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太陽の決戦

 シーク 夜


 かぐやも入れて久しぶりに鍋パをした。最後にやったのかはいつかも覚えていないくらい前だった気がする。


「太陽から鍋パしたいって言うなんて珍しいよな」


 ちなみに鍋はミルフィーユ鍋。何気に私が一番最初に作った鍋料理である。何も考えずに作れるので覚えた頃はよく作ったものだ。


「実は皆から聞いておきたいことがあってな」


 私が鍋をつつきながら言うと、三人の表情が真剣になった。


「皆、もしシークが無くなったらどうするんだ?」


 シークを作ってからというもの、これまで幾度となく死と隣り合わせだった。そうなった場合私の作ったシークと関係の深い三人がこれからどうなるのかが私の気がかりだった。


「どうしてそんな事を聞くのですか?」


 瀬奈の最もな質問が来た。


「俺は今までいろんな危険な目に遭ってきたが、いつ何があるかわからないからな。もしかしたらシークを畳むかもしれないし。仮にも経営者の責任としてその後どうするか、どうしたいかを聞いておきたい」


 私が死ぬかもしれない。そう口には出来なかった。食事の場というのももちろんあるが、その話題は暗すぎると判断した。


 しかし、しばらくしても誰も、かぐやでさえ答えなかった。


「静かだな」


「それはそうです。だって、ここにいる全員ここが無くなるなんて思っていませんから」


「そうね。それにここは私と瀬奈の家でもあるし。むしろ無くなったら困るわ」


 そう、瀬奈と小神子にとってはここは文字通り家。いつか悪党に占拠された時、ここを自爆させて道連れなんてことを考えていたのだが、そうはいかなくなった。


 小神子にそう言われて私は思わず鼻で笑った。


「そうか。愚問だったな。いや、すまん。さて、冷めないうちに食べるか」


 その夜


 私が書斎で日記を書き終えて、そろそろ床に着こうかと思っているとドアがノックされた。「どうぞ」と言って中に入るよう促すと。


「太陽さん、いいですか?」


 瀬奈だった。以前私があげたウーパールーパーの抱き枕を抱えていた。


「瀬奈、どうした?」


「実はなかなか眠れなくて、少しいてもいいですか?」


 まるで子供のような理由だった。抱き枕を抱いている様相もそれだった。


「じゃあ、ここにこい」


 私はこれから眠る。そんな中女性、ましてや恋人の瀬奈をその辺に放置するわけにもいかないので私はベッドの隣に誘った。もちろん、瀬奈は動揺した。


「え、えぇ!?よ、よろしいのですか?」


「ああ。そこだと俺も瀬奈も居心地が悪いだろう」


 すると瀬奈が小声で「そんなつもりで来たんじゃないんだけど……」


 と瀬奈のなかなか聞かない敬語でない言葉を聞いて新鮮だった。


「で、では……失礼します」


 そう言ってぎこちない動作で私の隣で横になった。私は瀬奈と目を合わせず、天井を見つめる。視界に入っている限り見える瀬奈は私から目を逸らしている。


「どうした、前みたいに何気ない感じで入ってくればいいのに」


「あ、あの時は太陽さんが寝ていたから出来たんです。それに、あれは今思えば私も少しおかしかったような気もします……」


「でも、その時の瀬奈にとってはそれが一番の行動だったんだろう?だったら後悔よりも笑って振り返れるようになろうぜ」


 流石に少年兵の頃のことを笑って振り返れるのは不可能だが、シークを作ってから今日までの過ごした思い出はそうしたいと努めている。


「笑って振り返れる思い出……太陽さんは本当に前向きなことを考えますね」


「ああ。太陽だからな。でも、一つだけ瀬奈に誤らなければならない。俺から告白しておいて、恋人らしいこと何も出来なくてすまん」


 告白したからというもの、瀬奈と何かデートといったようなものをしていない。無論瀬奈への想いは変わらない。しかし、ここ最近瀬奈と時間が交わるのが夜くらいしかない。できれば日中に過ごしたいのだが、そういう時に限って何かある。


