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35、狂える精霊

 †



 グラントータスは重さ1tを超える重量を誇り、馬なら4,5頭分の力を発揮する。特に山岳や重い積荷を引かせることにその真価があるといえる。その甲羅は、中央に少し窪みがあり、そこに人や物を載せることもでき、その積載限界は自重の2倍を超えると言われている。また、強い顎を持ち、下あごから突き出した巨大な牙によって噛みつかれると鉄の鎧もひしゃげるほどの威力がある。そして、甲羅以外にもゴツゴツとした岩のような鱗で覆われており、生半可な攻撃は通さない。一般的な魔物であるゴブリンはもちろん、オークなどの中型種であっても、後れを取ることはない戦闘力を持ちうる騎獣なのである。


 俺たちは今、そんなグラントータスが曳く、カラヌイの亀車? ややこしい馬車だ!馬車の護衛についている。俺、アイリ、クロ子はそれぞれ騎乗し、馬車を囲むように進んでいる。サフィーナはカラヌイと一緒に馬車の中にいる。


「あとどれくらいだ?カラヌイさん。」

 俺は馬を馬車に寄せ、手綱を取るカラヌイに尋ねる。

「ユウマか。いやーお主が護衛についてくれて助かったわい。あと3時間ほどじゃ。もうすぐ傾斜が強くなってくる。そろそろ馬を下りた方がよいな。足を痛める。」

 カラヌイの言った通り、街道は徐々に上り坂になってきており、それが次第に急になってきている。俺たちは馬を下り、カラヌイの馬車に乗り込む。空馬はそのまま馬車の後ろにつなげておく。


 周囲の森の深くなっていく。日差しも街道には差さず、昼間にもかかわらず薄暗い。

 ここまで魔物の襲撃などは一度もなかった。それに、獣の類もいない。いや、鳥の鳴き声や虫の声もなかった……。奇妙な森だった。その上、森のところどころに浮かび上がる奇妙な存在。それは、精霊だった。


 普通、精霊はどこにでもいる。美しい顔立ちの女性や子供の姿が多い。薄らと透けた存在。しかし、この森にいる精霊の姿は違っていた。醜悪な顔、そして実体を持った姿。そして理性を失ったような瞳。どれも俺が知っている精霊の姿ではなかった。俺もアイリもサフィーナもそんな精霊を見て、この森の異様さに気付いていた。


「アイリ、サフィーナ。見たか……。これで10体目だぞ。」

「はい……。私も、これまであんな精霊を見たのは初めてです。あんな姿……なにか無理やり狂わされているような気がします。」

「サフィーナも。見ていて気持ちいいものじゃないのー。なんだか可哀想。」

 アイリもサフィーナも不安そうにこの狂った精霊を見つめている。

 この精霊たちは特にこちらを気にした様子はなく、森の中を虚ろな瞳で彷徨い、時に奇声を上げている。

「お、おい。さっきから森の中をうろついているアレは何なんだよ。」

 実態を持つ精霊はクロ子にも見えるため、気味悪そうにクロ子は狂った精霊を見ている。

「あれは精霊だ。ただ、普通の精霊とは違うようだ。昨日の炎の巨人が影響してるのかもしれんが。」

 精霊王の復活と狂える精霊が無関係のはずがない。魔物が姿を見せないのも言い知れない怖さを感じる。


 俺たちが街道を進んでいると、目の前に小さな影がヒョコヒョコと動いている。

 まったく気配を感じなかった。また小さな影が現れる。ヒョコヒョコと次第にその数が増え、8つの影が現れたのだ。

 それは、ゴブリンのようであった。しかし、どこか違和感がある。滑稽な足取り。本来、ゴブリンは臆病な性格をしているため、様子を窺う事もなく無防備に、自らより大きいグラントータスに近づいてくることはない。それが特に気にした様子もなく、簡単に正面に現れたのだ。


「おい!皆気をつけろ!あれは普通のゴブリンじゃないぞ!何かおかしい!!」

 俺が皆に警告を告げると同時に、ゴブリンたちはこちらに向けて駆けだしてきた。俺とアイリ、サフィーナは弓を構え、一斉射する。文字通り矢継ぎ早にゴブリンたちに矢が吸い込まれていく。それは悲鳴も上がらない、あっという間の出来事だった。


