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異世界帰りの俺と、残された四人 ―テラ・マートは知っている―  作者: 山田村


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第159話 拝謁






 拓也は、テキサスの土産を手に、田和マンの宮下を訪ねていた。


 隣室の氷室は、拓也が来たのを察してか、すぐに部屋から顔を出す。


「バッキーズの『ビーバーナゲッツ』と、赤いTシャツ、お土産です」


「テキサス?」


「仕事で半月、砂漠にキャンプしてました。帰る前に、ダラス観光したんです」


「砂漠? 拓也の会社、UFOの調査でもしてるのか?」


 氷室が、からかうように尋ねる。


「あり得ないですよ。乾燥した地区で、商品のテストに参加してただけです」


「なんかロマンがないねー」


 氷室は、ビーバーナゲッツをぼりぼりと食べながら、話を続けた。


「しかしなー、私と宮下が同じTシャツ着てたら、おかしくないか?」


「あ、そうですね。会社のみんなにも、同じもの買ったので……きっと、みんなも同じこと思ってますよ」


「拓也だから、しょうがないと思っておくぞ、多分」


 宮下が、そう付け加える。


「……彼女にも、同じか?」


「彼女には、パーカーを買いました」


「ふん! つまらん」


 氷室は、そう小さく囁いた。誰にも聞かせるつもりのない、拗ねたような呟きだった。


―――


 神崎は、異世界の地図データを、各分野の専門家に解析を依頼していた。衛星を提供したアメリカにも、そのデータは共有されている。


 AIによる解析で、惑星の大きさが、ほぼ地球と同じであることが判明していた。


 今回、初めて、白塗りのない全体像を目にしたことで、誰もが改めて——これは、確かに別の惑星なのだと、実感していた。


―――


 大統領もまた、異世界の惑星の全体像を目にし、これはもう、地球の中の争いというレベルの話ではないと、認識を新たにしていた。


 我がアメリカと日本が、この星の代表として、星間の関係を構築していく——それが、自国の繁栄に繋がり、やがては、世界全体の繁栄にも結びついていくはずだ。


 新たな資源が、続々と発見されている。それが、アメリカにどのような変化をもたらすかは、まだ分からない。それでも——石油だけに頼る時代の、確かな転換点になるだろうと、大統領は信じていた。


―――


 日本での第一回分析結果が、まとまりつつあった。


 反射光の波長を分析する『ハイパースペクトル解析』、植物の健康度から探る『バイオ・シグネチャー解析』——これらの手法により、各地の資源の存在が、次々と確認されていく。


 さらなる解析も、並行して進められていた。重力のわずかなズレを測る『重力偏差解析』の結果は、まだ、これからだった。


―――


 鷲尾総理は、今年二度目となる現金給付を行った。


 野党からは『バラマキだ』との批判が上がったが、国民には、概ね好意的に受け止められた。


 その裏には、いくつかの財源のからくりがあった。異世界からの商材による利益が上澄みされ、税収が増加したこと。海外への依存度が下がったこと。そして、拓也と結城たちによる核廃棄物処理のコストカット、震災で被害を受けた原子炉の核燃料消失・無害化処理によるコストカット、さらには、拓也がアメリカで手がけた核兵器処理の費用——それらが積み重なり、予算に、余裕が生まれていた。


 国内に目を向ければ、関東の、人口の少ない地域に、ほぼ無人の工場が建設されていた。内部作業の九割五分は機械化され、産業用ロボットが二十四時間稼働する。残りの五パーセントの人間は、管理担当として従事するのみだった。


 電力供給という課題は、魔石発電で賄われている。稼働開始から五年間は、政府の支援が受けられる仕組みだった。このテストケースへの参加を希望する企業は、国の審査を経て、規格に合格した企業にのみ、魔石発電が提供される。集まった調査報告をもとに、新しい工場のあり方が、模索され続けていた。


 来年の参院選に向けて——派手さはないものの、鷲尾は、経済と雇用の安定を、着実に積み上げてきた。大勝とまではいかずとも、負けることはないだろうと、踏んでいた。


―――


 ある朝、拓也の元に、一本の電話が入った。


「一週間後、陛下が視察にいらっしゃる。当日は、私も顔を出す」


 神崎からの、そんな連絡だった。話によれば、非公式の訪問になるという。


 当日、職員と中野物産の社員、拓也、そして父まで——誰もが、緊張した面持ちだった。


 朝から、家族会と中野物産の役員たちが、揃って集合し、両陛下のお越しを、静かに待った。


 やがて、両陛下がお見えになり、一同で、ご挨拶を申し上げる。家族会を代表し、神崎が、挨拶の言葉を述べた。


 陛下は、異世界に五人がいることを、深く気にかけておられる様子だった。ご家族の一人一人に、直接、お声をかけていただき、誰もが、感激を隠せずにいた。


 異世界の様子と、日本にいる家族たちの暮らしぶりを収めた動画を見ていただきながら、今、皆がいるグレーカレコ王国について、説明が続けられた。緒方の働き、オーレス侯爵、王妃、王配——そして、結城の妻となった元王女ソニア、隼人の恋人であるエルフのシルヴィア、皆川、東條、緒方の妻でオーレス侯爵の次女にあたるエレーナ。さらに、吟遊詩人として地球でも有名人となった勇者クロエ、獣人のガルム、盗賊のケイン、斥候のロイについても、一人一人、丁寧に紹介されていった。


 数々の質問に、丁寧に答えていく。


 そして最後に、陛下から、こんな言葉をいただいた。


「拓也さんが、グレーカレコ王国との日本の窓口として、務めてくれていることに、感謝しています」


 その一言に、拓也は、深く頭を下げることしかできなかった。


 最後に、贈り物が、両陛下へ献上された。マジックバッグ、中級回復薬数本、洗浄の魔道具——それぞれの効能を、一つ一つ丁寧に説明しながら、お渡しした。

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