23、特訓だー!
特訓しますww
†
あの後、俺は若干2人から冷たい視線を浴びながらも鎧を脱がず、そのまま皆でランチとなった。さすがのアダマンタイトも冷たい視線からは守ってくれなかったようだ。
「なんかいっぱい買い物したから気持ちいいですね。素敵は服もプレゼントしてもらいましたし。」
「「ねー♪」」
アイリとサフィーナの声が重なる。仲良いな。2人とも。
「まぁ、これから冒険者になるんだから装備品はできるだけ良い物がいいからな。」
目の前には、ジュウジュウと鉄板で焼かれたステーキが置かれている。せっかくだからランチも豪華にしてみたのだ。
今日は、食べ歩きをしていないため、お腹はペコペコだ。
「うわー♪このお肉、おいしそー♪」
サフィーナもテンションが上がっている。
「2人とも、食べながらでいいから聞いてくれ。この後、ギルドへ行くからな。裏の練習場が使えるみたいだから、俺が体術の稽古をつけてやるからな。上手く教えられるか解らんが……」
今まで使う機会がほとんどなかった【教育者】のスキルを試すいい機会だろう。ついでに、依頼の募集状況をエイミーに聞いておこう。
「わはっはーおー。」
ちゃんと飲み込んでから食べろよ……サフィーナ。なぁ?アイリ?
「はひ?」
あぁ……アイリ、リスみたいになってるし……うちの女性陣は肉食系だな……物理的に。
よく食べる食べる。ステーキ一皿500gはあったと思うが、それお替りとかどんなフードファイターだよ!
俺も結構大食いだとおもってたが、2人を見てると自信がなくなってくる。この世界の人はよく食べるのかと回りを見るが、周囲からは2人に驚愕の目を向けられている。うん、2人が特殊なんだな。旅の途中や宿での食事なんかでは、普通の量だったのに……不思議に思って2人に聞くと俺が「今日は腹いっぱい食べていい」と言ったことが原因だったみたいだ。これまで遠慮していたそうだ。うそーん!!
俺たちは、満腹のお腹を抱えながらギルドへ向かった。ん?2人はあんなに食べたのにケロッとしている。なん……だと!?あの細い体のどこにあの肉が入ったんだよ!!奴らの胃袋は化け物か!!
お昼を過ぎたギルドには、昨日の朝の時よりも人がまばらになっている。あの掲示板の前には誰もいない。皆、依頼を請けて出ていったのだろう。酒場には数名の冒険者が昼から酒を飲んでいる。
俺は、受付にいるエイミーを見つけると近づいていった。
「エイミーさん。ユウマです。裏の練習場をお借りしたいんですが、何か手続きは必要ですか?」
エイミーは俺に気付くと、ダラーとしていた背筋がピンと伸びる。
「あっあわわわ、ユウマ様、アイリ様、サフィーナ様、こんにちは。それではこちらの練習場使用手続き書に名前をご記入ください。それで練習場をご使用可能となります。練習用の木剣などの貸し出しも行っておりますが、有料となります。」
「へぇ、そんなサービスもしてるんですね。あ、今回は大丈夫です。はい。名前書きました。」
「はい。確認いたしました。頑張ってきてくださいね。」
「あ、エイミーさん。昨日、出しておいた依頼なんですけど、どれくらい人が集まってますか?」
「ちょっと待ってくださいね。えーと……ユウマ様、ユウマ様っと……ありました。
現在、3名の方がご依頼を希望しています。中にはCランクの方もいるのでラッキーですね。」
Dランクの依頼料で来てくれるのは確かにラッキーかもしれないな。けど、人を見ないと判断できん。
「そうですか。ありがとうございます。」
エイミーに礼をいうと裏にある練習場に向かった。
おぉ……かなり広い。小学校のグランドほどはあるだろうか。見渡したところ十数名の冒険者たちが剣や槍、弓、魔術などの訓練をしている。これだけ広いと色々と練習できそうだな。
「よーし、着いた。じゃあ、これから体術の稽古をはじめる。」
俺たちは動きやすい服に着替えている。
「まずはストレッチからだ!」
「すと? れっちですか?はじめて聞きます。」
アイリが不思議そうな顔をする。
「まずは筋肉をほぐして、筋を伸ばして、関節の可動域を広げるんだ。それで怪我しにくくなる。
ほれ、俺の真似してみるんだぞ。いっちにーさんしー、ごーろく、しちはち!」
屈伸から始まり、前屈、アキレス腱を伸ばし、手足の関節を回す。
アイリもサフィーナも何だかわからないが面白そうに真似をしている。
「次は、受け身とフットワーク……つまり足さばきの練習だ。倒れたり、吹っ飛ばされたりした時、頭や内臓を守ることが大事だからな。それから相手の攻撃を避けるためには、1回避けて終わりじゃなく、次の動作もスムーズに動けないと、ダメだ。そのための足さばきの練習だ。まずはよく見てろ。」
