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26、ファーストクエストマーチ

 †



「あのー、エイミーさん。この依頼を請けたいんですけど。」

 俺たちは朝の冒険者ギルドで受付嬢エイミーに初の依頼書を渡していた。

 アイリの左手の薬指には指輪が輝いている。それが目に入ると思わずニヤけてしまう。

 俺たちは婚約したんだよな……前世ではできなかったのに。家族が出来る嬉しさが顔に出てしまうのだ。


「はい。ユウマ様、アイリ様、サフィーナ様ですね。ともにGランク冒険者ですので、こちらのFランクの依頼でも大丈夫です。ポムポム草の採取とホーンラットの駆除ですね。受理いたします。これらは常時出されている依頼ですので、いつでも受理可能ですからね。あと、成功報酬はポムポム草100gにつき10G、ホーンラットは角5本につき30Gとなります。特に期限はありませんからゆっくりでも大丈夫です。何かご質問はありますか?」

「いえ、大丈夫です。」

「それでは、頑張っていってらっしゃいませ!」

 ようやく俺たちは冒険者として依頼を請けることにしたのだ。依頼出したことの方が多い冒険者というのも珍しいだろう。ただ、準備万端だ。薬草の分布地、ホーンラットの生息地もバッチリ予習済み。念のための保存食、もしものための野営準備、各種諸々完璧だ!


「ユウマさん。やっと私たちも冒険者としてデビューするんですね。ワクワクしちゃいます。」

 アイリは真新しいリュックを嬉しそうに背負いなおす。

 エイラムの西門が見えてくる。東西南北にある門の中でも、ガラハド大森林帯側にある門だ。

「あ、門番さーん。サフィーナたち、今から冒険者の初仕事行ってくるねー!!」

 サフィーナが門番に手を振りながら通過していく。ちゃんとステータスプレートを提示したため、門番も驚くが、生暖かい笑顔で手を振り返してくれる。


 よーし!俺たちの冒険者人生はこれからだ!!


 

 ん?まだ最終回じゃないですが……何か?一応、気合いを入れてみただけです。


 街道沿いに俺たちは、森の方角に歩いていく。まだ朝早いということもあり、人通りはまばらだ。門を出るとしばらくは麦畑が広がっているが、それを抜けると木がまばらに生える原野だった。遠くにガラハド大森林帯が見える。


「おっ、またまたポムポム草早速はっけーん♪」

 サフィーナがバッと道端にしゃがみ込み、ポムポム草を採取する。


 実は、【薬草術】がAランクになったことで、術技で周辺の薬草がぼんやり解るようになったのだ。


『薬草探索』:MP1消費するごとに半径3mに存在する薬草の存在が解るようになる。効果は10分間持続する。


 超便利だ。薬草取り放題だ。ということで、俺が『薬草探索』で半径30mにある薬草を感知するとサフィーナやアイリに取りに行ってもらっているのだ。俺が動くと薬草の場所が解らなくなるからほとんど動いていない。なんだか女の子2人を働かせているようで、心苦しいが……。


「ユウマさん。こっちにはラファール草とロイゼ草もありますよー。これで魔力ポーションも作れますね♪

 あ、こっちもロイゼ草です。さすがユウマさんですー。」

 アイリが興奮気味に希少な薬草を採取していく。今回はポムポム草の採取だが、実は、ラファール草やロイゼ草を精製した魔力ポーションを売っぱらった方が稼ぎはいいのだ。今回は、冒険者としてのランクを上げるため依頼を請けているが、問題ないだろう。


「ユウマー。この辺りの薬草はだいたい採り終ったよー。次行こー!」

 サフィーナの肩掛けバックは既にパンパンに膨らんでいる。サフィーナだけで、もうポムポム草は3kgほど採取しているだろう。俺もインベントリに各種薬草を入れている。嵩張るが、重さ基準のインベントリでは関係ないので、もう6kgほど詰め込んでいる。


「そうだな。そろそろホーンラットの生息地に近いから、気配感知と気配消失は忘れずにな。」

「「了解でーす。」」

 一時、薬草採取を中断し、ホーンラット探しを開始する。

(いたよ!ユウマ!ホーンラット。)

 サフィーナから意識が飛んでくる。ファミリアであるサフィーナには感覚を共有できるので、こういうときは便利なものだ。

「アイリ。サフィーナが見つけたみたいだ。」

 

