第四十章 銘板
発電機の銘板は変わっていない。
450 kW。
オールデンは水力発電棟で、その数字とライブメーターを見比べていた。
241 kW。
少し待つ。
238。
「センサーじゃない?」
「違う」
「校正?」
「違う」
「制御側で絞ってる?」
「違う」
ギャリックは手袋をはめる。
「水が恥ずかしくなるまで質問してもいいぞ」
外へ出た。
嵐のあと、取水路周辺には雪が残り、足元は固く凍っている。
スクリーンには氷がつき、水路の縁も凍結していた。
水は流れている。
ただ、少ない。
「この発電機、四百五十の定格だろ」
「ああ」
「十月は三百以上出てた」
「ああ」
「今は二百四十」
「そう見える」
取水口から少し離れてしゃがむ。
「氷の影響は?」
「ある」
「流量は?」
「それも」
「どっちが大きい?」
ギャリックは小川を見る。
「今日なら?」
「今日」
「水」
「曖昧だな」
「十一月だからな」
「月の名前だろ」
「答えでもある」
父の事務所へ戻り、水力モデルを開いた。
採掘機は約百二十台。
総ハッシュレート約10.2PH/s。
周辺設備まで含めれば、全稼働でサイト全体は四百kW近く欲しい。
九月は、水力だけで大半をまかなえた。
今は無理。
不足分は電力会社から買う。
モデルの水力入力を330から240へ変更。
数字が即座に動く。
購入電力増。
利益率低下。
余裕減少。
古いセルにはまだ、
HYDRO CAPACITY — 450 kW.
とある。
その下に一行追加した。
AVAILABLE NOW — 240 kW.
ギャリックが取水口から回収した氷まみれのごみをバケツに入れて戻ってくる。
「最初に採掘モデルを作ったとき、俺は四百五十で計算した」
「看板の数字を計算したんだろ」
「定格出力だ」
「ああ」
「嘘の数字ではない」
「違う」
オールデンは彼を見る。
「じゃあ、何が違う」
「四百五十は、“必要な条件が揃えば機械が出せる数字”だ」
「落差と流量」
「それ以外もな」
「今は揃ってない」
「今の小川は、水が少なくて、氷が多い」
オールデンは椅子に身体を預けた。
「それだけか」
「だいたいな」
「腹が立つくらい単純だ」
「それも、だいたいいつも通りだ」
前年冬の記録を開く。
季節で出力が落ちることは、最初から資料に書いてあった。
一度読んでいる。
だが当時は、“450kW”のほうを見ていた。
今回は、採掘モデルへ入る数字そのものを直した。
そのとき電話。
「ヴォス・アークティックです」
「オールデン? ナディーン・クォンです」
オールデンはライブ出力をもう一度見る。
「何かありました?」
「何も。ただ、あなたの負荷について話したくて」
オールデンは画面の数字から目を離さなかった。
240 kW。
銘板は450のままだ。
でも、商売を動かすのは銘板ではない。
今日、実際に使える数字だった。
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本作は、作者本人が海外の小説投稿サイトで発表しているオリジナル作品の日本語版です。
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――東川鬼面斎




