第六十六章 預かる仕事
見込み客は、稼働開始日を知りたがった。
オールデンは、前の運営会社からなぜ三つも違う日付を示されたのかを知りたかった。
ビデオ通話だった。紹介を終えたエヴェレットは黙っている。ネイサン・リードの背後には、平たくした段ボールが壁に立てかけてあった。
「訊くたびに、来週だと言われたからですよ。そのうち電話に出る担当も変わった」
「遅れた理由の説明は?」
「説明は見事でした。磨き上げるあいだの保管料は、私が払いましたが」
オールデンはパソコンを動かし、事務所の窓越しに未完成の区画を映した。
「今回の場所は、ここです。反対側では自社の設備を動かしています。こちらには配電と換気の工事が必要です。写真と工事範囲を送ります」
リードが画面へ身を寄せた。
「つまり、今使えるラックはない」
「整えられる施設があります。工事中の場所へは搬入させません」
初めてリードがカメラから目を外した。紙の動く音がした。
エヴェレットが入る。
「ネイサン、すぐ入れるという別の施設は、運賃以前に料金が合わなかった。多少の工事は承知してたはずだ」
「承知していたことは、わかってる」
リードはオールデンへ戻った。
「輸送を決められる日付が欲しいんです。四十五日なら四十五日と言ってほしい。二十日が六十日になるのは、もう無理だ」
その苛立ちには敬意を払えた。実際に払った請求書から来るものだった。
「最初の受け入れ分を決め、電気工事業者の確認を取ったうえで工程を出します。今日はまず、サービスと料金が合うかを確かめたい」
一枚の提案書を送った。
リードは黙って読んだ。エヴェレットはマイクを切った。
機械の所有権はリードに残し、採掘報酬も彼のプール口座に入る。ヴォス・アークティックは場所、電気、ネット接続、監視、合意した範囲の日常作業を提供する。部品と大きな修理には、別の承認が要る。
リードは途中で止まった。
「一本の料金のほうがいい」
「総額の見込みは出します。その総額が何で変わるかも、見えるようにしたい」
「前の見積もりは一ページ目の電気が安くて、それ以外のあらゆる場所に請求があった」
「では、今ここで全部確認しましょう」
そうした。
追加の負荷と、沢だけで全体を賄えない冬を前提に、買電費を積んでいた。夏の水力には余裕を残す効果がある。しかし夏の条件で、守れない通年料金を約束はしなかった。
サービス料は、実際の場所代、保守の人員、記録と故障対応の費用を払わなければならない。客から受け取る電気代は、電気代に充てる。会社の口座を通るからといって、見かけの利益にはしない。
リードが保守の行を叩いた。
「夜中の二時に、一台消えたら?」
「ケーブルや再起動、事前に認められた対応なら、こちらで処置します。作業台での修理が必要なら――」
「私は寝ています」
オールデンは止まった。
「そこを訊いているんです」
「なら、最初のトラックが出る前に、修理費の上限を決めましょう。その額以下なら対応する。超えれば承認を待つ」
「数字を文書にしてください。四十ドル使うのをためらったせいで、壊れたファンを十二時間放置したなんて朝は御免だ」
机の横の椅子で、ギャリックが顔を上げた。
「だったら、予備のファンも機械と一緒に送ってくれ」
オールデンは画面の外の人間のままにせず、正式に紹介した。
「修理を担当するギャリックです。保守に何を含めるか慎重なのは、彼がいるからです」
ギャリックが身を寄せた。
「早く換えたいなら、必要になる前に、あんたの予備を置いておく」
リードはすぐうなずいた。
「一覧を送ってください」
その合意は、次より簡単だった。
提案には電気代の前受金と保証金があった。リードは初月を、稼働後の後払いにしたがった。
「今の業者に、まだ保証金を握られている」
「わかります。でも、そのお金が戻るかどうかにかかわらず、こちらの電気代は期限が来ます」
「見てもいない工事の資金を、私が出すことになる」
