第158話 俯瞰
結城は、続けて、日本仕様の超小型偵察衛星——十数基を、高度五百キロメートルの低軌道へと投入した。
この衛星には、光学カメラと、SAR——合成開口レーダーが搭載されている。数十センチメートルという解像度で、地上をピンポイントに撮影できる性能だった。
「SARレーダーを使えば、夜間や悪天候時でも、雲を突き抜けて、地上の監視ができます」
結城は、モニターに映る映像を見ながら、そう説明した。
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次に、飛行機型ドローンによる、四機のローテーション運用が始まった。
加えて、最新の科学技術による、高高度滞空型ドローン——HAPSの運用も、あわせて開始される。
AIによる機数の節約と、ドローンのスマートな運用——AIが、飛行ルートをリアルタイムで再計算し、巡回させることで、最小限の機数のまま、世界全土の要所を、隙なく監視できるようになっていた。
低軌道衛星が撮影した大容量のデータは、宇宙空間での衛星間通信によって、静止衛星を経由し、地球の裏側からでも、タイムラグなしに、地上のスーパーPCへと即座に転送された。
また、静止衛星が、熱源などから、不審な動きを検知すると、AIが瞬時に計算を行い、次にその上空を通過する低軌道衛星へ、自動でカメラを向けさせるコマンドを送信する——そんな、自動ターゲティング機能も備わっていた。
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緒方と結城は、米軍に匹敵する監視システムを構築したことで、この世界の全体図を、初めて目にすることになった。
モニターいっぱいに広がる映像を前に、二人は、しばらく、言葉を失っていた。
「……これが、この世界の、全部か」
緒方が、掠れた声で呟く。
「はい。……正直、実感が、追いつきません」
結城も、同じ思いだった。
すべてのデータを、このPCだけで解析しきれるかは、まだ分からない。ひとまずは、日本へデータを送り、本格的な分析を待つしかなかった。
緒方は、その旨を、侯爵に報告した。
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翌日、王妃と侯爵は、大陸全土のリアルタイム映像を目にし、思わず、声を上げた。
映像には、東に大きく広がる、アルデナ帝国の版図。北には、軍事色の強い大国、ノルデンガルド王国。さらに、その最北には——魔王の国と呼ばれる、未知の領域が、広がっていた。
東の大森林には、エルフの自治区。西には、あのヴォルガニア連合。その南に、同盟国である南ガラニア国が、寄り添うように位置している。
さらに南へ目を移せば、砂漠の王国。南の山脈を挟んだ先、東南に突き出た半島には、いくつもの小王国が、身を寄せ合うように点在していた。
「……あれは」
王妃が、身を乗り出す。
半島の先、海を隔てた南に、大きな島影が、映り込んでいた。
「あれは……伝説の地なのか?」
その問いに、すぐに答えられる者は、誰もいなかった。
「これは……」
侯爵もまた、映像から目を離せずにいた。軍事的な要衝、脅威となり得る勢力の規模——見えてくる情報の多さに、頭の中が、追いついていないようだった。
さらに、半島からも海を大きく隔てた先に、名も知らぬ小島の群れが、点々と連なっているのが見えた。
誰も足を踏み入れたことのない世界の広がりが、たった一枚の映像となって、初めて、目の前に差し出されていた。




