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33、故郷へ

 †



 今、俺たちは森の中を駆けている。全員騎乗している。馬の数は3騎。

 俺の前にはサフィーナが乗っている。

 ほかの2騎には誰が乗っているかというと……


 白馬にはアイリが。俺の乗馬の先生だ。クロ子が目覚めてから1日、みっちりと訓練した結果、馬の全速力、ギャロップで走らせることができるようになったのはアイリのおかげだ。


 鹿毛にはクロ子とライカさんが。あの後、ライカさんの釈放が決まったのだ。ライカさんは闇ギルドが干渉してくることを恐れ、店をたたみ、俺たちと同行することとなった。クロ子って意外とおばあちゃん子だからな。色々と言い訳はするが、ライカさんの事が心配のようだ。


 ちなみに、俺の馬は青鹿毛。いわゆる黒馬だ。えっ?黒が好きなのかって?いや、たまたまだ!クロ子が黒馬を乗りたいとゴネたが、ここは厳しくしつけないとな。うん。ということで、俺の馬になった。


 俺たちは、今、ガラハド大森林帯に向かって馬を走らせている。馬車の旅よりかなりペースが速い。このまま何もなければ、明日にはガート村へ到着するだろう。

 そう。俺たちは今、ガート村へと帰っているのだ。


 ガート村では年に1度の村祭りがある。それに間に合うように帰還しているのだ。元々、ガート村を出る時、ガンファとは祭りには帰って来ると約束をしていた。俺たちは、準備が整うと、ウリリたちに挨拶して、エイラムを離れたのだった。


「うわーー♪速い速ーーい♪イケイケーーー!!」

 サフィーナが無邪気に足をバタバタしている。うん、それやめようね。


 今でこそご機嫌だが、エイラムの街を離れると告げたときは、ブーブー言っていたのだ。

 理由はエイラムの屋台めぐりができなくなるとか……そのせいで、エイラムから離れる前に、屋台で大量の串焼きを買ってインベントリに入れて持っていくということで、ようやく機嫌が直ったのだ。


 少し日が傾いてきた。そろそろ馬を休めて野営の準備に入るのが良いだろう。俺は手で合図をして、街道沿いに馬を止める。馬に草を食ませ、軽くブラッシングをしてやる。アイリとクロ子も同じように馬の世話をしている。これもアイリから色々と教えてもらったのだ。ちなみにアイリの馬術の師匠はガート村のカインツらしい。

 クロ子もブツブツ言いながらも、おっかなびっくり馬にブラッシングをしている。ライカさんはそれを目を細めて眺めていた。動物セラピーという奴だろうか。クロ子の目に若干、年相応の幼さが見える。それまでは何事にも無関心で、自己中だったのにな。


 馬の世話が終わると、サフィーナがたき火をおこしてくれていた。さらに、周囲には光魔術の明りを複数灯してくれているため、かなり明るい。

「ユウマー。たき火と明りはバッチリだよー。あとは串焼きを出して焼くだけー♪ジュルリ……。」

 やけにテキパキと手伝ってくれていると思ったが、串焼きが目当てだったのか。まぁ、あげるんだけどね。1人に5本ほどの串焼きを出して、炙る。すでに調理済みで、温かいが気分的なものだろう。


 それぞれが串焼きを齧り付いている。意外にもライカさんは健啖家でガンガン食べている。

「皆、食べながらでいいから聞いてくれ。ライカさんをこのままガート村の一員になってもらおうかと思ってるんだが、どうだろう?ガート村なら心強い人たちもいるし、ライカさんも落ち着いて暮らせると思うんだが……。」

 俺は、皆に向かって話しかける。

「こんな年寄りのことまで気にかけてくれたんですね。私には何の異存もありません。ユウマさん。貴方さんの思うようにしてください。私もこの受けた恩を少しずつ返していきたいと思ってますから。」

