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異世界帰りの俺と、残された四人 ―テラ・マートは知っている―  作者: 山田村


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160/163

第160話 二つの玉座






 緒方と結城たちは、陛下訪問の映像を拝見していた。


 日本人にとっては、気持ちの引き締まる内容だった。緊張した面持ちで映る、自分たちの親の姿を通して、皆、その出来事の重大さを、改めて感じ取っていた。


―――


 それから、結城たちが、日本仕様の準天頂衛星『みちびき』三基と、追加の超小型偵察衛星十基の転移作業を、すべて終えた、ある日のことだった。


 陛下からのビデオメッセージが、緒方の元に届いた。


 皆で、揃って拝見する。優しい、普段の口調でのお言葉に、誰もが、緊張することなく見入ることができた。


 あわせて、王妃と侯爵に宛てた、公式のメッセージも届いていた。緒方は、そのことを侯爵に報告し、王妃と王配が、揃って視聴することになった。動画には字幕が付いており、そのまま見ることができた。


「これが……伝説から数えて、およそ二千六百年続くという、皇国の王の姿か」


 王妃は、そう呟いた。


「はい。権威と権力が、分離しているのです」


 緒方が、言葉を選びながら、説明を始める。


「天皇陛下は、権威の象徴として存在し、実際に国を動かす、選ばれし者が、権力を行使します。その者が、鷲尾総理です。国の運営に失敗すれば、国民から批判を受け、交代することになります——責任を負う、という形です」


「ほう……興味深いな。我が国で例えるなら、宰相が失策すれば、諸侯から批判を受け、責任を負う、ということか」


「はい、その通りです。ただし、総理お一人に権力が集中しているわけではありません。程よく、分散されています」


「なるほどな。我が国も、似たようなものだ。……しかし、何故、そのような仕組みにした」


「他国に攻められた際にも、皇室が滅びぬようにするためです。戦いの責任は、総理までに留める——そのための仕組みです」


 緒方は、そこで、一度、言葉を切った。


「先の大戦で戦ったアメリカとの敗戦を教訓に、戦後、法整備が進められました。そして、かつての敵国であったアメリカは、今では、我が国にとって、最も重要な同盟国となっております」


 王妃は、その説明に、しばらく、黙り込んでいた。争いの果てに、かつての敵と手を結ぶ——その事実の重みを、噛みしめているようだった。


―――


 数日後、王妃と王配は、日本とアメリカに向けたメッセージの撮影を行った。宰相と侯爵も、それぞれ別に、撮影に臨む。


 その後、緒方は、拓也へその動画を送った。動画は、神崎の手を経て、さらに上へと届けられていく。


―――


 その頃、結城は、ドローンを使い、海を隔てた南の——あの『伝説の地』と思われる大きな島の、本格的な調査を開始していた。


 地形は、オーストラリアを一回り小さくしたような島を中心に、ニュージーランドを小さくしたような島が、東に二つ、西に五つ、点在している。


 北部は砂漠地帯で、山を隔てた先には、森林が広がっていた。西、南、東の各地に、人工物らしきものが見える。周囲に点在する小島にも、人工物が確認された。


 もっとも、海に面していないグレーカレコ王国にとって、この島との直接的な関わりは薄い。当面は、ヴォルガニア連合への監視強化の方に、力が注がれることになった。


―――


 ある日、ヴォルガニア連合から、使者が訪れた。


「貴国の開発した、マジックバッグを——我が国にも、融通していただきたい」


 そんな申し出だった。

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