俺は、いきなりその場に倒れ込む。そして立ち上がり今度は高く飛んで転がりながらまた立ち上がる。
俺はあっという間に砂埃まみれになる。まぁ、こうなるのは解ってた。この後、洗濯だな。
「え……えと、ユウマさん。それ……本当にやるのでしょうか?なんか周りからイタい視線を感じるんですが……」
確かに、いきなり地面に転がりまくる奴がいたら、そんな視線を送るだろう。だか、これは重要なことだ。
「そうだ。これは、体術の基礎だ。これは強くなるためだと思って頑張ってくれ!」
「ぷっ……ぶははははは!!!あれで強くなるってのか?コケる練習で?大道芸人にでもなろうってか?」
俺たちの様子を見ていた1人の大柄の男から、嘲笑するような声がかけられた。レベル3、体術と剣術スキルをもった男だった。
「お嬢ちゃんたち。そんな埃まみれの言う事を聞くより、俺たちと一緒に訓練しないか?こいつよりよっぽど有意義な時間になると思うぜ?」
その男の後ろには、こちらを見た2人の男たちがニヤニヤとこちらを見ている。
「丁度、組手の相手を探していたんですが、良かったら相手をお願いできますか?この子たちにも見せてやりたいんで。」
俺はできるだけ丁寧に、挑発してきた男にお願いをする。説明だけでは、なかなか解ってもらえないからな。
「ぶはははははは!!!面白いなっ!!いいぜ!お嬢ちゃんたちに自分のやられるところを、そんなに見せたいのか!よーく見とけよ!お嬢ちゃんたち。俺がパパっと片づけてやるから後で楽しくやろうぜ!」
怒るな……俺、丁寧に……丁寧に。
「ありがとうございます。では、体術の稽古ということなので、お互い素手でどちらかが『参った』を言った時点で終了ということでいいですね?」
俺は一応のルールを男に伝えていく。
「いいぜ!じゃあ、始めるぜ!!オーラッ!!」
男はいきなり拳を俺の顔面に向かって振るってくる。俺は腰を落として、半身に構える。
「いいか!アイリ、サフィーナ。よく見ておくんだぞ。実践が一番学ぶことが多いからな。」
俺は男の拳を避けながら、2人に話しかける。俺は伸び切った男の腕を掴むと、手首、肘、肩と順に関節を折りたたんでいく。男の後ろ回り込み、膝の裏を蹴ると男はあっさりと膝をついた。
「人間の関節は全部曲げていくと、人は動けなくなるんだ。そして、さらにこちらが力を入れると…」
俺は手首を掴んだままそのまま男を後ろに引き倒す。男は後頭部から地面に落ちる。
「少ない力でも大男を転がすことが出来る。あと、よく見てろ。頭を守らないとこんなふうになる。」
男は後頭部を抑えながら悶えている。
「クソがっ!!本気で相手になってやる!!」
ようやく男が立ち上がり、俺に体当たりを仕掛けてくる。俺は、あえてそれを受け、吹き飛ばされる。
だが、俺は回転して威力を殺し、受け身を取って何事もなかったように立ち上がる。
「こうやって受け身を取ることで威力は大分抑えられるし、すぐ立ち上がることで追い打ちなどにも対応できる。頭と内臓を守ることの重要性、足さばきの大切さは解ったか?」
俺は2人を見ながら解説を行なう。アイリもサフィーナも息をするのも忘れたように見入っている。
「たまたま立ち上がれたくせに、調子に乗りやがって!!オラっ!オラっ!!オラーッ!!」
逆上した男は拳を大振りで振り回す。それを俺が余裕をもって躱していく。
「ちょこまかと逃げ回りやがって!!逃げてばかりじゃ勝てないぞ!!」
「そう。この人の言う通り、逃げるだけじゃダメだ。特に逃げられない状況ならなおさらだ。ただ、こちらに仲間がいる場合は、逃げ回って助けが来るのを待つというのも手ではあるから覚えておけよ。」
俺は男の遅い蹴りを躱しながら、解説を続ける。
「生き死にを賭けた戦いの中では、何が起こるか解らない。だから目潰し、男が相手なら金的、髪の毛を掴むというのも有効な手段だ。」
俺は男に目つぶし、金的を放ち、それぞれを寸止めする。そして、相手の頭を両足で挟み込み、そのままフランケンシュタイナーを決める。うわ……本当にできちゃった。こんな大技。
「と、まぁこんな感じで体術は対人戦では有効なことが多い。魔物相手ではあまり意味がないが、受け身や足さばきは有効だろう。だから、基本は大切なんだ。解ったか?」
「ユウマさん。解りました。やってみます。」
早速、アイリはコテン。コロンと地面に転がる練習を始める。
「ほっ!!とう!!」
サフィーナはすでに前回り受け身に挑戦している。……もうできてるし。
バサっ!!
