第三十三章 運は売上ではない
翌朝九時までに、オールデンは将来予測から6.25BTCを全部消した。
予測上の会社は、一瞬で小さくなった。
壊れた電源ユニットを抱えたギャリックが入ってくる。
「昨日の大金、消したのか」
「消してない。別にした」
「画面からは消えた」
「実際には残ってる。ただ、次のブロックを予算には入れられない」
「プールの金は入れるのに?」
「妥当な範囲でなら」
「でかいほうは?」
オールデンは画面を向けた。
「六・二五BTCを数週間ごとに入れたら?」
「金持ちに見える」
「二度と出なかったら?」
「馬鹿に見える」
「それが問題だ」
ギャリックは少し考えた。
「つまり、一番大きく稼いだ金は“起きたこと”であって、“起きること”じゃない」
「そうだ」
「会計、わかってきた」
「一セルだけな」
元のソロ試験メモを開く。
小規模な独立採掘でもブロックを見つけられるか。
答え――Yes。
それを前提に商売を組めるか。
答え――No。
一つ目の答えは午前二時十七分に来た。
二つ目は、その前日にすでに出ていた。
報酬欄の下に追記する。
DO NOT ANNUALIZE.
年率換算禁止。
昼、モロウ・ハウスへ行く。
カウンターで請求書を見ていたマレンが、ノートパソコンに気づいた。
「昨日より貧乏そう」
「資産は昨日と同じだ」
「つまらないね」
「表計算を変えた」
「でしょうね」
画面に表示した。
SOLO BLOCK — NON-RECURRING.
ソロ・ブロック――非継続収入。
「大金にラベル貼ったの?」
「ああ」
「“繰り返さない”って?」
「ああ」
マレンが彼を見る。
「戻ってきたばかりのころ、あなた、工場の中身も知らずに売ろうとしてたよね」
「今の話と関係あるか?」
「ある」
彼女は画面を指先で軽く叩いた。
「あなた、答えを早く欲しがるでしょう。昨日は、ものすごく派手な答えが出た」
「結果だ」
「じゃあ、派手な結果」
もう一度、画面を叩く。
「それでも、地味なほうを残した」
「再現できるほうを残した」
「そう、それ」
客が近づいてきた。
マレンは空のマグを持ち上げる。
「ちなみに、あなたがやったビットコイン関係で、初めて全部納得できた」
「プール?」
「違う」
彼女は流しへ向かった。
「勝っても馬鹿にならなかったこと」
工場へ戻ると、プール画面にはまた小さな報酬が積み上がっていた。
劇的ではない。
オールデンは、そのほうが好きだった。
四十八台。
約4PH/s。
ASIC負荷、およそ150kW。
九月の水力なら支えられる。
計画できる数字だった。
ソロ報酬は営業キャッシュフローの下、別枠へ。
NON-RECURRING / SOLO BLOCK.
そして拡張計画へ戻る。
次の現状渡しロット、約八十台に最大10万5千ドルまで投じる。
残りは予備資金として残す。
そのとき、電話が鳴った。
以前連絡した商業不動産ブローカー。
別ウィンドウには、昔の売却用ワークブックが開いたままだ。
土地。
倉庫。
産業用電力。
修理工場。
水力。
かつては全部、“処分項目”だった。
窓の向こうでは四十八台がプールで稼働している。
電話は鳴り続けた。
オールデンは一度だけ倉庫を見て、受話した。
「ヴォスです」
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本作は、作者本人が海外の小説投稿サイトで発表しているオリジナル作品の日本語版です。
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――東川鬼面斎




