34、蠢動するモノ
†
俺は、夜明け前には目が覚めていた。薄暗い部屋の中、隣には生まれたままの姿のアイリが寝ている。あぁ、俺たち……そういうことか。夢じゃなかったんだな。寝ているアイリの頬をそっと撫でていた。
もう少し寝るかと目を閉じかけた時、アイリの身体が淡く輝いていることに気付いた。
なっ!?
その輝きが次第に強くなり、部屋の中が真っ白な世界に包まれる。
白い世界の中、さらに強い白の塊が2つ。
どこだ……ここは。
さらに強い白は、こちらを出迎えるように小さく揺れる。
さらに強い白は、こちらを警戒するように小さく揺れる。
俺は【隠形】を使い、気配を消す。何かの襲撃かもしれない……。
<オォ オォ 消エタ 消エタ。 オ迎エ デキルト 待チ遠シ カッタノニ。>
<オォ オォ 消エタ 消エタ。 ヤハリ 邪ナル者 ダッタノダ。>
なんだ?声ではない声が響く。それは自分の足元から伝わって来るかのような意志。
<アァ アァ マタ出直スカ。 必ズ 再ビ 逢イニ 来ヨウ。>
<アァ アァ モウ来ヌゾ。 モウ 二度ト 逢イニ 来ヌゾ。>
さらに強い2つの白は、それぞれの意志を告げると、周囲の白に溶けるように消えていく。
そして、白い世界は徐々に薄れていき、再び薄暗い部屋が目の前に広がる。
何だったんだ……今のは……。
目の前のアイリは、先ほどと変わらず、気持ちの良さそうな寝息を立てていた。
俺は、再びアイリの頬を撫でると、再び寝ることにした。
†
今日は、朝から村人たちは浮かれていた。村祭りの初日。
村の中央には、巨大な木組みが高々と組まれている。祭りの最終日に火をつけ、ガラハド大森林帯の精霊たちに豊かな恵みに感謝をするということだ。
俺たちは早々に朝食を済ませると、ブラブラと村の中を見て回る。小さいながらも家々が屋台のような出し物を出している。それを冷やかしながら見て回ると、前の世界の祭りの夜店を思い出す。前の世界でも、祭りの宮入りがどうとかいうよりも、夜店の屋台を回ることが祭りのメインイベントだったように思う。
ふと見ると、ライカさんとクロ子が家具を家に運び込んでいた。昨日の家に家具の手配をしていたようだ。家の前にはリヤカーのようなものに家具が満載されていた。周囲の家で使っていない家具を格安で譲ってもらったそうだ。素直にクロ子もベッドや机、イスを運んでいる。レベル14のステータスなら苦もせず運べるだろうな。小柄な少女が一人でベッドを運ぶ姿はシュールだったが……。
「あらあら、ユウマさん、アイリさん、サフィーナちゃん。おはようございます。素敵な家で私もクロ子も喜んでます。」
ライカが俺たちに気付いたのかぺこりと頭を下げる。クロ子は俺たちを見ると、顔を顰めているが。
「言ってくれれば、お手伝いしたのに。また、この村でも魔法薬店を開くんでしょ?」
「そうですよ。あ、カウンターとか棚とか新しく作るなら村の大工さんを紹介しますね。」
「サフィーナも手伝うよー♪DIYだー♪」
それぞれ俺、アイリ、サフィーナだ。まぁ、サフィーナの言葉のチョイスはそっとしておこう。
「皆さん、ありがとうございます。ゆっくりやっていきますから。それに、昨日のうちに村長さんから色々と便宜を図っていただきましたし。皆さんのおかげでなんとかやっていけそうです。」
再びライカさんが深々と頭を下げる。
「いえいえ、俺は何もしてませんから。あ、クロ子お借りしますね。おーい。クロ子も村の屋台回るぞ。拒否権はない。奢ってやるから来い。」
「なっ!?なんで僕がお前たちと一緒に行かないといけないんだよ!それに空気よめ!家に家具は込んでるの見て解んないのかよ!」
本当に面倒くさい奴だ。チラチラと屋台の方を見てたくせに……。
「よーし!じゃあ、皆で家具を運び込むぞ。アイリとサフィーナは軽い小物類を頼んだ。」
「「了解です!」」
クロ子を入れて4人でやるとあっという間に運び込みは終了した。俺とクロ子が食器棚やチェストのような物をドンドン運び込み、使いやすいようにガンファの家と同じような配置をしていく。ライカさんも多少指示を出すがニコニコと見ている時間の方が長かった。食器類や調理器具などはアイリとサフィーナが分担してそれぞれ棚にしまっていく。1時間もしないうちに終わったのだ。
