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44、リベレーション

 †



「ん~~~~~ん♪清々しい朝でおじゃるなぁ~。」


 ついに会見の日がやってきたでおじゃる。

 マロたちの準備は完璧じゃ。何より、昨日の深夜に齎された報告がマロを飛び上がるほど喜ばせたのぉ。

 ついに、あの忌々しいユウマの暗殺に成功したのでおじゃる。それに得体のしれない者たちも討死してくれたようじゃ。一気に2つも気がかりだったものが消えて気分は晴れやかでおじゃるな。

 ただ、あのハイエルフの娘、アイリーンの確保だけが上手くいかなんだ。まぁ、それもミカエルが上手くやってくれるでおじゃる。


「族長様、会見の準備が整いましてございます。」

 マロを呼びに、ミカエルがやって来たでおじゃる。

「おお、今行くぞ。」

 マロは数人のエルドランの有力者を引き連れて会見が行われる大樹邸宅へ向かった。

 会場には溢れんばかりのエルフたちが集まっている。実際、会場にすべてが収まっておらず、会場の外にも多くのエルフの姿が見ることが出来る。


『エルドラン族長!ファルス様のご入場!!』


 マロは会見会場まで歩いていく。集まったエルフたちはザワザワとしていたがマロが姿を見せると一同静まり返る。すでに、会見会場にはハイエルフのアイリーンを始め、ハウザーなどのハイエルフ派の者たちが舞台上でマロを待ち構えている。当然ながらそこにはユウマの姿は見えない。


 マロたちは設けられた舞台上の席に座る。それに倣うように、マロの派閥である有力者たちも同様に席に座る。丁度、ハイエルフ派と向かい合う形だ。


『それでは、只今よりユウマ殿の要望により、族長様との会見を行います。なお、今回の会見はユウマ殿の希望により、エルドランの民に公開されます。』


 司会役の者が会見の開始を宣言する。


「では、まずマロから聞きたいことがあるでおじゃる。今回の会見を求めたはずのユウマ殿はどこにおられるのじゃ?」

「そ、それは……体調が優れないため、我が屋敷にて養生しております。」

 ハウザーが苦し紛れに言い訳をいうておるわ。

『当の本人が来ぬとは、族長様に無礼であろう!!』

『そうだ!!なぜ本人が来ないっ!!』

 マロの派閥の者たちが怒声をあげる。マロは手を上げ、その声を制する。

「いや、よいのだ。エルドランの救世主様じゃ。慣れない場所で疲れがでたのでおじゃろう。此度の会見でお会いできるのを楽しみにしていたでおじゃるが、残念じゃのう。」

 まぁ、二度と会うことはできぬであろうがの。

「申し訳ありません。族長様。ですが、私がユウマさんの言葉を預かってきております。お聞きいただけますか?」

 アイリーンが声を上げる。ふむ……ハイエルフとはいえ、小娘に何ができるというのだ。

「もちろんでおじゃる。その為にこの場を設けたのじゃからのぅ。」

「では、私たちの主張は、今後、エルドランを結界に依存せず、自らの手で守ること、つまり自衛してもらうことをお願いいたします。」

 その言葉に、会見を見に来た者から声があがる。


『そんな!!ハイエルフ様は我らを見捨てると言うのかっ!!』

『我らを見捨てないでくださいっ!!』

 悲鳴に近い声があがる。それでもアイリーンの顔は変わらない。


「今、世界樹に眠っているのは私の両親のグランディア、ジャスリーンです。彼らは、300年もの間、エルドランを守ってきました。彼らだけではありません。エルドランにお世話になったハイエルフたち20人がその恩返しとして、身を投げうって結界を張り、皆さんを守ってきました。そして、今、生き残っているのは父母のみ……。他のハイエルフたちは世界樹に眠ったまま、世界樹と同化してしまいました。このままでは、父母も世界樹と同化してしまうでしょう。私はもう、結界を張るべきではないと考えています。エルドランの民は、自らの手で集落を守っていく時期が来ていると、私は考えています。そして、今こそが皆さんの意識を変えるべき転機なのだと、私は考えているのです。」

 むぅ……小賢しい真似を言いおって!じゃが……民はそんな事では納得しないでおじゃるよ?