「なんだよ。呆気ない。ただのゴブリンじゃないか。ビビったじゃないか。」

 クロ子は倒れていくゴブリンに悪態をつく。気のせいだったのか。

 

 しかし、ゴブリンたちはまたユラユラと立ち上がる。頭に矢が刺さったままのゴブリンすらいるのにだ。

「ユウマさん。ゴブリンから精霊みたいな影が!!」

 アイリが指さしたゴブリンを見ると、ゴブリンの傷口から陽炎のように立ち上る精霊が見える。しかも、それは、これまで森の中で見かけた狂える精霊に酷似していた。


「アイリ、サフィーナは後方から魔術で援護、クロ子はカラヌイさんの護衛!俺は接近し、糸でからめとる!」

 俺たちは馬車から飛び降り、臨戦態勢を取る。ゴブリンたちは立ち上がると、先ほどより滑らかな動きで走り出す。速い!!俺は、鋼糸を周囲の木々に飛ばし、前方に簡易バリケードを作る。また、左右には背後に回り込めないように鉄条網のような形状の鋼糸を張り巡らせたのだ。


「なに!?」

 ゴブリンたちは鋼糸をものともせずに殺到する。その結果、足や手が鋼糸に切り飛ばされる。バタリバタリと倒れ伏すゴブリンたち。しかし、それでもゴブリンたちは立ち上がるのだった。

 悪夢を見ているようだった。切り飛ばされた手や足の換りに精霊のような薄く透けた手足が生えていた。


 Gyagururuuru……


 俺は、接近して来るゴブリンから、鋼糸で細切れにしていく。しかし、それでもまだ動き出そうとピクピクと動いている。それが、後方から飛んできた火球で焼き尽くされる。


「ユウマさん!魔術は効くようです!!」

 振り返ると、手のひらをゴブリンに向けているアイリが目に入った。


「よし!俺が足を止める!アイリとサフィーナは魔術で止めを!!」

「「了解!!」」

 俺は迫って来るゴブリンたちを引き付ける。そして、次々と鋼糸を出し、ゴブリンたちを地面に磔にしていく。そこに、すかさずアイリたちの魔術が飛ぶ。


「よーし!サフィーナのとっておきいくよー!『エアバレット』」

 サフィーナは精霊魔法の唱詠を始める。


「……あ、あれ?なんか変だよー!!精霊が……精霊の様子が……」

 背後で、サフィーアの叫び声が聞こえる。

 振り返るとサフィーナが呼び出した精霊が実体化していた。それも狂える精霊となって……。

 狂える精霊は唸り声をあげ、近くのサフィーナに襲い掛かった。


「キャっ!!」

 クソっ!サフィーナの悲鳴が聞こえるが目の前のゴブリンたちがいるため駆けつけることができない。

 あと3体!!俺は冷静に残るゴブリンを磔にして、サフィーナの救出に向かおうとする。


 Gue!!


「キモい!!僕に近づくなっ!!」

 クロ子が狂える精霊に護身用のショートソードで切りかかっていた。通常、精霊は実体がないため武器では傷つけることができない。しかし、ショートソードは狂える精霊を深々と切り裂いていた。ガラスを引っ掻いたような不快な悲鳴を上げた後、精霊は光る粒子となり消えてく。


