表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/92

39、忌まわしき一族

 †



 儂ら一族はドワーフの中でも特別な一族じゃった。一種の職能集団。タイタスの外壁やこの巨孔の絡繰りすべてを代々作り続けておった。これは300年もの昔、異世界からの勇者が伝えた技術を伝承したものだと言われておる。これだけ聞けば、儂らの一族がどれほど優れておるか解るじゃろう。


 一族はもてはやされ、代々族長からの信頼も厚く、ドワーフ全体の中でも重要な役職についていたと言われている。その分、一族の者は厳しい教育が施されることになった。絡繰り術は一族以外、門外不出。それがいつからか、族長らが儂らを厳しく一族を管理するようになったそうじゃ。

 儂らは幼いころから周囲から隔離されるんじゃ。タイタスの外に出ることもちろん、家の外に出ることも許されん。それだけじゃない。親族以外と話すことも許されず、家の中にも監視がずっとついておるんじゃ。

 理由は簡単じゃ。儂らの技術を恐れ、外に漏らさないため一族を飼い殺しにしたんじゃ。儂らは幼いころから暗い部屋に閉じ込められ、いつも外の世界に憧れとった。やることと言えば、ひたすら絡繰りを組み立てては分解する それの繰り返しじゃ。自由なんてものは全くない。ようやく外に出ることが出来たのは15歳になってからじゃ。


 外へ出ることで儂らを待っていたのは、周囲からの奇異の視線じゃ。石をぶつけられるのは日常じゃった。最初は意味が解らんかったがな。しかし、月日が経つの儂らが忌み嫌われている意味が解ったんじゃ。

 儂らの一族は、見初めた者は相手の了承がなくとも、自由に婿や嫁に取ることが出来るんじゃ。儂らの一族を憐れみ、大昔の族長が決めた制度らしいが、それがむしろ儂らを苦しめたんじゃ。誰も儂ら一族のような生活を望む者などおらんからな。外で目があうと罵られ、石を投げられる。暗く狭い家の外には、さらなる暗い生活しか待っておらんかった。


 解るか?はじめて惚れた女に、罵声と石を浴びせられる惨めさを!こっちに来るなと泣いて詫びられた気持ちがお前に解るか?


 ウェル。お前も15歳。外に出て辛い日々を送っておるじゃろう。結婚相手が見つかったとしても、まだまだ地獄が待っておるんじゃ。

 儂の場合は、相手の親族からは恨まれ、親から縁を切られた妻は自殺。それが2度じゃ。こんな状況に耐えきれず自殺する一族の者も多い。子供が生まれて、ようやく一般人と同じような自由を手に入れる。しかし、その子供も儂と同じ境遇で再び育てられていく……負の連鎖じゃ。儂の3人目の妻も、結局それに耐えきれずに子供を産んでから自殺しおった……。ウェル。お前の祖母さんじゃよ。


 おう、そうじゃ。儂らの一族の生活に耐えきれずに逃げ出したヤツらもおったな。ガート村から来たお前なら解るじゃろう。ガンファじゃ。あいつは隙を見てタイタスから逃げ出したんじゃ。鍛冶屋の倅のバラガの手引きでな。儂ら一族の裏切り者じゃ。ヘラヘラとしおって……ガート村を真っ先に滅ぼして欲しかったもんじゃがな。なぜ逃げ出したヤツらが幸せな生活を送ってるんじゃ!!苦渋に満ちた生活に耐えている儂らを差し置いて!!そんなことが許されるのか?


 もう全て破滅してしまえばいいんじゃ。全て無くなれば……消えてしまえば……もうこの負の連鎖は無くなるんじゃ……



 †



 とんでもない話だった。カラヌイの話し声の端々に周囲への怨情が伝わって来る。カラヌイたちの置かれた境遇に同情もする。ガンファの過去に触れて、遣る瀬無さに身もだえしそうになる。

 

 でも、カラヌイの事を認めるわけにはいかない。俺は、俺の大切な人を守るんだ。その為には、カラヌイを止める!


「カラヌイ!そこをどけっ!!一族の境遇には同情する。でもなっ!だからといって自暴自棄になっているお前に付き合うことはできない!!」

 俺はカラヌイを睨み付ける。【威圧】も込めて……

 カラヌイは吹き飛ぶ。でも、またフラフラとした足取りで立ち上がる。

「どくのはお前じゃ!もう儂は嫌なんじゃ!!こんな忌まわしき一族でいることが……もう耐えられんのじゃよ……Fuuuuuuu……」

 カラヌイの身体から黒い霧のようなものが吹きだした。闇の精霊のような黒い霧。それがカラヌイの身体に纏わりついて、何かヌメヌメとした実体を持ち始める。目だけがギョロリと赤く光り、獣のような姿勢いでこちらを威嚇してくる。


 Fusyuuuuuuuu!!!


