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廃ゲーマーは異世界で第二の人生を謳歌する  作者: 咲く桜


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004.修業

 山に向かうこと2日。薬草や食料となる肉を確保しながら進み、やっと目的地である山の麓に到着した。ふむ、レベルが上がったからか、ある程度山の魔物達の気配を感じられる。相当強い魔物がたくさんいそうだ。


「さすがに装備を一新するか」


 レベルが上がったことで装備できるものが多少増えている。とはいっても、俺の買った装備の殆どが三次職向けのものばかりなので、限られてはいるが。


 ハードレザーアーマーと牙角刀を装備した。ブラックワイバーンの革を使った防具と、一角竜の牙と角を使った環首刀だ。中距離用として下級龍の龍髭鞭も装備している。ブーツはヘルメスのブーツで、空中で2回ジャンプができる優れもの。グローブはなく、籠手を装備した。籠手は甲鉄百足の堅殻を使った攻守ともに使える品だ。


 いずれもプレイヤーメイドの装備で、レベル制限に対する性能が破格だ。


 山は俺の想像以上の場所だった。塔に近づけば近づくほど魔物が強くなり、その個体数も増えていった。しかも、魔物同士が連携して塔を守ろうとするのだ。ワイバーン・エリート級の魔物がじゃんじゃん出てくるため、一回ごとの戦闘には勝てても、連戦となるとやはり体力的にも精神的にもきつい。


 それに、戦闘力に特化していない生産職クラスのため、ステータスがやはり低い。アイテムである程度補えてはいるものの、塔に行くのはかなり厳しそうだ。創造士に至るまではかなり大変なのは分かっていたが、ステータスの上がり方がかなり生産職特化のため、ゆっくり着実にレベルを上げる必要がありそうだ。


 だが、嫌ではなかった。やればやるほど成長することに喜びを感じていた。言うなれば一種の麻薬のようなものか。自分がずっと求めていたものがやっと手に入ったのだから。


 刀を握ると不思議とその使い方がわかる。何年も握っていたかのような錯覚と、どのように体を動かせばいいかがわかる。それを魔物との戦闘で最適化しながら無駄な部分を削いでいく作業。


 ただひたすらに戦闘に明け暮れた俺は、気づけば1ヶ月でアルケミーの成長限界に達していた。


●●―――――○○

名前:リンドグラール Lv.50⭐︎

職業:アルケミー

体力:195 持久力:195 筋力:195 知力:295 精神力:295 魅力:80 幸運:80

総合戦闘力:428

スキル:――

職業スキル:分解、抽出、再構成、乾燥

称号:巨人殺し、一騎当千、オーク虐殺者

SP:250

●●―――――○○


「よし、転職するか」


【職業「魔術師」が選択されました】

【職業スキル「下級魔術」を習得しました】

【ステータス「マナ」が生成されました】


●●―――――○○

名前:リンドグラール Lv.1

職業:魔術師アルケミー

体力:195 持久力:195 筋力:195 知力:295 精神力:295 マナ:30 魅力:80 幸運:80

総合戦闘力:458

スキル:――

職業スキル:分解、抽出、再構成、乾燥、下級魔術

称号:巨人殺し、一騎当千、オーク虐殺者

SP:250

●●―――――○○


「よし、マナステータスが発生したな」


 魔術師を習得することで発生するステータスがマナだ。他にも、職業によっては「闘気」「覇気」「神聖力」「死気」「霊力」「オーラ」「親和力」「内功」なんかがある。いずれも個性があって面白いステータスだ。


 マナはまさに魔術を使うのに必須な項目であり、この数値が大きければ多いほど、より高い威力の魔術が使えるようになる。厳密に言うとマナステータスはマナ量を示す直接的な指標ではなく、あくまでもマナの密度や強さ、量などを総合的に示したものだ。


「アイテムに良いのが何個かあったよな……。お、これだ」


●●―――――○○

「世界樹の祝福」

世界樹の祝福をアイテム化したもの。服用時、マナステータスを500増加させる。また、レベル上昇時のマナ増加率+50%、エルフ種及び精霊種からの友愛度が100%になる。