うっ……目が痛ぇ…砂か……
「そうだよなー!何が起こるか解らない。目つぶしはよく使うからなー!自分で言ってて引っかかるなんて情けねーなっ!!」
男は俺の腹を思いっきり蹴りつける。俺は顎を引き、両腕をクロスして前かがみになる。それでも、両腕にとんでもない衝撃がやってくる。あ、油断大敵って教えるの忘れてたわ。あー…くそ、目が痛い。
ドスっ! ドスっ! と重い音が響く。
よし、そろそろ大丈夫か。俺は男の蹴った足をそのまま掴み、ドラゴンスクリュー!相手の足を持ったまま自分が錐もみして回転して相手の膝を壊す技だ。その足を掴んだまま、アキレス腱を決める。これは、地味だが、見た目以上の激痛が走る技だ。
「ひぎっ……ぎぃ……ま、まいった!!」
男は数秒耐えようとしたようだが、ついに参ったを宣言した。これ、決まれば耐えれるような痛みではない。俺も昔喰らったことがあるが、脹脛の中にムカデを突っ込まれたような激痛が走る。
「ふぅ……ありがとうございました。俺もいい経験ができました。これ、よかったら使ってください。」
俺は、倒れて鼻水を垂らしている男に簡易ポーションを手渡した。
「あ……あぁ。」
男はそれだけ言うのが限界だったようだ。素直にポーションを受け取ってくれた。
「アイリ、サフィーナ。これからある程度実力がつくまで、ここで稽古するからな。あと明日以降は各種武器の訓練もあるからそのつもりでな。」
「はい!教官!!」
「さーはいさー!!」
うんうん。2人ともやる気を出してくれたようだ。よーし!特訓だー!!
†
翌日の夕方、俺たちはギルドの2階にある小会議室にいた。俺たちの弓と投擲術を教えてくれる人を募集していたんだ。今日はその面接のためにやって来たのだ。
面接は俺たち3人とギルド職員代表してエイミーが立ち会ってくれている。
集まった冒険者は3名。妙齢の犬獣人の女性。中年の人間の男性。エルフの男性の3名だ。
「今日はお忙しい中集まっていただきありがとうございます。今日は俺たちの弓と投擲の技術を教えていただきたいと思い、募集致しました。募集人数は1名です。まだ幼い子もいますので、人となりや相性を重要視したいと思っております。選ばなかった場合も技術が劣るなどといったことで判断したわけではありませんのでご了承ください。もし、選ばれなかった方には粗品も用意しています。」
といって、簡易ポーションを見せる。うん……完璧だろう。自分よりランクの下の冒険者に選ばれなかったとかプライドが許さないだろう。こう言っておけば、後々のトラブルも防げるだろう。
「へっ!如才のないことだな。新人にしては珍しい奴らだな。」
中年の男が言う。この男がCランクの冒険者だった。ちょっと酔ってるのか?ナメてるな。
「ありがとうございます。では、さっそく今までの弓や投擲などで討伐したことのある魔物やそれに類する実績を教えてください。もし、アピールすることがあるなら後で裏の練習場で見せていただければと思います。」
獣人の女性は不安な表情を、エルフの男性は憮然とした表情をしている。Cランクの男は飄々としている。
「では、獣人の方、お願いします。」
「は、はい。ミリアです。冒険者になる前は狩人をしてました。弓でワイルドボアを倒したこともある。投げナイフなら、野ウサギや小動物なら仕留めることが出来る。以上だ。……です。」
緊張のためか語尾がおかしなことになっているが、実力はあるのだろう。弓術だけみるとCランクを持っている。投擲術はDランク。歩くときに少し、足を引きずっていたようだが、教えることに問題ないだろう。
「ありがとうございます。 では、エルフの方、お願いします。」
「我はフィラルド。ランカーの民だ。弓でゴブリンを仕留めることができる。投擲もそれなにり心得ている。我が集落の子供たちにも弓を教えていたことがある。」
弓術、投擲術ともにDランク、ランクは下がるが実際教えていた経験があるのは大きいな。
「ありがとうございます。では、最後の方、お願いします。」
「俺はオラン。Cランクの冒険者だ。ちょっとお金に困っててな。なかなか気前のいい兄ちゃんたちじゃないか。弓ならオークまでなら大丈夫だな。投擲ならゴブリン程度問題ないだろう。俺にしときなって。この依頼料で俺ランクを雇える機会なんて滅多にないチャンスだぜ?」
確かに、実力は一番あるが、態度が問題だ。酔っぱらって面接に来るとか問題ありまくりだ。却下だ却下!!