 今にも襲い掛からんと、ジリジリと距離を詰めてくる。ギリリと太くて禍々しい爪と牙が生えている。それは俺が知っているどんな獣でもなかった。


 ダッ!!


 それは地面を蹴って、俺に向かった爪を立てる。


「おじいちゃん!!」


 ウェルが思わず、その獣のかつての名前を呼ぶ。

 ビクリと獣は俺の目の前で爪を振り上げた体勢のまま静止する。


「……私は好きだよ?……私は今の生活、好き……だよ。嫌なことも……あるけど……おじいちゃんたちもいるし……。」

 ウェルがポツリポツリと言葉を吐き出していく。

「あのね……私、絡繰りが好きだし……一人で色々やるのが好きだし……周りからは気持ち悪いって言われるけど……それでも……私は今のままがいい。」

 ウェルは必死に言い放った。


「Fuuuu……Fuuuu……う、ウェル……」

 獣から黒い霧が流れだし、カラヌイの顔が現れる。

「おじいちゃん!!もうやめて!!」

 しかし、その言葉を最後まで言い終わる前に、再び霧に包まれた獣がウェルに爪を振るう。


 !!


 轟音を立てて爪が空を切る。

 

 俺はウェルを抱えて、獣の後ろに立っていた。

 次の瞬間、獣は真っ二つに裂け、黒い霧が噴出し、赤い血と混じって通路の天井を汚していく。

 

 ドサッ


 カラヌイの死体が倒れていた。


 俺は、爪が振るわれた瞬間、クロ子のスキル【時間跳躍(タイムリープ)】を使用したのだ。


時間跳躍(タイムリープ)】:Exスキル。時間を自由に操作することができる。MP10消費毎に1秒の時間を止めることが出来る。また、MP100消費毎に1秒前、1秒後の世界に飛ぶことが出来る。


 このスキルで3秒時間を止め、ウェルを救い出し、カラヌイに一太刀浴びせたのだった。



 すでにこと切れたカラヌイをウェルは黙って見つめていた。俺はウェルの目をそっと覆って、カラヌイの死体を火魔術で燃やし尽くした。嫌な臭いが鼻を突く。ウェルの目を覆った俺の手は、いつのまにかびっしょりと濡れていた。


 カラヌイの死体の焼け跡に残っていたのは、1本のレバーのようなもの。


【絡繰りの鍵】:レアランクA。異世界人が作り出したアイテム。高度な絡繰りを起動させるためのキーアイテム。多くの魔力を込めることでその規模も大きくなる。


 俺はそれを拾い上げ、ウェルに差し出した。

 ウェルはそれを大事に抱えるように受け取った。


「ウェル……お前たちの一族の闇は、俺が払ってやろうか?」

 すでに泣き止んだウェルに俺は話しかける。

 ウェルは首を横にフルフルと振る。

「……ダメ。それは……私の仕事。」

 俺は、自分が急に恥ずかしくなった。俺は何様だ!!闇を俺が払うだって!?そんなこと俺ができるわけがないだろ!!目の前の小さな少女は、これまで様々な業を背負ってきた一族を受け入れ、それらを自らの力で変えていこうとしているのに……

「そうか……俺にできることがあれば言ってくれ。」

 ウェルはコクリと頷いた。

 それきり再び無言になり、俺たちは奥に向けて歩を進めた。



 しばらく歩くと、巨大な扉が現れた。高さ3mほど、鉄製の重そうな扉だった。

 その表面はつるりとしており、鍵穴らしきものは見られない。

 ウェルはカラヌイの形見、『絡繰りの鍵』を取り出し、扉に触れる。

 ボゥっと扉全体が輝くと、ガシャンと形が少し変化する。見ると、鍵穴のようなものが現れた。

 ウェルは『絡繰りの鍵』を挿し込む。しかし、それ以上何も起こらなかった。





『遅れるなーーっ!!』

『狂える精霊たちとの交戦は極力避けるんだーーっ!!』


 私たちは、エルドランへ続く街道を馬で疾走していた。馬に乗ったタイタスの戦士隊も50騎ほど後ろに続いている。さらにその後ろにグラントータスに乗り込んだドワーフたちが続いている。総勢200名余り。