「クロウ。助けてくれてありがとー。さっきはやばかったよー。」

 サフィーナはあっけらかんとクロ子に礼を言っている。

「別に、キモいから斬っただけだし。」

 ぷいとそっぽを向くクロ子。


 アイリの魔術によって残りのゴブリンたちも焼き尽くされる。ようやく終わったようだ。

「アイリ。助かったよ。まだ魔力は大丈夫そうか?」

「うん。大丈夫だよ。それより、この辺りは精霊魔法は使わないほうが良さそうね。」

「そうだな。アイリも精霊魔法を使っていたら、ヤバかったかもな。」

 そうなったらゴブリンと狂える精霊に挟撃を受けているところだったのだ。


「む?おぉ!!助かったのか!ユウマ殿。助かったわい!あんなゴブリンみたこともないわい。」

 馬車の荷台に隠れていたカラヌイが顔を出す。


「皆、怪我はないか?」

 見た所誰も怪我はなかったようだ。サフィーナも狂える精霊の攻撃を上手く躱せたようだった。

「クロ子。サフィーナを助けれくれてありがとう。」

 俺はクロ子に頭を下げる。

「な、何だよ。僕は別に助けたわけじゃないし。キモいの来たから斬っただけだし。」

 素直じゃないな。それに、キモいから斬るってその発言はどうかと思うが……。

「じゃ、そういうことにしとくけど。サフィーナを助けたっていう事は事実だからな。」

「ふ、ふん!」

 ぷいっとクロ子は馬車に乗り込んでいく。


「がはははは!!あともう少しでタイタスの集落じゃ。この後もこの調子で護衛を頼むぞ!」


 その後、何事もなく坂道を馬車は上っていく。すると、しばらくすると周囲の木々がなくなり、岩肌がむき出しになっている丘に出た。丘の周囲は石積みの壁が見えてくる。エイラムほどではないが、頑丈そうな作りのようだ。


「あれが儂らの集落、タイタスじゃ。どうやら何もなかったようじゃな。」

 カラヌイは安堵したのか表情は明るかった。


 タイタスに近づいていくが、門らしきものは見当たらない。おもむろに馬車を降りたカラヌイは腰から何かを取り出した。何をするのかと見ているとガガガガガと何かが軋む音が聞こえてきた。音のする方向を見ると、岩肌にぽっかりと大きな四角い穴が開いていた。よく見ると下へ続くスロープのようなものが見て取れる。


「儂らの集落へは、この地下通路を通って入るんじゃよ。」

 カラヌイはレバーの取っ手のようなものを地面から引き抜くと、上機嫌でグラントータスにムチを入れ、地下へのスロープを下りていく。

「こんな入口があるんですね。全く気づきませんでしたよ。」

 俺が言うとカラヌイは がははは! と笑う。

「そうじゃろうとも。じゃが、ドワーフの絡繰り術をもってすれば、簡単なことじゃわい!岩を隙間なく加工し、レバー一つ動かせば、歯車と滑車で滑らかに動きだす。この馬車も人間たちの馬車より高性能じゃからな。」

 確かに、この馬車はウリリの馬車に比べると揺れが少なく車輪も滑らかなように感じる。ベアリングに秘密がありそうだな。それに板バネなども使われていそうだな。絡繰り術、確かガンファもこのスキルを持っていた気がする。

「ちなみに、動力はなんですか?」

 俺は思わず尋ねてみる。まさか蒸気や電気ではないと思うが……

「ほぅ……絡繰り術に興味があるのか?動力は魔力じゃ。魔核石に魔法陣を彫り込み、力を一定方向に流れるように加工しておる。」

 やはり、魔力が使われていたのか。魔核石。魔物退治が推奨される原因は、こういう事からだろうな。


 俺とカラヌイのやりとりをしているうちに下っていたスロープの傾斜が上りに変わっていた。遠くに外光が見える。そして、馬車がスロープを上り切り、ようやく地下通路を出ることが出来た。50mほどの距離だったろうか。

 

 そこにはすり鉢状の街が広がっていた。中央には巨大な穴が開いている。それを中心に螺旋状に道が伸びているのだ。街の形状は楕円形をしている。段々畑のように石造りの家々が連なっている。さらにワイヤーのようなものが中央の巨大な穴に幾本も伸びており、ゴンドラのようなものが行き来している。


「うへぇ……すげぇな。エイラムとは違うベクトルでファンタジーだな。ドワーフの文化レベルの方が人間より上なのか?」

「すごいねー。サフィーナこんな石ばっかりの場所初めて見たよー。」

 俺とサフィーナはタイタスの街並に感嘆の声を上げる。

「おぉ!解るか!ドワーフの技術力は全種族随一じゃ!と、そんなことよりも族長様に昨日の事を知らせなければ!!このまま同行してくれ。護衛の礼はその時渡そう。」

 カラヌイの馬車はそのまま、族長の館に向かう。グルグルと街の中心を目指して降りていく。中央の巨大穴の近くに建てられた武骨な石作りの建物が族長の館らしい。


 館の前までくると重々しい音を立てて門が開く。

「カラヌイ殿。お早いご帰還で。」

 門に立っていた甲冑を着込んだドワーフがカラヌイに声をかける。

「至急、族長様に報告することがある。この者たちはガート村の者たちだ。」

「はっ!お通り下さい!!」

 門番はガシャンと手に持った大斧を胸に当て敬礼する。

 俺たちは馬車を降り、カラヌイの後についていく。

 かなり複雑な造りの廊下を通り、大広間にたどり着いた。そこには大きな円卓があり、そこにはドワーフの老人が俺たちを待ち構えていた。白髪白髯のドワーフにしては大柄な老人だった。背後には数人のドワーフが控えている。