 Cyu……  Cyuuu


 サフィーナはすでにホーンラットを2匹仕留めていた。どうやら石を投げたらしい。気配を消し、5mほどまで近づいて仕留めたようだ。


「やったー。サフィーナ大活躍ー♪」

 自慢げに胸を張っている。

「よくやったな!すごいぞ!サフィーナ。」

「すごいね♪サフィーナちゃん。」

 俺とアイリが褒めると「えへへ…」と照れている。

 どうやら常に【隠ぺい】をしているため、俺たちのことがほとんど気付かれていないらしい。

 結構デカいネズミだった。体長30cmはあるだろう。額には5cm位の角が生えている。

 俺はサフィーナが仕留めたホーンラットを看破してみる。


―――――――――――――

ホーンラットの遺骸

 ホーンラットの角 角鼠の毛皮 魔核石 肉 が剥ぎ取り可能

―――――――――――――


 ナイフで角を折り、魔核石を取り出す。魔核石は小石程度の大きさなので、そのまま腰のにつけた袋に入れ、毛皮、肉に分け、そのままインベントリに入れておく。このままだと血の臭いがひどいからな。毛皮の剥ぎ方はガート村にいたとき、ガンファに教えてもらったからな。


「あ、私も見つけました。やってみますね。」

 今度はアイリがホーンラットを見つけ、こっそりと近づいていく。手には石が握られている。


 シュッ  シュッ


 石は見事にホーンラットの頭に当たり、鳴き声も上げさせず、仕留めていた。

 俺、解体だけしてればいいかもな。俺はアイリの分も解体を終わらせた。これで3匹……


 ん?気配感知に引っかかったな。上だ!!

 見上げると翼長3mはほどの猛禽だった。デカいぞ!!あれならサフィーナくらい攫っていけるだろう。

 看破!


――――――――――――――

名前/アードラー

ランク/モンスターランクC

HP 150/150

MP  30/30

腕力  100

体力   90

敏捷度 140

器用度  80

知力   65

精神力  40


解説:巨大な猛禽類。仔牛くらいなら掴んで持ち上げることができる。高速で急降下で嘴や爪で攻撃。掴んで高所から落とすことで止めをさすこともある。

-スキル【高速化】【鋼爪/Cランク】

――――――――――――――


 ヤバい……こいつ!早い!!


「アイリ!!サフィーナ!!上だっ!気をつけろ!!アードラーだ!!素早いぞっ!!」

 恐らくホーンラットを狙ってきたのだろう。今の警告で、俺たちの存在にも気づいただろう。

 アードラーは様子を見るために上空を旋回している。

「降りてきた時に、火力を集中しろっ!」

「わかったー。」「了解です。」

 それぞれ、弓を構える。俺は、アードラーに向けて矢を放つ。

 だが、あっさり躱される。

 クソっ!!


 アードラーは悠然と滑空して段々と速度を上げ、猛スピードで急降下してくる。

 誰だ!誰を狙ってる? 距離は目測50m。

 あっという間に、距離が詰まってくる。


 サフィーナだ!!


 アードラーは翼を広げ、サフィーナがその影に隠れる。


 ボゴボゴボゴ...


 サフィーナの周囲に土の壁ができあがる。土の精霊が周囲に集まっている。精霊魔法を使ったのか!


 アードラーはターゲットを土の壁で遮られると、また上空に上っていく。

 アイリが矢を放つが、これも躱される。


「サフィーナ大丈夫か!!怪我はないか!!」

「うー……なんとか無事だよー!!」

 安否を確認すると、サフィーナの焦ったような声が聞こえる。

 ホッとするのもつかの間、今度はアイリに向かってアードラーが急降下してくる。


 アイリは逃げずに弓を構え迎え撃つ。

 俺とアイリの距離は10m、 届くか……俺は走り出していた。


 アイリは再度、矢を放つがアードラーの羽に当たるが弾かれる。硬いのか!?

 少し空中でふらつく、アードラーが構わずアイリの迫っていく。

 グローブのような指からはナイフのような鋭い爪が光る。

 そして、爪が肉を切り裂き、鮮血が飛び散る。


「ぐあっ!!」

 何とか間に合った。

 俺は、アイリとアードラーの間になんとか入ることができたのだ。

 だが、その結果俺の二の腕部分が大きく切り裂かれた。

「ユウマさん!!」

 アイリが悲鳴を上げるが、まだだ!まだ目の前に敵がいる。

 俺は、指先から無数の鋼糸を出し、アードラーの翼を貫き通す。


 Guaa!! Kueeee!!!


 再び飛び立とうとしたアードラーが地面に落ちる。だが、地面をピョンピョンと跳んで、こちらに嘴を突き出すなど、未だに闘争心は衰えていない。


「ユウマー!アイリー!避けてーー!!」

 サフィーナの声と共に、爆音が聞こえる。

 アードラーの足元にドッヂボールほどの火球が着弾する。うおっ!危ねぇ……


 俺は、鋼糸を槍状にして固め、そのまま槍投げの要領で、アードラーに投げつける。


 シュン  ザンッ!!


