第三十九章 フェアバンクス
翌日の午後、道路は一部だけ再開した。
フェアバンクスまでではない。
ヴォス・アークティックまでは行ける。
最後の一マイルを除雪車の後ろについて進むと、ギャリックがスコップで横扉を掘り出していた。
「除雪機あるだろ」
「動かない」
「そう来ると思った」
「バッテリーは中で温めてる」
「そこまで想定してたのか」
「全部ではない」
採掘エリアは無事だった。
百二十台。
熱。
騒音。
コートを脱ぐ前に画面を見る。
ハッシュレート正常。
スマートフォンには、まだ物流通知。
FAIRBANKS TERMINAL — READY FOR PICKUP.
運送会社へ電話したが、答えは変わらない。
荷物はある。
ターミナルも開いている。
ただし、その間の道路が通常交通には開いていない。
「明日かな」
ギャリックはすでに採掘エリアの奥へ向かっていた。
「かもな」
「何が壊れた?」
吸気制御。
電動ルーバーの一つが途中で止まっている。
「ゾーン3の温度が上がってる」
「ゆっくりな」
「そのラックを止めるか」
「できる」
「ルーバーを手で開けるか」
「できる」
オールデンは彼を見る。
「三つ目がある顔だな」
ギャリックが制御盤を開けた。
コンタクタの端子近くに黒い焼け跡。
「これ」
「予備は?」
「新品ならフェアバンクス」
四十マイルが、急に腹立たしくなった。
「このまま、どれくらい?」
「“仮運転”って言葉をどれくらい好きかによる」
オールデンは倉庫の棚を見る。
「ドナー?」
「マイナーからは取らない」
「じゃあ止めるか」
ギャリックは制御盤を閉めた。
「来い」
修理場を抜け、古い在庫倉庫へ。
そこには、かつてオールデンが“棚の上で寝ている現金”と呼んだ部品が並んでいる。
バーナー制御。
ポンプ。
リレー。
モーター。
スイッチ。
コンタクタ。
ギャリックは第三列から、埃をかぶった箱を降ろした。
MOTOR CONTROL — SPARES.
「知ってたのか?」
「俺が置いた」
「いつ」
「ずっと前」
中には古い包装のコンタクタが何種類もある。
一つ目。
電圧は合う。
電流容量も合う。
取り付け穴が合わない。
「駄目」
二つ目。
近い。
でも違う。
三つ目。
電気的仕様は合う。
盤内スペースも足りる。
取り付け板だけ作れば使える。
オールデンはギャリックを見る。
「同じような部品を三種類も?」
「オーソンが残した」
「もう存在しない設備用に?」
「今日使う設備には、十分近かったらしい」
スクラップ鉄板から小さなアダプタープレートを作る。
オールデンが回路を遮断し、無電圧を確認。
一時間もかからなかった。
見た目は美しくない。
だが、動く。
電源復旧。
ルーバーアクチュエーターが動き、冷気が入る。
ゾーン3の温度が下がっていく。
オールデンは倉庫を振り返った。
昔、あの棚を“回転しない在庫”と切り捨てた。
ギャリックが壊れたコンタクタを作業台へ置く。
「何年、あそこにあった?」
「親父さんが死ぬ前から」
「ずっと誰も使わなかった」
「今日まではな」
「在庫回転率としては最悪だ」
「そうだろうな」
オールデンは続きを待った。
ギャリックは工具を片づけ始める。
「それだけ?」
「何が」
「“ほら、お前が間違ってた”って言わないのか」
「間違ってた」
「わかってる」
「なら時間節約だ」
スマートフォンの運送画面は、まだ READY FOR PICKUP。
新品部品は四十マイル先。
古い部品は四十ヤード先だった。
オールデンは倉庫を見る。
「親父、どれくらい残したんだ」
ギャリックが工具箱を持ち上げる。
「お前が腹立てるくらい」
手の中の古いコンタクタを見る。
「……その通りらしい」
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本作は、作者本人が海外の小説投稿サイトで発表しているオリジナル作品の日本語版です。
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――東川鬼面斎




