第六十五章 エヴェレットからの電話
その朝、エヴェレットの最初の電話は留守番電話に回った。
オールデンは制御盤の下へ両手を入れていて、携帯は工場の反対側にあった。抜け出せたときには、伝言が残っていた。
「何か買う前に電話をくれ。できれば、俺が何か売りつける気だと決める前に」
手を拭いて時刻を確かめた。
外では貨物トラックが倉庫へ後退していた。四月なら運転手は分岐で止まっただろう。今は七月で、いちばんひどかった道は作り直されていた。運転手の心配は、もっぱら邪魔な位置にあるピックアップだった。
道路工事の一部は、春に整理した在庫が払ってくれた。残りは、できることならほかの何にでも使いたかったドルで払った。
十八台は買い替えていない。
所有する機械は今も約百二十台。空いたコンセントを全部埋める義務があるとは考えず、弱い機械はその時々の電気代に照らして判断していた。夏の豊かな水は助けになった。しかし採掘収入の減少は、沢のくれるものより大きかった。
修理費、給与、保険料、敷地を維持する費用まで入れると、直近の一か月を通した予測は、わずかにゼロを割った。
現金はある。ただ、そのうちいくらを使っているのか、レノーラは予測に明示させていた。
その行を見ていると、エヴェレットからまた電話が来た。
「また処分品なら、もっと金持ちに送ってくれ」
「いい挨拶だ。受付を雇ったら教えてやれ」
オールデンは待った。
「機械を動かせる場所を探してる。持ち主は売りたくない。今の施設が来月末で閉まる」
搬入口でハンドリフトが敷居にぶつかり、大きな音を立てた。事務所の扉を閉める。
「持ち主の支払いは?」
「遅れなし。支払済みの請求書も閉鎖の通知も見た」
「運営会社は?」
「監査したわけじゃない。そこまで言ったことにするなよ」
メモを引き寄せた。安心させる言葉より、信頼できる答えだった。
「訊くと思った。買い取りの話も来てるが、本人は断ってる。ほかの預かり先は、今の収入じゃ赤字になる料金か、誰も署名してくれない稼働予定日しか出してこない」
「アラスカなら運賃が増える」
「それも言った。おまえが現状渡しで六十台買って、四十八台動かした話もした」
「かなり部品を換えて、やっと動いたんだ」
「そう。その部分を売り込んでる」
オールデンはペンを置いた。
ガラスの向こうで、ギャリックが配送ラベルと格闘していた。剝がして下の部品番号を探し、箱を修理台へ運んでいく。
「相手は、具体的に何をしてほしい?」
「電話に出る施設。払える電気代。ファン一つ換えるのに、三週間も受付番号を眺めずに済む相手。細かい話は、おまえが検討すると言ってからでいい」
自分の機械の動かし方は知っている。そして小さな故障のどれだけを、ギャリック以外には知らせず受け入れてきたかも知っていた。数千マイル離れた客は、それについて意見を持つだろう。
「機種と台数を送って。稼働ログ、電力設定、修理履歴。あれば施設での実測消費電力も」
「断るよりは前進だな」
「引き受けるとは言ってない」
「ファイルを求める段階くらい、長いつき合いだからわかる」
話しているうちにメールが来た。
写真は拍子抜けするほど見慣れたものだった。金属の筐体、ファン、ケーブルの束、ふつうのラックの機械。一枚に、出荷用に巻かれたパレットが写っている。
拡大した。
「もう梱包してる?」
「一部だけだ。北行きの車は取ってない。おまえの住所を使ってる奴もいない」
製造番号の一覧へ進む。
「君は相手の代理人?」
「紹介と輸送の手配だ。受け入れが決まれば、向こうから開示済みの手数料をもらう。本人と直接話せる。そうしてくれたほうがいい」
そのことも書いた。
「台数より施設の条件が大事だ。夏に約束できることと、一月に支えられることは違う」
「なら、一月で見積もれ」
「検討する時間が要る」
「稼ぐはずの機械に保管料を払う前に、答えが欲しいんだ。明日、仮の返事はできるか。契約じゃない。時間の無駄かどうかを知りたい」
月の予測を見た。
「明日の午後」
電話を終え、機器一覧をギャリックに持っていった。
作業台には梱包材が広がっていた。届いた部品は正しかったが、付属の金具が違っていた。
「エヴェレットに、採掘機を預けたい客がいる。機械も掘れたコインも客のもの。僕らは運転の対価をもらう」
ギャリックは紙を受け取らず、一枚目を見た。
「修理は誰のを先にやる」
「まだ何も約束してない」
「する前に訊いてる」
間違った金具の横を空けた。
「定期作業は予定を組む。故障は対応時間を決める」
「いい。その時間に間に合う人数を入れろ」
修理予定のボードを彼へ向けた。三件は部品待ち。二件は台に載せるのを待っている。もう一件の伝票には、〈金曜までに必須〉と大書してあった。
「この人たちは今も来る。いいコンピューターが届いたからって、うちが要らなくなるわけじゃない」
余っている電力は計算していた。金曜日はまだ数えていなかった。
「対応する人の費用は、別に積む」
「それと、夜中の二時に焼けた基板を作り直すつもりはないと伝えろ」
それも書き留めた。
午後の残りは、建物の未使用区画を歩いた。春の片づけで場所は空いたが、床が空いているだけでは始まらない。配電、換気、入退室の管理。そして、誰かの記憶に頼らず客の機械を一台ずつ識別できる仕組みが要った。
冬の出力抑制のあと、必要になる前に買電上限を上げるには何が要るか、ナディーンに相談していた。電力会社は受電設備工事の完了を条件に、上限引き上げを認めている。その書面で増設は可能になったが、回路が一本でも敷かれたわけではない。
見積もりを受信箱に眠らせていた電気工事業者に電話した。
今度は、具体的な用途があった。
六時、エヴェレットからメッセージが来た。
〈一日を台無しにしたか?〉
空の区画で、オールデンは携帯を持って立っていた。壁の向こうでは自社の機械が、値打ちの下がったビットコインの、さらに小さな取り分を争っている。
返信した。
〈持ち主の連絡先を。前の施設で何が悪かったのか、本人に聞きたい〉
名前と番号が届いた。そのあと、もう一通。
〈いつ搬入できるか訊かれるぞ〉
照明を落とす前に、未完成の区画を撮影した。
今ここに何があるか。そのまま見せるつもりだった。
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本作は、作者本人が海外の小説投稿サイトで発表しているオリジナル作品の日本語版です。
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――東川鬼面斎