 ライカさんは、すべて受け入れてくれるという姿勢だ。まぁ、この人の事だからどうなるかはわかってたんだろうけどな……。

「村長のバラガおじさんには、私からもお願いしてみます。きっと皆喜んで受け入れてくれますよ。なにせ、あんなにすごい魔法薬の本を書いちゃうような人なんですから。」

 アイリもニコニコしながら、ライカさんを見ている。

「頼むな。アイリ。あと、俺は祭りが終わったらまたエイラムの街に戻るつもりだ。あとは、他の場所もいろいろ言ってみたいと思ってる。」

「サフィーナはユウマについていくからねー。ご主人様ー♪」

「あ、あぁ。サフィーナありがとな。でも、その呼び方はダメだぞ。俺が死ぬからな。社会的に。」

「はぁーい♪ご主人様ー♪」 

 うん、この子は確信犯だね。串焼きの追加は取りやめとしよう。

「私もユウマさんについていきます。ガート村に帰った時に父さんと話してみます。」

「あぁ、俺からもそれは話す。ガンファなら解ってくれるだろうから。」

 ついに言うのか。あのセリフ……『娘さんを俺に下さい。』 うわぁ、考えたら緊張してきた。


「あと、クロ子。お前も俺たちと一緒に来てもらうからな。」

「なっ!?なんで僕が!!」

 クロ子が噛みついてくる。

「はい。ユウマさん。その子は貴方さんの思うままに扱いてやってください。まだまだ未熟ですのでご迷惑をお掛けしますが……。」

 ライカさんが割って入る。どうせ、これもライカさんのシナリオ通りなんだろうけどな。

「なっ!?ばあちゃん!!ばあちゃんも僕を捨てるのか!あの親気取りみたいに!」

 クロ子が食って掛かる。

「クロウ。あたなはユウマさんのところでもっと強くなりなさい。力は強くても人間的にはまだまだ未熟。何のために力を使うか。自分はどうしたいのか。どう生きていくのか。その覚悟が足りない。それに、この世界は自分一人だけじゃありません。周りの人たちとどうやって暮らしていくのか。そういうことも色々と学んでいってほしいの。今、私の言ったことにあなたはしっかりとした答えを言える?」

 ライカさんはクロ子に諭すように一つ一つ話していく。

「僕は……僕は………。」

 何かを言おうとするが、言葉が続かないでいる。

「はい。決まりな。クロ子は俺たちと一緒に行動するってことで!」

「勝手に決めるな!僕がやりたいことは僕が決めるんだ!!」

 クロ子は俺に殴りかかって来る。俺は、それを次々と躱していく。遅くはないが素人の拳は俺には当たることはない。

「じゃあ、聞くがクロ子は何がやりたいんだ?」

 俺が尋ねると、クロ子の拳が止む。

「僕は……。そうだ!僕は自由でいたいんだ!誰かに命令されるなんて真っ平なんだよ!」

 再び拳を振るい始めるクロ子。もちろん拳はかすりもしない。

「で、自由に何をしたいんだ?誰にも縛られずに自由な環境で、クロ子は何をするんだよ?」

「僕は……。僕は…………。」

 また、クロ子は言葉に詰まる。

「クロウ。もう解ったろ?だけどね、未熟というのはダメだということではないのよ。これから成長していく伸びしろがあるということだもの。私なんかもうおばあちゃんだから、もうほんの少ししか伸びないわ。でも、私でも生きているうちは成長するのよ?今のままで満足してはダメよ。もっともっとよく生きていけるんだから。」

 ライカさんの言葉が、俺にも突き刺さる。そうだ。気の持ちようで、人は成長できるのだ。生きていればいくらでも……。クロ子を見ると、俯いて静かにライカさんの言葉に耳を傾けている。ライカさんの言葉には素直なんだよなぁ……。


「じゃあ、クロ子。自分で何かやりたいことが見つかったら解放してやる。そのかわり、俺に何がやりたいのかしっかり伝えること。それが納得できるものだったらすぐにでも解放だ。まぁ、それまで一緒ってことだ。」

