてある。下手な雑居ビルよりも広いのだ。しかも、内装も豪華と来ている。今回、俺たちの働きに対する報酬にともらったのだが、さすが族長最有力候補ともなれば、やることが破格だな。そして、6日もの間、自堕落な生活を送っていた。食事や身の回りの世話もメイドさんがやってくれるのだ。



「そうだな。俺は接近戦が重要だと思うぞ。後衛でも、もしもの時があるからな。」



 俺は、大樹の周りに作られたオープンデッキに設えられたプールサイドチェアに寝転がり、慌てるハウザーさんを眺めていた。あちゃー。さすがにこの現場をみたら呆れるわな。



「うーん。それはないな。ゲームだと一本伸ばしが強いんだろうけど、ここはゲームじゃないからな。」



 えーと、まずはどこから説明したものか……。

 まず、サフィーナと遊んでいるのがノアという転移者の女の子。サフィーナとは歳も同じくらいだし気が合うらしい。これは、まぁいい。それを影から涎を垂らして観察するマール。うん、これアウト!!よし!糸での拘束完了っと。



「ああ。これは魔鋼糸ってやつだ。魔力を込めないと自然に消える。ん?今回のは魔力込めてるぞ?」



 次は、クロ子と口喧嘩しているダイチとそれを仲裁しているアヤノ。この2人も転移者なのだが、ダイチのほうがちょっと我が強い。転移した時は、2人とも中1だったそうだ。クロ子とはソリが合わないのか、ちょっとしたことで良く喧嘩するんだよな。ん?今回はから揚げにはレモンをかけるかどうか……うん。どっちでもいいわ。アヤノは両方OK派のようだ。本当にどうでもいい。



「MP?3万ちょいかな。異世界人の平均?それは知らん。」



 で、俺の前にメモ帳とペンを片手に、さっきからずっと俺を質問攻めにしているメガネの少年がミコトだ。いい加減解放してくれないか。もうかれこれ2時間ずっとこの調子だぞ。先日の会見での出来事がミコトの何かに触れたのか、あれ以来、俺に付きまとってくる。師匠と呼んできた時はかなり引いた。


「はいはい。今ので100個の質問には答えたからな。終わり終り。」

「えぇぇ、もっと知りたいのですよ。師匠の強さの秘密ぅー。」

 もう。勘弁してくれよ……。


 で、ハウザーさんが一番説明してほしいであろうメインディッシュが、アイリに絡んでいる2人組だ。


「アイリーン。なんて可愛く可憐に成長してくれたんだっ!!お父さんは最高に幸せだぞー!!」

「アイリちゃん。私よりおっぱい大きいんじゃない?ちょっと触ってもいいかしら~?」

「や、やん。お母さん!皆、変な目で見てるってばっ!!ちょ、ちょっとぉー!!」

 おぉ……なんてことを!!こ、コラ!クロ子、見るなっ!!おぉーい!ダイチもミコトも目を反らせ!なにガン見してんだよ!!よーし、こうなったら魔鋼糸で目隠しだっ!!おりゃっ!おりゃっ!!おりゃっ!!!


「「「目、目がぁーー!!」」」


 ふぅ……ゴホン。えーとだな。今、ここにアイリのご両親が来ています。ええ。もちろんハウザーさんは知りませんでした。っていうか、グランディアさんとジャスリーンさんは世界樹に取り込まれて帰らぬ人に的な話をしちゃってたからな。


「ゆ、ユウマ殿!!こ、これはいったいどういうことか説明していただけますかっ!!」

「いや、これはですね。そろそろハウザーさんにも言っておこうかと思ってたんですけどね?ちょっと言い忘れてまして……テヘペロ?」

「ゆ、ユウマ殿?真面目に聞いているんですがっ!!!!」

 ヤバい。ハウザーさん、笑顔だけど青筋立ててる。穏やかな人ほど切れると怖いんだよな。

「いやいやいや。ごめんなさい。待って、近い近い近い。ね?顔近いから。わかったから。説明します。させていただきますから。」

「本来、私たちにとってグランディア様方を拝謁させていただくのは恐れ多いことなのですよ。そ、それを寝そべりながら眺めるなどとっ!!」

「あー、はいはい。ビシっとします。はい。正座しますから。つまり、今回、ファルスたち族長派を一気に潰すために、俺とグランディアさんとで色々と動いたってことなんですよ。」


 俺はハウザーさんには、今まであったことを包み隠さず打ち明けることにした。もちろん、カラヌイのことも……。本来ならタイタスの責任となって、エルドランとタイタスの関係がボロボロになるだろう。しかし、ここはあえてハウザーさんを信じることにした。もちろん、グランディアさんにフォローもしっかりしてもらいつつ だが。


