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盤上のイレギュラー~獲得SP2倍の冒険者は、世界の計算を狂わせる~  作者: 上山マヤ
第5章 王都編

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第86話 助ける道

 移動都市ヘグムに別れを告げて、王都への街道を歩く。


「日が落ちそうだし、今日はこの辺りでキャンプしようか」

「そうね。今日のご飯が楽しみだわ!」


 ユラは尻尾をピンと立てて、上機嫌に足取りを弾ませる。


 ヘグム平原を越えた先で、俺たちは新たなモンスターに遭遇した。

 モグラサメ。

 地中から突然襲ってくる厄介なモンスターだ。

 しかし、俺の〈探知〉スキルのお陰で、奇襲を受けることなく危なげなく倒すことができた。


 そして、このモグラサメが異常にウマイのだ。

 ユラ曰く、「今まで食べたお肉で一番美味しい」とのこと。


「ラクンは本当にこれでいいのか?」

「いい」


 ラクンは、〈採取〉で取れた葉のスープ。

 そして、メスターミルクが練り込まれたヘグムパンをお気に入りの様子でかじっている。


「マジでウマいから一口食べてみないか?」

「いらん」


 ラクンは頑なに首を振る。

 村のゴブリンたちは、オークの干し肉を普通に食べていたのに。


(ミルクやチーズは食べるし、ビーガンって訳じゃなさそうだな)


 どうも肉は「臭い」と言って嫌がるんだよな。

 その割に、匂いの強いチーズや発酵臭のキツいお酒は平気みたいだ。

 単純にラクン個人の偏食なんだろうな。


「ラクン、好き嫌いはダメよ?」


 ユラが姉のように諭す。


「……ユラも、泥鍋、残してた」

「うっ……」


(見事なカウンター。ラクンって、言う時は言うよな)


「食の好みはそれぞれだし、ラクンが良いなら……」

「もう、この美味しさを分かって欲しいのに!」


 ユラは両頬を膨らませて、串に刺さったモグラサメの肉をこれ見よがしに見せつける。


「肉は、臭い」


 ラクンは鼻をつまんでそっぽを向いた。


(まだまだお互い、分からないことだらけだ)


「そろそろラクンに、俺たちのスキルについて知っておいて欲しいんだ。ラクンのスキルも知りたいし」

「そうね、私もちゃんと聞きたいと思ってたの」

「いいぞ」


 ◇ ◇ ◇


 ボーンイーターとの総力戦を経て、俺のレベルは8に、ユラとラクンは7になった。

 今の俺には、SP3という余裕がある。

 しかし、シナジーのことを考えたら、気軽に使えなくなってしまった。


 ユラはネコ族の〈種族刻印しゅぞくこくいん〉である〈残香読ざんこうよみ〉にSPを使い切ってしまっている。

 取得後に一つレベルは上がったけど、ネコ族はSPを温存させる習性があるみたいなので、無理に使わせたくない。


 そして、ラクンだ。

 俺の特性やスキル、ユラのスキルの説明を大人しく聞いていた。

 特に驚いた様子もなかった。


(こういう時のラクンは、表情から感情を読み取れないんだよな)  


「――で、ラクンのスキルはどんなのか教えてくれる?」

「我の、……ああ。ゴブリンは、二つの、道がある」

「二つの道?」


 俺が聞き返すと、ラクンは小さな指を二本立てた。


「戦うか、助けるか」

「なるほど。その二つのボードから選ぶのね」


 ユラが納得したように耳をピクリと動かす。


「我は、"助ける"を、選んだ」


(まあ、そうだろうな)


 "戦う"、これはそのまま戦闘系のスキル構成だろう。

 "助ける"は、支援系ってことなのかな?

 ラクンの歌なんて、まさにそれだし。


「我のスキルは、歌う、育てる」

「育てる? 何か育ててるのか?」

「育てるは、これからだ」


 ラクンは、ゴソゴソと鞄から何かを取り出す。

 解体で取れたモンスターの骨だ。

 それを器用に組み上げていく。

 ラクンの手が小さく光ると、骨同士が接着剤を使ったように固定されていく。


「そのマナの光って、〈骨細工〉スキルなの?」

「そうだ」


 ラクンは手元から目を離さずに、作業を続けながら答える。


「すごーい。どんどん形になっていくわ」


 ユラが興味津々に身を乗り出して覗き込む。


「できた」


(骨のバケツ……みたいな?)


「なにそれ?」

「ここに、土を、入れる」

「あっ! 育てるって〈栽培〉スキルのことか!」

「そうだ」


 骨で作ったプランター。

 ラクンはそれを、リュックのように背負ってみせた。


 一見すると呪われたアイテムみたいで怪しい。

 けれど、小さなラクンが背負うと何故か妙に似合って見えた。


「たしかに、〈栽培〉スキルはラクンに合ってるわね」


 ユラが微笑みながら頷く。


「そうなの?」


(さっきの〈骨細工〉みたいに、何かを作るっていうなら分かるけど)


「だって、ラクンはよく歌ってるじゃない」

「いや、まあ鼻歌はよく歌ってるけど、それと栽培に何の関係が……」

「えっ?」

「はい?」


 一瞬、時が止まったような沈黙が流れた。

 ユラが信じられないものを見るような目で俺を見つめる。


「音を聞くと、植物は育つじゃない」

「そうなの!?」

「何で知らないのよ!」

「ヒッヒッヒ。ケルは、何も、知らん」


 ラクンが笑いながら俺を指差す。


(マジか……)


 何が分からないのか分からない。

 この世界の常識は、元の世界と似ているようで全く違う仕組みになっていることがある。


「……初耳だよ」

「歌は、もっと、よく育つぞ」

「へえ、そうなんだ」


 まあ、何にしても。

 これでラクンの歌がたくさん聞けるなら、俺たちにとっても良いことだ。


 移動都市で手に入れた、ふわふわのヘグム絨毯に包まれて、静かに眠りについた。

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