「まぁまぁ、本当に早く終わりましたね。皆さんお疲れ様。じゃあこれで皆さんでお祭りを楽しんできてくださいね。」
ライカさんはそう言って、懐から銀貨を2枚取り出す。
「俺たちはいりませんよ?クロ子のレンタル料として手伝っただけですから。」
「僕はDVDか!!」
クロ子は怒ってるが、ライカさんはクスクスと笑っている。
「じゃあ、それはクロ子が全部もらっとけ。それじゃ、クロ子借りてきますね。夜にはお返ししますから。」
「行ってらっしゃい。クロウ。あなたの事だから知らない村を一人でぶらつくなんてできないでしょう?」
ライカさんは何でもお見通しのようだ。
クロ子はブツブツといいながら俺たちについてくるようだった。素直じゃない奴だ。まったく……。
祭りということで、近隣の村や集落からも来訪者が多いみたいだ。見知らぬ馬車や旅装をした人の姿が目立つようになってきた。その中には見覚えのある豪華な馬車がある。
あれは確か……クソエルフのザハルの集落の馬車だ。あのエイラムの冒険者ギルドの元サブマスターのカノンもあの集落出身者……全くもって良い印象が皆無の馬車だ。
他にも巨大なカメのような生き物に車を引かせているカメ車?などもある。あんなのエイラムでも見たことないぞ?面白いので近づいてみると何か揉めているようだ。ん?あれは……馬バカのカインツか?
『馬鹿なことをいうな!!騎獣の最高峰は馬に決まっているじゃないか!何より美しい!ゴツゴツしたグラントータスなんか比較にならない!!』
『何をバカなことをいうとるかー!!グラントータスこそ至高!!力強さなど馬なんて生っチョロイわ!それにこの甲羅の光沢!色の奥深さ!美しさもグラントータスの圧勝じゃわい!!』
うん、どうやら馬バカとカメバカの言い争いのようだ。関わらない方がいいな。
カメバカの方はドワーフのようだ。ゴーグルのような物を頭につけている。村では見ない顔だ。旅人か?
あ、ヤバ……カインツと目があった。
「あぁーー!!これは馬の良さを誰よりも解っているユウマじゃないかー!帰って来たんだね!お帰りー!!ガンファの家に繋いであった馬たちはユウマたちのだったのか。」
俺は目を合わさず、通り過ぎようとするが両肩をガシッと掴まれる。は、速い!!俺はアイリたちに助けを求めると、目を逸らされた。な、なぜだぁー!!泣くぞー!!
「ワーイ アッチの屋台 オイシソー サフィーナ向こうに行ってミルネー。」
「あぁー、サフィーナちゃん。そんなに走ったらアブナイヨー。シカタナイナー。モー。」
「あ、おい。その……アイツはあのままでいいのか?あ、おい。待てよ。僕を一人にするなよ!」
上からサフィーナ、アイリ、クロ子。なんでこういう時の連携はバツグンなんだよ!!
「聞いてくれるかい?ユウマ。この人が馬の良さを全く解ってくれなくて困ってるんだ。」
いや、聞きたくないですが……。
「なーにを言っとるか。お主こそグラントータスの良さを全然解っとらんではないか!!」
うわ……カメ版カインツだ。カインツだけでも厳しいのにそれが2倍……。耐えきれる自信がないぞ!
「あぁ、……はい。どっちもいいですよね。……へぇ。なるほど。すごいですねー。」
ここは全自動頷き装置起動だ!『へぇ、なるほど、すごいですね。』を永遠繰り返すことで俺は嵐を過ぎ去るのを待っていた。
どれくらい時間が立ったのだろうか……。あ、夕日がまぶしいぜ。って、俺、ほとんど屋台回ってないんだけど…。あ、アイリたちだ。両手に串焼き満載だ。どんだけ好きなんだよ!って、おいおいおいそのまま行き過ぎるなよ!目合ったよね?今。確実に目が合ったよね?うわっ……通り過ぎた。クロ子が憐憫の眼差しを向けてくる。見るんじゃねぇよ!チクショー!あぁ、ウソウソ!助けて……くれなかった。はい、解ってましたよ。うん。
ん?あれ?カインツとドワーフがこっちをキラキラした目で見てるけど……俺、また何かやらかしたっけ?
