第六十九章 アイラ
脇の入口で待っていた若者は、求人の紙を四つ折りにして持っていた。
オールデンは危うく、荷受け場所へ案内するところだった。
臨時の作業員たちは二日前に引き揚げていた。扉の横には空のパレットが立ち、潰す必要のある箱が三つ残っている。九時に来るはずの保守業者の車を探しに外へ出て、作業靴を履いた見知らぬ若者を見つけたのだった。
「アイラ・カルダーです。昨日、電話しました」
折り返すつもりだった伝言を思い出した。
「ああ。すまない。入って」
アイラは事務所までついてきたが、オールデンが二つ目の椅子から部品カタログをどけるまで、扉のそばに立っていた。
二十代の初めに見えた。応募用紙には倉庫作業、品出し、配送、そして前の上司の電話番号がある。直近の仕事が終わったのは六週間前だった。
「季節雇用?」
「終わるときには、そう言われました。始めたときは、その先につながるかもしれないって」
どちらの味方をしてほしいという口調でもなかった。
続きを読んだ。
「七時半に来られる?」
「はい。時間は毎週変わりますか」
「この仕事では変わらない」
「多少の荷運びって、どれくらいのものですか」
窓の向こう、受け入れ用の台車にある採掘機を指した。
「ああいう機械や部品の箱。一人で重すぎるものは台車を使うか、人を待つ。怪我をして評価が上がる仕事じゃない」
アイラはガラス越しに見た。
「ハンドリフトは使ったことがあります。フォークリフトはありません」
「なら、ここのは運転しない」
仕事内容を説明した。機械の移動、指定した作業用在庫の清掃、空き梱包材の分別、通路の確保、指導のもとでの配線補助。電気修理はしない。棚をきれいにしたいからといって、機械のプラグを抜いたりもしない。
アイラはときどき区画のほうを見ながら聞いていた。
記載された上司へ電話すると、勤務期間を確認できた。きちんと出勤していたという。会社が彼を辞めさせたことに、少し腹を立てているようだった。
話を進めるには十分だった。
時給、最初の週の予定、レノーラに渡す書類を確認した。アイラは最初の給料日を訊いた。
オールデンは具体的な日付を答えた。
「わかりました。明日から来られます」
「今日は何か予定がある?」
「五時まではありません」
「半日、給料をつけて、現場を見てみる?」
アイラは求人の紙を開き、もう一度時給を見た。話していることが、紙と同じか確かめるようだった。
「はい。お願いします」
修理台でギャリックと会わせた。
「アイラ。今日から働いてもらう。荷受けと工場の補助」
ギャリックは時計を見た。
「朝飯は食ったか」
少し間があって、アイラが答えた。
「はい」
「よし。昼は十二時。耳当てはあの棚だ」
聴覚保護具を渡し、調節し終えるのを待った。それから歩行用に印をつけた通路と、修理待ち、返却待ち、まだ正体のわからない機器の違いを教えた。
オールデンは二人を残した。
一時間後、アイラは潰した箱を外の回収箱へ運んでいた。荷受け横の通路が空いているのを見たのは、その週で初めてだった。
次に通ると、空いた棚を拭いていた。
特別なところはなかった。雑巾とバケツを持ち、工場の埃は一拭きでは落ちないと知った人間の、諦めを含んだ集中で働いている。
ギャリックが、取り外し済みのファンの外装を置いた。
「これは掃除していい。トレーは一緒にしておけ」
アイラが洗浄剤に手を伸ばした。
「その瓶じゃない。膜が残る」
戻して、渡されたものを取った。外装を裏返そうとすると、緩んでいたねじが三本、トレーの縁へ転がった。二本はつかんだ。一本は作業台の下へ消えた。
初日の午前を選んでねじが意地悪をしたかのように、若者は床を見つめた。
ギャリックが懐中電灯を渡した。
「磁石はフックだ」
なくすより、見つけるほうが長くかかった。片袖に埃をつけて起き上がったアイラの手には、ねじが二本あった。
「どっちですか」
ギャリックが確かめる。
「こっち。もう一本は前から落ちてた」
「二本分、評価してもらえます?」
「うちのを落とさなくなったらな」
アイラは笑って、正しい一本をトレーへ戻した。
昼食後は、隣の稼働中のケーブルを引っ張らず、予備のネットワークケーブルをラックに沿わせて固定する方法を教わった。
最初の区間を終え、下がって確認を待つ。
一か所、曲がりがきつすぎた。やり直した。
二つ目は半分の時間で済んだ。三つ目では、空けておくべき場所を横切るかどうか判断できず、ギャリックを呼んだ。
事務所で質問を聞いたオールデンは、一瞬、新人はずいぶんギャリックの時間を使うものだと、不親切なことを思った。
するとギャリックは、手元の修理を置かずに答えた。
「違う、その支持材の下だ。引き出しを抜けるだけの余りを残せ」
アイラはケーブルを移した。
質問にかかる手間は、減っていた。
三時、修理客が早く来て、ポンプの組み上がり品を求めた。オールデンはアイラに、返却用の棚だと伝えた。
彼は何も持たずに戻ってきた。
「同じ名前のが二つあります」
「青い札のほうだと思う」
「両方、青です」
もう一度指を差しかけ、やめた。自分で行った。
二つの組立品が並んでいた。同じ客の古い依頼品は引き取り待ちで、新しい修理が今朝終わったのだった。どちらを取りに来たか、自分にはわかる。電話を覚えているからだ。
棚には、その情報がなかった。
カウンターで作業伝票の番号を確かめ、アイラにも一致させる番号を示した。
「これを使って。名前で判断しない」
正しい品を台車で運ぶ。客は署名し、もう一つは金曜まで置いておけるか訊いてから帰った。
オールデンは古いほうの伝票に、引取予定日をマーカーで書き加えた。
四時、保守業者から電話があり、翌晩は担当できるが土曜はオールデンに代わってほしいと言われた。予定表を開くと、その外のことを忘れてしまった。
次に顔を上げたとき、アイラが扉にいた。バケツの取っ手に、畳んだ雑巾を掛けている。
「四時半です。帰る前に確認してからって、ギャリックさんが」
勤務票を見る。開始時刻は入っていたが、終わりは空白だった。
「四時半と書いて。今日は終わり」
「試験台の後ろの棚は?」
「明日」
うなずいたが、まだ行かなかった。
「七時半ですか」
「そう」
「一週間、ずっと?」
予定表を彼へ向けた。月曜から金曜まで、彼の名前があった。
アイラはしばらく、それを見ていた。最初に見せておけばよかったと、オールデンは思った。
「ありがとうございます。では、また」
帰ったあと、ギャリックが伝票を取りに来た。
「どうだった?」
「よかった」
「知っておくことは?」
「教えてやる必要はある。たいていの人間はそうだ」
窓から、アイラの通した予備ケーブルが見えた。支持材に沿って整い、引き出しを抜く余裕もある。
この一か月、もう一人の手が持つ価値を計算していた。
今は予定表に名前があり、守るべき最初の給料日があり、明日が本当にあるかを確かめる人間がいる。
オールデンは勤務時間と給料日を入れた一週間分を印刷し、時計のそばに置いた。
お読みいただき、ありがとうございます。
本作は、作者本人が海外の小説投稿サイトで発表しているオリジナル作品の日本語版です。
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――東川鬼面斎




