24、モンスタールーキー
†
エイラムの冒険者ギルドで一つの噂が実しやかに流れていた。
それは、モンスタールーキー。とんでもない新人が現れたということだった。
見た目は真っ黒な3人組らしい。かなり上質の服装から貴族の子弟ではないかとの噂もある。
「聞いたか?モンスタールーキーの噂。なんでも一度見られたら絶望的な気分になるらしいぞ!」
「なんだよ?絶望的って!俺が聞いた話だと、見るとご利益があって、ほんわかした気持ちになるって聞いたんだが……。」
「いやいや、違う違う。奴らは国が密かに養成した超人だって話だぜ?街の騎士たちが言ってたぞ。」
噂とは、どんどんと広がりを見せていた。
だが、目撃者の証言には共通する言葉があった。それは……
「あんな奴ら見たことない。化け物だ。」
と……。
それがモンスタールーキーと呼ばれる所以なのだが、噂話に尾ひれが付きすぎて、半ばエイラムの中の都市伝説と化している。既に、三桁に達するほどの噂や憶測が飛び交い、モンスタールーキーの話題はエイラムの冒険者ギルドだけには留まらず、街中で一種の挨拶代りになるほどだった。
実はシャールの王子様がお忍びでやって来ているとか……
実はルーキーは幼女の姿をした魔女だとか……
絶世の美少女3人組で見た人は魂を抜かれるとか……
そして、あの特訓から10日が経過し、一人頭を抱える黒髪の青年がいた。
ユウマである。
「やりすぎたぁぁぁぁぁぁーーーーーーーー!!!」
今、ユウマのステータスはこんなことになっていた。
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■ステータス
名前/有村 悠真
Lv.5
種族/人間 年齢/18歳 職業/冒険者(G)
HP 160/160(+80)
MP 320/320(+160)
腕力 160
体力 160
敏捷度 160
器用度 160
知力 320
精神力 480
加護:神祖の大いなる加護 封仙の加護
称号:転生者 封印されし称号その1~5 器用貧乏
装備:黒牛鳥のマント アダマンタイトの部分鎧 マチェットナイフ
スキル
-EXスキル【教育者】【学習者】【超健康体】【ステータス倍化/Lv.UP】【限界突破】
-ユニークスキル【極運】【ファミリア】【看破】【隠ぺい/Bランク】【人たらし】
【薬草術/Aランク】【気配察知】【気配消失】【剣術/Cランク】【体術/Cランク】
【弓術/Cランク】【投擲術/Cランク】【槍術/Cランク】
―魔法スキル【火魔術/Cランク】【水魔術/Cランク】【光魔術/Cランク】
-魔物スキル【鋼糸/Bランク】【毒牙/Bランク】
眷属契約:【精霊魔法/Fランク】(サフィーナより)
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接近戦闘だけでなく魔術も火・水・光と3属性覚えることが出来た。そして、今、常に【隠ぺい】を発動させながら生活していることから、【隠ぺい/Bランク】まで成長を見せていた。これで、普通に生活していても、よほどのことがない限り顔を指されたりすることもない。だが、飛び交う噂話がユウマを苦しめるのに十分の破壊力を持っていたのだが……
そして、アイリ、サフィーナもそれぞれすごいことになっている。
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■ステータス
名前/サフィーナ
Lv.3
種族/人間 年齢/10歳 職業/冒険者(G)
HP 28/28(+24)
MP 62/62(+48)
腕力 12 (+16)
体力 14 (+16)
敏捷度 18 (+16)
器用度 28 (+16)
知力 40 (+32)
精神力 45 (+48)
加護:天上主の加護 ユウマの加護
称号:ユウマの眷属
装備:黒牛鳥のマント 魔綿のワンピース マチェットナイフ 投げナイフ
スキル
―ユニークスキル【隠ぺい/Dランク】
【薬草術/Cランク】【気配察知】【気配消失】【剣術/Dランク】
【体術/Cランク】【弓術/Cランク】【投擲術/Cランク】【槍術/Dランク】
―魔法スキル【精霊魔法/Dランク】【火魔術/Cランク】【水魔術/Cランク】【光魔術/Cランク】