●●―――――○○

「真魔竜の心臓」

最上級のドラゴンハート。服用時、マナステータスを1000増加させる。また、マナ運用効率+100%、竜言魔術りゅうごんまじゅつにより詠唱破棄や竜魔術の行使が可能になる。

●●―――――○○

「大還丹」

少林寺に伝わる秘宝級の丹薬。服用時、全ステータスを100ずつ上昇させる。また、体内の濁気を排出し、武功に適した体へ変化させる。内功ステータスを生成。※二次職以降のみ使用可能。転職欄に武人系列の職業が追加される。

●●―――――○○


「とりあえず、こんなところだけど……こんなチートしていいのか?」


 ベルクライム・ロードでも持っている人は両手で数えるほどしかいない超希少なアイテムたち。俺は伊達にあのゲームのランカーではないのだ。ただ、吸収には相応に時間がかかるだろうし、マナに慣れるのにも時間がいる。


 武器も変えた方がいいだろうな。環首刀は強いが魔術適性はない。ゲームでは魔剣士っぽい戦い方をしていたが、ここでは魔術師としての戦い方を学ぶべきだろう、


 ストレージを漁ると、良さげな武器があった。名を、「妖精の短杖フェアリーワンド」といい、プレイヤーメイドの装備だ。


 効果はマナ制御の大幅な向上と魔術による攻撃に15%の補正がつく優れものだ。伝説級の装備にしてはかなり優れている。


 ストレージから普通のテントを取り出し、中に入って瞑想の姿勢をとった。これだけの希少アイテムを服用するとなると、走火入魔に陥る可能性もあり得るため、慎重になるべきだ。


 世界樹の雫を飲み込むと体にマナが行き渡り、心臓にマナが集結していく。急激にマナが充足したため行き場を失ったマナが暴走しようとしている。


 唇を噛みながら激痛に耐え、心臓に集まったマナで高密度のマナサークルを形成するようにマナを動かす。 魔術師は心臓にマナサークルを形成することで魔術を効率的に使えるようになるというのは、ゲームをしていれば当たり前の知識だが、マナサークルを作るのは簡単ではない。マナサークルは最大9個作ることができるとされており、1サークルを1成と呼ぶ。9成魔術師が最上級の魔術師とされる。


 魔術師、精霊使い、陣方士をカンストすると魔導士が解禁されるのは有名だ。完璧な後衛職とも呼ばれ、1人で戦略級の魔法を使うことができる。


 この職業もアリかと思ったが、生命の創造はできないし個の力には限界があるものだ。


「ふう、ひとまず1サークルは完成したな」


 世界樹の雫が無事に体に馴染み、心臓を守るようにマナサークルが回転している。これがあれば魔術を効率的に使えるようになる。


 続いて真魔竜の心臓を取り出す。見た目はグロいがとてつもない力の波動を感じる。これを服用するには噛まずに飲み込む必要があるのだが……。やはり見た目が悪い。


 5分くらい葛藤したのち、決意を込めて丸呑みした。不思議と飲み込む時に違和感はなく、するりと通り抜け喉元ですうっと消えた。


 ドクンッ!!


「くはっ……!」


 桁違いのエネルギー量に呻き声が漏れた。世界樹の雫とは比べ物にならない程に狂暴なマナが体内を駆け巡っていた。先に世界樹の雫を服用したおかげで、マナの通り道である経脈はある程度広がっていたはずなのにこの痛さだ。


 死ぬ気で耐えながら真魔竜の心臓を定着させるために1成のマナサークルをフル回転させてマナを運用する。


 どれほど時間がたっただろう。1日か、1週間か、1ヶ月か。はたまた1時間か。時間感覚を忘れるほどに瞑想をして真魔竜の心臓を取り込んだ。


 後で分かったことだが、真魔竜の心臓を服用してから2ヶ月が経過しており、俺のマナサークルは3成に達し、真魔竜の心臓が無事に定着した。


 俺の生来の心臓とは逆の位置にドラゴンハートが定着したと同時に、元々の心臓と真魔竜の心臓のどちらにもマナサークルが形成されていた。


 一つの心臓には3サークルがある状態だが、そもそもの心臓が2つになったので、サークル数的には6サークルがある状態となった。


 だが、あくまでもドラゴンハートは元々の心臓の補助でしかないため、強さ的には5サークル下級くらいと同等だ。それでも3成で5成級に匹敵するのだから化け物ではある。俺のサークルは心臓が2つもあるために、通常の倍の時間とマナが必要となり成長が遅い大器晩成型だ。