「……わかった。」

 クロ子はそれだけいうと、残った串焼きに齧りついた。



 †



「おっ、帰って来たのか!お前たち。」

 翌日の昼すぎ、ガート村に到着した俺たちはガンファに出迎えられていた。

 お昼前の到着だったが、村人たちは祭りの準備に追われているようだった。


「祭りまでには帰るって約束だったしな。ガンファはいつも通り元気でやってるようだな。」

 改めて出迎えなどされると照れくさいものがある。久しぶり会うにガンファとエイラムでの話などをしているうちに、ガンファの家に着いた。

「にしても、ユウマ。この2人は誰じゃ?お前の嗜好の問題じゃからうるさくは言わんが、幼女から老婆まで守備範囲広すぎるじゃろ?」

「はぁ!?なんで俺がハーレム作ってる設定なんだよ!!しかも、ライカさんはいろいろ世話になった人で、こっちのクロ子は男だ……元だけど。」

「なに!?ユウマは男もイケる口じゃったのか!?ち、近寄るな!それ以上近づくと殴るぞ!!」

 ガンファはニヤニヤしながら俺をイジりだした。うん、すぐに殴り飛ばしたが……。


「改めて紹介すると、こっちのお婆さんがライカさん。エイラムで魔法薬店を開いてた人だ。で、こっちの目つきの悪いのがクロ子だ。一応、ライカさんの孫。」

 俺がライカさんとクロ子をガンファに紹介していく。

「誰がクロ子だよ!!僕はクロウだ!」

 といつものやりとりをする。

「2人とも異世界人だけど、訳あって同行することになってね。あと、ライカさんはガート村に住んでもらおうと思ってるから。」

 と、一応ガンファにも説明をしておく。

「なるほどの。飽きた女をガート村に捨てる気じゃべらばぶふぉ……。」

 うん、俺イジリには鉄槌を……。ガンファは頑丈だから大丈夫だろう。

「とにかくバラガさんの所に挨拶行ってくるわ。あと、ライカさんとクロ子、今日はここに泊めてもいいよな。アイリ、準備頼むわー。サフィーナ、一緒に行くぞー。」

 ガンファが何か後ろで叫んでるけど、聞こえはせん。聞こえはせんぞー!!


 その後、ライカさんのことを村長のバラガさんにお願いしにいく。すると二つ返事で許可がでた。今は空き家になっている家を貸してくれるとのことだ。ライカさんならポーション作りもできるだろうし、何かと重宝されることだろうしな。


「あら♪サフィーナちゃぁん♪帰って来てたのねぇ~~~♪」

 うわっ……見つかった。バラガさんの家から出ると運の悪い事にロリコン変態魔術師のマールに見つかってしまった。

「お、おぅ。マール。今日帰って来たんだ。さ、さぁー帰るか、サフィーナ。」

「あぁー!久しぶりのサフィーナちゃん成分がぁー!!ほーらほらほら。クッキーあげるわよー?サフィーナちゃん。」

 まったく面倒なのに捕まったな。おい、サフィーナ、クッキーに引き寄せられてるんじゃねぇ!クソっ、こっちも奥の手を出すか……。

「あ、サフィーナ。こんなところに串焼きがあるぞー。ほれほれほれー♪家に帰ったらいっぱい食べてもいいぞー。」

 おぉ、サフィーナがクッキーと串焼きの間を行ったり来たり……。こんな真剣に悩んでるサフィーナ初めて見た。って、それでいいのか。サフィーナ!

「うぅー……あぁ……串焼きか、いやいやこのクッキーも捨てがたいしー……ここは、久しぶりに食べるクッキー!君に決めたー!!」

 ポケット的な魔物を呼び出すような言い方するなー!あぁ……サフィーナがマールに捕まったか……。


「ふっふっふ……ついに私の勝利よ!ユウマ。まぁ、遅くならないうちに送ってくから、心配いらないわよ。」

 マールは手をヒラヒラとさせて肩をすくませる。いやいや、お前と一緒な時点で心配だからな!

「マール。俺との約束覚えてるな?合言葉は!!」

「『いぇすろりーた!のーたっち!!』」

「よーし!くれぐれも間違いのないようにな!」

「解ってるから早く戻ったら?アイリが待ってるんでしょ?」

 マールが邪魔するなオーラを出し始めたため、俺は念を押してからガンファの家に戻ることにした。いざとなったら眷属召喚で強制撤収も可能だしな。


「ただいま。一応、バラガさんにライカさんのことをお願いしてきたわ。なんかあっさり了解してくれて、村の空き家使ってもいいってさ。」

 俺はガンファの家に戻ると、ライカたちに住むところの件を伝える。

「色々とありがとうございます。ユウマさん。なら、今日からさっそくそちらへ行かせてもらいます。クロウ。あなたも手伝ってくれるかい?」

 クロウは渋々といった感じでうなずいている。

「いやいや、ライカさん。今日くらいワシの家に泊まっていってもらって結構ですぞ?まぁ、部屋がないのでダイニングに毛布で寝ることになりますが……。」

 ガンファが珍しく気を使っている。

「いえいえ、私もこの村の一員とならせていただくのです。住むところの手配もしていただきました。なら、そんな贅沢なこと勿体ない。それに、この子は意外と力持ちで何でもやってくれます。」