「ハウザーよ。色々と心配をかけてしまったようだな。私としても、アイリが世界樹に取り込まれるなど許せることではなかったのでな。」

 急に威厳オーラを出しまくるグランディアさん。それにハウザーさんは土下座する勢いで畏まる。

「も、も、もったいないお言葉でございますっ!!私も近隣の集落との連携は不可欠だと考えておりました。さすがハイエルフの王たるグランディア様でございます。」

 器用に、土下座しながらスラスラと言葉が出てくる。すげーなハウザーさん。

「じゃ、そういうことで私はアイリとクソ婿と一緒に住むことにしたから。おい!ジャスリーン。いつまで娘の胸を揉んでおるのだ。」

「あらあら。つい手が離れなくなっちゃって♪そういうわけですからユウマくん。私たちともどもアイリをよろしくお願いしますね~。」

 えっ はっ あれ?いきなり相手の親と同居生活!?ってか俺たちエルドランに住むことになるの?えぇぇ!?ってかずっと揉んでだのねっ!


「もう!お母さん。勝手な事ばかり言わないでよ。ユウマさんはまだまだこのラクリアを旅するんだから。それに、お母さんたちは一応、世界樹にいることになってるんだから、エルドランで生活してたらパニックになるでしょ!」

 ナイスだ!アイリ。よく俺の気持ちを汲んでくれている。

「そういえばそうだったわね。でも、お母さんは気にしないわよ?」

「私たちが気にするのっ!!」

「あらあら~。それじゃ仕方ないわね。じゃあ、あなたどうしましょうか?」

「そうだな。マールの所に厄介になるのはどうだ?ガート村というところだ。ガンファというドワーフにも会ってみたいと思っていたのだ。」

 グランディアの発言で、先ほどまで糸で簀巻きにされモゴモゴ動いていたマールの動きが一瞬で固まる。

「やふぇげーーー!!あんふぇおおははいはーーーっ!!あはひのふひーはふはーーっ!!!」

 マールが何かを必死で訴えようとしてる……まぁ、糸は外さんけどな。

「まあまあ、マールちゃんったらそんなに喜んでくれるのね♪そこまで喜んでくれるならまたマールちゃんと一緒に暮らすのもいいわね~。」

「ひはーーーーーーーーーっ!!!!!」

 よし、これで何とか『エルドランで末永くハッピーエンドルート』は回避できたようだ。


「おっと、そうでした。あまりに色々なことがありすぎて、お伝えするのを忘れていました。」

 ハウザーさんが改めて俺たちに向き合い、襟を正す。

「私、ハウザーはエルドラン第38代族長に選ばれました。」


「「えぇぇぇぇぇーーーーっっっ!!!!!!」」

 って驚いたのは俺とアイリだけかよ!!あ、クロ子とダイチ、ミコトは目隠しして転がしてるんだった。アヤノはよく解ってないのかキョトンとしてる。マールは……放置しておこう。


「っていうか、いつのまに決まったの!?選挙でもしたの?選挙カー通ってなかったよ?えっ?そんなものはない?でも、知らないうちに決まってるってなんか寂しいよね。声とかかけてくれても……ん?声かけてくれたの?でも、その時二日酔いでダウンしてたからそっとしておいてくれたの?あぁ、ありがとうございます。って、いやいやいや、一応心配じゃん!族長派の残党がまた何か仕掛けてくるとかさ。えっ?何もなくサックリ決まったの?そう……それはおめでとう。うん?なんか納得しきれない部分が大半だけど、おめでとう。ハウザーさん。」

 しばらく流れる静寂の時、アイリはたまらず噴出している。ハウザーさんはどうしていいのか解らず固まっているが……


「あ、ああ。その、報告が遅くなって申し訳ない。私も族長を決める会議の準備で忙しくて、こちらに顔をだせなかったのですよ。」

 ようやく、動き出したハウザーさん。それなら、まぁ納得してあげなくはない。

「それで、私が族長になったことで1つの大きなプロジェクトを立ち上げようと思うのです。」

「なんです?大きなプロジェクトっていうのは……」

「はい。それは、ガラハド大森林帯に国を作ろうというものです。」

「へぇ。国かー。それは大変だよね。ははは。国作りって………   ええええええええぇぇぇぇぇぇっ!!族長になって初めての仕事で………   えええええええええええぇぇぇぇっ!!! そのつまり、他の集落を攻めるとかやっちゃうんですか?」