 アードラーの盛り上がった胸の羽毛から背中まで槍は貫通する。


 Guaaaaa!!


 しばらくバタついていたアードラーであったが、ついにその動きを止めた。


「ユウマさん!!治療します。じっとしていてください。」

 アイリは慌てたように駆けつけてくる。うん、腕、結構痛いんだよな。怪我してる方で投げるんじゃなかった。


「光満ちたる命の躍動 彼の者の傷を癒せ 『ヒール』」


 アイリが【光魔術】の『ヒール』の呪文を唱える。俺の腕の傷はみるみるうちに塞がり、痛みもなくなっていく。未だにこの現象は違和感があるよな。


「ありがとう。アイリ。もう痛みもない。うん。大丈夫。動かせるよ。」

 腕をグルグルと動かしてアイリに見せ、少し笑ってみせる。

「ユウマー!!大丈夫だったー!!もう怪我治った?痛かったら今度はサフィーナが治すからね。」

 サフィーナも心配してやって来てくれる。

「あぁ、大丈夫だ。最後の火球はちょっとビビったぞ。でも、助かった。」

 最後の魔術の使い方にダメ出しをしておく。まぁ、最初のうちは連携できないのは仕方ない。これから覚えていってもらおう。サフィーナは苦笑いしながら反省しているようだ。 


 にしても、デカいよな…  看破!

――――――――――――――

アードラーの遺骸

 大猛禽の風切羽 大猛禽の爪 大猛禽の嘴 魔核石 大猛禽の肉 の剥ぎ取りが可能

――――――――――――――

 これ、全部の剥ぎ取りは厳しいよな。風切羽ってだけでも1m近くあるしな。まぁ軽いけど。

 んー……肉は多少諦めるか。でも、もも肉は旨そうだから、これだけもらっとこう。


 俺たちは手分けして、風切羽、爪、嘴を切り取った後、解体して、両足からもも肉を剥ぎ取った。

 もも肉だけでも10kgはありそうだ。

 ちなみに、魔核石は握りこぶし大の大きさのものが出てきた。グリーンで翡翠のような輝きだ。


――ピロリン♪ピロリン♪ポロロン♪――


 ん?ポロロン?はじめて聞く効果音だぞ……とりあえずステータス確認っと


――――――――――――

■ステータス

名前/有村 悠真

Lv.6

種族/人間   年齢/18歳  職業/冒険者(G)

HP  320/320(+160)

MP  278/640(+320)

腕力   320

体力   320

敏捷度  320

器用度  320

知力   640

精神力  960

加護:神祖(しんそ)の大いなる加護 封仙の加護

称号:転生者 封印されし称号その1~5 器用貧乏

装備:黒牛鳥のマント アダマンタイトの部分鎧 マチェットナイフ

スキル

-EXスキル【教育者】【学習者】【超健康体】【ステータス倍化/Lv.UP】【限界突破】

-ユニークスキル【極運】【ファミリア】【看破】【隠ぺい/Bランク】【人たらし】

【薬草術/Aランク】【気配察知】【気配消失】【剣術/Cランク】【体術/Cランク】

【弓術/Cランク】【投擲術/Cランク】【槍術/Cランク】

―魔法スキル【火魔術/Cランク】【水魔術/Cランク】【光魔術/Cランク】

-魔物スキル【鋼糸/Bランク】【毒牙/Bランク】【高速化】


眷属契約:【精霊魔法/Fランク】(サフィーナより)

――――――――――――


 お、レベルアップ!そういえば、チンピラ戦も経験値に入ってるのか?よく解らんが……

 あとは、【高速化】か…詳細看破


【高速化】:MP5消費すると10秒間、敏捷度、移動速度が2倍になる。>詳細>なお、思考速度も2倍となる。


 おぉ……アードラーが早いわけだ。うーん……ポロロンの原因が解らん。

 と、視線の先のサフィーナがいた。あ、そういうことか!『メニュー』 ファミリア


――――――――――――

■ステータス

名前/サフィーナ

Lv.4

種族/人間   年齢/10歳  職業/冒険者(G)

HP  35/35(+48) 

MP  95/95(+96)

腕力   20 (+32)

体力   23 (+32)

敏捷度  35 (+32)

器用度  42 (+32)

知力   68 (+64)

精神力  71 (+96)


加護:天上主の加護 ユウマの加護

称号:ユウマの眷属 

装備:黒牛鳥のマント 魔綿のワンピース マチェットナイフ 投げナイフ

スキル

―ユニークスキル【隠ぺい/Dランク】

 【薬草術/Cランク】【気配察知】【気配消失】【剣術/Dランク】

 【体術/Cランク】【弓術/Cランク】【投擲術/Cランク】【槍術/Dランク】

―魔法スキル【精霊魔法/Cランク】【火魔術/Cランク】【水魔術/Cランク】【光魔術/Cランク】

―――――――――――――

 

