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盤上のイレギュラー~獲得SP2倍の冒険者は、世界の計算を狂わせる~  作者: 上山マヤ
第3章 ゴブリン編

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第67話 集う者たち

「初めての方は、まず登録をお願いします。こちらへどうぞ」


 急造された受付カウンター。

 ギルド職員が丁寧に声をかける。


 ピサロがレーイマニギルドを設置して数日。

 職員たちと認証板が届いたので、マナ認証の受付を開始した。


 オーク族。

 ゴブリン族。

 訪れた冒険者。

 交易に来た商人たち。

 全てがここで管理される。


 公募の効果は絶大だった。

 4日後にはレーイマニのギルドに行列が出来ていた。


 その横で、リザードマンのアヤドが格闘していた。

 山のような書類を処理しながらレイド参加者をリストアップしている。


「まあ、こういうのは、仕切りたがり屋に任せておけばいい」


 アンジェラがニヤニヤしながら通り過ぎる。


「俺は好きで仕切っているわけじゃないんだぞ! アンジェラ!」


 アヤドが羽ペンを握りしめたまま叫ぶ。


「誰もやらないから、俺がやるしかないんだ!」


 アヤドが悲痛な叫びを上げる。

 アンジェラは聞こえないふりで手を振るだけだ。


(いつ見てもアヤドって大変そうだな)


 でも正直めちゃ助かってる。

 彼のお陰でこのレイド拠点には、「足りない物がない」と言われてるくらいだ。


 作戦準備室の外でも慌ただしくなってきた。


「火の水晶はダメだ、コストがかかりすぎる」

「燃える水を使って下さい! レベックから取り寄せます」

「光属性の魔道具なんて使えない、予算が無いんだ」


 パーフェクトサークルのジョシュとリードル。

 そして、キンドレッドのアヤドが中心となって作戦の準備を進めていた。


「アンジェラさんはこういうのやらないんですね」

「こいつらは作戦をより効率的に、効果的になるように考えるのが好きな奴らだ。好きな奴らに、好きにやらせるのが一番成功率が高い。俺の持論だ」


 アンジェラは豪快に笑い飛ばす。


(その持論はアンジェラがリーダーだから成立してる気がするよ)


「俺の仕事は戦闘指揮を執るだけ。要は虫どもをボコボコにするだけだ」

「ガハハ、話が分かるな!」


 そう言って、隣にいた見知らぬオークの戦士がアンジェラの肩を組む。

 もうアンジェラはオークたちとも完全に打ち解けているようだった。


 ◇ ◇ ◇


「タケル!」


 聞き覚えのある声に振り返る。


「チャールズ!? それにヒラリーとデイヴも!」


 そこには、懐かしいアカデミー生の3人組がいた。


「久しぶりだな」

「カッコつけて王都に行くって言ってたのに近所にいてウケる」

「また新しい魔法覚えてないだろうね」


 3人が一斉に話しかけてくる。


「……もしかして、公募?」

「おう! アカデミーにも話が来たんだ」

「マジかよ。アカデミーなら止めそうなイメージなのに」

「戦闘はなし。後方支援だけね」


 ヒラリーがウィンクする。


「戦闘に参加できなくても、こういう現場でしか得られない経験ってあるからね」


 デイブがローブを正しながら話す。


「それに、なんといっても祠が見つかったんだろ!」


 チャールズが興奮気味に身を乗り出す。


「やっぱ祠の宣伝効果は大きかったな」

「まさか、タケルが見つけたのか?」

「そんなわけないだろ。オーク族とゴブリン族が守ってたんだ」

「それそれ! オークとゴブリンがギルドから亜人登録されたって。私さっきゴブリンの子と少し話せたんだ」


 ヒラリーが目を輝かせる。


「絶滅した、なんて噂もあったけど、分かんないよね。世の中って」


 デイブがしみじみと言う。


 その時、俺の後ろにいたユラが一歩前に出た。


「久しぶりね」

「あ、ユラさん!」


 ヒラリーが手を振る。

 以前のユラなら、人間の集団を前にして少し身構えていた気がする。

 でも今の彼女は、堂々と胸を張って立っている。


「タケル!」


 背後からアンジェラの野太い声が飛んできた。


「アンジェラさん、どうかした?」

「ゴブリンの歌の進捗を聞いて来いってアヤドが――あれ? お前らアカデミーのガキどもじゃねえか!」


 チャールズたちが姿勢を正して挨拶をする。


「おいおい、こいつらまで参加させんのかよ」

「話はついてる。回復師ヒーラー支援職バッファーには役目はあるし。運搬班は常に人手不足だ」


 いつの間にか現れたジョシュが、淡々と説明する。


「話ってどこからだよ?」

「レベックアカデミーの学長だ。祠のSPが格安で手に入ると聞いて乗り気だ」

「……あの時は黙ってたけど、あの値段にして得するのはレイド参加者(俺ら)だけだよな?」

「だからレイドが終われば値上げしろと、族長殿にはアドバイスを残しただろう?」


 ジョシュが悪びれもせずに言う。


「かー。人間らしい考えだぜ」


 アンジェラが呆れたように天を仰ぐ。


「ふっ。お前も分かっていて黙っていたなら共犯だ」


(……大人の会話についていけない)


 シャンデが聞いたら怒りそうだな。

 いや、どうだ?

 今のシャンデなら「利用できるものは利用する」と笑うのかもしれない。


「チャールズ。アカデミー生が集まったら知らせてくれ。祠ツアーに出るぞ」

「は、はい! 分かりました」


(チャールズは今でもパーフェクトサークルに入りたいのかな?)


 レベックで勧誘された時は、まったく響かなかった。

 けど、今のパーフェクトサークルは悪いクランには思えない。

 リードルは真面目だし。

 ジョシュは底が見えない。

 見てみないと、話してみないと分からないことって多いよな。


 ◇ ◇ ◇


 ゴブリンの村、プムスワン。

 作戦拠点はオーク族側にあるので、こちらは随分静かに感じる。


「ラクン、歌の方はどう?」

「歌は、完成した。昨日、実験できた」

「そっか!」


 ラクンの周りには、他の女性ゴブリンたちの姿もある。

 皆、普段とは違う装いをしていた。


「なんか、服装変わった?」

「歌装束だ」

「なにそれ?」

「我らの声を、強くする、衣装だ」


 ラクンが誇らしげに胸を張る。

 ユラがラクンの襟元を直しながら、微笑んで言った。


「私も手伝ったのよ。昔の資料を参考に、少しアレンジしてみたの」

「へえ。そういうのもあるのか」

「それに、これだ。ケルなら、見えるのだろ?」


 ラクンが首元のアミュレットを見せる。


「見える?」


(ああ、〈鑑定〉のことか)


〈共振のアミュレット/同一スキル共振〉


(これって!?)


「みんなでスキルを使うと効果が強まるのか!」


 隣の女性ゴブリンも同じアミュレットをつけていた。


「これ、すごいじゃん!」

「ふふん」


 ラクンは嬉しそうに目を細める。


「それに、骨で出来た首飾りって、何かラクンに似合うよな」

「……そうか」


 ラクンは照れたように顔を伏せる。

 もじもじと指先をいじった。

 ユラがそんなラクンの頭を優しく撫でる。


「本番、期待してるわよ。歌姫さん」

「……任せろ」


 その小さな背中が、以前より少し大きく見えた。


 遠くで、雪の大地を踏みしめる音が聞こえたような気がした。

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