「仕方ないですよ。私と違って太陽さんは、忙しいのですから。でも、少しわがままを言うなら、たまには一緒にどこかにおでかけ……デートがしたいです」


「そうか、そうだな。今やっている仕事がもう少しで終わる。それまで待ってくれるか?絶対に約束だ」


「はい、絶対ですよ?」


 そう言ってまた静寂がやってくる。


「瀬奈、さっき俺は、後悔するよりも笑って振り返れる思い出を作ろうと言ったが、俺は今からすることを後悔するかもしれない。瀬奈が不快じゃなければだが……」


「どうしてですか?」


 私は瀬奈の方を向いた。瀬奈も私の方を向いた。垂れていた髪を後ろに直して、瀬奈の顔が見えるようにした。


「すまない」


「え?」


 数日後 駒宇良港


 またしてもここに戻ってくるとは思わなかった。前々からここは悪と縁のある場所だと思っていたが、私と因縁の深い者まで関わっていたのは驚きだ。


 シークの三人、理子、榎本君には秘密でやってきた。いわゆる抜け駆けだ。私は理子と榎本君に釘を刺したにも関わらず、当の本人が突出しているのだから愚劣極まりない。生きて帰ったらこっぴどく怒られること間違いないだろう。だが、死体となって帰れば一周回って怒られるかもしれないのでどちらにせよ怒られることを覚悟せねばならない。


 そんな私の今回の装備はいつものマテバ、カスタムガバメント二丁、日本刀、ボストンバック一杯に入った手榴弾等爆発物、防弾ベスト、特注の防弾コート。いつにもまして気合いの入ったものだと思った。


 港に着いてまず行ったのは情報収集。その場に似つかわしくない銃を持った兵士を片っ端から尋問した。そして、場所は第二倉庫の地下にいることがわかった。


 第二倉庫


 ぱっと見よくある様相の倉庫だ。以前沖田君が捕らえられていた場所によく似ている。施錠されていたドアをピッキングで開けて中に入ると確かになんの変哲もない倉庫だった。


「saki、どこかに空気の流れがある場所は無いか?出入り口と窓以外で」


 ーー肯定。二時の方向に反応あり。


 言われた場所に向かってみるとなんの変哲の無い床だった。が、sakiの精度は絶対と言っていいほど高いので私は試しに地面を思い切り踏みつけると砕けた床から地下に通じそうな扉が現れた。いつも通り「みーっけ」という気持ちになりながら扉を開けた先の階段を降りた。


 地下


 地下に降りた先にはまたしても扉が一つ。それを開けると明るく広い空間に出た。そこには死教と以前会った最初の改造人間の姿があった。


「ついに見つけた。死教」


「とうとう見つかったか。思ったより遅かったが。まあ、クサカは自分の役目を果たしたということか」


 久坂の役目。それはおそらく死教から遠ざけるための誘導だったのだろう。結局あいつもこの男の下で踊らされていたということか。


「死教、お前に一応の警告をする。ここで諦めろ。お前がこれまでやってきた悪事は俺の仲間が全て暴く。それも国を巻き込んでな。お前がどこに逃げようが隠れようがもう無駄だということだ。どうする?大人しくお縄につくか、俺に肉片も残らず吹き飛ばされるか」


 榎本君の立場を考えると死教は生かしておいた方が良いのだろう。だが、生かしておいてもそうこうしているうちに奴が第二、第三戦術を決行する恐れがある。なので彼女には悪いが、私としてはこの人物を生かしておかない。


「残念ながら、どちらでもないね。私が望むのはただ一つ。再び君を我が軍門に迎え入れ、また革命を起こすことだ!!」


「今更そんなもの流行るわけねぇだろ!!」


 私はボストンバックから一本の棒に複数の手榴弾が括り付けられたものを取り出し、一本の糸を引いて全ての安全ピンを抜かれると思い切り死教に向けて振りかぶった。そばにいた改造人間がそれをその場にあった机で手榴弾を振り払おうとすると私はすかさず持っていたボタンを押した。すると手榴弾は死教ではなくその周りに散らばり、爆発した。


