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異世界帰りの俺と、残された四人 ―テラ・マートは知っている―  作者: 山田村


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第175話 亡命者



 拓也は、一か月で、候補地すべてへの黒滑菌液の作業を終わらせた。


 作業現場は、何もない場所がほとんどだった。ヘリでの移動のおかげで、長距離であるわりに、移動時間そのものは短く済んでいる。その代わり、観光といえば、空から景色を眺めるだけになってしまった。


 そんな慌ただしい一か月ではあったが、葵の稽古だけは、確実にこなしていた。


ーーー


 月が変わり、拓也は、アメリカにいた。


 巨大な廃鉱での、アメリカ初のテストになる。核廃棄物は、既に四個、並べられていた。


 この廃鉱を含め、まだ稼働中の石炭鉱山、そして、少し離れた地区の廃鉱——計三か所が、予定されている。いずれも、常時監視が可能な鉱山らしい。セキュリティは厳重そのもので、とても盗み出せるような環境ではなさそうだった。


 その後、ワシントンで歓迎を受け、イギリス、台湾、オーストラリアを回って、今回の外遊は終了となる予定だった。某隣国からも、強く要求があったというが、政治的な背景から、今回は見送られることになった。


ーーー


 世界中を飛び回った末、拓也は、東京に到着した。


 そのまま官邸に向かい、鷲尾総理へ、任務完了の報告を済ませる。これで、今回の一連の任務は、すべて終わりを迎えた。


 都内のホテルで一泊した翌朝、葵の知り合いだという道場に、お邪魔することになった。二時間ほど、稽古をつけてもらう。お礼にと、洗浄の魔道具を差し上げた。


 道場主は、最初、ぽかんとしていたが、葵が使い方を教えると、大変喜んでもらえた。何よりの、恩返しになったようだった。


 午後は、土産を手に、宮下の元へ向かった。他愛もない話をして過ごし、その日の夕方には、小山へと戻っていった。


ーーー


 異世界の方では、特に大きな変化はなかった。


 だが——緒方の妻、エレーナの、懐妊が分かった。まだ生まれてはいないが、地球人と異世界人の間にも、子を授かれることが、証明された形になる。


 そんな、平穏な日々が続いていたところへ——ラーメルの大森林の、あのイルシャが、客人を連れて、訪ねてきた。


 王城で、結城に会いたいと訪ねたが、『緒方の屋敷に向かい、連絡を取った方が、早く会えるだろう』と、衛兵に案内され、緒方の屋敷で、結城たちを待つことになった。


 数日後、東での用事を終えて帰ってきた結城たちは、イルシャと、久しぶりの再会を果たした。


ーーー


 隼人たちが、順番に、客人へ自己紹介をする。


 客人が、口を開いた。


「私は、貴方たちが魔国と呼ぶ国から来た——かつて、長を務めていた、ドラヴァスという者だ。訳あって、昔からの言い伝えに従い、ラーメルの大森林を頼り、最後には、ここへとたどり着いた」


 とんでもないことを、その客人は、静かに語り始めた。


 護衛と思しき男性が一人、名乗りを上げる。


「ガインだ」


 お付きの女性も、続いた。


「リエラと申します」


 二人の紹介を受け、ドラヴァスが、話を続けていく。


ーーー


「北のノルデンガルド王国と、アルデナ帝国は、なだらかな山と川が国境になっていてな。日頃から、行き来は頻繁に行われている」


「最近、軍事を強化し、世界統一を目論んで、勇者を召喚したのだ」


「大軍を率いて、険しい山脈を越えて西へ向かうより、ノルデンガルド王国へ攻め込む方が容易い——そう考えるのは、自然なことだ。ノルデンガルド王国は、その脅威に対抗するため、勇者を召喚した」


「勇者の訓練のためにと、今、勢いのあるヴォルガニア連合を避け、我らが魔王の国へ、攻め込むことを決定したのだ」


 ドラヴァスの声が、わずかに、低くなる。


「どのように教育されたのかは知らんが……狂ったように、攻め寄せてきた。まるで、憎い我らを、一人たりとも生かしておかぬ——そんな有様だった」


「我らの民は、過ごしやすい地域に、固まって住んでいた。だが、私は、全員に解散を命じた。バラバラに散り、捕まらぬよう逃げよ——そう宣言し、勇者が都に攻め込む前に、逃げ出したのだ」


 そう、結城たちは、説明を受けた。


 これは、あまりにも荷が重い——結城たちは、率直に、そう感じていた。


「そもそも、魔族と呼ばれてはいるが……我らは、竜人とダークエルフの集まりだ。人族より魔力はあるが、竜族と亜人族——それだけのことだ」


 その一言に、その場の空気が、静かに、凍りついた。


 結城は、頭を抱えながらも、この話を、ソニアに伝えた。そして、王妃と侯爵との面会の手筈を、急ぎ整えていく。


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