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俺は、ショタコンじゃねぇっ!!!!!!  作者: 陽日
1章-2節:ブリア王国編-平穏な町ツヴァイ
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24話:背後の思惑は知らぬ振り

助けてくれたウカに感謝をしながら、地面へと降り立つ。その頃には焼け焦げた草原は、すっかり元の様相を取り戻していた。風が辺りを駆け抜ける。


さて、一悶着か。

黙ってソーリャと見つめ合う。俺たちの雰囲気に呑まれたか、レメとヨーリアも喜ぶこと一つできておらず、申し訳ない。


「……」

沈黙が辺りを支配する。

じっと、ウカの翼を見つめるソーリャの視線を遮るように、俺は一歩前に出た。

くい、とローブの裾を引かれる。だけど振り返らない。空色の大きな瞳を、グラス越しにじっと覗き返した。



「……ボクが、大陸出身じゃなくて良かったねぇ?」

やがて、少年は小さくため息をつきながら肩をすくめた。空を飛ぶ際に、彼が咄嗟に脱ぎ捨てたのだろうケープを持って近づくと、ぽいと投げてよこす。

彼の黒い翼のことって、地域によって伝承が変わる系のお話だったのか。何かきな臭くなってきたな。本当に何か、黒い翼は抱えているのかしら?


「あと、カルくんの本もごめんね?まさか、こんなことになるなんて、思いもしなかったんだ」

とはいえ俺には丁寧に本を手渡してくるところに、ソーリャの気持ちが垣間見えるものだ。思うところはある……いやこれは、ただの本好き──

「……魔石が」

手元に返ってきた白表紙の俺の本。もしあの樹の下敷きになってたらしたら、タダじゃ済まないだろうが綺麗なもんだ。ただ一つ、真っ赤に輝いていた魔石を除いては。


「うん、そうなの。ヒビ割れちゃって……。すぐ使えなくなるとかじゃないけど、このままだといずれ……」

本当にごめんね、どうにか直せるヒト居ないか探すから!と頭を下げられたら、許さないわけにはいかない。いかにもな、蛇の魔石も手に入れたことだし、付け替えだって考えられるもんな。


「この本は、召喚石みたいなものだったのか?」

だから話を変えた。いつまでも謝られるのは、湿っぽくなって良くない。

「うーん、どうだろう。レメくんの意思とは無関係に出てきていたみたいだし、あの蛇を封印するための要石か何かだったんじゃないかな?」

たしかに。それっぽいことを、尊大に語っていた気がする。


「……どうして、さっきはカルさんから本を借りたんだい?」

真っ黒なケープを被り直したウカが、ボソリと呟く。目線が合わない。そういえばさっき、恐らく失明してるように思える彼の左目が、なぜか黄金に輝いていたな。今じゃすっかり、元の黒曜石のような色に戻っている。視線もどこかずれており、見つめていても目が合うのは右側だけであった。


「……カルくんの本はあの蛇のことも知れるけど、当時の記録が分かる資料としても貴重だからね。いくらボクが長生きっていったって、たったの千歳だもん。他の書籍の内容と、比較したかったんだ」

だから、こんなことになるなんて!と。また少年は大袈裟に手を広げ首を振る。

たったの千歳。うーむ、パワーワードだ。エルフならではの価値観に圧倒されてしまう。

「……それは、貴方は本当に特別長生きなんだね」

おお、背中から賛同意見が。良かった、この世界の感覚としても俺はズレていないようだ。


「キミからしたら、そうかもね?……ところでウカくんはせっかく綺麗な"頭"してるんだから、隠さない方がいいんじゃない?」

「ソーリャさん程じゃないさ。俺の面はとっても繊細なんだよ」

うん、またなんか言い合ってる。もはや仲が良いのか?話が飛び飛びすぎて、俺にはもうついていけない。いつもの調子も取り戻したことだし、放置してもいいよな?