 サフィーナもレベルが上がってるな。あとは……お、精霊魔法のランクもCになってる。

 ってことは、アイリも……残念。アイリのレベルアップはまだのようだ。


「ふぅー……なんとか倒せたからよかったけど、こんなのがたくさん来たら、危なかったな。」

「そうですね。こんな大物がこの辺りに姿を見せるのも珍しいですが、今日はもう帰ったほうがいいかもしれませんね。」

「えー!まだホーンラットの角、揃ってないよー。」

 帰るか、もう少し粘るか……まぁ、折衷案と行こうか。

「なら、今から街に戻るけど、その途中にホーンラットがいたら狩るってことでどうだ?」

「「了解!!」」

 インベントリにアードラーからの戦利品を詰め込む。レベルアップでMPが増えたことで、まだまだインベントリには余裕ができたな。まぁ、肉はいいか……。


 俺たちはエイラムの街へと帰還していった。

 途中、都合のいいことに、番のホーンラットに遭遇し、サフィーナが嬉々として石をぶつけていたことを報告しておく。本当に都合がいい。



 それから何事もなく、冒険者ギルドへとやって来れた。

 まずは買取カウンターで、ポムポム草とホーンラットの角を渡し、依頼達成の終了印を貰う。

 そこでは犬獣人の男性が担当してくれた。そして、他の買い取りもお願いしますと、先ほど討伐したホーンラットの肉から始まり、アードラーの風切羽まで色々とカウンターに置いていった。もちろん、希少な薬草類は売らずにとって置く。ポーション作りに使えるからな。

「え……えとですね。これらは今日討伐された魔物素材ということですか?」

 獣人の男性が引きつった顔で素材を確認していく。

「あぁ、ホーンラットを狩っていたらいきなりアードラーがやって来て戦闘になってな。危なかったが、なんとか討伐できたんだ。」

「そ、そうですか。一応、ステータスプレートを確認しますね。……へっ?Gランク!?」

 獣人の男性はバタバタと奥に引っ込み、なにやら誰かと相談しているようだ。

 しばらくするとエルフの女性を伴って、獣人の男性が戻ってくる。

「貴方たちが、ユウマ、アイリ、サフィーナで間違いないですね?」

 少し冷たいような印象の声で、エルフの女性が言い放つ。

「はい。そうですが……貴方は?」

「失礼。私はエイラムの冒険者ギルドのサブマスターのカノンと言います。先ほど、ジャックスから話は聞きました。」

 どうやらあの獣人の男性はジャックスというそうだ。にしても、サブマスターってギルドのお偉いさんだよな。

「もしかして、アードラー討伐の件でしょうか?なら、後日でもいいでしょうか?幼い子もいますし、早く休ませてあげたいんですが……」

 サフィーナもアイリも初めての依頼で疲れている。危ない戦闘もこなしたからな。

「お時間は取らせません。それに、アードラーの討伐が事実なら、すぐにでもランクアップをしてもらいますから。」

 なるほど、ランクアップを引き合いに出してきたか。むぅ……

「アイリ、サフィーナ。疲れは大丈夫か?」

 2人は頷く。あぁ、サフィーナ眠そうだな……。

「解りました。」

 俺がそういうと、カノンは奥にある事務所のようなところに俺たちを通した。

「それでは、こちらの鑑定玉に手を翳してもらえますか?ステータスプレートを作った時と同じ要領ですから。」

 俺たちは促されるまま、鑑定玉に手を翳していく。カノンはそれを静かに眺めていたが、ある一点を見ると、表情が曇る。しばし気まずい沈黙が流れる。


「貴方たちに、闇ギルドの者と接触が確認されました。しばらく拘留させていただきます。」

 そうカノンが言い放つと、ギルド職員たちが俺たちを取り囲む。


「おい!!これはどういう事だ!!」

 俺はカノンを睨み付ける。アイリ、サフィーナも不安げな顔をして、こちらを見ている。

「それは、これから調べます。この者たちを地下の拘留所へ入れておきなさい!」

 アイリとサフィーナはすでに後ろから羽交い絞めにされ、何か手錠のようなものをつけられる。

「抵抗はやめなさい。小さい子が痛い目にあってしまうのは本意ではないでしょう?」

 全力で抵抗しようとしていたが、カノンのその言葉で俺は動きを止めた。その代り、全力で殺意を込めた目でカノンを睨み付ける。


「お前ら……こんなことをしてただで済むと思うなよ!!」

 カシャン 俺にも手錠のような物がかけられ、そのまま地下への階段に強引に引っ立てられていった。


最後まで読んでくださってありがとうございます。

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