「あははははは!ユウマ殿は面白いリアクションをするお人ですね。いやいや、集落を責めるのではなくガラハド大森林帯に点在する様々な種族を取りまとめる氏族連合のようなものを作りたいのですよ。今回、エルドランとタイタスの間で交流が結ばれました。この流れを他の集落、他の種族とも結びたいのです。まぁ、国というのは最終目標ですけどね。まずは、タイタスのような集落を少しずつ増やしていきたいのですよ。」


 いきなりすごいことをぶち上げるもんんだ。タイタスとの交流もまだ本格的に始まってはいないってのに。でも、大規模勢力だったエルドランとタイタスがまとまると、他の集落も賛同してくれるかもしれないよな。


「それは素敵ですね。でも、この辺りの情勢とかよく解らないんですが、大変なんじゃないですか?独立独歩な集落が多そうですし。」

 アイリは目を輝かせるが、今後起こりうる問題に気付いたようだ。

「ははは。元々、エルドランもそんな集落の1つでしたからね。ですが、共通の利害関係と皆の気持ちがあればできると信じていますよ。」

「ん?ハウザーよ。国を興すか?私もそれにはさんなら各地に散らばったハイエルフたちにも声をかけてみよう。エルフに紛れてお前たちに賛同するやもしれん。」

 グランディアさんが再び威厳オーラ全開でハウザーさんに賛同する。


 さて、どうするか……俺としては協力できることはしていきたい。すでにエルドランもタイタスも俺たちとは深い関係になっている。それに俺は一応、有名人ってことになってるしな。『タイタスの英雄』『エルドランの救世主』なんてかなり恥ずかしい呼び名まで貰っている。なら、ひと肌脱ぐか。


「ハウザーさん。俺に何かできることはないかな?俺も周辺の地理と情勢が解らないから、何を手伝えるかも解らないけど……。」

「おぉ!!ユウマ殿にそう言ってもらえると心強い。そうですね……近隣の中小集落との関係を強化すること。今まで関係が疎遠だった種族との交流を持つこと。エルドランと交流を持つことでメリットがあると思わせる魅力的な何かを作り出すこと。まずはザックリとこんな感じでしょうか……」


 ハウザーさんが言うには、ドワーフ方面の集落はタイタスの族長ラガイオに任せているそうだ。エルドランとしてはまずはエルフの集落を1つにまとめ上げることから始めるそうだ。同じエルフだからといって各集落ごとに微妙に考え方も違うらしい。

 他にもガラハド大森林帯に住む種族は多岐にわたり、友好的な種族もいれば、エルフと険悪な種族、敵対的な種族がいるらしい。まずは、比較的友好的な獣人族の集落から交流を持つつもりらしい。

 最後の魅力的な何かって……漠然としすぎている。なんだか村興しの企画を考えているような気になってくる。まぁ、俺に考えがないではない。


「えーと、魅力的な何かを作るってことなんですけど、俺に考えがあります。ちょっと聞いてもらえますか?」

 俺の提案に、ハウザーさんが前のめりで食いついてくる。


 

 †



 俺の目の前には十人の老エルフたちがズラリと並んでいる。すでに300歳を超える人もいるらしく、グランディアさんがやって来た頃から生きているエルフも数人いるんだとか。

 この老エルフたちはエルドランの有力者たちであり、〝十長老(テン・エルダーズ)”と言われているらしく、エルドランの様々な事の決定権があるという。ハウザーさんも彼らの承認を受けて族長に選ばれた。中には族長経験者もいるのだとか……。つまり、エルドランのとっても偉い人たちだということだ。


 俺の横には、アイリとハウザーさんが立っている。これからエルドランの新名物を皆の前でプレゼンしようというのだ。うん。企画のプレゼンなんてやったことないけど、やるだけやってみるか。


「え、えと、まず俺のような者の提案を受け入れてくれたことを感謝いたします。」

 ぎこちないお辞儀から俺はプレゼンを開始した。老エルフたちは無言で頷き、続きを促す。

「まず、エルドランがガラハド大森林帯での一番の優位とされるポイントは、中央にそびえ立つ巨大な世界樹にあると思います。この世界樹を用いて作り出した品がこちらです。」

 俺は小瓶に入った液体を取り出す。そして、アイリとハウザーさんに合図して、〝十長老(テン・エルダーズ)”にも同様の品を配ってもらう。他にもレジュメのようなものを添えて。

「今、皆さんの手元になるものは、『蘇生薬』です。死んだ者を蘇らせることができる薬となります。太古の魔法薬で、俺が今回再現したものです。すでに動物での実験では蘇生は成功しています。」

