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アラスカでビットコインを掘ることになった  作者: 東川鬼面斎 - Easton Ghostmask


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第十九章 古い帳簿

ORSON — PROJECT COSTS。


最初のページは目次だった。


出来の悪い目次だった。


オーソンは項目名を太いブロック体で書き、二つを線で消し、矢印を書き足し、下半分には小さな紙をホチキスで留めている。


アルデンはしばらく眺めた。


「三十年も産業機械を作ってて、プロジェクト管理がこれかよ」


修理区画からギャリックの声が飛んできた。


「今度は死人と話してるのか?」


「情報設計を批判してる」


「効くだろうな」


アルデンはページをめくった。


測量。


地盤調査。


土地売買の決済書類。


流量測定。


許可申請。


さらに別の許可申請。


日付が数年単位で飛ぶ。


オーソンは、水力発電所を一つのプロジェクトとして建設したのではなかった。


少しずつ、積み上げていた。


初期の業者見積もりの横に、オーソンの字がある。


高すぎる。待つ。


三年後。


別の業者の書類が現れた。


さらにめくる。


掘削。


コンクリート。


配管支持架。


電気工事。


制御装置。


道路整備。


開閉設備。


ギャリックの話を裏づけるには、それで十分だった。


二十年近く。


先へ進もうとしたところで、手書きの設備一覧が出てきた。


ある項目の横。


資金が残れば来年。


別の項目。


中古でいい。ここで直せること。


アルデンは、その一行を二度読んだ。


ギャリックが部品マニュアルを探しに入ってくる。


アルデンは紙を持ち上げた。


「父さん、借金したくなくて設備を先送りしてたのか?」


ギャリックは棚からマニュアルを抜いた。


「そういうときもあった」


「“ときも”?」


「給料を先にしなきゃならんときもあった。工場に別の機械が必要なときも。去年買ったものをアラスカに壊された年もな」


「融資は使えたはずだ」


「気に入らない選択肢なら、あった」


アルデンはもう一度、書き込みを見る。


中古でいい。ここで直せること。


ノートPCには、エヴェレットが送ってきた清算品の写真がまだ開かれていた。


安いASIC。


状態はばらばら。


履歴不明。


一週間前なら、いちばん気になった数字は購入価格だった。


今は違う。


アルデンはモデルに二つの列を追加した。


現地修理可能?


部品故障時の停止時間。


携帯が震える。


エヴェレット。


生きてる?


アルデンは打った。


「動く」の定義は?


三点リーダー。


機械の話?


そうだ。


売り手の定義? お前の定義?


俺の。


返事まで少し時間がかかった。


電源が入り、想定に近いハッシュレートが出て、既知の重大なボード故障がないこと。ただし清算品だ。汚い。履歴は混在。修理歴ありもある。見た目がひどいのもある。


実際どこまで確認できる?


お前が安心して眠れるほどは無理。


役に立つ答えだ。


努力してる。


アルデンは携帯を置いた。


バインダーへ戻る。


ただし、もう一枚一枚の請求書を読むのはやめた。


金額の総計より、そこに繰り返されている判断のほうが重要だった。


必要なときに土地を買う。


現金が苦しいときは設備を待つ。


交換する前に直す。


もう一度つくるのが難しいものには金を使う。


あとでも買えるものは待つ。


許可書類の束の奥から、折り畳まれた一枚の紙が滑り落ちた。


アルデンは床に落ちる前に拾った。


二列の比較表だった。


FAIRBANKS INDUSTRIAL


MORROW CREEK


フェアバンクス側。


移動時間が短い。


サービスが充実。


採用もしやすい。


土地はずっと高い。


モロー・クリーク側。


広い土地。


道路アクセス。


川。


高低差。


電力会社。


拡張余地。


一番下で、オーソンは三つの言葉を丸で囲んでいた。


LAND.


WATER.


POWER.


土地。


水。


電力。


アルデンの手が止まった。


記憶の端から、一台のピックアップが浮かび上がる。


ダッシュボードを転がる紙コップ。


フロントガラスの向こうを指さす父親。


何もない土地。


少なくとも、当時のアルデンにはそう見えた土地。


もう一度、その紙を見る。


POWER.


電力。


アルデンは、これをどこで聞いたのか思い出していた。

お読みいただき、ありがとうございます。


本作は、作者本人が海外の小説投稿サイトで発表しているオリジナル作品の日本語版です。


続きが気になりましたら、ブックマークや評価で応援していただけると、とても励みになります。


――東川鬼面斎

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