第160話 二つの玉座
緒方と結城たちは、陛下訪問の映像を拝見していた。
日本人にとっては、気持ちの引き締まる内容だった。緊張した面持ちで映る、自分たちの親の姿を通して、皆、その出来事の重大さを、改めて感じ取っていた。
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それから、結城たちが、日本仕様の準天頂衛星『みちびき』三基と、追加の超小型偵察衛星十基の転移作業を、すべて終えた、ある日のことだった。
陛下からのビデオメッセージが、緒方の元に届いた。
皆で、揃って拝見する。優しい、普段の口調でのお言葉に、誰もが、緊張することなく見入ることができた。
あわせて、王妃と侯爵に宛てた、公式のメッセージも届いていた。緒方は、そのことを侯爵に報告し、王妃と王配が、揃って視聴することになった。動画には字幕が付いており、そのまま見ることができた。
「これが……伝説から数えて、およそ二千六百年続くという、皇国の王の姿か」
王妃は、そう呟いた。
「はい。権威と権力が、分離しているのです」
緒方が、言葉を選びながら、説明を始める。
「天皇陛下は、権威の象徴として存在し、実際に国を動かす、選ばれし者が、権力を行使します。その者が、鷲尾総理です。国の運営に失敗すれば、国民から批判を受け、交代することになります——責任を負う、という形です」
「ほう……興味深いな。我が国で例えるなら、宰相が失策すれば、諸侯から批判を受け、責任を負う、ということか」
「はい、その通りです。ただし、総理お一人に権力が集中しているわけではありません。程よく、分散されています」
「なるほどな。我が国も、似たようなものだ。……しかし、何故、そのような仕組みにした」
「他国に攻められた際にも、皇室が滅びぬようにするためです。戦いの責任は、総理までに留める——そのための仕組みです」
緒方は、そこで、一度、言葉を切った。
「先の大戦で戦ったアメリカとの敗戦を教訓に、戦後、法整備が進められました。そして、かつての敵国であったアメリカは、今では、我が国にとって、最も重要な同盟国となっております」
王妃は、その説明に、しばらく、黙り込んでいた。争いの果てに、かつての敵と手を結ぶ——その事実の重みを、噛みしめているようだった。
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数日後、王妃と王配は、日本とアメリカに向けたメッセージの撮影を行った。宰相と侯爵も、それぞれ別に、撮影に臨む。
その後、緒方は、拓也へその動画を送った。動画は、神崎の手を経て、さらに上へと届けられていく。
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その頃、結城は、ドローンを使い、海を隔てた南の——あの『伝説の地』と思われる大きな島の、本格的な調査を開始していた。
地形は、オーストラリアを一回り小さくしたような島を中心に、ニュージーランドを小さくしたような島が、東に二つ、西に五つ、点在している。
北部は砂漠地帯で、山を隔てた先には、森林が広がっていた。西、南、東の各地に、人工物らしきものが見える。周囲に点在する小島にも、人工物が確認された。
もっとも、海に面していないグレーカレコ王国にとって、この島との直接的な関わりは薄い。当面は、ヴォルガニア連合への監視強化の方に、力が注がれることになった。
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ある日、ヴォルガニア連合から、使者が訪れた。
「貴国の開発した、マジックバッグを——我が国にも、融通していただきたい」
そんな申し出だった。