 途中、何度か狂える精霊たちと出くわしたが、馬の方が早く本格的な戦闘にまでは至っていない。


 前には白髪の少女サフィーナちゃんが私に抱えられるように鞍にまたがっている。 

 横にはクロウくんが馬を寄せてきた。


「アイリ。エルドランはまだか?」

「もう少ししたら世界樹が見えてくるはず……」

 そう。エルドランは世界樹に守られたエルフの大集落だ。でも、今はその結界がなくなっているという。


 次第に周囲の森の雰囲気が変わってきたのが解る。緑が濃く、深くなってきている。そして、どこか懐かしさを感じるものでもあった。


 しばらく走っていると、不意に煙の臭いが流れてくる。方向からするとエルドランからだ。そして、遠くに巨大な緑の壁が見えてくる。世界樹だ。しかし、それと同時に赤い柱が幾本も上がり、黒煙が立ち上っているのが見える。そして、さらに進むと剣戟や怒声が響いてくるのが解った。


 ようやくエルドランを囲む外壁が見えて来た。しかし、思った以上の状況だ。門があると思われる場所には魔物が大挙しており、いくつか壁に穴があけられ、そこから魔物の侵入を許してしまっている。


 後ろを駆けているドワーフたちからも動揺する声が上がる。しかし、エルドランの外壁の上から矢や魔術が飛んでいるのを見ると、まだ完全にエルドランが陥落していないことを示していた。


 クロウくんが、馬の腹を蹴り、全力疾走で門の前に集まる魔物たち突撃をかける。周囲には4本の片刃の大剣が浮かんでいる。1本2m近い大剣だった。


「おおおおおおぉぉぉっ!!薙ぎ払えっ!!」

 大剣は意志を持つようにクロウくんの周囲を飛び回り、近くの魔物の群れを蹂躙していく。魔物たちもクロウくんの突撃に気が付き、後方にいる私たちに顔を向けたが、すでにクロウくんは馬を反転させ、私たちの元へ帰って来ていた。


「穢れなき破壊者よ 彼の者たちを 焼き払え 『|豪火球《ファイアスフィア』」

 私はマールから解放してもらった力、火魔法で浮足立つ魔物の群れの中心に巨大な火球を放り込んだ。火球は中心で弾け、周囲の魔物を飲み込んでいく。でも、門を吹き飛ばさないように炎の威力を調整するということもできたのだ。


 ドワーフの戦士隊からは歓声が上がる。

 外壁にいるエルフはこの状況に呆気にとられているようだった。

 戦士隊の中からタイタスの族長ラガイオが進み出る。ついにグラントータスに乗った本隊150人のドワーフたちも到着したようだった。


『エルドランの民よっ!!我らはタイタスの民!!我はタイタス族長ラガイオであるっ!!』

 大音声が門前に響き渡る。

『旧友の窮地を知り、駆けつけて参ったっ!!ご助成仕る!!開門願いたいっ!!門前の魔物たちはこちらの方たちによって撃滅されたっ!!』

 私とクロウくんが前に出される。皆こっち見てる。クロウくんは何でそんなに堂々としてられるの!?

 でも、ここは私がお父さんとお母さんを守るんだっ!!


「私は……。」


『私はアイリーン。この世界樹に眠りし、グランディアとジャスリーンの娘。』

 言っちゃった……。エルドランのエルフはもちろん、ドワーフたちもザワザワとしている。


『何故に私に門を閉ざすのかっ!直ちに門を開け、私たちを受け入れなさいっ!!』

 こんな感じで良かったのかな……すこし偉そうに言い過ぎた?


 しばらく沈黙が流れた。


 ガガガガガガガガガガ……


 しかし、外壁の門がゆっくりと開き始めた。


『アイリーン様!ラガイオ様!そして勇敢なる戦士たちよっ!エルドランの民はあなた方を受け入れるっ!まだ周囲には魔物が多いっ!速やかに入られよっ!!』

 外壁の上に立った1人のエルフが受け入れを宣言する。少し傲慢な言い方な気がするけど……


「なんだよ。助けに来てやったんだから、まず『ありがとう』だろう。」

 クロウくんがぶつくさ文句を言っている。すごいまともな意見……ユウマさんが聞いたら喜んだだろうな。


 門の中に入ると、そこは大樹が至る所に伸びており、人家のようなものは見当たらない。よくよく見ると、木の中が住居のようになっているのだ。上を見上げると、太く大きく張り出した幹の上にも窓や階段、吊り橋のような物が見られる。


「うわっ♪木のお家なんだねー!うわっ、大きい木がいっぱい♪あ、あんな上にも窓がついてるよー♪」

 私の前で手足をばたつかせて、サフィーナは興奮している。馬から落ちないように抑えるのが大変なくらいだ。

 しかし、まだ周囲からは剣戟が聞こえる。暢気にエルドラン観光をしている場合ではなさそうだ。


(アイリ!!アイリーン様っ!!聞こえる?マールよ!早く世界樹へ向かいなさいっ!もう私も持ちそうにないわっ!!)