『ふざけるなーーー!今、魔物たちが襲ってきたらどうするんだーーー!!』

『そうだーーー!!先日のような事はもうまっぴらだーーー!!』

『旦那を返してよっ!!魔物が襲ってきたのも結界が無くなったからでしょっ!!』

『お父さんを返してっ!!お父さんを返してよーーーーっ!!』


 まぁ、こうなるでおじゃるな。

「マロとしても、ハイエルフ様には大きな負担を強いて来たと考えておりまする。マロたちも大変心苦しいことでおじゃる。じゃが、先日のような悲劇を再び引き起こしても良いでおじゃるか?否!!あのような悲劇はもう二度と引き起こしてはならんのでおじゃるっ!!」

 マロはミカエルからもらった紙に書かれた言葉を読み上げていく。


『そうだーー!!!』

『さすが族長様だっ!!エルドランの民のことを考えておられるっ!!』


 まぁ、この声を上げる民の中には、ミカエルが命じた〝仕込み”が何人かいるのでおじゃろう。アイリーンの顔はみるみるうちに険しいものになっていくでおじゃるなぁ。


「先日の悲劇は二度と引き起こしてはいけない。それは私も同感です。では、私が世界樹に入り、結界を張ればすべての問題が解決するのでしょうか?ここには出席していませんが、ユウマさんは、このような提案をされていました。ハイエルフの代わりに、エルフたちが代わりに世界樹に入り、結界を張ってもらえばどうかと……複数のエルフたちでハイエルフの代わりに魔力を供給することができる魔核石がここにあります。これを使えば、皆さんだけでも結界を張ることが可能です。しかし、最後は世界樹に取り込まれ、同化してしまうでしょう。これまでのハイエルフたちと同じように……。皆さんはいかがですか?族長様たちは、この案には賛成されませんでした。」

 アイリーンは以前、ユウマが取り出した黒く禍々しい魔核石を取り出して見せた。それを見たエルドランの民たちは息を飲んでいる。

「当たり前でおじゃる。エルドランの行政も司るマロたちが世界樹に入るなど、エルドランが立ち行かなくなるでおじゃる。そもそも、ハイエルフの王、いや、元国王のグランディア様がマロたちのご先祖様と交わした契約に、エルドランを守り続けると……この契約の石板にも刻まれておるでおじゃる。」

 マロは後ろに控えた者たちに目配せをして、ご先祖様とグランディアが交わした石板を見せつける。どうじゃ、この契約を覆すことなどできわせんでおじゃる。

「それではその石板を確認させていただきます。」

 アイリーンは石板に顔を近づけて、書かれた文章を確認していく。


〝ハイエルフの国 ベラルーン王国の民を受け入れたことに感謝の意を表して、ここに国王グランディアがベラルーンの民の総力を挙げて、エルドランの民を守り続けることをここに誓う。”


 アイリーンが石版の一文を読み上げる。ほれ、守り続けると書いてあるでおじゃる。

「ここには結界を張るとは書いておりません。なので、私は結界を張ること以外で、皆さんを守ることを提案します。」

「アイリ!アイリが守る理由なんてないじゃないか!アイリはベラルーンの民じゃない。ハイエルフの国が無くなってから生まれたんだから!」

 アイリーンの後ろに控えていた金髪の少女、クロウとかいったか……余計な事を言うでないでおじゃる。


「いいえ。国王の娘であれば、私もベラルーンの民。その責任は私にも負わせてもらいたいのです。少しでも父が守りたかったこのエルドランを私も守りたいのです。しかし、私がいなくなれば、例えば不意の事故で死ねば、あなた方はどうするのですか?今度は皆さんが世界樹に入り結界を張るのですか?では、どうやって入る人を選ぶのですか?立場の弱い者たちから順に選ばれるのですか?しかし、このような生贄のように選ばれるべきではないのです。皆さん、本気で考えてください。身近な人が、大切な親が子供たちが、愛する人が世界樹に入っていく姿を……。想像してください。大切な人がいなくなって悲しむ人々の姿を……。」

 アイリーンの話に、聴衆はシーンと静まり返る。まずい。まずいでおじゃる。

「そ、それは理想論でおじゃる!マロとて犠牲がでないのが望ましいと考えておるでおじゃる。じゃが、もし、そうなれば仕方ないであろう。それに、論点がズレておるでおじゃる。アイリーン様は結界を張らずして、どのようにエルドランの民を守るというでおじゃるか?」

 