「カラヌイ。只今、ガート村から帰還いたしました。」

 老人に向かってカラヌイが深々とお辞儀をする。

「ご苦労であった。して、至急の用とは?」

 老人のバリトンボイスが石造りの館に響き渡る。

「はっ!族長様、端的に申し上げる。ガート村の精霊祭にて、精霊王の復活の兆しが見られ申した。」

「なっ!!それは誠か!!」

 族長が驚愕の表情を浮かべる。と同時に背後に控えていたドワーフたちが目に見えて動揺している。

「ここに来るまでに、狂える精霊を多数目撃しました。それにゴブリンの憑依した精霊にも襲われました。」

 俺は、混乱する族長たちにここまでにあった出来事を話した。

「そのような事が……。事態は切迫しているようじゃな。して、その方らは何者じゃ?ガート村の者だと聞いておるが?」

「俺はユウマ。ガート村に世話になっている者です。それから、異世界人です。」

 俺が異世界人と言うと、動揺していた背後のドワーフたちがさらにざわざわし始める。

「私はアイリーンです。ガート村ガンファの娘です。そして、こっちがサフィーナ、こっちはクロウです。」

 アイリがガンファの娘と言うと、不躾な視線がアイリを舐める。それに気づいたサフィーナがアイリの前で仁王立ちになり視線の主を睨み返している。ガンファに何かあるのか?にしても気分が悪いな。クロ子は特に興味もなさそうだ。


「この者たちの助力でタイタスまで無事に帰還することができもうした。彼らの功績に労いを!」

 カラヌイが族長に進言する。

「もちろんだ。タイタス族長ラガイオの名を持って、そなたたちの功に報いよう。ダンパ。褒美を持て。他の者は席を外せ。」

 背後の一人に族長は指示を出し、他のドワーフを退出させる。


 しばらくすると、俺たちの前に皮袋が置かれる。俺は黙ってそれを受け取り、懐に入れる。


「では、そなたらに改めて頼みたいことがある。」

 族長は改めて俺たちを見据える。やはり、このまま帰るということにはならないようだ。このタイタスという集落には何かがあるのだろう。


「俺としては、ガート村の安全の為にも、出来る限りのことはさせてもらいたい。ですが、あまりにも知らなさすぎる。精霊王とは何か。このタイタスに何があるのか……。アイリたちはどうだ?」

「私は……。私もガード村が危険な目に合うようなことは避けたいです。私にできることがあればやりたいです。」

 俺もアイリもガート村に被害が出ることが一番の懸念だと言える。不安の中にも決意を秘めた目でこちらを見つめている。

「サフィーナはよく解んない。けど、精霊たちがこのままじゃ可哀想だよ。元に戻してあげたいかな。」

「僕は、どっちでもいい。どうせ、ユウマについて行かなきゃいけないんだろ?」

 それぞれの答えが返って来る。でも、誰も俺に反対する意見はないようだ。

「そうか。……これが今の俺たちの気持ちです。それで、頼みたいこととはなんです?」

 俺たちは改めて族長を見据える。


「そうか……。頼みたいこととは、〝タイタスの巨孔”に封じられている精霊王の状況を確認してきてもらいたいのだ。異世界人ユウマよ。まずは、説明しよう。精霊王とタイタスのことを……」

 族長は重々しい口調で話を切り出した。



 族長の話によると、タイタスは本来、精霊王を封印するために作られた集落だそうだ。300年前、突然巨大な精霊が暴れだし、ガラハド大森林帯の生き物を襲いだした。それは人が住む集落も同様で、次々と集落が潰滅に追いやられた。

 そこに、異世界から来たといわれる勇者が現れ、巨大精霊と対峙した。しかし、あまりにも巨大な精霊を完全に滅ぼすことができず、勇者は1つの策を講じた。巨大な岩山を削り、巨大な穴を開け、その地下深くに封印するというものだ。それが〝タイタスの巨孔”だ。

