第93話 合流
地球側では、大塚による、ネット構築第二弾の作業が始まっていた。
今回は、作業のために建てられた特設の小屋で、電源確保の実用試験を行うことになっていた。
「現代機器を動かすには、電気がいる。だが、この世界には、コンセントも電線もない。当たり前だけど」
大塚は、後で見返す緒方に問いかけるように、カメラの方を見ながら、そう呟いた。
段ボールから、よっこらしょと引っ張り出したのは、金属製の、重い円筒型の器具だった。
「熱電発電——TEGジェネレーター。まあ、これが今回の主役だ」
「拓也、そこに転がってる薪、適当に焚べて、火をつけて。あ、火傷すんなよ」
言われるがまま、拓也がせっせと火を起こすと、パチパチと乾燥した薪が爆ぜ、オレンジ色の炎が上がった。
ジェネレーターの内部では、火の「熱」と、外気の「冷たさ」の温度差によって、目に見えない電気が生まれ始めていた。
大塚は、よれてシワになったシャツの袖をまくり、太いケーブルを、ポータブル電源へと繋いだ。
ピカッ、と液晶画面が点灯し、数値が「0%」から「1%」へと跳ね上がる。
「おお……! 魔法も使わずに、ただの火から、電気が生まれたぞ!」
「まぁ、熱を電気に変えてるだけなんだけどね」
大塚は、軽く笑いながら、続けた。
「ソーラーパネルと違って、雨が降ろうが、地下室に引きこもろうが、薪さえくべりゃ、二十四時間、いつでも充電できる。これが、俺たちの『ミニ発電所』。地味だけど、一番頼りになる、おっさんみたいな機械だよ」
数日かけて、ポータブル電源は、百パーセントになった。
大塚は、重い腰を叩きながら、次の作業へと、移っていった。
―――
同じ頃、異世界では、緒方が、結城を通じて、クロエたちに、話があると伝えた。
屋敷を訪れた三人は、緒方の様子から、何かを察しているようだった。
「ガラニア国の、最新の情報が入った」
緒方は、前置きなく、そのまま切り出した。
「王家は、滅んだ。国は、二大貴族による南北の分割統治になった。一部の海岸は、隣国に占拠されたままだ」
クロエは、しばらく黙っていた。
「……そうか」
それだけ、答えた。
ガルムは、拳を握りしめたが、何も言わなかった。シルヴィアは、視線を落としたまま、小さく息を吐いた。
もとより、あの国は、仲間を無理な戦いで死なせ、自分たちも殺されかけて逃げ出した、最悪の国だった。今さら、驚くようなことは、何もなかった。
「……戻る場所が、なくなったな」
クロエが、ぽつりと言った。
「戻る気も、もとから、なかったけどな」
ガルムが、短く返す。
「それなら——」
結城が、静かに切り出した。
「うちに、正式に合流しないか。ケインも、もう一緒にやってる」
クロエは、しばらく、結城の顔を見つめていた。
「……世話になる」
「よろしく頼む」
ガルムとシルヴィアも、それぞれ頷いた。
こうして、クロエ、ガルム、シルヴィアは、結城たちのパーティーに、正式に加わることになった。