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■ステータス
名前/アイリーン・ファンドラ
Lv.3
種族/ハイエルフ 年齢/16歳 職業/冒険者(G)
HP 32/32
MP 85/85
腕力 26
体力 28
敏捷度 44
器用度 48
知力 50
精神力 64
加護:世界樹王の加護
称号:ハイエルフの王女
装備:樹王のネックレス 黒牛鳥のマント 魔綿のチュニック コンポジットボウ
スキル
―ユニークスキル【隠ぺい/Cランク】
【薬草術/Aランク】【気配察知】【気配消失】【剣術/Eランク】
【体術/Dランク】【弓術/Cランク】【投擲術/Cランク】【槍術/Eランク】
―魔法スキル【精霊魔法/Dランク】【火魔術/Cランク】【水魔術/Cランク】【光魔術/Cランク】
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と、こんな感じになっているのだ……
どう考えてもGランク冒険者のスキルとは思えない。
だがこの2人はさらにすごいことがあった。
それは……噂されているモンスタールーキーが自分たちのことであるという自覚が全くないことである。
†
「と、いうことで俺たちもある程度戦えるようになってきたかと思う。ということで明日からギルドでの依頼をこなしていこうと考えている。だが、まだこれは特訓の最中であることを忘れるな!常に【隠ぺい】を発動させ、気を引き締めておくように!」
「「了解しましたー!」」
アイリとサフィーナが敬礼ポーズをとる。うん、今日もカワイイな。一応、噂対策で隠ぺいを習慣づけておけば大丈夫だろう。
俺たちはこの10日間、練習場と宿り木亭、この2つを行き来していただけだった。理由は、俺たちの変な噂を聞きたくなかったからだ。……主に俺が。閉鎖された所で特訓を繰り返しているうちに、変なテンションになった結果、なぜか教官口調になってしまっていた。ヤバい……そろそろ戻さないとこのまま定着してしまいそうだ……。幸い、ドンドン技術を覚えることが楽しかったのか、アイリもサフィーナも文句も言わずにメキメキと上達していってくれた。
「でも、今日は好きなことをやってくれ。1人でどこかお店を回ってもいいし、皆でどこか行くっていうのもいいな。どうする?」
「えーと……そうですね。今日は、ウリリさんの所に行ってみようかと思います。リリーさんに聞いたら、ついにエイラムにお店を開いたって話でしたから。」
そうなのだ、ウリリがついに常設のお店を持つことが出来たのだ。エギルやライキもちょくちょく会うがあれからゆっくり話していないからいい機会かもしれないな。
「サフィーナはねー。ちょっと行きたいところがあるから今日は一人がいいかなー。あと、お小遣いちょうだい?」
おぉ……一人行動か。ちょっと心配だけど、五感共有があるからある程度大丈夫か。
「サフィーナ。危ないことをしないって約束だぞ。そうだな、300Gで足りるか?」
一応、サフィーナのステータスプレートにも結構な額のお金が入っているが、きちんと貯金して、手を付けたような形跡もない。うんうん、エライぞ!
「うん!絶対しないよー。ありがとう♪ユウマー。」
(サフィーナ、五感共有で何かあったらすぐに伝えるんだぞ。)
(はーい♪了解ー。)
うん、これ便利だ。携帯みたい。
「なら、俺もウリリのお店に顔出すかな。あと寄りたいところがあるから、アイリは先に行っててもいいけど、どうする?」
「いえ、ユウマさんと一緒がいいです。付き合いますよ。」
おっ、なんかデートみたいだな。
俺たちはサフィーナたちを見送ると、ラフな普段着に着替えて、アイリと一緒に宿り木亭を出る。
「リリーさん。ちょっとウリリのお店に顔出してきますね。」
「おーそうかぁ。ユウマやん。商売お気張りやすってウリリやんに伝えてくれるかぁ?」
「はい。伝えておきます。では、行ってきます。」
久しぶりにブラブラとエイラムの街を歩く気がする。
「えっとさ、アイリ、手とか繋いでみる?」
「ひぇえっ!?」
すごい声を上げられた……浮かれてちょっとやらかしたか!?