「おぉ!!さすがユウマだ!そうだよね。馬もグラントータスも美しいよね。それぞれの美しさがあってもいい。そういうことが言いたかったんだね。目から竜鱗が落ちたようだよ!」
いやいやいや、なんか納得されてるし。で、なんだよ目から龍鱗って!今までほぼ何も見えてなかったって事じゃねぇか!!ん?ある意味あってるけども……
「お主、若いのになかなかの考えを持っておるの。人間にしておくには勿体ないの。グラントータスも馬もそれぞれの機能を追求した姿かたちをしておる。お主はそう言いたかったんじゃな。」
うんうん。って俺、頷いてただけで、どうやったらそんな解釈できるんだよ!!
俺たちはなぜか熱く肩を組み合っていた。……何だ?これ。
「おぉ、まだ名乗ってなかったの。儂はドワーフの集落タイタスからやって来たカラヌイじゃ。ガート村にはタイタスの代表ということになるかの。」
カラヌイと名乗るこのドワーフはどことなくガンファに口調が似ている。
「あぁ、ご丁寧に。俺はユウマといいます。今、この村のガンファの所にお世話になってます。」
「おぉ!!あのヘタレのガンファ坊主の居候か!お主ほどの男ならうちの集落で面倒みてやるぞ!!」
ガンファ……ヘタレだったのか。しかも、坊主扱い……何者だよ。この人。
「えと、ガンファのお知り合いですか?」
恐らくタイタス代表とかだから偉い人なんだろうけどな。
「おぉ、うちの集落にバラガもガンファも住んでおったからな。まぁ、昔馴染みじゃな。あやつがちっこい頃、よくハナタレてビービー泣いておったわ。がはははははは!!!」
おぉ、ガンファの意外な過去が明らかに!!まぁ、あんまり興味ないけどな。
「おい!カラヌイ!余計なことばかり抜かすな!何しに来やがった!!」
振り返るとガンファが立っていた。
「おぉ、噂をすればハナタレガンファか。何しにも何も、お主の兄貴に呼ばれて祭りに参加しに来たんじゃがのー。」
「なら早く用件を済ませて帰りやがれ!!」
「アホか。祭りの最終日の明日まではいるに決まっとるだろうが。」
完全にカラヌイペースだ。うん、俺、もう撤退していいよね。【隠形】!!
俺は物理的に姿を消し、アイリたちのもとに向かった。
「うるさいうるさい!!ユウマもあいつの言うことなんか……ん?ユウマ?どこいったー!!」
付き合いきれんわ!!
「お、おい!お前ら、さっきから食べてばかりだけど、大丈夫なのか?」
「ええ。これくらいどうってことありませんよ?それより、クロウくんもどうです?オイシイですよ?」
「喰え喰えー!サフィーナの串焼きが喰えねーのかー?」
……クロ子がアイリとサフィーナに絡まれていた。それにしても、アイリたちの後ろにある串の山……全部食べたわけじゃないよね?たまたま多くの人が串を捨てた所に立ってるだけだよね?怖くて聞けんぞ。
「お、いたいた。クロ子!ガート村はどうだ?楽しんでるか?」
とりあえず助け船を出しておこう。このままアイリたちに勧められるまま食べ続けるとクロ子、決壊するだろうからな……。
「ふん。田舎の祭りなんて、大したことないな。」
の、割には屋台で売ってた革のネックレスを買って早速つけてるし!グレイウルフの爪がついてるゴツイアクセサリーだ。
「そうか。で、そのネックレス気に入ったのか?」
「べ、別に……適当に選んだだけだ。」
「ぷぷっ、クロ子ねー。そのネックレス選ぶのかなり選んでたんだよー。牙と爪どっちがいいかーとか言ってたしー。」
サフィーナがさらっと暴露する。
「うわわわ!!言うなよ!ち、違うからな!ば、ばあちゃんへの土産だ。それを選んでたんだよ!!」
ちなみに爪の方のネックレスはライカさんへのプレゼントらしい。なかなか可愛い所があるじゃないか。まぁ、プレゼントのチョイスはノーコメントだが……。
「にしても、アイリー。カインツたちに絡まれたの助けてくれよな。あいつらの話長いんだから。目が合っただろ?必死で訴えたのに……。」
スルーしたアイリを恨みがましく見つめる。