 それでも成長した暁には9成魔術師を遥かに凌駕する魔術師になることがてぎるだろう。しかも竜言魔術まで覚えたので、高威力の魔術を行使できる。


 一般的に1〜3成が下級魔術師、4〜5成が中級魔術師、6〜7成が上級魔術師、8〜9成が最上級魔術師と呼ばれる。俺が目指すはさらに先、無限の魔術師と呼ばれたプレイヤーの超越級魔術師だ。あのプレイヤーも確か真魔竜の心臓を取り込んでいたというし、やはり情報は力である。


 マナは運用するだけで身体強化も可能なので、極めれば近接戦闘もある程度こなすことができるようになる。生粋の近接戦闘職には敵わないが、それでも及第点はもらえる程度には強化可能だ。


「ふぅ……。腹減ったな」


 腹の減り具合から察するに、相当な時間が経っていたらしい。真魔竜の心臓や世界樹の雫のような高エネルギー素材を食べた時、それの運用をすると食欲は抑えられ全てのエネルギーが体内を巡るため、眠気や性欲、排泄欲さえも抑制される。修行する者からすれば当たり前らしいが、実際に経験すると不思議なものだ。


 がっつりとしたご飯を食べ、布団に入ってぐっすり寝た。目が覚めると体がとても軽いのがわかる。疲れは相当に溜まっていたらしい。あっという間に5日も経過していたのだから、寝過ぎなくらいだ。


 手を握って開く動作を数回、体のキレが違う。マナステータスによる恩恵だろう。明らかに体の隅々まで力が行き渡っているのがわかる。ただ、これ以上霊薬を摂取するのはやめた方がいい気がする。