 突然、ネックレスが輝き、マールさんの声が私に響く。

(あれ?マールさん。エルドランにいるんですか!?解りましたっ!!今すぐ向かいますっ!!)


 私たちは騎乗のまま、エルドラン中央にある世界樹に向かう。途中、あちこちで狂える精霊に取りつかれた魔物とエルフたちが交戦している場面に出会う。私たちは、その都度、魔法や剣で対処していく。そして、とうとう世界樹の近くにまでやって来た時、私たちは目を疑った。


 世界樹の前に、あの炎の巨人、精霊王の分体がいたのだ……それも以前見た時よりも、はるかに巨大な姿になって。大きさで言えば、15mほどの大きさだろうか。そして、それだけではない。その分体と取っ組み合っている存在がいた。


 それは、長い年月を経た大樹のような肌をしていた。鬱蒼と茂る密林の緑を髣髴とさせる長い髪。そして、顔がマールさんだったのだ。巨大な15mマールさんが精霊王の分体と戦っているのだ。それも、全裸のような格好で……


 ぶふーーーーっ!!!


 隣りで盛大に赤い物がしぶいた。

 クロウくんの鼻血が噴火したようだ。ユウマさんに言われていたが、クロウくんってかなりのムッツリさんのようだ。にしても、あのマールさん、確かに全裸だけど……綺麗だけど……人間とは違う姿なのに……クロウくんってユウマさんとは違ったベクトルの変態さんなのかな……



 †



 ん?俺は、違和感を感じた。

 鼻血が止まらないような感覚……んー……眷属のサフィーナかクロ子が鼻血が出るような大怪我をしたんだろうか……


 いやいや、今はウェルから受け取った『絡繰りの鍵』に魔力を込めなければな。

 ウェルがタイタスの巨孔の奥にある鉄製の扉に、鍵を差し込んでも何も変化がなかったのだ。なので、俺が代わりに鍵に魔力を注いでみることにしたのだった。


 俺は『絡繰りの鍵』に魔力をゆっくりと注いでいく。すると……


 ガコン  ガコン  カチリ


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……


 ゆっくりと扉が開き始めた。


「成功だな。先には何があるんだ?ウェル。」

「…もう、あとは封印の部屋があるだけ。」

 それを聞いた俺は、扉を潜った。


 そこは、10m×10mほどの広い部屋だった。天井の高さも5mほどはあるだろうか……

 その中央に魔核石が置かれている。クリスタルの結晶のような高さ2mはあろうかという巨大なものだ。それが淡く輝いている。ということはまだ封印が完全には解けていないということ。だが、その輝きは今にも消えてしまいそうなほど弱々しく瞬いていた。


 俺は、ウェルを後ろに下がらせ、ピタリと魔核石に触れる。


 ドクン ドクン ドクン


 心臓のような鼓動が手のひらから伝わって来る。

 俺は、静かに目を閉じて魔力を込めていく。


 キィーーーン  キィーーン


**********


 ん?なんだ?頭痛がしたと思ったら、目の前の風景が一変した……


「どうやら、これで精霊王が封印されたようですよ。」

 大人しそうな男の子、中学生くらいか……。なんで白衣なんて来てるんだ?

「手こずらせやがって。我らが勇者様に掛かれば、こんな低級仙人の1人や2人物の数じゃねぇ!」

 こっちは大柄の高校生、やけにガタイが良いな。拳ダコあるから空手か?

「バーカ!ダイチのそういう適当な所が今回の騒動の発端でしょーが!」

 で、こっちはスレンダーな女子高生ってところか。茶髪ショートで北欧系とのハーフだろうか。綺麗な顔立ちをしている。

「誰がバカだよ!バカって言ったもんがバカなんだよ!バカアヤノ!!」

「まぁまぁ、2人とも。誰も怪我しなかったんですから、良かったですね。」

 こっちは中学生くらいの女の子。メガネをかけた図書室にいるようなタイプだ。


『あのー、おい!ちょっといいか?』

 俺は思わず声をかけていた。しかし、誰も反応しない。俺は見えないのか……手を伸ばすとスーッとすり抜けてしまう。幽霊にでもなった気分だ。


「でも、この封印って永遠に続くわけではないんですよね?」

 心配そうな顔で、図書女子が言う。

「それは、しょうがないですよ。これでも200年くらいは大人しくしてるはずですし……。」

 白衣男子がフォローする。

「そんな先の事まで俺たちが考えてやることはねぇだろ?この世界のヤツらに任せればいいんだよ!」

 筋肉バカのダイチがまた適当なことをいう。まぁ解らないでもない。あれ?俺も脳筋だからか?