「え、えっ?そ、そーだっけ?ユウマさんがカインツさんたちと盛り上がってるから邪魔しちゃワルイカナートオモッテ…」
と、スーッと目を逸らす。
「俺の目を見てそれを言えるか?」
ジト目でアイリの顔を覗き込む。
「近い近い……あはははは。私も巻き込まれたくなかったの。ごめんね。テヘっ♪」
クソー!!なぜだー!!カワイイからもう90%くらい許してしまっている俺がいるぅー。あ、最後のテヘっ♪でもう何もかも許してしまっていた。いいんだよ。気にしてないよ?俺。
『あー!あれはアイリじゃないか!久しぶりだな。ん?私だ!誇り高きエルドランの民、ザハルだ!!』
うわー、またややこしい奴が来た。アイリが助けを求めてこちらを見てるな。やっぱり嫌われてるよな。アイリにさっきの仕返しをしてやろうかと思ったが、困った顔をしたアイリを俺が放っておけるはずないじゃないか!!俺はアイリの手を取って逃げる。なぜかアイリは楽しそうについてくる。
『ん?アイリー!!どこだーー!!どこ行ったのだーー!!アイリー!!』
アイリは面白かったのかケラケラと笑っている。俺もつられて笑っていた。
その後、俺たち屋台を回り、祭りを楽しんだ。アゴラとペギーの狩人兄妹がやっている〝なんちゃってダーツバー”やマールがやっているお菓子屋、ガンファが作った打ち上げ花火など、祭りは盛り上がりを見せた。それは最終日も変わらず、歌ったりお酒を飲んだり、絡まれたり、イジられたり、逆上したりと村の皆と祭りを楽しんだ。
事件は祭りのメインイベントで起こった。
村の広場に組まれた木組みに火がつけられた時、巨大な炎の柱が点を焦がす。しかし、その炎は収まることはなく、すさまじい勢いのまま炎が人のような形を作っていく。まるで炎の巨人が膝を抱えて座っているような姿が夜の闇に浮かび上がる。
村人たちはその異様な光景に息を飲んだ。炎が燃え上がるゴォォゴォォという不気味な音がガート村を包む。次第に、膝を抱えていた炎の巨人がゆっくりと体勢を起こし、立ち上がる。20mほどの高さがあるだろうか。それを見て逃げ惑う村人たち。俺は、あまりにも現実離れしたその光景に息を飲み、ただ茫然とするしかなかった。
巨人は俺たちを睥睨するようにゆっくりと首を回す。そして、腹に響くような重低音が大音量であたりに響き渡る。
<<我、今 蘇リ。 我、破壊ヲ好ム 者ナリ。我 再生ヲ望ム 者ナリ。>>
炎の巨人が再び、姿を変えていく。木組みから燃え上がる炎を吸い上げるように、巨人は球体に姿を変え、ゆっくりと空へ上昇していく。そして、ある程度の高度に達すると西の方角へ高速で飛んでいった。
ガラハド大森林帯の深部の方角だった。アイリから発せられた白い光や炎の巨人など、次から次へと謎の現象に会い、正直、俺はどうしていいのか解らなくなっていた。
「あぁ!!あぁー!!……あの方角には儂らの集落、タイタスがある。何ということじゃ……まさかこんなにも早くに封印が解けるとは……」
カラヌイが悲嘆に暮れている。
「あれは何ですか?封印とは何のことですか!!」
俺は膝をついたカラヌイに問いかける。
「あれは……〝絶望”じゃ。ガラハドの精霊王が……目覚めたのじゃ……。」
カラヌイは呆けたように、ポツリポツリと言葉を吐き出す。
「おい!!皆!!祭りは中止じゃ!!村人は家へ戻れ!何が起こるか解らん!!むやみに外へ出るな!」
ガンファが村人へ避難誘導を行う声が聞こえてくる。
俺は混乱する人ごみの中、バラガさんを見つける。
「カラヌイさんから聞きました。バラガさん。精霊王って何なんですか!」
「おぉ、ユウマさん。精霊王とはガラハド大森林帯を創造したと言われている伝説の大精霊です。300年前に一度、目覚め大森林帯の多くの集落を破壊したと伝わっています。過去の復活では、異世界からの勇者によって封印されたと言われていましたが……まさか、このタイミングで目覚めるなんて……。」
300年前?……もしかして、マールの言っていたハイエルフの王国滅亡にも関係するのか?