「工事費は自社で用意します。電気の前受金は使用量と精算する。保証金と返還条件は契約に書く。どちらも工事予算には入れません」
リードは身を引いた。エヴェレットはマイクを入れたが、結局話さなかった。
オールデンも沈黙を埋めなかった。
仕事は欲しい。今の予測を見れば痛いほど明らかだった。だが今朝、草案を読んだレノーラは、新規客へ三十日分の電気を掛けで供給する行で手を止めた。
その請求でもめているあいだ、給料日を何度越せるのか。
提案を書き直していた。
やがてリードが言った。
「保険の詳細が欲しい。それと実績を確認できる相手。実際に機械を扱ってもらった人を」
「修理のお客さんに何人か、電話を受けてもらえるかギャリックから訊けます。外部の採掘機群を預かったことは、まだありません。これまでの修理について話してもらうことになります」
リードがまた前へ出た。
「つまり、私が実験台だ」
「稼働中の会社の、新しいサービスを検討していただいています。受け入れの検査手順と、範囲を決めた最初の一群から始めます。顧客設備について五年分の稼働実績が必要なら、それは提供できません」
口にした言葉を、自分でも聞いた。一年前、ヴェイラにいたころなら、あと五分かけて、不利に聞こえない言い方へ整えただろう。
リードは彼を見た。
「前の男は、すばらしいパンフレットを持っていた」
エヴェレットは目を伏せた。ギャリックは笑わなかった。
話を進めた。計画保守、停止の通知、採掘負荷を抑制する場合の条件。リードが求めたのは即時の知らせ、何が止まったかの記録、復旧したことの確認だった。天候についての長文は要らない。
要件を書き加えた。所有者が性能データを見られること。受け入れ時に製造番号を照合すること。容量、工程、書面の条件が決まるまで何も発送しないことにも合意した。
通話の終わりには、双方の修正が提案に入っていた。
契約は成立していない。
リードは正午までの改訂版を求めていた。
画面が消えても、ギャリックは座っていた。
「今の話の仕事はできる。だが、今ある仕事に全部上乗せはできん」
「もう一人分は費用に入れた」
「トラックより先に、その一人を見つけろ」
予測を見せた。人手、予備部品、外注する電気工事。そのほかに相当な初期費用があり、正式な見積もりを待っていた。
「ほかの奴がビットコインをもらうのに、ずいぶん使うな」
昨夜、自分にもした問いだった。
「機械を動かしておく仕事に払ってもらう。先に機械を買う必要はない」
「相手が払えなくなったら?」
「契約に従って、サービスの掛け提供を止める。それでも空いた区画の費用は残る」
ギャリックはうなずいた。不利益に形があると、いくらか納得しやすいようだった。
彼が出ていってから、オールデンは預かり事業の予測を自社採掘と分けた。数えるのは、費用を引いたサービスの利益だけ。リードのビットコインは、表に入れない。
価格下落が無害になるわけではない。リードにも、客であり続ける現金が要る。それでも作業の値段を出し、請求し、約束したことを果たせたかを測ることはできた。
終える前に電話が鳴った。リードだった。
「共同出資者と話しました。紹介先の確認と書面に問題がなければ、前向きです」
「改訂版は明日出します」
「ひとつ変更が。機械を複数の施設へ分けたくない。四百台全部で見積もれますか」
窓から区画を見た。今朝は電気工事の見積もりと修理予定を持って歩いた場所が、ほとんど埋まって見えた。
リードは続けていた。送り先が一つなら輸送が簡単になる。報告も一社なら済む。大きな契約なら、料金にも反映できるはずだ。
オールデンは提案書を伏せた。
「全台分の負荷一覧を送ってください。数え直します」
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本作は、作者本人が海外の小説投稿サイトで発表しているオリジナル作品の日本語版です。
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――東川鬼面斎