 アイリーンは静かにマロを見つめてくる。とても静かな瞳でおじゃった。そして、不意に視線が会見会場の出入り口に向かう。マロもつられてそちらを見る。


 すると、そこに信じられない者が立っておじゃった。

 あの忌々しい人間、ユウマでじゃる。



 †



「守る方法ならあるぜ!!」

 シーンと静まり返った会場に俺の声が響き渡る。聴衆たちが一斉に俺のほうを見る。どうやら間に合ったみたいだな。


「ラガイオさんたち、入ってきてくれ。」

 俺は後ろに声をかけ、舞台上のアイリたちの方へ歩いていく。その後ろにはドワーフの集落、タイタスの族長ラガイオを筆頭に、マール、絡繰り術の一族の少女ウェルの姿も見える。

 マールにタイタスとの連絡係りをお願いしていたのだ。お礼はサフィーナをきゅーーっとできる権利。まぁ、これくらいならサフィーナも許してくれるだろう。


 突然の俺の登場にファルスは口をあんぐり開け、今にも顎が外れそうになっている。

 そうだろう。俺は死んだことになっている。そして、俺と刺し違えたことになっている転移者たち、アヤノ、ノア、ミコト、ダイチの4人も俺の後から現れたのだから……


 俺は、昨日の深夜、アヤノたちに襲われたあと、ハウザー邸を囲む気配を感知し、その全てを魔鋼糸で拘束することに成功していたのだ。そのあとは、ライカさん印の特性ポーションで催眠状態に入ってもらった。


*********


「そろそろポーションが効いてきた頃合いかな?おい!起きろ!いつまで寝てるんだ!」

 俺は、1人のエルフの男の頬をパチパチと叩く。


魔鋼糸で拘束したエルフたちが8人転がっている。まぁ、【威圧】でほぼ瞬間的に気絶させたので人目につかない所まで運び込むのが一番の大仕事だったが……


「お、お前は!!」

 俺の事に気付いたみたいだな。じゃあ、試してみるかなっ♪

「そうだ、俺はお前たちの仲間だ。いつまでも寝てたから起こしに来てやったんだぞ。」


「お…おお、そうか、すまないな。」

 少し怪訝な顔をしたが、素直に俺のいう事を信じてしまう。これがライカ特性ポーションの効果だ。これを飲んでしばらくすると、強い催眠状態になり、相手のいう事がどんなことでも信じてしまうのだ。


「なぁに、気にするな。お前たちに伝えないといけないことがある。しっかりとファルス様に伝えるんだぞ。」

 看破で見る限り、こいつがこのエルフたちのリーダーなのだろう。こいつを抑えればなんとでもなるだろう。


「あ、あぁ……もちろんだ。俺たちはその為に、ミハエル様に命じられたのだからな。」

 なるほど……ミハエルってのがファルスのブレーンか何かなのだろう。


「まず始めに、ユウマとあのガキどもは共倒れだ。両方とも死んだぞ。だが、ハイエルフの確保が失敗した。向こうに手練れがいたようだ。ここに長居するのはヤバい。俺があいつらをかく乱するから、お前たちは早くミハエル様に報告しろ!」


「わ、わかった!!お前も早く逃げるんだぞ! おい!お前らっ!いつまで寝てるんだ!!撤収だ!早く撤収準備にかかれっ!!」

 エルフの男は寝ている仲間を蹴り起こしている。


「最後に1つ、ミハエル様はこの後、どうするつもりなんだ?ハイエルフは確保できなかったんだぞ?」


「忘れたのか!?まぁ、いい。ミハエル様の次の計画はな……」

 ふむふむ……


**********


 ということで、奴らの企がは把握することができたのだ。


 というか、俺はエルドランを見捨ててもいいんじゃないかと言ったんだが、アイリとあの人がどうしてもって言うので対案を出すことにしたのだ。


「これから族長様にはエルドランの皆を守る俺の案を承認してもらいたい。なんならここに集まった皆に是非と問うってことでもいいんだけどな。」

 俺はニヤリと笑い、ファルスを睨み付ける。

「だ、だから、その守る案とはどんなものなのじゃ。危険を伴うような物なら却下じゃからの!」

 ようやく事態が飲みこめたのか、ファルスは俺に怒鳴り散らす。


「なら、これを見てくれ!」

 俺はインベントリから石のパネルのような物を取り出す。一畳ほどの大きさのパネルを5枚ほど取り出し、腰に下げたレバーの取っ手のような物を近づける。そう、これはタイタスの巨孔の封印の部屋で使った〝絡繰りの鍵”だ。


 ヴヴヴヴヴヴヴ……

 

 小刻みに石のパネルが震えだし、次の瞬間、パネルが変形し始めた。


 ゴトリ ゴゴゴゴ ガシャン!!