 ライカさんはやんわりと断りを入れ、クロ子の頭をポンポンと撫でている。

「そうですか。なら、必要なもんは何でも言ってくだされ。後でユウマに届けさせますので。」

 って俺を使うのかよ!まぁ、いいけど……。

 俺はライカさんに空き家の場所を教えると、あとは大丈夫だからとクロ子と2人でいそいそと出ていった。


 2人が出ていき、ガンファ、俺、アイリが改めて顔を見合わす。

「改めて、ただいま。ガンファ。」

 俺が言う。

「ただいま。父さん。」

 アイリが続く。


「あぁ……、おかえり。」

 ガンファも穏やかな顔で、そして少し寂しそうな顔をして応える。

 いつの間にか、ガート村は俺の故郷になっていた。俺はこの時、それを実感したのだった。


 それからいつも通り、アイリが夕食の準備をしてくれている。

 俺とガンファはそれを、何をすることもなく眺めている。

 言わないとな……ちゃんと……。


「で、ガンファ。ちゃんと伝えておこうと思うんだけど……。」

 俺は、思い切って口を開く。緊張のためか口の中がカラカラになっている。

「……ん?なんじゃ?」

 ガンファが寂しそうな顔でこちらを見る。

「エイラムで冒険者になって、色々あったんだ。それで覚悟が決められた。俺、アイリと結婚する。む、娘さんを俺に下さい。幸せにして……いや、一緒に幸せになってみせます!!お願いします!!」

 俺はガンファに頭を下げる。

 ガンファはそれを無言で見つめている。何も言ってこないのだ。

 アイリは夕食の準備の手を止め、こちらを心配そうに見ている。


 ガンファはおもむろに立ち上がり、俺の目の前に立った。

 次の瞬間、俺の頬は大きな音が鳴った。右頬が少し熱い。

 俺はガンファを無言で見つめていると、折れたようにガンファがニヤリと笑う。


「がっはっは!娘が欲しくば、ワシを倒してからにせ……ぼぎょ!!」

 ヤバイ。 反射的に一本背負いをしてしまった。ガンファが床で悶絶している。

「だ、ダイジョブか?」

「がっははははは!!大分強くなったようじゃの!ユウマ。これにゃら、あいりゅいも……あんじんじて……あんじんじて……。がぁああははは!!」

 床に大の字になりながら、ガンファは笑いながら、泣いていた。

「父さん。今まで本当に有難うございまじだ。これからはユウマざんと……、ユウマざんと……幸せになりますから!」

 ポロポロと大粒の涙がアイリの頬を伝っていた。ガンファはアイリとひしと抱き合い。お互いの感謝の言葉を交わしている。俺は、それを見て、何か神聖なものを見ているような気がした。


 しばらくして、再びアイリは夕食の準備に戻った。ガンファもいつも通りにボウガンの手入れを始める。

 日常の暮らしがそこにはあった。しばらくして、サフィーナもマールの家から戻って来た。どうやら無事だったようだ。そう。これが俺たちの日常だった。



「えーと……お、お義父さん?」

 思い切ってガンファに声をかけてみる。

「ぶふーーーーっ!!」

 飲んでいたお茶を盛大に吹き出すガンファ。

「だ、誰がお義父さんじゃ!!誰が!!」

「え?えと……ガンファのことだけど……」

 あれ?ガンファ怒ってる?

「お前にお義父さんなんて呼ばれる筋合いは……」

「父さん、やっぱり私とユウマさんのこと認めてくれてないの!?」

 アイリが涙をためてガンファに訴える。

「いや、違う。そうじゃないんじゃ。アイリ。違うんじゃ。ワシも心の準備というものがな。」

 ガンファも実感湧いてないのかもな。俺も違和感あるからな。

「本当に?ユウマさんとの結婚、本当に祝福してくれる?」

 おぉ、なんかアイリが外堀からすごい勢いで埋めていっている。いつの間にか『認める』→『祝福する』にパワーアップしている。

「お、おぅ。アイリ、勿論だとも……。」

 おぉ、見事に丸め込んでいる。アイリ、さすがにガンファの扱いに慣れてる……。


「えと、それでガンファ?一応、これを受け取ってほしいんだけど。」

 俺はインベントリからあるモノを取り出す。

「ん?これはなんじゃ?」

「あぁ、それは魔鋼糸だ。ボウガンの弦にでも使ってくれ。あと、これ、『エリクサー』だ。一応、結納の品ってことで……。」

 ライカの魔法薬事典には『ローエリクサー』だけでなく、通常の『エリクサー』の作り方も載っていたのだ。売ればとんでもない額になるそうだが、特にお金に困っていないので市場にはまだ出していないが…。

