表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界帰りの俺と、残された四人 ―テラ・マートは知っている―  作者: 山田村


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
33/49

第33話 駒として





 手紙を受け取った夜、四人は、それぞれの場所で、返事を書いていた。


 結城は、机に向かい、何度も書き直していた。母からの手紙には、何の要求も書かれていなかった。それが、逆に、何を書けばいいのか分からなくさせた。


 結局、結城は、シンプルな言葉だけを選んだ。


 ——心配かけてごめん。俺は元気だ。必ず帰る。


 それだけで、十分だと思った。


 皆川は、両親への返事を、泣きながら書いていた。何度も涙で文字がにじみ、何枚も書き直すことになった。


 東條は、短い言葉で、淡々と書き上げた。多くを語らない家族らしい返事だった。


 神崎は、一番時間をかけていた。父からの手紙を、何度も読み返した後、ようやくペンを取った。


 ——親父にも、伝えたいことがある。


―――


 翌日、結城は、緒方から聞いた話を、皆に伝えた。


「これ、法律の対象にならないらしい。向こうの国の法律じゃ、裁けないって」


「……つまり、誰も裁けないってことですか」


 皆川が、不安げに聞いた。


「今のところは、そうみたいだ。だからこそ——俺たちが、自分たちで、何か手がかりを見つけるしかないのかもしれない」


 神崎は、何も言わずに、ただ頷いた。


―――


 その数日後、訓練場に、見慣れない一団が姿を見せた。


 王城の紋章をつけた馬車と、護衛の騎士たち。先頭に立っていたのは、これまで顔を合わせたことのない、貴族らしき身なりの男だった。


「お招きする形で失礼するが——晩餐に、ご招待したい」


 結城たちは、思わず顔を見合わせた。


「私は、宮廷で対外政策を担当している者だ。皆さんの働きについては、王城でも高く評価されている」


 その言葉の裏に、何かがあるような気がした。


「先日、ドルフという斥候の増員が認められたのも、皆さんの生存率を上げるため、というのが表向きの理由だ。だが——正直に言えば、もっと大きな理由がある」


「……大きな理由、というのは」


「他国も、似たような事例に注目している。勇者パーティーというのは、それ自体が、国の力を示す象徴でもあるんだ。皆さんに何かあれば、国の威信に関わる」


「……『似たような事例』というのは、うちみたいなパーティーが、他にもいるということですか」


 結城が、思わず聞き返した。


 男は、一瞬だけ、答えに迷うような表情を見せた。


「さあ……それについては、私の立場で話せることではない。ただ——世界は、思っているより広い、とだけ言っておこう」


 それ以上は、何も語られなかった。だが、その一言だけで、結城の中には、新しい疑問が生まれていた。


 ——もし、他にも、同じようなことが起きているとしたら。


 結城は、その言葉に、背筋が冷えるのを感じた。


 ——俺たちは、ただの冒険者じゃなく、駒として見られている。


 晩餐への招待は、その日のうちに、正式な書状として届けられた。


―――


 その頃、地球側では、倉持が、経済産業省の官僚に、新たな指示を出していた。


「神崎という人物について、もう少し詳しく知りたい。大学の同期に、当たれる人間はいないか」


「大学の、同期ですか」


「本人に聞いても、何も出てこない。だったら、周りから探るしかないだろう」


 官僚は、戸惑いながらも、頷いた。


 倉持の追及は、静かに、だが確実に、神崎の周辺へと近づき始めていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