 自分の今の力量を制御しきれていないのに、さらなる力は混乱を生む。何事も基礎が大事だからな。大還丹の摂取はもう少し後にしよう。


「ファイアボール」


 詠唱破棄で魔術を発動すると、指先に拳ほどの火球が現れた。ふむ、火の色はオレンジ色に近い赤。青や白という色には程遠い初級の炎だ。


  火球はふわりと宙に浮かび、ゆっくりと前へ進んでいく。威力は低いが、詠唱破棄でこれだけ安定して出せるなら十分だ。


 魔術師としての基礎は、これでようやくスタートラインに立てたと言える。


「……よし。次は制御だな」


 指先に残った熱を感じながら、もう一度マナを練る。魔術は力任せに撃てばいいというものではない。


 マナの流れ、圧縮、放出のタイミング──


 ゲームでは数値で管理されていたものが、今はすべて“感覚”で理解できる。


 それが面白かった。


 火球を三つ、四つと連続で生成し、空中で軌道を変える。

 マナサークルが回転するたびに、体の奥底から熱が湧き上がるような感覚があった。


「これ、慣れたら相当強いな」


 近接戦闘はある程度アイテムや慣れで補えるが、魔術は純粋に反復練習と魔力制御、そして絶対的にセンスと適性が重要だ。そう思うと、胸の奥がじんわりと熱くなる。


 山の空気は相変わらず冷たく澄んでいた。塔に近づくほど魔物の密度が上がり、夜でも油断できない。だが、今の俺は以前の俺ではない。


 試しに、近くの岩に向けて火球を放つ。


「ファイアボール」


 火球は一直線に飛び、岩にぶつかって小さな爆ぜる音を立てた。

 岩肌が黒く焦げ、煙が立ち上る。


「悪くない」




 威力はまだ初級だが、命中精度は悪くない。詠唱破棄のおかげで、発動速度も速い。これなら単体魔物の相手には十分通用するだろう。


 そう思った矢先──


 背後の茂みが、がさりと揺れた。


「来たか」


 気配は一つ。だが、やや重い。

 おそらく下級の魔物ではない。


 振り返ると、そこには──

 黒い毛並みを持つ巨大な狼が立っていた。目は血のように赤く、牙は短剣のように鋭い。


 ブラックウルフ・ロード。

 ゲームでも中級ダンジョンの中ボス級の魔物だ。


「ゲームで見るよりだいぶグロいんだな」


 だが、逃げる気はなかった。

 むしろ、ちょうどいい。


 今の俺の力を試すには、これ以上ない相手だ。狼が低く唸り、地面を蹴る。黒い影が一瞬で距離を詰めてきた。


「ヘルメスのブーツ──二段跳び」


 空中に跳び上がり、狼の爪をかわす。

 そのまま空中で体をひねり、妖精の短杖を構える。


「ファイアボール!」


 火球が狼の背中に直撃し、黒煙が上がる。だが、ブラックウルフ・ロードは怯むどころか、さらに速度を上げて突っ込んできた。


「タフだな……!」


 地面に着地し、すぐに横へ跳ぶ。狼の爪が地面を抉り、土が舞い上がる。

 心臓が高鳴る。恐怖ではない。興奮だ。


 これだ。


 俺が求めていたのは、この感覚だ。


「──来いよ」


 短杖を構え、マナを練る。狼が再び跳びかかってくる。


 その瞬間、俺は地面を蹴った。

 魔術と近接の複合戦闘。

 ゲームで何度もやってきた戦い方だ。


 だが、これはゲームではない。

 現実だ。

 命がかかっている。


 だからこそ──


 最高に楽しい。黒煙が晴れると同時に、ブラックウルフ・ロードの巨体がぐらりと揺れ、そのまま地面に崩れ落ちた。鼻をつく焦げた毛皮の匂いと、血液特有の鉄臭い血の匂いが混ざり合う。


「……ふぅ。さすがに強いな、こいつ」


 短杖を下ろし、深く息を吐く。魔術と近接の複合戦闘は、思った以上に体力を消耗する。

 だが、魔術主体で勝てた。それが何よりの収穫だ。


 倒れた魔物に近づき、素材として使えそうな部位を確認する。

 牙、爪、毛皮、魔核──どれも上質だ。

 特に魔核は、魔術師になった今の俺にとっては貴重な燃料になる。


「よし、分解」


 スキルを発動すると、魔物の体が淡い光に包まれ、素材だけが綺麗に残った。

 アルケミーのスキルは、こういう時に本当に便利だ。

 素材をストレージに放り込み、周囲の気配を探る。……反応なし。

 どうやら、この辺りの魔物はこいつが縄張りを張っていたらしい。


「にしても……」


 自分の手を見つめる。

 さっきまでの戦闘の余韻が、まだ指先に残っていた。

 魔術の威力。

 マナの流れ。

 体のキレ。

 そして、戦闘中に感じた“確かな手応え”。


「……強くなってるな、俺」


 実感があった。

 レベルやステータスの数値ではなく、もっと根源的な部分で。

 この世界に来てから、ずっと戦い続けてきた。死にかけたことも何度かあった。

 だが、その度に生き残り、成長してきた。


 気づけば、孤独な戦いにも慣れてしまっている。


「……塔に行くのが楽しみになってきたな」


 あの巨大な塔。

 この世界の中心にそびえる、異様な存在。

 そこに何があるのか、何が待っているのか──

 考えるだけで胸が高鳴る。だが、同時に理解している。

 今の俺では、まだ足りない。


 魔術の制御も未熟。


 近接戦闘もまだまだ最適化の余地がある。


 マナサークルも6成相当とはいえ、実質は3成の延長線上だ。


「……もっと強くならないとな」


 呟きながら、山の奥へと視線を向ける。

 塔へ続く道は、まだまだ険しい。

 だが、進むしかない。


 短杖を握り直し、歩き出す。


 その時──

 遠くの空に、黒い影が一瞬だけ横切った。


「……ドラゴン?」


 だが、今の俺にはまだ手が出せない相手だ。無理はしない。生き残ることが最優先だ。


「よし、今日はここまでにして……明日からまた鍛えるか」


 テントへ戻りながら、ふと空を見上げる。塔の頂は、雲の向こうに隠れて見えない。

 だが、確かにそこにある。俺を待っている。


 そう思うと、不思議と胸が熱くなった

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