「近くにハイエルフの国があるっていうし、ドワーフやエルフだってこの森にはたくさんいるらしいよね。ノアちゃんが心配するのは解るけど、各集落の族長さんに頼んでおけばいいんじゃない?」

 運動女子のアヤノが図書女子のノアにアイディアを出している。

「なら、僕がドワーフの大族長にこの穴の周りを厳重にしてもらうように頼んでみるですよ。僕のスキルを教えることができたら機械化した要塞になるはずですよ。」

「おっ!さすがオタク少年のミコトだな。でも、ファンタジー感を台無しにするような物を教えるんじゃねぇぞ!天上主様がうるさいんだからな。」

「わ、解ってるですよ……」


 うーん……これは過去の勇者パーティーなんだろう。白衣男子はミコトというらしい。恐らく、絡繰り術を教えたのはこの少年なのだろう。


 目の前の4人の勇者たちはそのあともガヤガヤと騒ぎながらも、この封印の部屋から退出していった。

 残されたのは眩いばかりの輝きを見せる巨大な魔核石。俺が見た時よりも真新しく、不思議な力が込められているのが解る。


<グフフフ……バカなヤツらだ。こんな封印すぐにでも破ってやるわ!>


 あー……なんか完全に封印できてないみたいだな。

 でも、俺が何かできるようなものでもなし……まぁ、このくらいの輝きだと封印不十分って解っただけでも儲けものか……


<はぁぁぁぁぁぁ!!!>

 魔核石がカタカタと振動する。

 うわ……これ、このまま放っておくとヤバいんじゃないのか?

 ダメ元で魔力を込めてみるか?どうせ触れられないだろうけど……ペタリ

 んあ!?触れるぞ。この魔核石。なんだってんだよ。まぁ、どれほどの魔力を込めればいいか解らんな。


 どんなもんだろう……とりあえずMP100ほどを……


<はぁぁぁぁぁぁ!!!なぜだっ!もうそろそろ封印が解けてもいいだろうに……>

 うん、これ確かに影響を与えてるよな。俺だけタイプスリップでもしてるのか?


 でも、まだまだ危険そうだな。追加でMP1000ほどを……


<ぐあぁぁぁぁ!!!なぜだぁぁぁぁぁ!!!意識が……意識が……遠く……な…る……>

 おっ、こんなもので十分だったのか。

 魔核石が虹色のような光を発する。なるほど、こうなるまで魔力を込めないと封印が完了しないということか……予行演習としては参考にはなったな。


<そうだろう?まぁ、実際、お前の魂だけを過去に送ったんだからな。>


 えと……その声は、お義父さん?


<だから!お前にお義父さんと言われる筋合いはないと何度言ったらわかるんだ!!>


 でも、名前知らないですから……


<グランディアだ!ハイエルフ王国の偉大なる王!!グランディア・ファンドラであーる!!>

 

 い、いや、急に威厳出されても……


<うるさいうるさいっ!!じゃあ、元の時間軸に戻してやるが、一つ頼み事がある。>


 恩着せがまし……い、いや、何でもないです。で、頼み事って何ですか?グランディアさん。


<うむ。封印の部屋から更に地下に続く穴が開いている。例の鍵を使えば、隠ぺいされている穴が解るだろう。その地下に続く穴は世界樹の根に通じている。そこにある魔核石を取り除いてもらいたい。それが我らの魔力を吸い続け、封印解除のための魔力として供給されているんだ。忌々しい魔核石だ!>


 解りました。善処します。


<なら、頼んだぞ!>


 キィーーン キィーーーン キィーーーーン


 俺は再び頭痛に襲われた。


***********



 誰もいなくなった黄金の魔核石が輝く封印の部屋。

 言葉ではない何かでの会話がなされていた。


 ふぅ……グランディア。助かったよ。


 いえ、天上主様。でも、これっきりにしてくださいね。クソ婿の為とはいえ、この時の私では、存在を脅かされるほどの魔力を消費したんですから。


 すまないね。グランディアとジャスリーンにはその分、ポイントつけておくからさ♪


 お願いしますよ。本当に……


 いつしか、この会話をしていた2つの存在は、その場から消失していた。

最後まで読んでくださってありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