 見る見るうちに、石の壁が現れたのだ。


――ピロリン♪【絡繰り術/Dランク】を習得しました。――


 おっ、ランクアップしたか。さっきウェルから絡繰り術を教わった所なんだが、魔力を充分に込めることで上手くいったようだ。


 聴衆たちは突然出来上がった石の壁に、騒然となる。


「これはタイタスの集落で秘術とされていた『絡繰り術』というスキルを用いた防壁だ。込める魔力によって、より頑丈な壁になっていく。タイタスの族長ラガイオがエルドランの民の危機を知り、秘術を公開しても良いと言ってくれたのだ。この壁でエルドランで覆えば、結界はもう必要ないだろう。それに、誰にでも魔力を注ぐことが出来る。俺が見せた禍々しい魔核石を使わなくてもな!誰も犠牲になることはない。

 どうだ!!エルフたち!!お前らはハイエルフに守られ、今回はドワーフに助けられ、ただ守られているだけの存在なのか!!お前たちは無力なのか!先日の魔物の襲来でも、勇敢に戦った者たちよ!自らの大切な者は自らの手で守りやがれ!!力のない者たち、戦う術を持たない者たちは魔力を防壁に注げ!!」


 あたりは静寂が包まれる。誰も、何も言わない……ん?無反応?これは予想外な……


『おお!!これでエルドランは俺たちの手で守れるぞっ!!』

『誇り高きエルドランの民がここまでしてもらって何もしないわけにはいかないではないかっ!!』

『僕……戦えないけど、僕でもエルドランを守れるんだねっ!!』


 聴衆からポツリポツリと声が上がり、それがあっという間に大きなうねりとなり会場を覆っていく。


「し、静まれーっ!!静まらぬかーー!!こ、これはドワーフたちの陰謀じゃ!!そんな秘術をマロたちに教えるわけがないでおじゃる!!ハイエルフも結界を張るのをゴネているだけでおじゃる!!報酬が必要なのか!!いくら払えば結界を張るんじゃ!!早く言うでおじゃるよ!!」

 ファルスが必死で声を上げて、聴衆を静めようとするがボルテージは上がる一方だ。


『なら族長様が世界樹に入ってみろよっ!!周りに頼ってばかりいないで、少しは自分で何でできることをやれってんだっ!!』

『そうだそうだー!アイリーン様が可哀想だよ!!もしも私のお父さんお母さんが世界樹に入っちゃったら悲しいもん!!』


「ぶ、無礼者がっ!!マロはお前たち一般人のために、守ってやるって言っておるんでおじゃる!今、マロに向かって無礼を言うた者こそ、世界樹に放り込んでやるでおじゃる!!おい!引っ立ててこいでおじゃる!!」

 ファルスは取り巻きに命じて、聴衆を捕まえるようとする。

 しかし、取り巻きは誰一人動こうとしない。

「な、何をしておる!!早くあの無礼者どもを拘束するでおじゃるよっ!!」

 必死に喚くファルス、しかし一行に取り巻きは動く様子はない。


「族長様、このあたりが潮時かと……」

 後ろから、ミハエルが耳打ちをしている。

「なっ!何を言うておるでおじゃるか!ミハエルっ!裏切るのかっ!!」

 おっと、ここで黒幕に逃げられるほど、俺は甘くないんだよ!!俺は極細の糸をミハエルの口に射出する。そこに例のライカ特性ポーションを染みこませて。効果がでるまでもう少し時間を稼ぐ必要がありそうだな。


「あ、ちょっと待った!!タイタスの族長ラガイオさんからお願いがあるそうだ。皆、心して聞くように!!」

 俺は、ラガイオを舞台上に上がらせる。すると、自然と聴衆たちは静まって行った。


「ゴホン……タイタスの族長ラガイオじゃ。『絡繰り術』はこれまで秘術とされておった。タイタスの守りの要になる技術じゃったからじゃ。じゃから、『絡繰り術』はある一族の者だけが学べる門外不出のスキルじゃった。そのせいで、その一族の者は他の者と差別され、虐げられ、悲しい運命を背負わされておったのだ。丁度、世界樹に眠るハイエルフ様のようにな。

 じゃが、そこのユウマ殿に言われて気付いたんじゃ。これまで、古い慣習だからとそれに胡坐をかいて、悪習を見て見ぬフリをしてきた。じゃが、違うんじゃ。タイタスの民が一人でも不幸な目にあうような慣習などあってはならないと!儂はエルドランの民を信じておる。ハイエルフにすべての不幸を背負わせるような今の現状から抜け出してくれることを!ドワーフの儂らが出来たんじゃ!エルフのそなたらにできないはずはないと!!