「い、いや……えーと、はぐれないように……とか。」
「あっ……えっと、そ、そうですよね。は、はぐれたらダメですもんね。」
俺はアイリの手を握った。最初にちょっと触れたときビクってされったときはちょっとビビったが。
その後、気まずい無言が続く……中学生か!!俺たちは!!けど、改めてこういうのって照れるな。
パっと横を見ると、アイリはいつの間にか鼻歌を歌っている。ご機嫌のようだ。
「で、俺が行きたい所っていうのはあそこなんだ。」
俺が指さしたところには一軒のお店があった。魔道具屋、ここで買いたい物があったのだ。
俺たちは店に入ると店内の品物を色々と見て回る。魔道具というだけあって、高額な物が多いな。
そして、俺はようやく目当ての商品を見つけることが出来た。
†
今日は、なんと!ユウマさんとデートです。えと、デートです……よね?だって、エイラムの街をユウマさんと手を繋いで歩いてるんですから。いつもいるサフィーナちゃんがいないだけで、なんだかとっても新鮮な気分です。
あっ、でもサフィーナちゃんが邪魔だなんて思ってないですよ。カワイイ妹みたいに思ってますから。でも、今日は一人でどこかに行きたいらしいです。少し心配ではあるんですけど、歳の割にしっかりしてますし、魔術もすっごく上手なので大丈夫なはずです。
それにしても、急に手を繋ごうって言われた時は、顔が熱くなって、思わず変な声が出ちゃいました。私、かなり変な子だと思われていたらどうしよう。でも、鼻歌が自然と出てきちゃうんです。
「で、俺が行きたい所っていうのはあそこなんだ。」
ユウマさんは魔道具屋さんを探してたみたいです。私は店に入って、色々と珍しい品物を見ていると、ユウマさんは何やら店員さんと話し込んでいます。
うわ、この杖、高いです!!5万Gもするって……やっぱり大きい魔核石を使ってるからなんでしょうか。でも、これがあればすごい魔術を使えたり……あ、ユウマさんのお話が終わったようですね。
「ユウマさん。店員さんと何の話をしてたんです?」
「い、いや……商品が高かったから値切ってみたんだけど、ダメだったみたいだ。」
ユウマさんは苦笑にながらそう言う。何を買いたかったんでしょう。
「あ、アイリ。ウリリの店の開店祝いに、何か良い物ってあるか?」
「そうですね。定番なのはお花でしょうか。あとは、木が描かれた絵画とかは喜ばれますね。本当は木を植樹するのが一番らしいんですが。」
「へぇ。木かぁ。アイリは何でも知ってるな。木の絵画を探してみるか。」
うへっ♪何でも知ってるとか……なんて褒め上手なんですか!ユウマさん!
「なら少し行ったところに画廊があったと思います。ちょっと見に行きましょう。」
私とユウマさんは手を繋ぎなおして、画廊に向かいました。
†
「あっ、あれです。ユウマさん。あのお店ですよ。」
アイリはお客さんらしき人でごった返しているお店を指さす。
「おぉー!!すごい盛況じゃないか。ウリリのお店。えーと何のお店だっけ?」
俺は、店の看板を探す。あ、あった……
「「“ウリリ何でも店”」」
思わずアイリと声が重なる。何でも店……いわゆる、コンビニってことか?
