第三十八章 嵐
翌朝四時四十分。
スマートフォンが六件の警報でオールデンを起こした。
マイナーの異常は一件もない。
それでも最初に監視画面を開いた。
ハッシュレート正常。
温度正常。
電力正常。
その下の天気警報だけが正常ではなかった。
注意報は、一晩で冬の嵐警報へ変わっていた。
服を着て外へ出る。
州道へ出たころには、道路が雪の中へ消え始めていた。
ヘッドライトの中を雪が横向きに流れる。
除雪車が通った跡はまだ見えるのに、風がすぐ新しい雪を車線へ戻していく。
車載通話にギャリック。
「どこだ?」
「運転中」
「引き返せ」
「あと二十分」
「なら二十分かけて、まともな判断をしろ」
「採掘場は動いてる」
「だから来なくていい」
「そっちは工場だろ」
「荒れる前に来た」
「重要な情報を後出しするな」
「だから言ってる。戻れ」
突風で、前の車のテールランプまで消えた。
オールデンは次の安全な退避所へ入り、除雪車が来るのを待った。
その後ろについて、家へ戻った。
帰路の全部で、その判断が気に入らなかった。
朝七時。
レノラの台所で、採掘画面を開く。
百二十台。
Online.
ギャリックから写真。
工場入口が吹き溜まりに埋もれている。
「どれくらい?」
電話すると、
「十分深い」
「数字で言え」
「トラックが“無理”って言ってる」
「試したのか?」
「トラックがな」
門は上半分しか見えない。
「除雪業者は?」
「順番次第」
「契約してるだろ」
「全員契約してる」
「何が要る?」
「まだ何も」
「燃料」
「満タン」
「発電機」
「確認済み」
「食料」
「ある」
昨日、ギャリックが“要る”と言って買ったものだった。
オールデンが“まだ要らない”と思っていたものだ。
九時。
93号機が落ちた。
remote console へ反応なし。
電話。
「93号」
「聞こえた」
「一台止まった音がわかるのか?」
「違う。お前がつけた警報の音がした」
「電源かも」
「かもな」
「交換できる?」
「電源なら」
「ドナー使って」
「もう歩いてる」
十分後。
「ファンコネクターだった」
「そのほうがいい」
「電源が壊れてほしかった?」
「いや」
差し直しで93号機は復帰。
緑のランプが戻る。
「ほかは?」
「雪」
「雪は知ってる」
「お前が知ってるのは天気アプリだ」
窓の外を見る。
レノラのポーチにも雪が積まり始めていた。
正午、除雪業者へ電話。
「ヴォス・アークティックです」
「わかってます。リストには入ってます」
「何番目?」
相手が少し黙る。
「丁寧な答えと、役に立つ答え。どっちがいい?」
「役に立つほう」
「風が止まらない限り、今日は無理」
「明日?」
「道路が残ってれば」
電話を切った直後、別の通知。
今度は天気ではない。
FAIRBANKS TERMINAL — ARRIVED.
第二ロットの修理部品。
凍結前に注文した荷物だった。
READY FOR PICKUP.
オールデンは道路閉鎖情報と、その通知を見比べた。
四十マイル。
数字だけなら、近い。
今は、遠かった。
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本作は、作者本人が海外の小説投稿サイトで発表しているオリジナル作品の日本語版です。
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――東川鬼面斎