 そこまで言うと、一同、息を飲むのが解った。

「お手元のレジュメの第一項目をご覧ください。まず、この『蘇生薬』の精製方法については極秘とさせてもらいますが、世界樹の恩恵を受けているということだけ、お話しておきます。なお、半樹精のマールより、世界樹自身の了承も得ております。次の項目に移らさせていただきます。この『蘇生薬』はエルドランとの友好の証として各集落にお渡しする品であり、販売目的ではないということです。なお、すべての蘇生薬の小瓶にはシリアルナンバーが刻まれており、現在地を把握できるようになっております。奪われたり、売り払われたことが解った時点で中の蘇生薬を無効化することも可能となります。そして最後の項目となります。この蘇生薬の使用期限は本来、ほぼ永遠にあるのですが、今回は3年の期限を敢えて設けています。これは、3年に一度は各集落の代表が集まり、ガラハド全体の意見交換をする場に集まる切っ掛けになればと思い設けたものです。この期限は延ばすことも縮めることも可能となります。ここまでの説明で何か不明なことがありましたら、お願いします。」

 俺は、手元の小瓶に目を落としている〝十長老(テン・エルダーズ)”に目を向ける。

 すると、一人の白髪の老エルフが手を上げる。

「おぉ、トータティス様。何か問題がありますでしょうか?」

 ハウザーさんが白髪の老エルフ、トータティスさんに話しを向ける。

「信じがたい話じゃが、私も物の本質を見抜くスキルを持っておる。間違いなくこの『蘇生薬』は本物じゃ。だが、これほどの品をどれほど用意できるのだ?ガラハド大森林帯に存在する集落など1万を超える大集落で10つ、5000を越えるもので16、500程度の小さい集落まで合わせれば100を越えるといわれておる。それほどの数の『蘇生薬』を用意することができるというのか?」

 そんなに沢山の集落があるのか。……ってかこの人、すげーな。このガラハド大森林帯のデータここまで詳しい人あったことない。

「トータティス様はかつて族長も経験された偉大なお方で、〝十長老(テン・エルダーズ)”のまとめ役なのですよ。」

 ハウザーさんが小声で補足してくれる。なるほどな。この世界でこの正確な情報を知っているってだけでも偉大だよな。

「トータティス様、数は問題ありません。『蘇生薬』を量産するつもりはありませんが、先ほど、言われた数なら作ることは可能ですね。」

 俺がそう言うと、〝十長老(テン・エルダーズ)”からは驚きの声が上がる。まぁ、200ほど作れば、魔力切れするだろうけどな。

「他にも、集落の規模や種族によって差をつけたりはしないのか?」

 さらに質問が上がる。

「規模によって変化をつけるのはアリかもしれません。ですが、種族による差は諍いの元になりそうなので、皆、平等にお渡ししたいと考えております。」

 大規模集落には5つ 中規模集落には3つ、小規模集落1つくらいでバランスとればいいだろう。うわっ……また、作る量増えたけど、ま、いいか。


 〝十長老(テン・エルダーズ)”は何やら話し合いをしているようだ。声を潜め、内緒話をしているようだが、その全てを俺は聞き取ることができる。ん?どうやら話し合いが終わったようだ。

「ユウマ殿。この『蘇生薬』、素晴らしい品じゃ。素晴らしすぎて私たちには扱えるか少し怖いくらいだ。だが、その懸念にも色々と考えられているようだ。ユウマ殿、感謝の言葉もない。エルドランを代表して私からも礼を言わせてもらおう。いや、それはすでにハウザーからしてもらっているのだったな。」

 トータティスさんが、〝十長老(テン・エルダーズ)”を代表してお礼を言ってくれる。

「いえ、俺ができることをやったまでですから。それに、俺たちの故郷であるガート村もエルドランとの友好関係を持つでしょうから。」

「ユウマ殿は異世界人だとお見受けしましたが、この世界でも故郷と呼べる地ができているのですな。それならエルドランとしてもガート村へもさっそく使いの者を出させていただきましょう。」

 最初は堅苦しい人かと思ったが、このトータティスさん、意外と話しやすい人なのかもな。


「ありがとうございます。それなら俺たちが里帰りも兼ねて、ガート村へ話を通してきましょうか?村長とは身内みたいなもんですから。」

「おぉ……、それはありがたい。それから、今、皆と相談したのですが、ユウマ殿とアイリ様にはエルドランの、いや、これから作り上げていく氏族連合の盟主の1人となっていただきたいのです。」


 ん?何言ってるの?この人は……ガート村代表ってこと?それ、バラガさんだよ?

「はい!私たち、盟主になります!頑張りますからっ!!」

 あれー、アイリ引き受けちゃったし……


 ま、いいか。

最後まで読んでくださってありがとうございます。

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