「ゆ、ゆ、ユウマ!!これ、どこで手に入れた!?この魔鋼糸は高ランクの魔物からしか剥ぎ取れんし、『エリクサー』なんぞ、見るのも初めてじゃぞ!!」

 案の定、ガンファは目が飛び出るほど驚いている。

「あぁ、魔鋼糸は色々冒険して手に入れたんだ。あと、『エリクサー』なら今日来たライカさんに教わったんだ。あの人の薬草術と知識は俺が知る限り、一番だと思うぞ?」

「そうじゃったのか。この1カ月の間で、お前も色々とあったようじゃな。」

 まぁ、武器や魔術を皆で使えるようになったとか、冒険者ギルドのサブマスターを更迭に追い込んだとか、闇ギルドの幹部を女の子にして連れて来たとか、他に色々あったよな。俺は、それをガンファに隠さずに、語って聞かせた。ほぼほぼガンファの口はあんぐりと開いていたが……。


「サフィーナ、今日は久しぶりにガンファじいちゃんと寝るー。」

 サフィーナがテテテテーとガンファに抱き付いている。おい、ガンファ。顔がニヤニヤしとるぞ!

「おぉー。サフィーナか。仕方ないの。じゃあ、今日はじ、じいちゃんと寝るかー?」

「うん♪」

 もしかして、ガンファ、そっちの趣味が……。

「おい!ガンファ……ちょっとこっちに。」

 俺は部屋の隅にガンファを連れていく。

「もし、サフィーナに変なことしたら、ただじゃ済まさんぞ!!解ってるな?」

 俺はガンファの耳元で殺気を込める。

「はぁっ!?サフィーナは孫みたいなもんじゃ。それに、ドワーフは他種族に欲情などせん!それにお前と違って幼女好きでもないしな!!ぷっぷぷぷ……それをお前、心配して『ただじゃ済まさんぞ!』キリって、本当にお前はどうしようもないバカな…ぎゃらばらばっ!!」

 うん。俺の勘違いだったみたいだ。ん?ガンファ?何か壁が好きなのかめり込んで質感を楽しんでるぞ。


 はぁ……本当にいろいろあったけど、この世界に来てから2か月ほどしか経ってないんだよな。

 でも、このベッドで横になるのも懐かしいように感じるな。なんだろう。すげー落ち着く。


(ユウマ。ユウマー。聞こえる?まさかもう寝たなんてことないよね?)

 ん?サフィーナが意識を飛ばしてきたのか?

(ん?サフィーナか。どうした?ガンファに襲われたか?)

(あちゃー……そんなしょうもない事を言ってるってことは、サフィーナが気を利かせたことも気付いてないなー?)

(はっ?気を利かせる?な、何言ってんだよ。)

(むふー!!アイリは今、部屋にいるんだよー。で、ユウマはアイリと結婚するんでしょー?じゃあ、ユウマは何するのー?)

(ちょ、ちょっと待て!そんなこと誰に教わった?サフィーアか?)

(えっとねー。マールが教えてくれたよ?ユウマとアイリが2人っきりで一緒の部屋で寝れば……)

(待て待て待て!ストーップ!!それ以上言うんじゃない!)

(えぇー!?なんで?一緒に寝れば幸せになれるんでしょ?マールが言ってたよ?なんで幸せになるか知らないけど、そーゆーものなんでしょー?)

(へっ?あ、あぁ。そうだな。そーゆーもんだな。うん。そーゆーもんだ。)

(やっぱりそーなんだ。じゃ、頑張ってねー。)

 クソっ……マールのやつ。サフィーナに何てこと教えてんだよ!!


 ゴクリ…


 アイリの部屋か……よし!行くぞ!








 あ、いや、まだ早いか。








 ……よし!行くぞ! 














 あ、もうちょっと様子を見るか。












 ………よし!今度こそ行くぞ! 行くったら行くぞ!!

 

 俺は、深夜、ゆっくりとベッドから降り、静かに自分の部屋の扉を開ける。

 いや、開けようとすると、ひとりでに扉が開いた。


「「あっ!」」


 俺の部屋の扉を開けて入ってこようとするアイリと目があったのだ。


「あ、あの、あわわわ……わわわ私、ゆゆゆユウマさんのこと……」

 アイリの目がすごい勢いで泳いでいる。おそらくテンパっているのだろう。いや、俺もテンパっているのだが、俺より焦っているアイリを見ると自然と落ち着いてくる。


「アイリ、入って。」

 俺はアイリの手を取ると部屋に引き入れる。


「あ、あの……私。ユウマさんの事が好きです。」

 アイリが俺の目を見つめて、そう呟く。


「あぁ、俺もアイリのことが好きだよ。」

 俺たちは自然と唇を重ね、そのままベッドに倒れ込んでいた。


最後まで読んでくださいってありがとうございます。

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