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異世界帰りの俺と、残された四人 ―テラ・マートは知っている―  作者: 山田村


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第162話 蒼鉄鉱





 ノルデンガルド王国との国境をなす山岳地帯——その先には、ノルデンガルド王国へ向かう道が一本、通っている。連合の小さな町があり、その先の凍土地帯に、目当ての鉱石は眠っているという。


 連合自身は、精錬・加工の技術を持たず、原石のまま持て余している——「魔鋼」のような、魔力伝導性が高く、武具に適した硬質の鉱石ではないかと、王国側は見立てていた。


 連合の護衛のもと、調査チームが派遣された。現場に到着し、原石を採取して持ち帰る。


 製錬した結果、いくつかのことが判明した。


 魔力は伝わりやすいが、触媒としては、力不足であること。純金のように柔らかく、加工しやすいこと。そして、粉末にして魔法陣を書くインクの素材とすれば、その効果は——ミスリルを上回ることが分かった。


―――


 それから数日して、アッシュ(トネリコ)の木に、この鋼材を針金状にして彫った溝に固定して、先端から魔石まで接触させるという、簡単な魔道具が持ち込まれた。実験では、かなりの出力が確認されたと報告されている。


 ソニアの方でも、羊皮紙に描いた魔法陣の効果が向上すると、報告が上がった。これらの報告は、王妃の元にも届けられ、満足のいく結果として受け止められた。


 マジックバッグについても、この鋼材の粉をインクに混ぜて魔法陣を書き直したところ、収納容量が、一メートル四方分、追加で広がったとの報告を受けた。


 光を吸い込むような、重い藍黒色をしたその鉱石には——蒼鉄鉱、という名がつけられた。


―――


 国は、鉱山を含めた国境地帯を、正式に取引の対象として組み込んだ。あわせて、内外に公式な布告を出す。特に、国境を接するノルデンガルド王国には、丁重な対応が取られた。


 軍を派遣して駐屯させ、砦と柵を設置し、鉱山の守りを固めていく。元々あった村は廃村となり、住民たちは、柵の内側へと移り住んだ。


 駐屯する魔術師は、全員、強化された魔道具を身につけ、攻撃面でも、中級以上の術を繰り出せるようになっていた。それが、自分たちの手でここを守り切れるという、確かな自信に繋がっていく。


 土魔法を得意とする者たちは、砦周辺の地形そのものを操作し、普段の一・二倍の効率で作業を進め、守りの強化に貢献していた。


 鉱山については、侯爵から正確な位置が提示されており、その地下五十メートルまでを、土魔法で掘り進めるよう、指示が出されていた。魔術師たちも、無駄に掘り進むことはしない。最も掘りやすく、純度の高い場所——露天掘りが可能な地点から、ピンポイントで採掘を進める算段だった。


―――


 新しい蒼鉄鉱は、日本でも、好評をもって迎えられた。特に、魔石発電の配線関連と、車関係での効率向上が顕著だった。ロスの少なさから、二割ほどの向上が報告されている。


 魔石発電の機材の入れ替え、車関係の改良も、これに続いて進められることになった。


 魔石のリサイクル工場の製品も、八割程度の性能が正規品並みに稼働するようになり、そちらの需要も、あわせて加速していった。


 新しい洗浄のワンド(洗浄の魔道具)は、以前より強力になり、使用回数も増えたと報告されている。拓也が手がけている、核廃棄物を触媒にした気象操作——それに近いことも、蒼鉄鉱で実現できる可能性が、出てきていた。


―――


 アメリカでは、リーゼル王妃の動画が、重く受け止められていた。両国の良好な関係を堅持するとの声明が、発表される。


 そんな中、大統領は、あるテストケースの結果に、目を通していた。


 犯罪が多発する州の中でも、特に治安の悪い地区に限定し、契約魔法の実験が実施されていた。約半年にわたる調査で、捜査に協力する者は、その場で釈放するという条件のもと、軽犯罪であっても、対象者は全員が逮捕された。たとえ相手が子どもであっても、例外はなかった。


 留置場や刑務所に行くか、その場で釈放されるか——天秤にかければ、誰もが、百パーセント、釈放を選んだ。


 結果、同じ罪で再び拘束される者は、ゼロ。別件での拘束は、二割ほどにとどまった。


 これは、前回行った試験的な調査をもとに、今回、本格的に実施されたものだった。二か月目からは、州のほとんどで、実施が広がっていく。


 結果は、変わらなかった。同じ罪で拘束される者はゼロ、別件は十八パーセント。月を追うごとに、犯罪件数そのものも、減少していった。


「犯罪が少なすぎるのは異常だ。何か、おかしなことをしているのではないか——徹底的に調べてやる」


 一部のリベラル派は、マスコミの前で、そう訴えていた。


 だが、大統領は、異世界からもたらされた魔法を、国内に広げていく方針を固めた。あわせて、裁判や取り調べにおける、自白の魔法の採用も、決定する。

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