仲裁も諦め、置いてけぼりを俺と共に喰らっている二人のもとへと歩み寄る。

「怪我はないか?」

パッと見は大したことがなさそうだけど。まだ呼吸が荒く、草原にぺたんと座り込んでいるレメにも。俺が歩み寄るのを見て、パチンコ片手に傍にやってくるヨーリアにも、血の跡は特に見えない。


「うん、ぼくはっ……だいじょうぶ……」

「余……ヨーも、問題ない」

返事はできるくらいか。走り過ぎたシャトルランの後のように、呼吸する度に顔を顰める少年の背をさする。立てるか?という問いには首を振られた。


「ごめんなさい……」

【水式】を使いながら、俺のお願いを聞いて一生懸命がんばってくれていた証だ。そんなこと、言わないでほしい。むしろ子供を一人持ち上げられない貧弱な筋肉しか持っていなくて、こちらが申し訳ないというもの。


「──二人とも、無事ならそれで良い。先ほどは凄い助かった、感謝する」

下手な囮すら満足にこなせなかった、俺が褒めるのもなんだがな。しゃがみ込んで目線を合わせ、しっかりと礼は告げる。子供だからって、こういうことを適当にしてはいけない。空気に呑まれてあっちの二人にはまだできてないから、後でやろう。クールなかっこいい男は、感謝も謝罪もしっかりできる。人間としての礼儀だ。


眩い笑顔を見せながらえへへと照れ笑いをしたり、無表情ながらも作ったパチンコ(殺傷力は充分)をぐいと見せて自慢する子たちにほっこり。そのまま二人で、パチンコをどう作ったか語ってくれた。レメからの伝聞だけで殆ど再現したらしいヨーリアの才能に、やっぱり驚嘆。本当に才能が特化していたんだな。王城では気付かれないわけである。輪ゴムなんてないこの世界で、よくやったものだ。


なおこの間、背後の怪獣大決戦は気にしないふりである。

レメを安全圏に逃す時の連携はバッチリだったので、いざって時は息を合わせられるようだし。まぁなんとかなるだろう、たぶんきっと。これを世間では、現実逃避と言います。





その後、いったん落ち着いたらしい二人が合流し、今度こそご飯にありついて(原っぱに落ちていたサンドイッチは、包み紙からははみ出てなかったのでセーフだった。ラッキー)。


ちなみに冷めてても、普通に美味しかった。凄い。たぶんゲームならではの、冷めても食べれないほどに固くならないパンとかのおかげだ。

後から乗せた、ヨーリアと二人でまた洗ってきた少し癖のある野草が、ちょうど良いアクセントになっていたのもある。バクバクと食べれてしまった。EPが満タンになっても、なお食べ続けていたのは俺である。現実なら太っちまうが、ゲーム万歳。いっぱい食べよ。


ありがたく食べ終えて、再度歩みを進め始めるとまもなく、遠目からも建造物が見え始めた。

最初の町アインツとは異なり、町を囲う門すら見当たらないその地こそが、今回の目的地ツヴァイだという。


数百年くらい前は災害の影響で痩せた土地だったのが、何世代かかけて開拓され、今ではブリア王国一の農業都市になったのだとか。町の近くを走る川は、魔法で造られたものらしく驚嘆。さすが剣と魔法なファンタジー系のゲーム。開拓力が高すぎる。

そんなこの町の住人は殆どが畑と共に生きているため、農地と切り分けるような壁は作られなかったらしい。


これじゃあ、どこからでも魔物や悪人が入り放題にみえる。だがそこはゲームあるあるの、立ち入れないバリア超技術。魔道具によって、入れる場所を制限して限られた場所からしか入れないようになってるのだとか。


まぁ完璧なものでもないので、抜け道もあるのだそう。で、例えばあそこだよって、簡単に紹介するのはやめて頂きたい。空き家は大概、町へ入り込むための穴になるものって、ウカまでなんで知ってるんだよ。深く考えると、胃が痛みそうなのでやめようか。

でもたしかに、悪人プレイしてたら町に入れなくなって困りそうだもんな。プレイヤー自身が選んだ道とはいえ、ゲームをまともに楽しめなくなるようなことは制作側もしないか。子供連れで、平穏にプレイしたい俺には縁がなさそうだが。