「そんなチャチな爆弾で殺すわけないだろ。お前はこの手で直接って決めてるんだ」


 爆発と手榴弾に詰められていた破片を食らう前に改造人間が机で守っていたのか死教は頭から血が少し流れる程度だった。


「やってくれるね……私ではなく、ここを直接潰そうという魂胆だったか」


 そう言って死教がもう一つ奥の部屋に向かおうとしたので私はマテバで奴の足元を撃って動きを止めようとすると改造人間が放たれた銃弾を片手で受け止めた。そのせいで死教が奥の部屋に入るのを許してしまった。どうやらこいつを倒さないと進めなさそうだ。


「前より調整が進んだみたいだな。流石の俺もそんな芸当は無理だが、これなら!」


 マテバを直し、今度はカスタムガバメント二丁で改造人間一点に目掛けて撃ちまくった。しかし、弾丸は全て手で弾かれるか、薙ぎ払われてしまった。


「おいおいマジかよ……」


 先ほどの弾丸を受け止めるのは出来るかもしれないが、今のは無理だ。仕方ないので近接戦に移るために刀を抜いた瞬間、改造人間が私の目の前に拳を振るう一歩手前というところで、一瞬で現れた。


「マジか……」


 「よ」を言い終わる前に、私はすかさず守りの姿勢を取ったが、威力が思ったより強く、後方約十メートル飛ばされた。骨は折れていない。少し腕がズキズキするが。


「久しぶりに本気の喧嘩が楽しめそうだな……」


 刀を鞘に戻して腰のベルトに挿してから私は拳を強く握りしめた。


「お前とはあいつに利用された者同士、お話をしたかったのだがここでケリをつけるか」


 図体は私より高く、約二メートルほど。そんな巨体から想像できないくらい、素早く動く。それにパワーもある。恐らく防御力も前より上がっているだろう。総括してシンプルな品揃えだそれ故に力押しされたら面倒だ。短期戦にしよう。


 私は右手で刀の柄を握り、左手を鞘の根元。ちょうど鍔のあたりを握った。左足を後ろに引いて、目を閉じて、全神経を研ぎ澄ました。全ての動きを身体というか本能に任せることにした。


 地面が抉れる音が一度した。相手が地面を蹴ってこちらに向かってくるのが風でわかる。音の強さから大体の速さ、刀の間合い、これらを鑑みて言えるのはただ一つ。今だ。


 私は刀を鞘から思い切り下から上に切り上げるように抜刀した。すると目の前にはちょうど拳を振り下ろそうとしていた改造人間がいた。その拳も私が抜刀したことによって二つに割れていた。また、改造人間の身体も斜めに真っ二つになっていた。そして自然の法則によってか、斬られた場所を境に二つに分裂して改造人間は息絶えた。


 まずは第一関門突破だ。死教が逃げた先に向かおうとするとそのドアが大きな音を立てて爆発した。瓦礫が私に向かってきたので冷静に腕を横に振るって瓦礫をどかした。砂煙の中から現れたのは死教。であったが先ほど見た時より一回り大きくなっていた。少なくとも改造人間よりも大きい。三メートルはある。


「なんだそりゃ」


「これか?お前の身体能力等のスペックをもとにして開発したパワーアーマーといったところか。これを着れば誰でもお前のような力を発揮して戦場を暴れ回れる。量産化前の試作型だが、オリジナルを相手にテストができるなんて都合が良い」


 また厄介なものを作ってくれたものだ。まるで自分自身と戦っているようなものだ。これまで戦ってきた中で最も奇怪な相手と言えるだろう。


「一号を倒したか。あれでも完全な調整のはずだったのだが……」


「いいや、あいつはお前がどれだけ調整しても不完全だよ。何故かって?あいつは喋らない」


「かつてのお前がそうだったように、兵士に余計な言葉は不要。ただ命令に従い、敵を打倒することだけを考えればいいのだ!お前は兵士に生まれるべくして生まれてきたようなものだ!」


 その言葉を聞いた瞬間、私の感情が一気に爆発した。


「バカ言うんじゃねぇよ!!お前なんかに俺の存在意義を決めんじゃねぇよ!!俺が生まれてきた理由はただ一つ。皆の太陽になるためだ。誰よりも自由で、誰よりも明るく、俺や他人を笑顔にさせることが、これこそが俺の生き様だ!!」


「ならば今一度その身体に刻み込んでやろう!お前はどれだけ詭弁を垂れ流そうがただの兵士だということを!」


「「決着をつけるぞ!!」」

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