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異世界帰りの俺と、残された四人 ―テラ・マートは知っている―  作者: 山田村


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第107話 軽さの正体






 沢田は、いつもの取り巻き議員を引き連れ、防衛省を訪れていた。


「新型ステルス機の、見学を希望したいのだが」


 応対した防衛省の担当者は、一瞬、表情を硬くした。


「……先生、その情報は、一体どちらで?」


「それは、言えない」


 沢田は、涼しい顔で、そう返した。担当者は、しばらく沈黙した後、静かに告げた。


「あれは、総理案件です。そちらから、正式な許可があれば、いつでもご案内いたします」


 その返答に、沢田は、露骨に顔をしかめた。取り巻きの議員たちも、顔を見合わせている。


 簡単には、通してもらえない——それだけは、はっきりと示された形だった。


―――


 魔石の廃材を使った実験の、第一次結果がまとまった。


 できあがったものは、たしかに固形化には成功していたが、強度は、お世辞にも十分とは言えなかった。ちょっとした衝撃で、簡単に欠けてしまうほどの、貧弱な仕上がりだった。


 その報告書は、神崎の元にも届けられた。


 神崎は、資料に目を通しながら、小さく息をついた。第一歩は踏み出せたものの、実用化までの道のりは、まだ長いようだった。


―――


 桐生大吾が手がけた、魔石発電機の小型試作器が、ついに企業の手によって形になった。


 サイズは、家庭用の小型発電機とほぼ変わらない。ただ、デザインや配色は、まだ製品と呼べるほど洗練されたものではなかった。


 それでも、重さだけは、明らかに違っていた。


「五キロ弱、か……これは、軽いな」


 持ち上げた担当者が、思わず声を漏らす。従来の家庭用発電機に比べれば、驚くほどの軽さだった。


 動作させてみると、最初は、唸るような音が響いた。だが、それも一瞬のことで、内部のファンが回り始めると、音は、デスクトップパソコン程度の静けさに変わった。


 まだ試作の段階に過ぎなかったが、確かな手応えを感じさせる仕上がりだった。


―――


 拓也は、高校を卒業し、特別な国家公務員として、正式に活動することになった。


 とはいえ、学校との縁が、完全に切れたわけではない。週に一度、顔を出すことになっている。


 その中で、東條葵と言葉を交わす機会も、何度かあった。世間話程度の、たわいもない会話だった。


 もっとも、拓也自身は、そのことを特に意識してはいなかった。


―――


 グレーカレコ王国の地図作りは、王都を中心に、各都市へと着実に広がっていた。


 この作業は、国家機密として、勇者パーティーに任されている。中でも、神崎隼人と結城は、現代の機械に慣れ親しんでいることもあって、ドローンの操作はお手のものだった。高所での作業も、危なげなくこなしてみせる。


「二人が入ってから、地図の完成スピード、三倍くらいになってません?」


「そりゃ、ドローンで一気に見渡せるんだから、当然だろ」


 緒方は、さらに作業を効率化させようと、日本の自衛隊から、車両の提供を受けることにした。転送されてきた車を前に、緒方は、運転経験のない神崎隼人と結城に、操作を教え込んだ。


「ここがアクセル、こっちがブレーキ。慣れれば、そんなに難しくないから」


「なるほど……あ、思ったより、簡単ですね」


 覚えが早い二人は、あっという間に運転をものにし、他の面々にも操作を共有し始めた。


 初めての遠征先へ向かう車内では、ハンドルを握る結城の隣で、神崎隼人が呑気な声を上げていた。


「マウンテンバイクも速かったけど、これはこれで、楽でいいな。漕がなくていいし」


「その分、燃料の心配をしなきゃいけないけどな」


「贅沢言うなよ。皆川なんて、今まで荷台に乗せられてたんだから、これで大分、楽になったろ」


 後部座席の皆川が、小さく笑う。


「本当に……揺れも少ないし、風も当たらないし。最初は不安だったけど、思ったより快適です」


 窓の外を流れる景色を眺めながら、車内には、これまでとは少し違う、落ち着いた空気が流れていた。


 燃料は、ドラム缶にまとめて保管されている。車体のサイズも、馬車とさほど変わらず、街や道での扱いにも、大きな支障はなさそうだった。


―――


 首相官邸では、倉持が、鷲尾に向けて、一連の資源関連の状況をまとめて報告していた。


「エテリム、クラニウム、金、ネオジム、赤い石——これらの資源が、毎月、数百トン規模で日本側に転送されています。加えて、魔石を利用したエネルギー技術についても、実用化に向けた段階に入っています」


「毎月、数百トン、か……」


 鷲尾は、資料に目を落としたまま、小さく呟いた。


 続いて、神崎が、グレーカレコ王国との関係について、これまでの経緯を報告した。


「王国側とは、現在、緒方を通じて、良好な関係を築けています。廃材の買い取り交渉も成立しており、資源の供給ルートは、今のところ、安定していると言えます」


「うむ。順調なようで、何よりだ」


 最後に、神崎は、某国の諜報活動についても、報告を続けた。


「某国側の動きですが、記者・実行部隊の摘発以降、政界への接触が確認されています。与党の一部議員を通じて、経産省、そして防衛省へも、探りが入っている状況です」


 鷲尾の表情が、わずかに引き締まった。


「議員の名は」


「現時点で、詳細はお伝えできますが——慎重な対応が必要な段階です」


「分かった。引き続き、注視してくれ」


 鷲尾は、それだけ告げると、報告書を静かに閉じた。


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