堂々と道の検問を越えて入った町の雰囲気は、最初のものと大きくは変わらない。中世風の木や、レンガ造りの建物が立ち並んでいる。

だが、どこか牧歌的だ。道の真ん中で誰かのヤギや牛がのはほんと眠っており、通行人は慣れたようにひょいと避ける。町の子供たちなんて、堂々背に乗って遊んでいた。


このまま辿り中心地まで行けば、昼間は賑やかな市場が開かれているようで、そこでは様々な農作物を買い求められるらしい。

料理人とかをゲーム内で目指すなら、この町を拠点にしても良いだろう。確か別鯖で現実にもコックだという、有名なプレイヤーがいたはずだ。このゲームがキッカケで有名になり、現実にコラボまでしていたはず。夢のある話だ。戦闘での身のこなし等のプレイヤースキルには限らないが、一芸を持ってる人間は、どこでも強いな。


ただ先ほどウカが目をつけたように、道中でポツポツ見当たる家は空き家も多そうだった。魔物が勝手に棲みついていないかが心配だ。あ、でもこのゲーム世界には八神の加護があって、簡単に町には入り込めないんだっけ?なら悪人ロールのプレイヤーの住処になってることの方が、可能性としては高いのか。おお、怖い怖い。

実際なら中世の頃に、農家が簡単に家業を捨てられるとは思えない。だが魔法もあるゲーム世界なら、冒険者になったりしているのだろう。ゲームでくらい、夢を見なくちゃ。


そんな空き家の一角を、宿屋代わりに俺たちは借りた。宿屋がないわけではないのだが、五人パーティーの俺たちならウィークリーとかで借りたほうが安い。ソーリャの案だ。さすが、アインツで借家を実は借りてただけある。

ランクEくらいの冒険者がいれば、信用も充分ということらしい。ゲーム的には、ホーム的な機能の解禁条件ってこと?

とりあえず二人ともありがとう。本当に、頭が上がらない。


平家のこぢんまりとした借家は、もちろん本屋を開くことはできないが、仮住まいとしては充分だった。すぐ側には広々と放棄された畑もあって、ここも勝手に使っても良いのだとか。現実じゃないのであっという間に土地は蘇り、作物も数日があれば育つのだそう。

だから調合用の素材も育てられるね!と宣われ、ちょいと震えた。これ以上、魔法使いからかけ離れてどうするんだ。俺のステータス欄には、新しく手に入れてしまったスキル【採取】が輝く。


もしや、ウィークリーを提案したのってそういうこと?クエスト探索や冒険者ランク上げにもそこそこ良いからって、流されるままに頷いてしまったけど。


──でも魔法使いって、いかにも魔法薬を調合できそうだよな。メガネをかけた白髪クールイケメンが、サラッと薬も扱っていたらかっこいいだろうし。

…………もうちょっとだけ付き合うか。








ゲーム考察ページより抜粋

【獣人という種族について】

平均年齢は人間と同様に100歳前後だが、中でも長命な種のものは200歳まで生きる。

獣人と一口に言っても様々な種を内包しており、代表的な種は多い方から

犬>猫>兎>馬>熊>狼>虎と、

現実の個体数にある程度即した分布となっている。上記の種族以外にも、羊や鼠、鳥などさらに少数種が存在するがプレイヤーには解放されていない。


獣人はおおよそ特徴として、動物の特徴を耳と尾として持つ。犬や猫なら人間としてのヒト耳以外に、獣としての耳が頭上にあり、獣としての尾も持つ。

※一部の種では例外あり。

 羊の場合は耳元付近の角、鳥なら尾の代わりの滑空のための翼など。共通して獣人は頭部と背中に、何かしらの獣の特徴を持つことになる。


獣人が人間耳と獣耳を持つのは、八神の一柱の雷神の狩りの伝説に基づくものとされる。→詳しくはこちら


ゲームとして現実的な話としては、聴覚を頭頂部に持ってしまうと、バランス感覚が狂うなど影響が大きかったためと明かされている。

ヒト耳を表示したくないプレイヤーは、非表示にすることも可能。→やり方はこちら


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