 封印は無事行われ、巨大精霊は精霊王としての伝説を残して、現在にまで至っている。族長は代々、この封印される精霊王の怒りを鎮撫するための役割を持つと言われている。しかし、時が経つとともに、次第にそれは形骸化していった。また、巨孔から様々な鉱脈が発見されたことによって、現在では縦横無尽に坑道が走っている。現在では、熟練の抗夫でないと最深部への到達は難しいそうだ。

 昨日の年に1度の精霊祭もタイタスでは巨孔の前で形だけの儀式をして終わったようだ。この祭りは集落外部の人の出入りがないため、一部のドワーフのみが知る秘祭となっているそうだ。



「そして、精霊王を封印しておるのは巨大な魔核石でできた石柱となる。かつて巨竜の心臓から採れたといわれる魔核石を使っているそうだ。これが真紅の輝きを放っておれば正常に封印がなされているということになる。」

「で、もしも、封印が解けているような事態になれば、族長はどうされるおつもりですか?」

 俺は気になっている点を尋ねる。現に、炎の巨人を見ている者としては、すでに封印は解けているのではないかという考えがよぎる。

「それは考えにくい。もし封印が解けているなら、この辺り一帯はすでに消し飛んでいるだろう。じゃが、何かの理由で封印が解けてなお、精霊王が動いていないとなると……それも由々しき問題となる。」

「なぜです?精霊王が暴れていないのであれば、それはいいことなのでは?」

「精霊王が暴れないことなどあり得ない事じゃ。破壊の化身のような存在じゃ。それが何かの為にその機を待っているとすると、考えるだけでも恐ろしい……。異世界人であるユウマよ。このようなことを聞くなど筋違いであるが、聞いておきたい。そなたらに精霊王の封印が可能か?」

 うん、すごいこと聞くよね。

「本当に筋違いだな!自分らが今までサボってたクセに危なくなったら異世界人に頼ってばっかり!ふざけるなって感じだよ!!」

 これまで黙っていたクロ子がキレる。確かに、クロ子の言う通り都合がいい話だ。俺は、クロ子の肩に手を置き、これ以上エスカレートしないよう抑える。

「待て。クロ子。でも、確かにふざけるなって話だ。正直に言って、俺たちに精霊王の封印なんてできる力はない。そもそも封印をどうやってやるのかすら知らないからな。」

 俺は族長を睨み付ける。少し【威圧】を込めて。すると、座っていた椅子からズリ落ちそうになっている。しかし、ここで族長を脅しつけたところで事態の解決にはならない。


「そ、そうか……す、すまなかった。」

 族長が委縮したようにこちらを窺う。

「ただ、精霊王の封印を確かめることについては吝かではありません。坑道に詳しい物を1人つけてもらえば、俺たちで行ってきますよ。」

「ありがたい……うってつけの者がおるのでそれをつけよう。」

 族長は少し安堵した表情になる。

「それから俺からも1つお願いがあります。このことは、最早タイタスだけの問題ではない。できれば、エルフの集落、エルドランでしたっけ?そちらにもこの事態を知らせていただきたい。」

「むぅ……それは……。」

 族長の言いよどむ。

「ユウマさん。昔からここタイタスとエルドランは仲が悪くて有名なんです。族長さんが快諾しないのはそのことが原因だと思います。」

 アイリが俺に、タイタスとエルドランの関係を教えてくれる。やっぱりドワーフとエルフは仲が悪いってのはテンプレなんだな。


「体裁など今は気にしている場合じゃないでしょう。被害が出始めてからじゃ遅いんですよ。」

 俺が族長に詰め寄る。

「うぅ……うむ。解った。エルドランの件、承知した。」

 渋々といった形で族長が頷いた。面倒くさい奴だ。偉い奴ってのは責任とるのも仕事だろうに!


 その時、広間に1人のドワーフが走り込んでくる。

「族長様ーーー!!魔物です!!魔物が集落内に入り込んできましたっ!!」


 俺たちは族長たちと共に館を出る。そして、見上げると、上空に無数の魔物たちが浮かんでいた。


 なんだありゃ!!ゴブリンやオークが浮かんでるっ!!



最後まで読んでくださってありがとうございます。

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