幕間:グランの教育
ルミナは、訓練場で腕を組んでいた。
「……グラン。あなたの教育、残り二割よ。そろそろ“門番としての威厳”を身につけなさい」
「はいっ、白輝竜様! ……あの、威厳……威厳とは……なんでしょうか!」
「そこから!?」
ルミナは頭を抱えた。
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「まずは“堂々と立つ”ことよ。ほら、こうやって──」
ルミナは背筋を伸ばし、凛とした立ち姿を見せる。
グランも真似をする。
「こう、ですか……?」
「そうそう。あとは視線を鋭く──」
「こう、ですね……?」
グランの目がキラッキラの子犬みたいな目になった。
「違う! なんでそんな可愛いのよ! 威厳よ、威厳!」
「はいっ! 可愛くない目……可愛くない目……!」
グランは必死に“可愛くない目”を作ろうとするが、どう頑張っても 愛嬌が溢れ出る。
「……無理ね。あなた、根が優しすぎるわ」
「すみません……!」
「謝らないの! それが威厳を失うのよ!」
「すみません!!」
「だから謝るなって言ってるでしょ!!」
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「じゃあ次は“威圧”よ。魔物を一喝する力。これは門番に必須よ」
「はいっ!」
「こうやって、魔力を込めて──《威圧》!」
ルミナの威圧が訓練場を震わせる。
グランは感動して拍手した。
「すごいです白輝竜様! かっこいいです!」
「褒めてる場合じゃないのよ! あなたもやるの!」
「はいっ! 《威圧》!!」
……。
……ふわっ。
優しい春風みたいな魔力が広がった。
「……グラン。あなたの威圧、癒し効果あるわよ」
「えっ!? 癒し……?」
「威圧で癒されてどうするのよ!!」
「す、すみません!!」
「謝るなって言ってるでしょ!!」
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ルミナは深くため息をついた。
「……グラン。あなた、強いのよ。素直で、真面目で、優しくて。でもね……」
「でも……?」
「門番としての“怖さ”がゼロなのよ……!」
「こ、怖さ……!」
「そうよ。門番は“ここから先は危険だぞ”って伝える役目もあるの」
「なるほど……!」
「だから、怖さを……」
「怖さを……!」
「出しなさい!」
「こ、怖い顔……怖い顔……!」
グランは全力で“怖い顔”を作る。
……が。
どう見ても怒った子犬だった。
「……可愛いわね」
「えっ!?」
「違うのよ! 可愛いって言いたくないのよ! 威厳が欲しいのよ!!」
「すみません!!」
「謝るなぁぁぁ!!」
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今日の訓練が終わり、ルミナはひとりで空を見上げた。
「……はぁ。リンデのところに行く前に、グランを仕上げないといけないのに……」
グランは遠くで“怖い顔の練習”をしている。
……やっぱり可愛い。
「……あの子、門番向いてなかったかもしれないわね」
でも、ルミナは微笑んだ。
「……でも、頑張ってるから。ちゃんと仕上げてあげないとね。リンデに胸を張って会うためにも……」
最後の一言だけ、
少しだけ声が小さかった。
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