「異世界の勇者……。」
俺の呟きは混乱する喧騒にかき消されていった。
祭りを楽しみに訪れた旅人や商人、近隣の村々の人々は、急遽、村の広場に立てられた大テントで夜を明かすことになった。その他にも、エルフの大集落代表者のザハルとドワーフの集落代表者のカラヌイは村長のバラガさんの家に迎えられる。その間も、村の狩人たちを中心に異変が起こらないか、警戒に当たった。
もちろん、俺も狩人たちに混じって警戒にあたる。村の周囲を探ってみるが、魔物はもちろん、動物などの気配もなかった。
そして、不安な夜が明け、朝靄に包まれたガート村。だが、警戒に当たる狩人たちの顔に余裕はなかった。それぞれ、目の下にクマを作っている。
村は昨日の祭りの賑わいとは打って変わり、ゴーストタウンのようにひっそりとしている。
ただ、一か所だけ怒号が飛び交う場所があった。
それは、村長バラガの家からだった。
『儂は、一旦タイタスへ戻り、今回の件を族長殿にお伝えするんじゃ!!一刻も早くな!!』
『落ち着いてください。あの巨大な炎の巨人が向かったのはタイタスのある方角です。単独での帰還は危険すぎます。』
『儂のグラントータスなら多少の魔物など物の数ではないわ!!』
『……そんなことどうでもいい!!早く私をエルドランへ送り届けろ!!こんなチンケな村の祭りなどに来たばかりに、こんなことに……。護衛を10名ほどつければ文句もいわん!!早くしろっ!!』
家の外までカラヌイ、バラガさん、ザハルの声が聞こえてくる。相変わらずザハルは好き勝手言ってるな。だから護衛の一人もつけられず、寄越されるんだよ!!ザハルってもしかして、左遷されてここに来てるのか?まぁ、今はそれどころではない。
バタン!
扉が激しく開けられ、肩を怒らせてカラヌイが出てくる。
「そんな暢気に待ってる時間が惜しいわ!!バラガ!お主の故郷でもあるタイタスじゃぞ!」
そのままグラントータスを休ませている厩舎に向かうカラヌイ。
「待って!待ってください!!せめて、うちの村から護衛を連れて行って下さい。あ、ユウマさん。帰って来て早々、申し訳ないのですが……。」
バラガさんは俺に気付くと、言いにくそうに話しを切り出す。
「あぁ、話は外まで聞こえていたので……。カラヌイさんをタイタスという集落まで護衛すればいいのですね?解りました。」
俺はバラガさんの言葉を継いで護衛を承諾する。何か解らないことが起きている。危険の度合いは未知数。俺がやれることは何でもやってやる。ここは、故郷なんだから。その原因を突き止めてやる。俺は、そんな気持ちに突き動かされていた。
「本当にすいません。今、カラヌイさんを待っててもらいますから準備をよろしくお願いします。」
「解りました。20分時間を下さい。」
俺は、サフィーナに意識を飛ばして、状況をアイリとガンファに説明してもらう。その間、俺はライカさんの家に向かう。
「ライカさん。クロ子をお借りします。この近くのドワーフの集落まで代表者の人を護衛してきます。何かあったらガンファか村長、あとはマールさんを頼ってください。」
俺がライカさんの家につくと、ライカさんも村での事態を把握していたのか、すぐに快諾してくれた。
「昨日の炎のデカブツもついでに倒せばいいじゃん。僕のスキルを戻してくれたら簡単にできそうなんだけど。」
クロ子が軽口を叩く。ただ、今、返すとまた暴走しかねない危うさがクロ子にはある。
「そのスキルありのお前に俺は勝ったんだから、問題ないだろ?今回は、あくまでも護衛だ。行くぞ。」
「はいはい。行けばいいんでしょ?行けば……。」
渋々といった感じでクロ子が続く。
(ユウマ。こっちの準備はできたよー。このまま大きなカメさんの所に行って待ってるからー。)
(おぅ。こっちも今からそちらへ向かう。)
サフィーナと交信し、俺とクロ子は厩舎へ向かった。
ようやく朝靄が晴れて、夏の日差しが肌を刺してくる。
俺は言い知れない不安を感じるまま、厩舎への道を急いでいた。
最後まで読んでくださってありがとうございました。




