表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
盤上のイレギュラー~獲得SP2倍の冒険者は、世界の計算を狂わせる~  作者: 上山マヤ
第3章 ゴブリン編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

68/101

第68話 リーダー

 作戦会議は佳境を迎えていた。

 リードルが地図上のポイントを指し示しながら、厳しい表情を崩さない。


「行軍を遅らせるためのワナは設置をしました。しかし、ボーンイーターは低空ではありますが、空を飛びます。どの程度の効果があるかは不明です」

「こちらの人数が増えたのだ。ただ迎え撃つよりも、有利な戦場をこちらで作った方がいい」


 ジョシュが眼鏡の位置を直し、冷静に分析する。


「この山の斜面を利用します」


 リードルが頷いて、地形図に線を引いた。


「常に上からの攻撃、今作戦のメイン火力は弓攻撃です」

「指導はしてみたが、オークは絶望的に弓が使えねえからな」


 アンジェラが頭を掻く。


「あんなものは戦士の武器ではない。岩でも投げている方がマシだ」


 シャンデが不満げにこぼす。


「それで……岩を削ってたんですか」


 俺は広場の隅に積み上げられた、オークの手の平サイズの岩の山を思い出して納得した。


「この場合の投石は悪くねえ案だ。あの虫の大群にオークたちが突っ込みそうで不安だったが、岩を投げるのを面白がってるから、やらせることにした」


 アンジェラは満足そうに笑った。


(こういう統率って、アンジェラが居なかったらどうなってたんだろう?)


 オークの性格を見事に把握してる。

 戦力として組み込む手腕。

 クランを束ねているだけある。


◇ ◇ ◇


 会議が終わり、広場に出ると怒声が響いていた。

 公募レイドの参加者の中に、問題児がいたようだ。


「金取るのかよ。亜人のフリしてんじゃねえぞ、このモンスターが!」


 男が唾を吐き捨てる。


 その瞬間。

 シャンデの目がすわり、大股で歩み寄った。


「ダメだ、シャンデ!」


 アンジェラが制しようと手を伸ばす。

 しかし、シャンデの一撃は既に終わっていた。


 ドォォン!!


 爆音とともに土煙が上がる。


 腰を抜かして倒れた冒険者の顔面。

 その真横の地面が、シャンデの拳でクレーターのようにえぐれていた。


「ひっぃ……」


 男は泡を吹いて気絶した。

 広場が静まりかえる。


「あれは、人間が、悪い」


 遠巻きに見ていたラクンが呟く。


「そうだけど、この空気どうなるのかな?」


 ユラも心配そうに見守る。


(やっぱり、ああいう人も来るのか)


「聞け! 人間どもよ! この地は我らオーク……そして、ゴブリンの国だ! よそ者はこの国の掟に従え!」


 シャンデが拳を振り上げ叫ぶ。

 周囲のオークやゴブリンたちが呼応して雄たけびをあげた。

 その迫力に、不満を持っていた他の冒険者たちも震え上がる。


「そういうこった。人の家(ひとんち)に来たら礼儀正しくしとけよ」


 アンジェラが肩をすくめる。


「よく殺さんかったな」


 背後から落ち着いた声がした。

 ゴブリンの族長だ。


「殺すと、怒りそうな奴らが居るからな」


 シャンデがチラリとピサロの方を見る。


「お前を怒る者が、私以外にできたか。時代は変わっていくな」

「ちっ。そんなことより、どこで遊んでいたんだ。私に面倒を押し付けて」

「歌の準備と骨の準備だ。多くの人間たちは知らんだろうが、我らは歌の意味を知っておる」


 族長は静かに、しかし力強く言った。


(なんか、まだ空気が重い)


 アンジェラの言葉で空気が変わることが多かったけど。

 それは彼を知っている人が多かったからだ。

 公募で集まった人たちは、シャンデやオークたちの剥き出しの野生に圧倒されている。

 いや、悪いのはどうみても無礼な冒険者なんだけど。


「随分と強そうな、お姉さんだ」


 重苦しい空気を切り裂くように、軽薄そうな声が響いた。

 青いローブを翻して歩く。

 長髪の片側を三つ編みにした男が近づいてくる。


「いやあ、すごいね。まさかゴブリンとオークの村が繋がっているなんて」


(あのシンボルは……)


 男の胸元に刺繍された、青い薔薇のデザイン。

 パーフェクトサークルのシンボルだ。


「パーフェクトサークルのリーダーをしている。『虹の花』なんて呼ばずに、メイナードと呼んでくれよ」


(虹?)


 この人がジョシュやリードルたちのボスか。

 マナの雰囲気?

 なんか刺さるような感覚がある。


 ユラの毛が逆立つ。

 警戒色を強めているのが分かった。


(獣の本能か?)


 警鐘を鳴らしているようだ。


 冒険者たちが口々にメイナードの名を噂する。

 有名人らしい。


「注目されるっていいね。いい機会じゃないか。皆、僕の下で働かないか?」


 手を大げさに広げてメイナードはおどけて見せる。


「下部組織はいくつあってもいい。そうだろ、ジョシュ?」

「管理する者の心労が増えます。それに、クランの名を落とす輩まで入り込む可能性があるので、吟味は必要です」


 ジョシュが深々と頭を下げる。


(ジョシュが敬語で話してる!?)


 メイナードの方が相当若そうなのに。

 ジョシュって貴族だったよな?


「貴様がこいつらのリーダーか。随分と優男だな」


 シャンデが不愉快そうに見下ろす。


(この人は挑発しないと死んじゃうのか)


「部下に頼まれてね。君たちを助けに来たんだ」

「……ほう」

「そういえば、君からはまだ聞いてないね。オークの女王」


 メイナードは薄く笑った。


「何をだ?」

「助けて下さいって――」


 ドォォォン!!


 言葉が終わるより早く、シャンデの豪腕が振るわれた。

 さっきの威嚇とは違う。

 本気の一撃。


(ヤバっ!)


 しかし――。

 バリバリッと青白い火花が散る。

 シャンデの拳は空中で止まっていた。


(魔法障壁!?)


「ははは。冗談だよ。この世界には色んな力がある。僕の力を見せた方が、オークやゴブリンたちも納得するだろう?」


 メイナードは平然としている。


「遊びが過ぎますよ」


 ジョシュが咎めるように言う。


「今の攻撃を防いだんだ。分かるだろ?」


 メイナードはウィンクしてみせた。

 その笑顔には、相手の反応を楽しむ余裕があった。


「ちっ。また面倒な人間が増えたわ」


 シャンデが舌打ちをして腕を引く。

 その拳が微かに震えているように見えた。


「殺す気で殴ろうとしたのに、届かんかったな」


 ゴブリンの族長がからかうように言う。


「うるさい!」


 シャンデが怒鳴り返す。

 その表情には明らかな警戒の色が混じっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