俺たちは、しばらく客足が落ち着くのを待って、ウリリに声をかける。
「ウリリ。開店おめでとう!すごい繁盛してるんだな。あ、これ俺たちからお祝いな。」
俺は、途中で購入した大樹が描かれた絵画を手渡した。
「ユウマさん!アイリさん!うわぁ。ありがとうございますぅ。あ、これ木の絵画ですね。さっそく店内に飾らせてもらいますねぇ。」
ライキはまだ接客中のようで、俺たちに気付くと頭を下げてお礼をしてくれる。
「おぉ!!ユウマ、それにアイリさん。よく来てくれたな。まぁ、ゆっくりしてくれよ。」
エギルも品だしなどを手伝っていたようだ。
改めて、店内を見ると色々な雑貨が置かれている。生活用品から、調味料、お酒なんかも置いている。イメージは昔ながらの酒屋さんってとこか。オシャレな小物なども置かれている。そして、安い。相場の2割引きくらいだろうか。よく見るとオープンセールと張り紙がされている。これを狙って、お客が押し寄せたわけか。
「どの商品も安いよな。オープンセールなんて考えたな。ウリリ。」
「これまでの行商で扱ってた在庫もあったのでぇ、在庫整理もできてぇ、お店の認知度も高められるしぃ、計算通りですぅ。」
やっぱり商人だな。いろいろ考えているようだ。
「俺とライキでオープンのだいぶ前から、ビラを撒いたり色々やったからな。その効果もあったんじゃねぇか?俺からは誰もビラを貰いやがらねぇ!無理やり渡してまわったがな!はっはっは!」
エギルもなかなか苦労しているようだ。まぁ、厳ついオッサンがビラ配ってたら普通、拒否るわな。
「ウリリ。ちょっと面白いものを持ってきたんだけど……」
俺は、いつか約束していたポーション類だけでなく、少し変わったものを作って持ってきていた。
少し大きめの陶器の瓶を置く。ビール瓶ほどの大きさのものだ。
「これはなんでしょう?ポーションぽい感じですが……」
「これはな、アイリと考えた商品なんだ。アイリ、説明を……」
「はい、ユウマさん。これはですね。簡易ポーションとフルーツの果汁を混ぜた物に加糖したものです。
簡易ポーションは10%ほどなので回復効果は薄いですが、飲みやすくて、疲労回復効果は問題なくみられます。これを暑い時期に冷やしたら美味しいんですよ。ちょっと待ってくださいね。」
アイリは瓶に手を翳す。
「凍てつく微笑よ 我が手に集い 彼のものを冷やせ 『クーリング』」
アイスブルーの輝きがアイリの手から漏れる。
「うわっ!アイリさぁん。魔術使えるんですかぁ!すごいですぅ!!うひゃっ!冷たくなってますぅ!!」
「どうぞ、ウリリさん。一口飲んでいてください。」
アイリはウリリにそれを勧める。
ゴキュ ゴキュ ゴキュ うわ、一気に全部飲んでるし……腰に手を当てて。
「…ぷはー!!なにこれぇ!!甘いけどスッキリしてますぅ。それに……体が冷やされて気持ちいいですぅ。体の疲れも取れた気がしますぅ。これは、売れるぅ。売れますよぉ!!」
「ウリリ。これ、この飲み物のレシピだから、渡しておくな。一応、これも開店祝いってやつだ。」
「あ、ありがとうございますぅ。さっそく作ってみますねぇ。あと、いつでもポーションを持ち込んでくださいぃ。ユウマさんたちのならドンドン買い取らせてもらいますからぁ。」
「なら、今度持ってきますね。今、私とサフィーナちゃんがユウマさんの特訓でいっぱいポーション作れるようになりましたから♪」
そうなのだ。アイリは俺並みにポーション作りが上達しているし、サフィーナもかなりの量を作れるようになっている。まぁ、原材料の薬草を大量に買わないといけないのが難点なんだが……
「まだ当分あとで大丈夫ですよぉ。今はまだ、オープンセールで盛り上がっているのでぇ。この勢いが下火になってきたらポーションのセールしたいのでぇ、その時にでもよろしくお願いしますぅ。」
今後のビジョンもできているらしい……ウリリやるな!
ガシャン
「お、お客様。このようなことをされると困りま……うぐっ!!」
接客をしていたライキの声が聞こえてくる。
トラブルの臭いがプンプンするな。
最後まで読んでくださってありがとうございます。




