第174話 国産化
輸入分だけで計算すると、日本国内で使用する量の、およそ〇・一パーセント程度の生産量にしかならない。
まだまだ、全然足りない。それでも、添加剤として考えれば、その価値は大きかった。排ガスの問題が解決に向かうというだけでも、日本にとっては、大変な意義がある。
一方で、自動車メーカーは、『B-10』に合わせた開発に、乗り出し始めていた。さらに、魔石電池を組み合わせ、双方の良さを活かした、新たな開発へとシフトしていく。
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南ガラニア国の、あの貴族は、身内を、この作業の責任者に任命していた。
八千リットルタンク一本、四十万——原油より安い価格で、取引が成立している。マジックバッグを十一個使い、一度に八万リットルを運ぶ。帰りには、王都の商品を大量に買い込み、南ガラニア国で販売する——それが、彼の新しい仕事になっていた。
マジックバッグとタンク、そして、黒滑菌液の汲み上げ機械は、こちらで提供している。そういう経緯もあり、輸入は、引き続き続けられていた。
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結城は、黒滑菌液の培養実験のため、砂漠前の町へとやってきていた。
この町も、星銀の需要のおかげで、活気が戻りつつある。
今回は、かつて廃鉱になった星銀鉱山を、利用することにした。炭鉱の底に流し出した、八千リットルの黒滑菌液に、日本から送られた核廃棄物を触媒として、魔法陣を発動する。
手応えとして、確かな反応があった。効果は、きっとあるはずだ。もっとも、ソニアが言うように、急激な効果は望めないという。ならば、長い目で見るしかない——結城は、そう、自分に言い聞かせた。
南の町の役人に、週に一度の確認を頼み、結城は、王都へと帰ることにした。
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後日、『隕石でできたくぼみの底が、臭くて黒い池になっている』という報告が届いた。
「あの触媒が、効果を引き上げたのだろうな。ただ、日本では、ここまで早くはならないかもしれん。……もっとも、触媒を複数使えば、話は別かもしれんが」
ソニアは、そう、興味深そうに話していた。
「実験してみることだな」
砂漠前の町は、王国の直轄地だった。王妃に交渉し、南ガラニア国の貴族と同じような方式で、取引を進めることになる。
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数日後、緒方の元に、王妃から連絡が入った。
「騎士爵に、この件を担当させる。その者を、星銀と黒滑菌液、両方の窓口にする。国境付近の、何もなかった土地から利益を生み出したこと、感謝している」
王妃配下の、あの騎士爵にも、新たな仕事と対価が生まれる——きっと、悪い話ではないはずだ。緒方は、そう思った。
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結城の培養成功の報告を受け、倉持は、総理に進言した。
「候補地筆頭の、六ヶ所村を、実験地として承認していただきたく。地元の説明会でも、危険な物質を、安全なものに変える技術として、理解していただけるのではないかと」
だが、数日後、六ヶ所村では、反対派の住民から、
「理由の分からないものは、受け入れられない」
と、拒否の声が上がった。この件は、保留とせざるを得なかった。
急遽、候補地すべてに連絡を取ったところ、三か所から、前向きな反応が得られた。別海町、秋吉台、東通村——この三か所に決定し、水源を避けた場所で、実験に向けた準備が始まった。
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拓也は、秩父の武甲山周辺、廃鉱となった露天掘りの採掘所に、来ていた。
関東で比較的近く、管理しやすいこと。そして何より、結城の実験——廃鉱での成功事例が、決め手になっていた。他の候補地も、この成果を元に、今後の行動を決めていくことになる。
拓也たちは、現場責任者からヘルメットを受け取った。拓也、葵、経産省の官僚たち——お揃いのスタイルで、坑道の底へと、降りていく。
重機で、黒滑菌液を流し込む。続けて、核廃棄物を、慎重に運び込み、所定の位置に設置していく。今回は、二回分が用意されていた。
「では、始めます」
拓也が、そう告げて、術を発動させる。
魔法陣が、うっすらと発光し、黒滑菌液に反応していく。二回分が、確かに消費された感覚があった。
「成功したと、思います。ただ、数週間の観察が、必要です」
拓也は、そう告げた。
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数日後、倉持は、撮影された秩父の映像を見ながら、
「あまり、よく分からんな」
と、ぼやいていた。だが、そこへ、朗報が届く。
『三十センチの上昇が、確認されました。濃度は、原液と変わりありません』
実験は、成功だった。
これで、全国にある、水源に影響のない廃鉱での実験も、可能になる。着実に育てていけば、輸入分の何割かにまで、増産できる可能性が、見えてきていた。
「実用化に向けたシミュレーションを、報告してくれ」
倉持は、職員に、そう指示すると、鷲尾に、この結果を報告した。
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数日後、総理案件として、予算が組まれた。一年以内の生産開始を、目指すことになる。
政府は、価格の安い、粘度のある原油を、積極的に購入する方針へと、舵を切り始めていた。
同盟国であるアメリカにも、黒滑菌液の情報を共有したところ——
「なんとしても、手に入れたい」
と、強い要求が返ってきた。
またしても、拓也が、アメリカへ向かうことになりそうだった。