「ありがとうございました。では、少し話し合ってきますので、少しお待ち下さい。」
俺たちは会議室を出て、アイリ、サフィーナと顔を突き合わせ相談する。
「で、どうする?俺的にはあのオッサン以外ならどっちでもいいが……」
「はい。それは賛成です。なんか私の方をジロジロ見てきましたし、嫌な感じです。」
「サフィーナは、あのミリアさんがいいなー。エルフの人より実力がありそうだったしー。」
サフィーナはよく見ている。なら、獣人のミリアさんに決定だろう。
「それでは、呼ばれた方は順番に来てください。」
俺は小会議室の出入り口から中の人を呼んでいく。皆の前で合否をいうのはマズイだろうからな。
「では、ミリアさん。」
ミリアは足を引きずりながら、出入り口で待っていた俺たちのところまでやってくる。表情は不安そうなままだ。
「このまま練習場に行って待っててください。合格です。」
そう告げると、パッと明るい表情になって、練習場に歩いていく。
「それでは……」
と残りの2人を順に呼び、柔らかく不合格を告げ、簡易ポーションを渡していく。エルフの男は残念そうにしながらも、ポーションを受け取ると帰っていったが、最後に呼んだオランは突っかかってきた。まぁ、予想はしてたが……
「なんで俺じゃねぇんだよ。他はDランクだったじゃねぇか!腕前は俺が一番だってわかんねぇのかよ。」
「最初に説明をしましたが、腕前云々で決めたのではなく、相性で決めさせていただきました。申し訳ありません。特別に、ポーションをもう一つだけ、お持ちください。」
俺はこそっともう1本、簡易ポーションをオランに手渡す。すると、オランはニヤける顔を隠すようにそそくさと去って行った。面倒くさいが、トラブルを起こしても仕方ないからな。
「ユウマー。あんなやつにポーションやるの勿体なーい!!ベーっだ!!」
サフィーナがオランの後ろ姿にアッカンベーをする。その気持ちはすごーくよく解る。
「まぁ、ゴネられて、時間とられるのも嫌だからな。早く練習場に行くぞ。ほれ、この前買った弓とナイフは持ってるな?」
「おー!この怒りを特訓にぶつけるぞー!」
「私も、頑張ります!!」
俺たちが練習場に行くとすでにミリアが待っていてくれた。手には弓矢やナイフを差したベルトなどを持っている。すぐにでも、特訓が可能のようだ。
「改めて、よろしくお願いします。俺はユウマ。で、こっちが……」
「アイリと言います。よろしくお願いします。」
「サフィーナだよー。」
俺たちはミリアに改めて挨拶をする。
「ああ。よろしく頼む。依頼では6時間の指導だから、今から夕飯までの2時間で基礎、それから翌日、早朝から仕上げで4時間と考えているが、大丈夫か?」
「はい。それでお願いします。」
「では、弓の引き方から指導を開始する。」
ミリアは俺たちが弓を持ったのを確認すると、まずはお手本と自分の弓を全力で引き絞る。一挙手一投足を目に焼き付けるつもりで俺はミリアを凝視した。
ビュッ!!
弦が風を切る音が鳴る。
俺も、見様見真似で弓を引いてみる。
ビュッ!
――ピロリン♪【弓術/Fランク】を取得しました。――
早っ!まぁ、これまでガート村でアゴラやペギーの弓を見ていたからだろうか。
アイリも一応の形になっている。サフィーナはまだ苦戦中だ。手足が短いため、大きく弓を引けないでいる。
「ミリアさん。どこか悪い所があれば言ってください。」
俺は、弓を引きながら、ミリアにアドバイスを求める。
「なかなかいい形だ。そうだな……もっと引くときに左手の肘を伸ばすと安定性が増すと思う。
後は矢を射ることで慣れていくしかないだろう。ユウマはもう矢を射ても大丈夫だろう。」
ミリアの指さす方向には的がいくつか立てられている。ミリアはアイリ、サフィーナへの指導に映っていく。
よし、さっそく第一射目行ってみるか。的までの距離は20mほどか……よっと!!
