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アラスカでビットコインを掘ることになった  作者: 東川鬼面斎 - Easton Ghostmask


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第十五章 電気料金明細

アルデンは午前中いっぱい、古い電気料金明細の辻褄を合わせようとした。


明細のほうには、従う気がなかった。


考えつく説明は、もう一通り潰していた。


年代によるメーターの違い。


ディーゼル燃料の購入記録。


非常用発電機の運転ログ。


保守記録。


受電設備の変更。


どれを足しても、穴は埋まらない。


アルデンは、ある月の生産記録を、その月の電気料金明細の隣に置いた。


工場は忙しかった。


電力メーターだけが、そうは言っていない。


ギャリックがバインダーを探しにオーソンの事務所へ入ってきた。


机の上を見て、足を止める。


「何かなくしたか?」


「電気」


「たいてい外にあるな」


アルデンは請求書を持ち上げた。


「この月、工場はフルで生産してる。なのに買電量が少なすぎる」


「どれくらい」


「メーター履歴を二回確認するくらい」


「お前らしい」


「理由、知ってるだろ」


ギャリックは棚からバインダーを抜いた。


「知ってることなら、たくさんある」


「その答え、だんだん高くつくな」


「なら、タダで質問するのをやめろ」


アルデンは机の記録を指した。


「父さん、この土地に別の電力契約を持ってた?」


「長い間には、そりゃあな」


「それは確認した」


「じゃあ手間が省けたな」


「別の電源は?」


ギャリックがアルデンを見る。


それきりだ。


アルデンは待った。


「非常用発電機?」


「それはもう知ってるだろ」


「ああ」


「なら、大した謎じゃない」


ギャリックはバインダーを小脇に抱えた。


アルデンは立ち上がった。


「もっと電気を買ってるはずの工場が、なぜ買ってないのかを聞いてる」


「電力会社に聞け」


「ここで三十年働いてただろ」


「だからこそ、その請求書が誰のものかは分かる」


「腹の立つ答えだな」


「正しい答えでもある」


ギャリックは出ていった。


アルデンはモロー・クリーク電力に電話した。


自動音声に四分ほど付き合わされたあと、ようやくカスタマーサービスにつながった。


「アルデン・ヴォスです。ヴォス・アークティック・ヒート&イクイップメントの過去の契約を調べています」


「はい、ヴォス様」


「古い請求書が何枚か、操業記録と合わないんです」


「合わない、というのは?」


「工場が御社から購入した電力量より、実際には多く使っているように見えます」


キーボードの音。


「契約番号をお願いします」


アルデンは読み上げた。


またキーを打つ音。


「契約を確認しました」


「この物件に、ほかの供給契約はありましたか?」


「長年の間に、メーターや受電契約の変更はいくつかあります」


「そこは確認済みです」


入力音が止まる。


少しして、また始まった。


「こちらに、私では判断できない注記があります」


アルデンはペンを取った。


「どんな注記です?」


「系統連系、とあります」


ペンが止まった。


「何との連系です?」


「そこは技術部門から回答させたほうがいいと思います」


「いつ?」


「保管されている過去の設備資料を取り寄せて、担当からご連絡するよう依頼できます」


「今日?」


「依頼自体は、本日できます」


同じ意味ではない。


それでもアルデンは電話番号を伝えた。


通話が終わる。


紙に書いた言葉を見る。


系統連系。


ノートPCには、ASICのスプレッドシートがまだ開いていた。


その朝初めて、アルデンはそれを最小化した。


代わりに土地関係の記録を開く。


工場の区画は、敷地のいちばん手前にすぎなかった。


倉庫の裏から先も、ヴォス家の土地は谷のほうへ伸びている。


アルデンは古い敷地図を呼び出し、電気料金明細と見比べた。


地図のどこにも、「系統連系」を説明するものは見当たらない。


ギャリックの内線にかけた。


壁の向こう、修理区画で電話が鳴る。


ギャリックが出た。


「何だ」


「父さんは何と系統連系してた?」


一拍。


「電力会社に電話したんだな」


「ああ」


「なら、そっちに答えてもらえ」


「お前なら十秒で答えられる」


「たぶんな」


「ギャリック」


「仕事中だ」


切られた。


アルデンは受話器を見つめた。


それから地図に目を戻す。


工場は、買っていたことになっている量より多くの電気を使っていた。


昔の電力会社の資料には、自分の知らない「系統連系」の記録がある。


そしてギャリックは、それが何なのかを知っている。


知っていて、教えなかった。


お読みいただき、ありがとうございます。


本作は、作者本人が海外の小説投稿サイトで発表しているオリジナル作品の日本語版です。


続きが気になりましたら、ブックマークや評価で応援していただけると、とても励みになります。


――東川鬼面斎

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