 ゴホン……えー、それで本題はここからじゃ。エルドランの民が『絡繰り術』の防壁を受け入れるのであれば、エルドランに儂らタイタスの民を数人受け入れてほしいのじゃ。そして、タイタスにもエルドランの民を数人送ってほしい。つまり、集落間の交流を行っていきたいのじゃ。いきなりの申し出で戸惑うであろうが、まずは『絡繰り術』習得という名目で行えたらと考えて居る。

 同じガラハド大森林帯に住む者同士、今後は手を取り合っていければと考えて居るのじゃ。」


 静寂から一変して、盛大な拍手がラガイオに贈られる。それは、聴衆たちの気持ちを表している。


 その様子をファルスとミハエルは顔を引き攣らせながら、眺めるしかできなかった。

 よーし!そろそろいい時間だな。


「この拍手はエルドランの民の総意と受け取って構わないか?異議があるものは、今のうちに申し出ろよっ!とくにファルスさん。」

 俺はギロリとファルスを睨む。

「い、異議ありじゃ!異議ありに決まっておるでおじゃる!!」

 この状況で、まだ引き下がらないのか……なら仕方ないな。


「解りました。ところでミハエルさん。あなたとファルスさんがエルドランの民に隠してること、全部話してくれませんか?」

「なっ!?何を言っておる!そんな事何もないでおじゃる。それにミハエルは……」

「はい。まずは族長様と私は、近隣の集落からの貢ぎ物を少なく報告し、差額を懐に入れていました。また、防衛費と称してエルドランの民から徴収した資金も私兵を雇うのに使い、私兵を使って近隣の集落で野盗まがいのことをしていました。それで巻き上げた金銭を有力者にバラまき、族長派の勢力を固めていきました。その勢力を背景に、今回、ハイエルフ派に圧力をかけ、数人を謀略で亡き者にしました。直近では、昨日、ユウマを殺そうと暗殺者を仕向けました。残念ながら上手くいかなかったようですが……。これらのすべては族長様が命令し、私と今、族長様の後ろに立つ者がちで立案し、実行に移したものです。今回、本当はアイリーン様を薬漬けにして、世界樹に放り込む計画だったのですが……」

 スラスラと出るわ出るわ……こっちが引くくらいの悪事が……なんていうか、怒りを通り越して呆れてくる。


 聴衆たちも最初な何のことがとポカンとしていたが、次第に内容のあまりのひどさに、怒声が巻き起こる。そして、ついに族長の解任が決まるまでに至る。そりゃそうだろう。っていうか犯罪者だよな。暗殺って俺だけじゃなかったのかよ!!


「こ、これは何かの間違いでおじゃるーー!!マロは悪くないでおじゃる!すべてミハエルがやったことでおじゃるーーーー!!」


 ファルスとミハエルだけでなく、取り巻き全てが防衛主任のハウザーさんたちに拘束されていく。その手際の良さに、ハウザーさんが時期族長にという声があがる。


 ただ、ハウザーさんはこの場でなし崩し的に族長になることは良くないと聴衆を諭し、改めて時期族長に立候補することを宣言する。他にも候補がいるようだが、族長派はことごとく捕えられている。まぁ、ほぼハウザーさんに決定だろうな。


 舞台上から族長派は一掃された。そこには俺たちとハイエルフ派の者だけが残った。

 聴衆たちは何かを期待するような目で俺たちを見てくる。えっ?これ、何か言ったほうがいい流れ?

 じゃあ、ここはハウザーさんに任せてっと……ん?俺が言うの?何を?あ、そうだ!アイリだ。ハイエルフだし、アイリが言えば……えっ?やっぱり、俺がシメろって?むぅ……


「えー……その、なんだ。色々あったが、エルドランは今から生まれ変わるんだ!結界から解放されたのは何も悪い事じゃない。凝り固まった古い慣習からも解放されたのだから!!今日はエルドランの歴史的な日になるだろう!そして、皆の新たな第一歩となる記念日になるだろう!今日はタイタスから大量の酒を持ってきているらしい。この喜ばしい日を皆で飲んで祝おうじゃないか!!」


『おおおおおおおおおおおおおおっ!!!!』


 聴衆から割れんばかりの喝采が会場を包んでいった。


最後まで読んでくださってありがとうございます。

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