サク
おっ、 あたーりー♪ もう一発
サク
おぉ! あたーりー♪ しかもど真ん中だ。
ミリアが口をあんぐり開けてこっちを見ている。
「ユウマは弓を使った経験があったのか?」
ミリアは慌てて聞いてくる。
「いや、初めてです。ただ、狩人の知り合いが多かったから、よく見てたからかなー。」
厳しい言い訳だが、何も言わないよりもいいだろう。俺は、こっそりとアイリ、サフィーナにもコツをアドバイスしていくと、そのフォームはみるみるうちに改善される。
「よ、よし……少し早いがアイリもサフィーナも矢を射てもいいだろう。」
俺はその後も、矢をサクサクと的に当てていく。少し横に移動しながら射てみる。ありゃ……外した。もう一回だ。おっ、当たった。じゃあ、今度は少し早く移動しながら……おしい。今度こそ!!よし!!あ、矢が尽きたな。拾いに行くか……
「ユウマ!!危ないっ!!」
俺が的に刺さった矢を回収しに行くと、アイリが放った矢が逸れてこちらに飛んできていた。
うわっ!!あぶねっ!!
パシっ!!
ヤバかった……普通、矢を射てる近くをフラフラ行くとこうなるよな。反省反省……。
「ユウマさん!!すみません。大丈夫でしたかー!?」
アイリが心配して声をかけてくれる。うん、まぁ、ビックリしたけど、何ともないぞ。
「ユウマー。さすがご主人様だなー。あんなことできるなんてな。」
ん?サフィーナ、何言ってんだ?
「ゆ、ユウマ……お前、それ狙ってやったのか?」
ミリアまで、何のことを……ん?俺、手に何か持ってる?矢だけど……ん?1本多い。
うぇ!?飛んできた矢を掴んだってか!?どんな戦国武将だよ!!
「いや……マグレだよ。マグレ。あは……あはははは……。」
――ピロリン♪【弓術/Eランク・Dランク・Cランク】を取得しました。――
うわ……これだけでミリアのランクに追いついたな。よし、俺からアイリ、サフィーナにアドバイスしていこうか。ミリアに悪いのでコソっと教え込んでいく。本当はアイリに密着して手とり足とり教えたいんだが……。サフィーナからの視線がすさまじいので止めておいた。2人とものスキルを確認するとすでに、弓術をEランクまで取得していた。ちなみに、俺が教えた体術は2人とも1日でEランクまで取得済みである。まだまだ、教えていない関節技はいっぱいあるので、今後も特訓は続けるつもりだ。
「あの……弓は俺たち、ある程度引けるようになったので、次は投擲術を教えてほしいんですが……」
俺が、思考停止に陥っているミリアに声をかけると、我に返って、ナイフの投げ方の指導を始めてくれた。
これも、俺の【学習者】のスキルがフル活動し、ナイフを5投するうちに、投擲の軌道は安定を始めた。そして、50投もするうちに、ミリアの投擲術のランクに追いつくことが出来た。そうするとあとは早かった。俺がアイリ、サフィーナに指導していくと2人の精度もドンドンと上昇していく。そうこうしているうちに、2時間が経過していた。
特訓が終わるとミリアはゲッソリとして、俺たちを眺めている。逆に俺たちは高揚してナイフをクルクルと回したり、弓の張り具合を見たりと、自信に満ちていた。
「ミリアさん。今日はありがとうございました。明日は8時に練習場に集合でも構いませんか?」
「あ、あぁ……それでいい。こんな短時間で上達する奴は初めてみた。私ももっと技を磨かないとまずいと気づかされた。私はここで、もう少し弓の鍛錬をしていく。もう行っていいぞ。」
ミリアに火をつけてしまったようだ。真剣な顔でその後も的を睨み付け、矢を射つづけていた。
「2人とも、今日はお疲れさん。俺の言った通り、上達が早かっただろ?一応、あれが俺のスキルの【学習者】と【教育者】の恩恵ってことになる。あ、一応、これは他言無用だからな。」
「もちろんです。でも、なんか夢みたいです。体が思うように動いて、矢が思ったところに飛んで行って……自分じゃなくなったみたい!」
アイリが興奮気味に今日の感想を言っている。
「サフィーナには、こんな隠された力があったなんてー。クックックー。」
サフィーナは厄介な病気を発症させている。まぁ、気持ちは解るが……
この日をきっかけに、俺たちは色々なスキルを学んでいくのであった。
最後まで読んでくださってありがとうございます。




